ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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前話、メインはドン・モグーラとキラだったのにコメントは半分以上ユリマのことについて書かれてて笑っちゃうんすよね。念押しですがユリマは失踪してるし、生死も不明なんですからね!?







第十八章 寄り道と反則

新しい仲間も増えて心機一転、早速次の目的地をみんなで相談しています。といっても私は手綱を握っているのでみなさんと直接顔を合わせて話すことができません。…もどかしいなぁ。そうそう、俺の分身からの伝達ですが、モグラたちは想定よりもずっといい働きをしてくれているとのこと。これは楽しみですねぇ。

 

 

 

 

馬車での旅はそれはもう歩きよりは何倍も快適なのだが、俺が次に向かおうと思っている賭け事の街ベルガラックは遠い海の向こうなのだ。なので正直馬車の出番は向こうに着いてからが本番になると思っていたのだが…。

 

「ドリィ、少し南側に寄り道したいと思っているのだが…いいだろうか。」

 

「おや、南に何かあるのですか?」

 

「え…と、そうだ。パルミド地方には『剣士像の洞窟』というダンジョンがあるだろう。その名を聞いた時から剣士を志すものとして一度は訪れてみたいと思っていてな!それに…ほら!キラは戦闘に参加しないにしても、俺やドルマゲスのハイレベルな戦闘を見て慣れておかないとダメだろう!」

 

「…」

 

サーベルトの目線はすっかり左上に行ってしまっている。…どんなに鈍感な人間でもわかる、後ろめたいことがある人間の特徴だ。しかし嘘…というほどの深刻さにも見えない。基本的に素直なサーベルトがわざわざ主張するくらいのことなので何か思惑があるのだろう。今はそこまで急ぎの旅でもないし、ちょっとくらいならいいか。

 

「そ、そうですね!私も…ドルマゲス様、とサーベルト様の戦いをぜひ拝見したいです!」

 

キラちゃんも乗り気だ。確かにさっきから全然魔物もやってこない。どういうことかと思い、岩陰からこちらを窺っていた「アローインプ」を一匹ひっとらえて話を聞いてみた。

 

彼らの言い分によると、魔物の間ではピエロと剣士の二人組を見かけたらすぐにその場から離れろ、という警告がアスカンタ国領中に広まっているらしい。奴らは人間の皮を被った悪魔だ、悪魔系の魔物より悪魔だ、といった根も葉もない噂…というじゃあお前はなぜ来たのかと問うと馬車だったから誰が乗っているのか分からなかったんだと。バカだなぁ…

 

(ちなみにそんな噂を流したのはどこの誰ですか?)

 

(おっおおお俺じゃねぇ!!!森に棲んでいるハゲのじんめんじゅだ!!だから食べないでくれ!!助けて!!)

 

ああ…あいつか。おそらく俺たちがやくそうを補充する餌食になった個体だろう。俺がアローインプを放してやると、鬼!悪魔!魔物殺しぃ~~!!と叫びながら逃げていった。全く。俺が魔物を食べる時は苦しまないようきちんと絞めてから食ってるのに。そんな鬼とか悪魔とか言われたら泣いちゃうぜ。

 

「(食べないでくれ…?っていうのはどういうことなんでしょうか…?)」

 

「ふむ、まあいいでしょう。ではこれよりパルミド方面に向かいます。剣士像の洞窟に寄りますが、あまりに長すぎる滞在はダメですよ?」

 

「ありがとう、ドリィ。恩に着る。」

 

「…そういうわけです。キラさんもそれでいいですか?」

 

「はっはい!私もパルミドに行ってみたいです!!」

 

うーん。正直パルミドには行きたくはない。世捨て人の終着点のような集落、悪徳の町であるパルミドは、めちゃくちゃに治安が悪く、全ての住民が他人の財布と食べ物を狙っている。その上衛生観念も悪く、近寄るとろくなことがない。勇者たちのようにヤンガスというパルミド出身の同行者がいるならばまだしも、土地勘が全くない俺たちは物乞いや破落戸(ごろつき)たちにとっては格好の餌食だ。今更俺やサーベルトが生身の人間に後れを取るようなことは無いが、キラちゃんが人攫いに遭ったり人質に取られたりした場合は具合が悪い。んー。

 

「パルミドは…また後で考えましょうか。」

 

俺は手綱を引いてとりあえずパルミド方面に…

 

「ああっ!ごめんなさい!止まってもらってもよろしいですか!?」

 

「!?ど、どうかしましたか?」

 

向かおうとしたものの突然キラちゃんが素っ頓狂な声を上げるので俺とサーベルトはびっくりして硬直してしまった。

 

「あの…その…おばあちゃんの家に寄りたいんです…けど…」

 

キラちゃんは心底申し訳なさそうにしている。まあ城から直接出発したわけだからな。実家にも色々必要なものを置いてきているのを思い出したのだろう。実家と川を挟んだ向こう側にある『川沿いの教会』までは『ルーラ』ですぐに戻れるので、寄り道をしても特に問題はない。

 

「分かりました。ならキラさんの実家に行ってから改めて剣士像の洞窟へ向かいましょう。」

 

「い…いいんですか…?」

 

「何も気にすることは無いぞ。キラも俺たちの旅の一員なんだから、好きに口を出していいんだ。」

 

まったくもってサーベルトの言う通りである。周りにいるのが俺とサーベルトという一回りも二回りも年上の男二人なので、キラちゃんは自分が発言して行き先を変更することに委縮しているのかもしれないが、今は神鳥の杖も安定しているし、勇者たちに追いつかれさえしなければどこに向かおうと特に問題はない。

 

「ありがとうございますっ!」

 

俺たちは一度川沿いの教会まで歩いて戻り、キラのおばあちゃんの家がある方向へと向かった。

 

 

「「お邪魔します。」」

 

「どうぞ!何もないところですが…」

 

俺たちはキラちゃんの家にお邪魔させてもらうことになった。彼女にも色々準備があるだろうし、何より家族団欒の場に帯刀した見知らぬ剣士や変な道化師がずかずかと入り込んできたら彼女の家族も気が気でないだろうと思い、初めは外で待っていようと思っていたのだ。しかし、キラちゃんはただでさえ寄り道させてもらっている立場なのに、そのうえ国の英雄である俺たちを家の外で待たせるなど恥ずかしくて王様に顔向けできない、とのことで家に上げてもらったのだ。

 

「おやキラ。久々に帰ったと思ったら、わたしにお婿さんでも紹介しにでも来てくれたのかい。中々のハンサムさんじゃないか。」

 

キラちゃんのおばあさんはサーベルトとキラちゃんとを交互に見てサーベルトに微笑みかけた。サーベルトもにこやかに微笑みを返した。サーベルトって年下からも慕われるし、年上の人にも人気があるよな。体中から滲み出る善人のオーラはとても俺に真似できるようなものではない。

 

「あはは、いやだわおばあちゃん。この方は私の仲間のサーベルト様よ。」

 

「ほっほっほ。そうかいそうかい。じゃあそちらの道化師のお兄さんがあなたの本命かね?」

 

「あ、あはは、は!お、おばあちゃん!!そんなことはどうでもいいの!!」

 

「ほっほっほ…からかって悪かったねぇ。それでキラ、今日はどうしたんだい?」

 

「う、うん…あのね…おばあちゃん、おじいちゃん。私、アスカンタ王国の小間使いをしばらく休んで世界中を冒険することにしたの。だからしばらく帰って来れないってことを伝えようと思って。」

 

「あらまあ。そういうことだったのかい。」

 

「キラや、おぬし旅に出るのか。若いってええのう。」

 

キラちゃんの祖父母は彼女が旅に出ると言ってもそんなに驚きはしていないようだ。まあ彼らがおおらかな性格をしているということもあるだろうが、元から王宮に住み込みで働きに出ていて二年間実家に帰らないということもザラにあるようなので、期間的にはそこまで大きな違いではないのかもしれない。

 

「そうかいそうかい。ではそちらのお兄さん方がキラを連れて行ってくれるというわけですねぇ。」

 

「俺はアインスといいます。キラはおばあさまから聞いて話で冒険に憧れていたらしく、その覚悟は本物です。ぜひこころよく彼女を送り出してやってはいただけないでしょうか。」

 

「私はドリィと申します。旅の道化師をしております。こちらのアインス共々、まだまだ未熟ですがキラさんを守る盾にはなりましょう。彼女のことは私たちにお任せください。」

 

俺は鉢植えのネモフィラを出してキラちゃんのおばあさんに渡した。ネモフィラは別名赤ちゃんの青瞳(ベビーブルーアイズ)とも呼ばれる一年草で、青と白の花を咲かせる美しい花だ。涼しく日当たりのいい気候を好むので、川沿いの一軒家であるこの家ならさぞ元気な様子を見せてくれることだろう。

 

「まあ、これはご丁寧にどうも。綺麗な花ですねぇ。」

 

「今、何もないところから花が出てきたように見えたのだが…」

 

「ふふん、これぞ魔法。種も仕掛けもある手品ですよ。」

 

俺はキラちゃんの祖父に向かって得意げにウインクをした。やはり俺の天職は道化師だ。人の驚いたり喜んだりする顔を見るとこっちも嬉しくなる。

 

「ドリィ様、アインス様。うちのキラは真面目で勤勉な子です。ご迷惑をおかけするでしょうが、きっとこの子なりに頑張っているので、どうか面倒を見てやってください。」

 

「ええ、もちろんです。キラさんには期待しているんですよ。任せてください。」

 

実際俺は彼女に可能性を感じている。戦闘には不向きかもしれないが、逆に言えばそれ以外のことは大抵できる子なのだ。彼女を助手にすれば、もしかしたら俺の料理や研究をさらに素晴らしいものにしてくれるかもしれない。なんなら料理の腕前は彼女の方が上だろう。明日にでも料理勝負を吹っ掛けてやろうかな。

 

「じゃあ、我々は外で…」

 

「お待ちなされ、直に日が落ちる。今日はここへ泊まっていきなさい。」

 

「ええと、しかし…」

 

「いいんですよ。私たちも久しぶりに帰ったキラとお話がしたくてねぇ。」

 

…そうか、そうだよな。俺は自分たちの都合ばかり考えて、キラちゃんたち家族のことはすっかり抜け落ちていた。家族団欒は大事だ。家族のいない俺と違い、キラちゃんやサーベルトには家族がいるのだ。その時間を奪うなど言語道断、反省反省。

 

「そういうことならば…」

 

「ああ。ドリィ。ここはお言葉に甘えるとしよう。」

 

その後サーベルトは食卓でキラちゃんのおじいさんと世間話をし、俺はおばあさんから色々な興味深い昔話を聞いた。キラちゃんが用意してくれたシチューをみんなで食べた後はアスカンタの古文書を読んだり、真っ白キューブな錬金釜を分解しようとしてみたりし、中々有意義な夜を過ごした。

 

「おや、寝床はどうしようかねぇ。すみませんねぇ。ベッドが三つしかないもので。私たちはベッドがないと眠れませんので、申し訳ないですが、キラのベッドに三人で寝て貰ってもいいでしょうかねぇ。」

 

「えぇ…?」

 

いや狭いだろ。明らかにシングルサイズのベッドだし。おばあさんは困惑している俺たちを見てニコニコしている。見た目によらず割とユーモアのある人だ。俺はおちゃめな老人は嫌いではない。…頑固ジジイな師匠が嫌いというわけではないが。やはりさっきのは冗談だったようで、俺たちにベッドを明け渡してくれると言ったが、床に転ぶ老人二人を横目にベッドで眠るというのも夢見が悪い。

 

「いえ、私とサーベルトは馬車で寝ますよ。ああ、安心してください。馬車にも寝台のようなものがあって、なかなか快適ですので。」

 

「あらあら、そうですか。申し訳ありませんねぇ。」

 

「お気になさらず。サーベルト、行きますよ。それでは皆様、ごきげんよう。」

 

「ど、ドルマゲス様!サーベルト様!お休みなさいませ!」

 

「はい、良い夢を。」

 

「おやすみ!キラ!」

 

翌日、俺たちは祖父母に見送られながら川沿いの民家を出発し、パルミド方面へと向かった。目指すは剣士像の洞窟である。

 

 

パルミド地方に到着すると、俺たちのことを知らない魔物たちが襲ってくるようになった。大勢でお出迎え、ありがたい話だ。

…キラちゃんへお送りするショーのボランティアとしては十分。

 

「キラさんは馬車の中から見学しておいてくださいね…私たちの戦いを!」

 

「は、はい!!」

 

「行きますよサーベルト!」

 

俺は開幕「キメラ」の群れの真ん中に『マヒャド』を打ち込み翼を封じる。「ノックヒップ」たちの相手はサーベルトに任せ、『はげしいほのお』で「コングヘッド」のグループをけん制。「パプリカン」は大事なビタミン源なので『やけつくいき』でマヒさせておく。ついでに塩も振って下ごしらえをしておこう。「ごろつき」「くびかりぞく」などの相手は昨日メンテナンスを済ませた兵器『踊り子(バイラリン)』が行う。相変わらず燃費は悪いが、10匹にも満たない相手なら何とかなるだろう。「ミニデーモン」は『バギクロス』で一掃。「ガチャコッコ」は馬鹿みたいに殴らなくても内部の配線を切れば動きは止まる。魔力を帯びた金属は俺にも作り出せないのでコイツのボディは貴重な素体だ。残った「コングヘッド」たちは…ああ、サーベルトが倒してくれたな。流石だ。

 

「ふう…こんな感じです。お疲れ様でしたサーベルト。」

 

「ああ…」

 

「スゴイ…!これがドルマゲス様たちの戦い…!私、感動しました…!」

 

キラちゃんの目はキラキラだ。…うむ、満足満足。数日ぶりにまともな運動をしたので腹が減ってきたなぁ。

 

「それはこちらも嬉しいです。では、ここらで昼食にしましょうか。」

 

「はい!ええと、食材は…」

 

キラちゃんが馬車をゴソゴソし始めたので止める。もったいない…せっかくここに新鮮な食材があるのに。

 

「キラさん、大丈夫ですよ。食材はもう揃っています。」

 

「?」

 

キラちゃんはにっこりした顔のまま首を傾げる。小動物的愛らしさがあってかわいいなぁ。俺がそんなことを思っていると、何に感付いたのか、サーベルトが慌てて忠告しに向かう。

 

「ええと、キラ。最初はびっくりするだろうがドリィの料理は本当に美味しいから…」

 

「???」

 

サーベルトが忠告しているのを横目に俺は早速「パプリカン」を絞めて軽く火で炙り、齧った。美味い。

 

「うーん。美味しい。やっぱり旅をしていると野菜が不足しますねぇ。このシャキシャキ感は肉には出せない食感ですよ。ねぇサーベルト?」

 

…ひとつだけマズかったことと言えば、キラちゃんは生まれてこの方ずっと王宮で食事を作っていた年端もいかない箱入りのお嬢さんだった、ということをすっかり忘れていたことだ。サーベルトを見ると額に手を当ててやれやれと言った表情をしている。

 

「??????????????????????」

 

キラちゃんは目をグルグル回したかと思うとうしろ向きにパタリと倒れてしまった。

 

「ドリィ。君はもう少し年頃の女の子に対する配慮をだな…」

 

配慮を欠いた俺はサーベルトにしっかり叱られてしまったのだった。

 

 

「うぅ…ほ、本当に食べるんですかぁ…?」

 

「キラ、さっきも言ったが、味は保証するから…ほら、美味しいぞ!」

 

憂鬱そうな顔をしているキラちゃんの目の前でサーベルトはステーキをぱくりと頬張った。

 

「ど、ドルマゲスさまぁ…」

 

涙目で訴えかけてくるキラちゃん。正直馬車の食材から料理を作ってあげてもいいが…(さっきの所業は棚に上げ)俺たちのパーティーで一緒にやっていくためにはいつかは魔物も食べなければならない時が来るだろう。ここは心を鬼にするしかあるまい。

 

「ダメです。一流の冒険者たるもの、魔物の一匹や二匹食べられないでどうしますか。しっかり食べて供養してあげるのも生き物への礼儀です。もし嫌だというのなら…貴方をアスカンタの実家に帰しちゃいますよ?」

 

「!!!」

 

当然ただの脅しだが。さらに一流冒険者が魔物を食うのかどうかも知らんが。

 

「そ…それはイヤ…です…!」

 

キラちゃんはフォークを手に取ると、ステーキ(何の肉かは忘れた)に突き刺し、一気に口へと運んだ。おおっワイルド!!そのまま彼女は親の仇でも見るような顔で虚空を見つめながらもむもむと口を動かす。しばらくして彼女はびっくりしたように目を見開いた。

 

「……!…わ…お、おい、しい…!?」

 

わお!それって魔物料理が気に入った…ってコト?!

 

「だろう!ふふん、ドリィは料理の腕もすごいんだ!」

 

何故かサーベルトが得意げになっているが、こちらとしても褒められて悪い気はしない。

 

「いかがですか?」

 

「あの…おいしい、です…!」

 

「それはよかった!!まだまだおかわりもありますよ!!」

 

俺は他の肉やキモやらを勧めたが、もういいです、と丁重に断られたのでしぶしぶ普通の野菜でサラダを作って出してあげた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

─剣士像の洞窟─

 

俺たちは毒の沼地を抜けて地下にある迷宮にやってきた。正面にはわざとらしく、大きくて煌びやかな宝箱が置いてある。あの中には魔物と宝石「ビーナスの涙」が入っているのだ。ビーナスの涙は正直どうでもいいが、それを守っている「トラップボックス」の方には興味がある。奴は物質系モンスターでありながらゾンビ系の特徴も持つ珍しい魔物なのだ。現在アスカンタで研究を進めている俺の分身のためにぜひ捕獲したい。

 

「サーベルトはここにどんな用事があったのですか?」

 

「え、ええと…聖地巡礼というか…まあちょっと腕試しというか?俺としてはここの魔物と戦えれば満足なんだ…です。」

 

どうも歯切れが悪いな…何を隠しているのは分からないが悪巧みではないだろう。とりあえずこのダンジョンを真っ当に攻略したいとかではないならいいか。俺は二人を抱きかかえてぴょいと跳んだ。

 

「ちょいと失礼しますよ…!」

 

「ひゃあっ!?」

 

「わっ!!」

 

俺はダンジョンの最終到達点まで一歩で辿り着いた。改めて考えるとこのダンジョン、構造的欠陥が凄いよな…。

 

そう思いながら俺があたりを見回すと夥しい数の串刺しになった遺体があった。なるほど。生半可な身体能力ではここまで跳んで来られないということね。それでも一部の人間には飛び越えられるよな…ああ!そのためのトラップボックスか!俺は一人で勝手に納得して二人を地面に下ろした。

 

「ええと…ドリィ、この進み方は正攻法なのか?」

 

「まさか。反則の反則ですよ。しかしあの宝箱には番人がいます。サーベルトの腕試しにはピッタリかと。」

 

「…そうか。キラはここで待っていてくれ。俺たちで守り人を倒してくる。」

 

「分かりました…ご武運を!」

 

俺は石碑に書いてある文字を読んだ。なになに?剣士像の謎を解きし知恵ある者よ、次は汝のチカラを試す時。…スマン、俺剣士像の謎解いてねんだわ。まあいいか。宝は置いていきますので…。

 

俺はサーベルトと共に階段を上って宝箱に手をかける…と、宝箱は魔物に姿を変え襲い掛かってきた。その瞬間、俺は懐に違和感を感じたのでポーチをまさぐってみると、石板が淡く発光し震えている。これは…

 

「行くぞ!ドリィ!!」

 

「ちょっとタンマ!後は頼みます!!」「はぁあ!?」

 

「ちょ、ドリィどこへ…うおっ!」

 

トラップボックスの相手をサーベルト一人に丸投げして、くるりと身を翻し俺が携帯念話(フォン)に魔力を流すと、オディロの声が明瞭に聞こえてきた。

 

『おーい。聞こえておるかのう?』

 

「聞こえていますよ。オディロ院長、お久しぶりです。何か御用でしょうか?」

 

『うむ。それがじゃな。やってきたのだよ。』

 

「やってきた、と言うと…まさか!勇者ですか?」

 

『そう。赤いバンダナにずんぐりとした山賊、ナイスバディな姉さんと緑の魔物…君が言っているのは彼らのことじゃろう?』

 

「その通りでございます。それで、もう彼らとは話を?それともまだ会ってはいないのでしょうか?」

 

『うむ、そう今からじゃよ。』

 

これは好都合だ。オディロが事前に連絡を入れてくれて助かった。

 

「では、勇者たちには私が悪人ではない、という事実を伏せて彼らの話に合わせてください。彼らには私を宿敵だと思っていただいた方が色々と都合がいいので。」

 

『真実を隠せと?何故そんな…うむ、都合がいい…か…うーむ、私は嘘はつきたくないのじゃが…』

 

「まあそこらへんはケースバイケース、合理的虚偽というやつですよ。それが最善の道になるのです、頼みますよ。」

 

『合理的虚偽??…分からんことを…はあ、わかった。それが世界を守るためというのなら…』

 

「ありがとうございます。では勇者との面会が終わったら、後で色々報告していただいてもよろしいですか?」

 

『うむ、また何かあったら連絡しよう。それではな。』

 

オディロの声が途切れると、俺は石板をしまった。よしよし、勇者たちはちゃんと冒険を進めているようだ。ゼシカもちゃんと仲間になっている。ククールもオディロが上手く取り付けてくれることだろう。

 

勇者には勇者の。オディロにはオディロの。そして俺には俺の役目があるというわけだ。しっかり頑張ろう。俺が改めてドラゴンクエストⅧの流れを噛みしめて体感していると、悲痛な叫びが響いた。

 

「ど、ドルマゲス様…サーベルト様が…」

 

「ど、ドリィ~~~!!」

 

「すみませんサーベルト!今行きます!!」

 

俺は急いでボロボロのサーベルトを連れて降りてきたのだった。

 

 

 

 

 

 








ドルマゲスは分身しているので実力は25%ほど低下しています。パルミド地方ではそんなの誤差ですが。

レベルが40近くあるサーベルトがトラップボックスごときに苦戦するのかということですが、おそらく彼は状態異常耐性がないので、ラリホーやメダパニからの痛恨の一撃でハメられたのだと思います。
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