ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
読者の皆様、いつもこの駄文にお付き合いいただきありがとうございます。
思い付きで小説を書くとこのようにどこかの設定に綻びが生じるので、ちゃんと設定は固めなければならないんですけど…恥ずかしながら無学なもので、なかなか皆様の疑問が尽きることは無いかと思います。
ご指摘いただいた設定はできるだけ盛り込みたいと思っていますが、あまりに深刻なミスが発生し修正が不可能な場合には、申し訳ありませんが「ご都合主義」受け入れてくれれば幸いです。読者の皆様、感想を下さる皆様には重ねてお詫びと感謝を申し上げます。
マイエラ修道院の院長オディロから明日の朝なら話を聞いてくれると言われたため、宿を求めてドニの町にやってきた一行。そこでククールを名乗る聖堂騎士団員に指輪を手渡されたゼシカ。恋に恋する乙女にとっては夢のようなシチュエーションだが、ゼシカには全く響かなかったようで、彼女はゴミでも触るように指輪を外してエイトに渡した。あんなケーハク男は許せないと憤る彼女を諫めつつ、一行は明日に備えて早めに眠ることにしたのだった。
…
「ふわ…う~ん…」
「おお、エイト、起きたか。」
「…おはようございます王様…」
空はまだ薄暗かったが、トロデは元気いっぱいで体操などしている。年寄りの朝は早い、という言葉がぴったりなのだがエイトはその言葉を口にするのはやめておいた。見回すと、ヤンガスもゼシカもまだ寝ている。もう少ししたら起きよう、と思いつつまたエイトは微睡に堕ちていくのだった。
…
「エイト~!起きなさ~い!」
「兄貴~出発するでげすよ~」
「う、う~ん…?うわっ、もうこんな時間!」
エイトが再び目覚めると既に全員準備が終わっていた。エイトも急いで寝間着から着替え、宿の朝食をかきこみ、トーポにチーズをあげて外へ出た。今日は院長と面会をする日だ。
「もう!エイトったら全然起きないんだもん!」
「ご、ごめん…」
「エイトよ、二度寝するのは構わんが、それで遅刻するとはどういう了見じゃ!」
「申し訳ありません…」
「まあまあ、兄貴もお疲れだったんでげすよ。ほら、修道院が見えてきたでがす!」
散々待たされてふくれっ面のゼシカとトロデは文句たらたら。ヤンガスがフォローしてくれなければエイトはもう少し説教を食らっていただろう。エイトは後でヤンガスになにか美味しいものを奢ることに決めた。
修道院は昨日と変わりない様子で、たくさんの参拝者が礼拝堂でお祈りしていた。連日修道院に押しかけて礼拝の一つも行わないのは少し無礼が過ぎるかな、と思ったエイトたちも一応お祈りをして、奥へと進んだ。院長棟へ続く扉がある修道士宿舎の門の前には今日も聖堂騎士団の門番がいたが、今日は院長から指示が来ているので団員もしぶしぶ扉を開けた。ぶつぶつと文句を言いながら。
「ちっ。なんだってオディロ様はこんな魔物使いと面会なされるのだ…」
「わしは魔物ではないわい!!仮に魔物だとしてもこやつらはわしの臣下じゃ!言うなれば『魔物使い』でなく『魔物使われ』じゃわい!」
「王様…」
エイトは変なところで張り合おうとするトロデを抑えて先へ進んだ。ヤンガスとゼシカも騎士を睨みつけ返しながらエイトについていく。宿舎に入ったところでいざ院長の所へ、と思っても場所が分からないので、宿舎内で掃除をしていたトンスラ頭の修道士の子どもに道を尋ねると、院長棟まで案内してくれるという。
「この子、不思議な髪型だけどいい子ね。マイエラ修道院も捨てたものじゃないのかもしれないわ。」
「そうでがすね。というより問題なのは修道院と言うより聖堂騎士団の方だと思うでげす。」
ヤンガスとゼシカ、トロデは昨日からずっと聖堂騎士団の文句ばかり言っている。俗世に触れてこなかったヤンガス、貴族や王家であるゼシカとトロデは民を守るべき騎士に邪険に扱われたことが無かったのだろう。エイトにとっては近衛として勤務していた時から、よそ者ということで同僚の騎士からこのような仕打ちをよく受けてきたので、これしきのことで腹を立てたりはしない。慣れっこなのだ。
院長棟は宿舎から橋を渡った先にある大きな建物だった。院長棟の門番にも話を通し、修道士の子どもに礼を言って中に入った。一階は書斎のような場所で、膨大な量の書物が置いてある。エイトが何気なく一冊手に取ってみると、ダジャレがびっしりと手書きで書かれていた。ペラペラとページをめくったエイトは生温かい気持ちになり、本を閉じた。見ると、古そうに見える本の中に何冊かツヤツヤ新品の本がある。
「『善い上司になるには』『人は話し方が9割』『組織改革虎の巻』…院長ってどんな人なんでしょう…」
「そもそも、院長はどこかしら。一階にはいないみたいだけど…」
「うん?何やら上の階から声が聞こえるな。院長は二階にいるようじゃ。」
エイトたちが階段を上っていると確かに誰かの話す声が聞こえる。誰かと会話しているようだ。
「…うむ、…うむ、そう今からじゃよ。」
『──。』
「え?真実を隠せと?何故そんな…うむ、…都合がいい…か…うーむ、私は嘘はつきたくないのじゃが…」
『──。』
「合理的虚偽??…分からんことを…はあ、わかった。それが世界を救うためというのなら…」
『──。』
「うむ、また何かあったら連絡しよう。それではな。」
エイトたちが二階に上ったとき、院長が石板のようなものを懐にしまおうとしていた。そして院長とエイトの目がバッチリ合い、院長はあからさまに動揺した。
「な、ななな…君たち、いつからここに!?」
「今さっきですけど…院長様は今しがた誰かと会話しておられたのでは?お相手の姿が見えませんが…」
「(宿舎の門番に昨日の旅人が来たら伝えるように言っておいたのに…ここまで堕落しとるとは…)」
院長は苦い顔をして何かをつぶやいている。
「院長様?」
「おっと、失礼しました。…先ほどまで本日行われます修道院集会の演説の練習を行っておったのです。あなた方がいらしていたことに気付かず申し訳ありません。それで、先日聞きたいことがあると仰っていましたね。ぜひ聞かせてください。」
院長は居住まいをぱっぱと直すと、エイトたちに椅子を勧めた。促されるがままエイトたちは椅子に座り、早速トロデが口を開いた。
「では…」
「お待ちください王様、まずは自己紹介を。僕はエイト、こっちはヤンガス。彼女がゼシカで、この方がトロデ王であらせられます。トロデ王は呪いをかけられて今はこのような姿をしておりますが、元はれっきとした人間です。」
エイトがトロデーンの現状と旅の経緯を簡潔に説明すると、オディロは目を見開いて驚いた。その様子が少し大げさに見えたのをエイトは不思議に思ったが、先にトロデが質問したので有耶無耶になった。
「そういうことじゃ。して、オディロ院長。そなたも色々と忙しいようなので早速本題に入るが、『ドルマゲス』という名に聞き覚えはないかの?」
オディロは少し黙り込んだ。何かを考えこんでいるようだが、何かを葛藤しているようにも見えなくもない。しばらくしてオディロは語り始めた。
「…少し前にですね、この修道院は謎の二人組に襲撃を受けたのです。聖堂騎士団も蹴散らされ、私の命も狙われました。その者たちは私が何とか追い返したので修道院は無事でしたが、その男の内の一人が自らの名を『ドリィ』と名乗っておりました。もしかすると何か関係があるやもしれません。」
「その男はどのような格好をしていたのですか?」
「派手な服に身を包んでおり、まるで道化のようでした。左手にはなんとも禍々しい杖を持っていましたよ。あれはまさかとは思いますがトロデーン城の秘宝である『神鳥の杖』ではないですか?」
「な…!」
エイトとトロデは驚きで固まった。なぜこの男は秘宝のことを知っているのか。いや、それよりも重要なことは…
「…間違いない、ドルマゲスはここに来ていた。そして同時に現在秘宝の杖を所持しているのもドルマゲスで間違いなさそうじゃ。そ、そいつらがどこに向かったか分かるか!?」
「そうですね…去り際に彼らは南東の方角へ行くと言っていましたが…申し訳ありません、具体的な場所までは…」
トロデとオディロ院長が話している間、ゼシカは少し悲しそうな顔をした。
「そっか…(ううん、でもまだ兄さんを殺したのがドルマゲスって決まったわけじゃないよね…)」
「じゃあその、ドルマゲスと一緒にいたっていう男は何者なんでげすか?」
「彼の素性もよく分かっていませんが…彼は自分のことを『流浪の傭兵アインス』と名乗っておりましたな。」
「ドルマゲスには仲間がいるようじゃな…しかし奴も人の子、騎士団は打倒できても、院長に追い返されるようではお里が知れるわい。エイトたちなら軽く捻れそうじゃな。」
その言葉を聞いて、何故かオディロ院長が焦った。
「と、とんでもない!私が追い返したというのは…その、ほとんど奇跡に近いようなものです。あなた方がドルマゲスがトロデーンを滅ぼした、と自分たちで言ったことをもう一度思い出してください。彼を追いかけるのならばしっかりと経験を積みながら進むことをお勧めしますよ。」
「む、それも一理あるが…せっかく掴んだ足取り、ここで見失うわけには…」
その言葉を聞いて待っていましたとばかりにオディロは微笑んだ。
「では私のところから一人、旅のお供を手配しましょう。…ククール!上がってきなさい。」
院長が窓から棟の外に向かって呼びかけると、しばらくして外で待っていたらしいククールが入ってきた。オディロは先ほどエイトたちから聞いた話をほとんどそのまま話して聞かせた。
「…やれやれ、院長から『重要な話がある』って直々に呼び出されたってんだから何事かと思ったら……ほんとにとんでもない話を聞かされたもんだな。」
「アンタ!ドニのケーハク男じゃない!?」
「こんにちは、素敵なマドモアゼル。一日ぶりだね、きっとまた会えると思っていたよ。」
「おや、既にお知り合いでしたかな?このククールはマイエラ修道院の聖堂騎士団の一人でして、少し気が多いところもありますが、腕は立ちます。この先の旅路を阻害する魔物が現れても必ずや活躍してくれることでしょう。」
「ふむ、ヤンガスのような
「私はイヤよ!」
「戦力が増えるなら僕は良いと思いますけど…」
「おい、おいおい…!なんであんたら当事者のオレを差し置いて連れていくいかないの話をしてんだ?…院長、オレにも分かるように説明してくれよ。」
ククールとしては院長に突然呼び出されたかと思えば、いきなりよく知らないパーティーの旅に同行させられようとしているのだ。少し声を荒らげた形になってしまうが仕方のないことではある。
「…私の命が狙われた以上、このマイエラ修道院もドルマゲスを無視することができない。しかし戦力となる聖堂騎士団には色々と不都合があるのじゃ。その点ククール、おぬしは身軽じゃろう?」
「……つまり院長は、オレのことを役立たずだと、そう言いたいわけだ。」
そう言うククールの声は明らかに苛立っていた。何か声をかけようにも、ククールの如何については修道院の問題なのでエイトたちは口を噤む他ない。一拍おいて、院長がしっかりとククールと目を合わせ、口を開く。
「そうは言っておらん。ククールよ、これはおぬしにしか頼めないのじゃ。聖堂騎士団はおぬしやこちらの御仁たちも知っておる通り、血の気が多く傲慢で、石頭のアホウどもじゃ。しかしおぬしには彼らを嗤う“良識”がある。わしが『身軽』という言葉を使ったのはおぬしには家柄や妙なプライドなどという余計なしがらみがない、という意味でじゃ。他の騎士たちは殆どが名門の出じゃが、おぬしとマルチェロの家は…ここ、マイエラ修道院なのじゃからな。マルチェロがいない今、この地を代表する騎士はおぬししかおらんじゃろうて。」
「…」
「…のうククール、ここは一つ、頼まれてくれんか?」
「…仕方ない、院長にそこまで言わせておきながら断るってのも駄々をこねるガキみたいで情けないよな。…わかった。オレはこいつらと旅に出るぜ。」
「ククール…!」
オディロ院長の顔がパァッと明るくなり、ククールは少し照れ臭そうにそっぽを向いて頬を掻いた。どうやら話も一段落ついたようでエイトたちも胸を撫で下ろす。
「…ハァ、なんかいい話の雰囲気にされちゃったから毒気も抜かれちゃったわ。…せっかくついてくるんだったらちゃんと働きなさいよね。」
「…ゼシカから聞いていた通り、最初はキザでイヤミな奴だと思ってたでがすが…この兄ちゃんにも色々ありそうでげすね。来るもの拒まず、アッシも賛成でげす。」
「よし、ではククール!これからわしの護衛としてよろしく頼むぞ!」
「はあ?オレは別にアンタみたいな化け物ジジイの護衛になったつもりじゃないぜ?オレはこちらのレディがケガをしないように四六時中エスコートすることに決めただけだ。」
「…エイト、ククールの指輪。」
「はい」
「それは…!オレはぜひキミの左薬指につけて…あでっ」
ゼシカは美しいフォームで振りかぶり、ククールの額に指輪を投げつけた。
「いらないわよそんなの!あんまりしつこく私に言い寄ってくるようなら木に括り付けて火あぶりにしてやるんだから!」
「…やれやれ。俺は苛烈な女も嫌いじゃないぜ?…じゃあ改めて。オレはククール。クサレ僧侶なんて呼ばれているが、文字通り『腐っても僧侶』だ。回復魔法なら任せてくれ。」
「アッシはヤンガスでげす。こっちのエイトの兄貴の子分でさぁ。これからよろしく頼むでげす。」
「…魔法使いゼシカよ」
「エイトにヤンガス、ゼシカ。それとこのおっさんがトロデだな。よろしく頼む。…それじゃあ、行こうか?」
「ククール!おぬしはもうちょっと敬意をじゃな…!」
「まあまあ王様、ククールは王様のことを知らないのです。これからゆっくり王様の威厳を示していけばいいじゃないですか。」
「…ふむ、確かにいちいち腹を立てていては血圧が上がりそうじゃ。仕方ないか…。」
紆余曲折有ったもののようやく全員が納得し、僧侶ククールは晴れてエイトたちの仲間となったのだった。和やかなムードの中唯一オディロ院長だけが冷や汗をぬぐっていたが、その姿は誰にも気付かれなかった。
▼ククールが 仲間に 加わった!
「(ふぃ、何とかなりそうじゃ…。話を誤魔化して誘導するというのは私には向いてないの…)ほっほ、うまく話もまとまったようじゃな。ククール、後の修道院のことは任せなさい。そしてエイトさん、これを。」
オディロ院長は世界地図をエイトに渡した。
「ドルマゲスは世界中のどこにいるか分かりません。ぜひその地図を有効に活用してください。」
「色々とありがとうございます!必ずドルマゲスの真相を暴いてみせます!」
オディロ院長は何も言わず微笑みで返した。
…
その後エイトたちを修道院の入り口まで見送ったオディロ院長は院長棟に戻り、門番を小突いて説教をした後自室の机に座って本を読みながら、ぼそりと呟いた。
「ほっほっほ…ククール、そして勇者たちよ、力いっぱい突き進みなさい。…私の友人ドルマゲスは手強いですよ…」
おっと、と思い出したかのようにオディロ院長は懐から石板のようなものを取り出すのだった。
原作との相違点
・旧修道院跡地に行かなかった。
特に急用ではなかったのでそんな抜け道は使う必要がなくなった。ちなみに中の魔物はドルマゲスが一掃してしまったため、行ったとしてもただの汚い道である。
・オディロ院長が生きている。
今更ではあるがオディロはドルマゲスに殺されなかったので生きている。しかしドルマゲスに洗脳(笑)されているので完全な味方であるとは言い難い。オディロはサーベルトの説教によって組織改革の必要性を痛感し、自分は今までそれを見ないふりをしていただけだということを自覚し、本格的なマネジメント術を学び始めた。聖堂騎士団が更生するかどうかは保証できないが。
・ククールが割と穏便に修道院を出た。
原作マルチェロも本作オディロもククールを旅に出す理由はククールが『身軽』だからであるが、言い方と発言者が全然違うのでククールも気持ちよく修道院を出発できた。
・オディロ院長が裏で誰かと連絡を取っている。
一体誰マゲスなんだ…
トンスラとは:俗世と決別した聖職者のアイデンティティーの一部として普及した、頭頂部から側頭部、後頭部にかけて髪の毛を剃って整えた髪型。ドラクエⅧの修道士は大体がこの髪型である。ちなみに現実では宣教師フランシスコ・ザビエルが日本では最も有名なトンスラ頭の偉人だが、この髪型を特徴とするのはキリスト教カトリックだけで、キリスト正教会はむしろ髪を伸ばすことが多い。
エイト
レベル:12
ヤンガス
レベル:12
ゼシカ
レベル:11
ククール
レベル:12
パーティーメンバーが揃ったのに未だにダンジョンにも行かず、ボスとも一度も戦っていない勇者がいるってマジ!?