ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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祝!10万UVです!!

皆様いつもありがとうございます。小説を書き始めて一月と半月、ついに本小説の総UV数が10万の大台を突破しました!これらはひとえに読者の皆様のご協力があってこそです。次は20万、そして30万、ゆくゆくはハーフミリオン到達の野望を抱いております…。

これからも読みやすく、そして続きが読みたくなるような文を書くことができるよう精進しますので、ぜひお付き合いいただけたらと思います。



あれぇ?みんななんでディム君の正体分かっちゃってるの?








第十九章 激励と潜入

オディロ院長に渡した石板は上手く私と彼の声を繋いでくれました。やはり念話が使えると便利ですねぇ。文明の利器は有効に活用してこそです。…もしかして現代知識を活かして世界征服とかもできちゃうんですかね?……うーん、考えただけで恐ろしい。悪とは遅かれ早かれ滅びるものなのです、魔王とかね。

 

 

 

 

「…」

 

「トラップボックス」にハメられてタコ殴りにされたサーベルトは俺の回復呪文を受け、キラちゃんの手当てを受けながらも俯いたままだ。俺が戦闘の直前に離れたことを怒っているのだろうか?……いや違うな、サーベルトは怒る時に口数が多くなるタイプだ。とはいえ、戦闘前に突然離脱したことについては深く反省しなければならない。正直、サーベルトならトラップボックス程度に後れを取ることはないと思っていたのだ。彼の眠り耐性の弱さに気がついていれば絶対に戦闘を優先していた。

 

「サーベルト?さっきのことは本当に申し訳ありませんでした…私には人として重要なピースが欠けていたみたいです…。顔を上げてくれませんか?」

 

「さ、サーベルト様!ほら!手当ても終わりましたよ…!」

 

「………ぃ」

 

「え?」

 

「俺は…弱い…!」

 

「弱い?サーベルト、貴方がですか?」

 

サーベルトが弱い?聞き間違いではなかろうか。弱いどころか、この世界の人間の中では指折りの強者だと俺は思っているのだが…。

 

「…俺は生まれてから剣の神童と持て囃され、それに慢心することなく剣の鍛錬を続けてきた…つもりだった。しかし現実はどうだ、俺はいつだって誰かの足手まとい。モグラの親玉と対決した時も、草原で魔物に囲まれたときも、…トロデーンでドルマゲスと対峙した時も…」

 

「だから強さを求めて、自分のこの二十余年が無駄でなかったという証明が欲しくて、難攻不落と名高いこのダンジョンに挑んで……そして無様に敗北して逃げ帰ってきた。こんな惨めなことは無い。…やはり俺は海を知らないただの蛙だったんだ。」

 

俺はサーベルトを小突いてお前は何を言っているんだと言ってやりたかった。サーベルトが足手まといなわけがない。もし前衛かつメインアタッカーの彼がいなければ妨害特化の俺の戦闘がジリ貧になることは目に見えている。…確かに『マヒャド』『バギクロス』などの大魔法は範囲も広く派手で目を引くかもしれない。しかし魔導士の特徴としてその貧弱さが挙げられる。一応俺も魔法剣士として鍛錬は欠かしていないが、やはり本職の剣士とは体力や守備力でどうしても差がでてしまう。前線でサーベルトが魔物の敵愾心(ヘイト)を一心に集めてくれるからこそ俺も気持ちよく魔法や呪術をぶっ放すことができるのだ。ここまでは戦士の有用性についての評価だが、サーベルト自身についても、俺は彼を弱いなどと思ったことは無い。装備の強さはもちろん、トロデーンで見せた師匠との連携。周りを見る冷静さ、仲間の動きに合わせる協調性というのは前衛職ではなかなか養いづらい特性である。七賢者シャマルの才を受け継いだと言われても納得できる一流の剣士に相違はあるまい。

 

「…そんなことを言わないでください。私が戦闘に集中することができているのは、サーベルトが剣士として巧く立ち回ってくれているおかげです。貴方がいなければ私は魔物に追い回されて戦闘どころではないのですよ。」

 

「…俺にはドリィのような派手な特技がない。だから、自分が何か戦いに貢献できているのかすらわからないんだ。時々なんでもできるドリィの技を見て羨ましくなってしまう。ドリィは俺の親友だというのに…ああ、最低だ。俺って…」

 

この精悍な若い剣士は、誰かを羨むことすらも卑しいことだと思って悩んでいるのだ。しかもその口ぶりからはかなり前から悩んでいたであろうことが窺い知れる。一人で悶々と悩みながら、俺たちに迷惑をかけないように気丈に振舞おうとしていたのだ。なんと健気な青年だろうか!これは何とかしてあげなければ。

 

「…サーベルト。私はいつだって誰かのことを羨んで生きています。貴方のことも、ゼシカさんのことも、師匠のことも、キラさんのことも、パヴァン王のことも、ドン・モグーラのことだって羨ましく思います。人が他の誰かを見て羨ましく思うことは人として至極普通のことですよ。」

 

「えっ!?えっ!?」

 

サーベルトが顔を上げてこちらを見る。キラちゃんが後ろで酷く動揺しているが、今はサーベルトだ。もう一押し。人を羨むことが悪いことではないと説いた。あとは…

 

「私にはサーベルトが必要です。初めは貴方が頼み込む形で私たちはパーティーになりましたが、今は違う。何度でも言いましょう。私の旅には貴方が必要不可欠です。どうか、自分を卑下しないでください。貴方は…私の大事な相棒です。」

 

「ど、ドリィ…!」

 

「…では、私が一つ、剣の奥義をお教えしましょう。」

 

「…!」

 

サーベルトが生唾を呑む音が聞こえてきそうだ。

…この技は俺のこの肉体でも再現することはできなかったが、理論的には不可能ではないということは最近の研究で分かった。

剣士として幼少期から剣と触れ合い育ってきた彼ならば完成させることができるかもしれない。…可愛い親友のためなら原作崩壊もクロスオーバーも些事よ些事。

 

「まず初めに、この奥義は()()()使()()()()()。しかし私はサーベルトなら完成させられると信じています。」

 

「そ、んな…俺は…」

 

「つまりサーベルト、この奥義は私が理論立てて、貴方が完成させる言わば二人の合体技です。どうですか?」

 

「俺とドリィ、二人の…技…!」

 

「…」

 

「ドリィ…俺は、やる。必ず俺が君の技を完成させてみせる!」

 

よし。サーベルトの目がやる気の炎を取り戻した。こうなったサーベルトはきっともう止まらない。元気を取り戻したサーベルトを見てキラちゃんも胸を撫で下ろした。

 

 

 

「いい返事です!では早速伝授しましょう。その奥義の名は…『天照神楽(ヒノカミカグラ)』」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

あれから一日が経ち、俺は一人で剣士像の洞窟を出た。サーベルトは今は元気に練習がてらダンジョンの魔物たちを蹴散らしていることだろう。俺も一緒に見ていても良かったが、勇者たちがマイエラ修道院を発った以上、俺もパルミドでやることを終わらせておかねばなるまい。すなわち「モンスターバトルロード」である。目立つので格闘場に参加する気はないが、モンスターに詳しいモリーと話し込めば得られることは多いはずだ。キラちゃんはどうするか聞くと、悩んだ末に洞窟に残ることを選んだ。俺もそれが良いと思う。今のサーベルトの近くほど安全なところは無いし、サーベルト自身も心配だ。キラちゃんには俺たちが略奪したありったけのやくそうと何本かのまほうのせいすい、即席で作った携帯念話弐號(フォンⅡ)を渡した。洞窟最深部にいれば石碑を調べていつでも回復できるのだが、まあ念には念を、だ。

 

そういえば俺は物質語とゾンビ語をさわりだけだが習得した。どうやら俺の分身がアスカンタで勉強を頑張っているようで、魂魄が同期している俺本体にも、俺Aが習得した知識や記憶がフィードバックして理解することができた。…なるほど、先生がゾンビ語を教えたがらなかった理由が何となくわかる気がする。こんな音や身振りを生身の人間が出していたら間違いなく深刻な精神疾患を疑われるだろう。

 

そんなことを考えながら、俺はこちらを啄もうとしてきた「キメラ」たちの首根っこをむんずと掴んで頭を地面に埋め、動けないようにすると、羽毛を800本ほど拝借した。キメラは胴体がヘビなので羽毛を狩るには向いていないな。…かといって欲張って一気に羽を毟ると羽が『つばさ』になって、どこへ飛んで行くやらわかったもんじゃない。羽の質自体は悪くないのだが…ああ、柔らかくてもこもこの「わたぼう」みたいな魔物はこの世界にいないのだろうか。一応申し訳ないことをしたという自覚はあるので丸坊主になって寒そうなキメラたちをガマの穂で包んであげた。…どこの日本神話だ。キメラたちは心底迷惑そうにしていた。

 

日が落ちてきたのでこの羽毛で布団を作ろうと思っていたのだが、こんな量では足りない。せいぜい小さめのクッション程度だ。うーん。俺は真っ白キューブの錬金釜を取り出し、キメラの羽毛と布を入れてみた…だが、何も起こらない。やはり錬金釜は決められたレシピ通りに物体を投入した時しか術式が発動しないらしいな。なかなか融通の利かない魔道具だ。

 

仕方ないのでいつものベッドを組み立ててさっさと寝る準備をする。ちょうど最近、考案しつつも仲間たちのいる手前、実行できなかった就寝時の安全確保法があったので試してみる。といっても非常に単純で、『ギガデイン』で地面にバリアを張って『トラマナ』を自分とベッドに唱えて運び、バリアの上で寝るだけだ。これでほとんどの魔物は近づいてこない。空から襲ってくる敵用に「アローインプ」のセキュリティサービスを2体ほど配置しておけばもう無敵だ。ふふん、どうだ。

 

……うーん、素直にせいすいを振りかけた方が楽だな!!!

 

 

寄り道に寄り道を重ねて数日後、ようやく目的地近くまで来た。

 

「…ふう、明日にはバトルロード格闘場に着きそうですねぇ。」

 

今日もここらで休もう…と思った矢先、俺はとんでもないものを見つけてしまった。

 

「!!!」

 

宵闇の中でも分かりやすいあの赤いバンダナ、そして見覚えのある馬車…まさか。まさか!

 

「おーい、誰かそこにいるの?」

 

勇者じゃないか!!!!!

 

なんでここにいるんだよ!マイエラ修道院を出たなら次はアスカンタ王国に行くだろ…!

とにかく、こんなところで見つかるのはマズすぎる!

 

「こ、『妖精の見る夢(コティングリー)』!!!」

 

俺は咄嗟に少年の姿に変身した。蝶々の見る夢(ラグランジュ)とどちらを使うか一瞬迷ったが、誰かしらがここにいることは既にバレているので、どうせなら形を偽ってでも姿を現した方が良いだろう。

 

「お、いたいた。大人の人かと思ってたけど、子どもだったんだね。」

 

「…」

 

俺は黙って勇者エイトの次の言葉を待つ。子どもに変身したのはまずかったか。こんな夜に子供が一人でいたら明らかに怪しい。とにかく警戒されないようにしよう。

 

「こんばんは。僕は旅人のエイトといいます。君の名前は?」

 

「こ、こんばんは。わ、僕の名前は…ディムです。ええと…こう見えても冒険者です。」

 

少年が「私」とか言ったらちょっと不自然だよな。名前は適当だ。どうせその場限りのものだし。勇者エイトは俺が冒険者と自称したことに少し驚いていたようだが、すぐに笑顔になった。

 

「そうなんだ!僕も冒険者で、今はパルミドに向けて旅をしているんだ。」

 

パルミド!?アスカンタじゃなくて…!?じゃあこれから本格的に南下してくるじゃないか。用事が終わったらさっさとみんなの所へ戻ってこの大陸から撤収した方が良いな。

 

「…ねぇ、夜の草原は危ないよ。もしディム君がよければ今晩は僕らと一緒に過ごさない?ちょうど今からキャンプをしようと思ってるんだ。」

 

「え…いいのですか?」

 

どうすべきか…。あんまり一緒にいて何かに感付かれたら嫌だけど、ここで断ればきっと勇者エイトはこちらを心配してどうにかしようとするだろう。それでイレギュラーが発生するくらいならば初めから素直についていった方が身のためかもしれない。ドラクエプレイヤーの一人として、勇者たちと共にキャンプをするなんて夢のイベントだしな。

 

「大丈夫!僕の仲間たちはみんな優しいから、きっとディム君のことも喜んで迎え入れてくれるよ!」

 

勇者エイトの笑顔も眩しい。…なるほど、これはゼシカがサーベルトの姿と彼の姿を重ねるわけだ。似ているのは何も顔立ちだけではない。素直なところ、優しいところ、何かと二人には似通ったところがある。いかにもといった感じの好青年だ。はたしてこの男はトロデーンの姫君とアルバートのお嬢様、どちらを選ぶのだろうか?

 

 

勇者エイトの導きによって俺は勇者パーティーとの邂逅を果たした。あ、ククール。おっすおっす、元気?わー、ゼシカ!久しぶりだねぇ!ヤンガスは初めましてだな。改めまして、トロデ王、ミーティア姫、お久しぶりです。先日はよくも俺を宝物庫に連れて行ってくれやがりましたね。など俺は心の中であいさつを交わしながらこの後どうするか考えていた。全く働かずにただ時間が流れるのを待つというのも性に合わない。

 

「よろしくお願いします。…ああそうだ、せっかく安全な場所を提供していただけるのですから、何か僕にも手伝わせてください!料理とか、得意ですよ!」

 

それを聞いたククールがうまい具合に自分の仕事を押し付けてきた。…ほんとに要領のいい男だよなぁまったく。しかし料理なら俺の独擅場だ。俺はククールから貰った具材に加え、()()()()()も周りの目を盗んで異空間から取り出して使った。見つかれば一気に怪しまれるが、料理に妥協することは俺自身が許さない。

…自前の材料が何かって?さあねぇ。でも美味しくなるのは間違いないよ。

 

「完成です!どうぞ召し上がれ!」

 

「おお…なんと…これは…!」

 

「…ダメ…よだれがでちゃう…!」

 

「旨そうな匂い…これ本当に全部アッシたちで食べていいんでげすか!?」

 

「はいどうぞ!召し上がってください!」

 

「「いただきます!!!」」

 

俺特製の料理を前に我慢の限界だったのか、全員が同時に食器を手に取って食べ始めた。最初はフォークとナイフを器用に操っていたククールも、スプーンで大皿のエビラピラフをモリモリ食べている。ヤンガスは言わずもがなの食欲で料理を次々に平らげ、キラちゃん直伝のクリームシチューを大鍋から直接飲む暴挙に出たので流石にそれは止めた。ゼシカも黙々とサラダとステーキを交互に口に運んでいる。エイトは小食なのかあまり食べずに(人並みには食べているが)ミーティアにサラダを献上している。トロデも王族の気品はどこへやら、ガツガツムシャムシャと()()を頬張っている。

 

「う、うまい…!おぬし、何者じゃ…!?」

 

「いやいや、ただのど、冒険者ですよ。」

 

「(なんか明らかにオレが渡した材料より料理の方が多くないか?…まあなんでもいいか。…しかし、こんなうまい料理は食ったことがないな…。)」

 

ああ、いい食べっぷりだ。これだけで今日ここに来た甲斐があったかもしれない。大勢に料理を振舞って無言で食事に集中してもらっている時が一番料理人冥利に尽きるな。うちのサーベルトも食べっぷりはいいが、一口ごとに感想を述べてくれるし、キラちゃんは未だに一回の食事で一口ずつしか料理を口に運んでくれない。それに比べて彼らはまるでお手本のような食没だ。ほら見なさいキラちゃん!一流冒険者はちゃんと魔物も食べるんだよ!!

 

料理を片付けた後も俺は勇者たちと色々話をした。こちらから話を合わせにいった、という側面もあるがそれでも色んな話ができて面白かった。特に興味深かったのはゼシカとトロデの話だ。ゼシカの魔法理論を聞いて新しいインスピレーションが浮かんできたし、食事をして気が良くなったトロデに無理を言って錬金釜を見せてもらいながら語り合い、何となくだが改善点が見えてきた。帰ったら実に面白い実験ができそうだ。そうして有益な時間を過ごしながら夜は明けた。

 

 

別れ際、みんなから餞別の言葉を頂戴した後、エイトからパーティーに勧誘されたが、俺はもちろん断った。君たち同様、俺にもやらねばならないことがあるのでね。…最終目的は同じだけども。俺は出発する馬車に手を振って、見えなくなるほど遠くなったのを認めると、呪術を解いた。…ああ眠い。精神に由来する霊力を行使する呪術は、眠ってしまうと解けてしまうことがたまにある。故に昨日は一睡もできなかったのだ。後でもう一回ちゃんと寝よう。俺はガンガン痛む頭を『キアリー』で誤魔化しながら森に入った。

 

 

 

 

 

 




道化師の身分をいいことにクサい台詞ばかり吐くドルマゲス概念
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