ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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お久しぶりです。スランプをぶち抜いてなんとか筆を執りました。
これからも読んでくれる方のために気長に書いていこうと思いますので温かい目で見守っていただけると幸いです。








第二十一章 新天地と歓楽街

ハロー、お久しぶりです、海を征く道化師ドルマゲスです。原作ドルマゲスは何故かパルミド西の海岸から海を渡ったそうですが、地理的には東の海岸から渡った方が早くベルガラックには着くんですよね。何故なんでしょうか?…もしかしたら原作ドルマゲスも西の大陸を見に行きたかったのかもしれませんね。まあ、目撃証言によれば彼はずっと海岸線を走っていたらしいですが…

 

 

 

「ハァ…ハァ…つ、着きましたよ…」

 

「お疲れ様!ありがとうドルマゲス!」

 

「お、お疲れさまでした…あ、あの、私、重くなかったですか…?」

 

俺は砂浜に降り立ち、ゆっくりサーベルトとキラちゃんを降ろした。その後、思わずどっとその場にへたり込む。つ、疲れた…!東の大陸から西の大陸というのは生半可な距離ではなかった。ゲーム感覚で行ったのがそもそもの間違いだと改めて思い知らされた感じだ。その上サーベルトとキラちゃん二人の人間を持ち上げて海を渡るのだ。念力で持ち上げているのでいくらか負荷はマシになるが、重いものは重い。こんなことなら素直に定期船を使えば良かったと思いながら最後の数キロを猛スピードで移動し、何とか夜が来る前に海辺の教会に到達することができた。

 

「い、いえ…!全然…!」

 

「きゃっ!ど、ドルマゲス様!」

 

「おい!大丈夫かドリィ?ドリィ!?」

 

そこまで言ったところで俺は意識を手放してしまったらしい。どうやら体力と精神力の限界だったようだ。次に目覚めたのは質素なベッドの上だった。おそらく教会の神父さんが貸し出してくれたのだろう。俺が目を開けると、正に今俺の氷嚢を交換しようとしてくれていたキラちゃんとバッチリ目が合った。

 

「おわっ!」

 

「きゃあっ!わ、わ…」

 

『ガチ恋距離』という言葉はあるが、あまりにも近すぎるとドキッとするより先にビクッとするもんだ。あーびっくりした…おかげですっかり目は覚めたが。

 

「…おはようございます?」

 

「あっ、あの、その、お、おはようございます…!」

 

キラちゃんはえらく焦っている。悪いことをしたとは思っていないが…一応申し訳ありませんでした。でもキラちゃん、なんであんなに近かったの?

 

 

「本当にありがとうございました。」

 

「いいえ。迷える人や困った人を助けるのが私たち教会に与えられた使命ですから。」

 

うーん。神父さんもシスターさんも本当に良い人たちだなぁ。トロデーン西の教会、川沿いの教会、そしてここ、海辺の教会。こういう地方の聖職者たちは本当に美しい心を持っているのに、教会中央はなぜあんなに腐っているのだろうか。ああ神様(暗黒神は除く)、願わくばこの人たちが人間の悪意に曝されませんように。

 

俺は寄付とお礼を兼ねて礼拝堂の会衆席(ベンチ)や寝具などを新調して寄贈した。

 

 

「さあ!次の町へ行こうかドリィ。」

 

「ええ…あれ?…馬車ってこんなのでしたっけ…?」

 

俺が見た馬車はこんなのじゃなかったような…そもそも馬車って『イデア』から取り出してたっけ?

 

「ああ、そのことだが、一昨日ドリィの分身と名乗る男が現れて馬車を取り出してくれてな。さらに設計図も渡してくれたから、俺とキラが時間つぶしと周囲の斥候を兼ねて材料を集め、馬車を改造したんだ。なかなか良いと思わないか?」

 

なるほど。俺の分身が来てくれたのか。どちらかが寝ている間は記憶も同期されないので全く知らなかった。まあもとよりこういった俺本体に何かあった時のためのバックアップ要員でもあるからな…ん?

 

「ドルマゲス様!この馬車、すごいんですよっ!荷台に乗っても御者台に乗っても全然ガタガタしないんです!しかも御者台には背もたれが付いていて!これでおしりが痛くなることもなくなりますよ!」

 

キラちゃんは珍しくはしゃいでいる。わかる。自分で作ったものを誰かに見せる時って確かにワクワクするよね。見ると、馬車の駆動輪部はゴムで覆われており、各接合部にはサスペンションがついている。御者台にはまるでチャイルドシートのような衝撃に強い椅子がくっついていた。なるほど、これはこの時代の馬車にしては革命的な機能の備わっている代物なのだろう。…ところで。

 

「ええ、とても素晴らしいです!二人とも、苦労をおかけしました。……えーと、ところでサーベルト?さっき一昨日と言いました?私は何日眠っていたのですか?」

 

「3日だな」

 

寝すぎだろ!しかもまだ超眠いし…いやまあ確かにここ数日は色々なことがあったが…やはり休憩はこまめにとらないといけないな。

急ぎではない旅とはいえ、あまり長い時間休むと体が鈍ってしまうので良いことは無い。

 

「サーベルト、私はリハビリを兼ねて食料を調達してきます。貴方もどうです?」

 

「ああ、そういうことならば同行しよう。」

 

「キラさんはここで在庫の管理を…」

 

「えと、そちらは既に終わっています」

 

「じゃあ備品の補充…」

 

「終わってます。」

 

「…」

 

「衣服の修繕も鍋のへこみの修理も馬車と教会の掃除も終わらせました。ドルマゲス様がお眠りになっていた期間にサーベルト様が仕留めた魔物はあちらの砂浜で干していますよ。」

 

「…え、偉いですね…!」

 

「そ、そんな…もったいないお言葉です…!」

 

流石は王直属の小間使い、キラ。ニコニコしてはいるが、やはりなんて恐ろしい子…。本当に仕事がないので結局キラちゃんには仮想自律戦闘人形(プロトオートマタ―)達の手入れをしてもらうことにした。

 

 

それから一時間ほど魔物と戦って体のカンも戻ったので、早速昼食にする。ここらではやっぱり「オーク」、次いで「バードファイター」が優秀な食材か。特に豚肉は非常に応用が利く。「オーク」は戦士なので肉が堅い個体もいるが、それなら柔らかくなるまで煮込めばいい。しかし相変わらずキラちゃんは魔物飯には消極的だ。

 

「キラさんも大分魔物の扱いには慣れてきたと思うんですけども、魔物の料理はまだ苦手ですか?」

 

「え…えと、魔物の死体を片付けたりするのは掃除の延長線だと思うとなんとかなるんですけど、いざ食べるとなると…ちょっとまた魔物という実感が戻ってきて…申し訳ありません。せ、せっかく作っていただいているのに…」

 

「ふーん、そういうものなのか。…うん、『ポイズンキラー』も甘辛く煮れば結構いけるな。おかわりはあるか?」

 

「はいはーい。そこの瓶に詰めているので取っていっていいですよー。」

 

「…サーベルト様は凄いですね…。」

 

「ああ!魔物を食べられるようになるのも冒険者の嗜みだからな!」

 

「…あれ、でもサーベルト貴方最初私が『おおさそり』食べるのを見て引いてましたよね?」

 

「えっ、えっ?そうなのですか?」

 

「あー…。あはは、まあ、そうだ。でも少しずつ慣れていったさ。だってドリィの料理は最高だろう?」

 

「それは、もちろんです!!」

 

「だからキラもいつかは食べられるようになるさ。」

 

「上手いことまとめましたねぇ。」

 

…まあその通りだ。別に無理強いをする気はないが、こんなに美味いものを食わず嫌いしながら生きていくのももったいない気がするし。少しずつでも慣れていってもらえると料理を拵えた側としても嬉しい。

 

 

―ベルガラック―

 

カジノの町ベルガラックはたくさんの人々で賑わっていた。町の住民に聞いてみたが特に何かイベントごとがあるというわけではないらしい。この町の特徴と言えば何といってもこの世界一のカジノで、連日金持ちや一獲千金を狙う若者、余生を過ごす老人たちが足を運んでいるようだ。俺も数年前の遊行中に一度訪れたことがあるが、当時から客足は変わってなさそうに見える。いつの時代も人を沸かすのは娯楽なんだなぁ。俺が何の気なしに後ろを振り返ると二人はキラキラ目を輝かせてあたりを見回していた。

 

「ど、ドリィ!看板が光っているぞ!それにすごい!町の中に運河が!」

 

「わっ…あ、あの人、町中であんな破廉恥な格好を…!あっ、あっちにも…!」

 

ふむ。方や貴族とはいえ辺境の村出身の青年、方や田舎で生まれて以来ずっと王室で給仕してきた少女。ベルガラックのような俗っぽい町に来るのは初めてなのかもしれないな。…まったく弛んどる!

 

「二人とも!浮かれすぎですよ!」

 

「あっ…」「ああ…わ、悪い…」

 

「……節度を守って楽しくいこうじゃないですか!それでは今から各自観光の時間とします!!!日が落ちたら宿屋で落ち合いましょう!おこづかいは一人10000ゴールドまでですよ!…はいどうぞ!」

 

「「!!!」」

 

…浮かれていたのは俺もだった。

 

「はい解散!」

 

「「わーい!」」

 

俺たちはウキウキしながらベルガラックを観光しまくった。石造りの街並みを歩いたり、各商店を覗いたり。もちろんカジノにも行った。ここのカジノには景品として「はやぶさの剣」やあの「グリンガムのムチ」が棚に陳列されている。正直喉から手が出るほど欲しいし、呪術を使ってズルしようと思えばすぐにコインは集まるだろうが…。まあそんな方法で手に入れた剣をサーベルトは受け取らないだろう。キラちゃんを前線に出すつもりもないのでムチも無用の長物となりそうだしな。

 

なのであくまで遊びとしてルーレットに興じていたのだが、意外と熱中してしまい夕暮れ時にはまあまあな額のコインが残ってしまった。せっかくなので「スパンコールドレス」と交換しておくことにする。

 

宿屋につくと、まだ日は出ているのにサーベルトはもう到着していた。相変わらずマジメだなぁ。

 

「久しぶりに羽を伸ばすことはできましたか?」

 

「ああ!こんなにぎやかな街に来たのは初めてだ。とても楽しかったし、戦利品もあるぞ!」

 

「戦利品?」

 

俺がそう言うと、サーベルトはニヤリと笑って懐から「はやぶさの剣」を取り出した。いやお前が取るんかい。

 

「おお、それは『はやぶさの剣』ではないですか?すごいですねサーベルト!…しかしサーベルトがカジノに熱中するとはその…少々意外ですね。」

 

サーベルトの人柄的にもアルバート家の家訓的にも、こういう労働を伴わない金稼ぎは厳しく禁止してそうだと思っていたんだが。

 

「母さんならこういうところには絶対に来ないだろうな。でも俺は…昔から本の中だけの存在だった『カジノ』にひそかに憧れていたんだ。屋敷にはそんな(もの)は置いていないから、村に降りていって道具屋のおじさんの家でこっそり読ませてもらってたっけな。」

 

サーベルトは困ったように笑って今しがた沈み切った太陽の残滓を見上げた。…サーベルトもホームシックの時期かな?ここまで来て村に帰すわけにもいかないけども。

 

「あ、でも母さんはマネーゲームは上流階級の人間として知識をつけておきなさいと言っていたな。ならカジノも許されるんじゃないか?もしかしたら母さんも昔はカジノに行っていたのかもな…」

 

「いや…」

 

俺は思わずずっこけかけた。多分マネーゲームってそういう意味じゃないと思う…そもそもこの世界にマネーゲームなんて言葉があったんだな。投資家なども存在するのだろう。

 

微妙な勘違いと共に郷愁に浸るサーベルトを遠い目で見ていると、遅れてキラちゃんが帰ってきた。キラちゃんは頬が紅潮して、少しぐったりしているように見える。人酔いしてしまったのだろうか?

 

「キラさん、大丈夫ですか?」

 

「どるまれすさまぁ~キラは、キラがぁいまかえりましたぁ~」

 

ろれつの回っていないこの感じ…い、嫌な予感……!

 

「さ、サーベルトは先にチェックインを済ませて部屋へ向かっていてください。私はキラさんの介抱をします…」

 

「了解だ!」

 

「どるまれすさま~どうしたんですかぁ~」

 

「ちょ、ちょっとキラさん?はい、まずはお水をどうぞ。そ、それと、今から外の空気を吸いに行きましょうか。」

 

「かしこまり~☆」

 

俺は頭を抱えた。

 

ベルガラックのバーにはパルミドやドニに負けず劣らずの呑兵衛がたくさんいる。しかもこの町のバーの客の厄介なところは金持ちが多いということだ。おそらくキラちゃんは迷い込んだバーで気前のいいおじさんたちによって酒を勧められたのだろう。押しに弱いキラちゃんのことだから勧められるままに飲んでこうなってしまったに違いない。俺はキラちゃんを連れて町の外れまで連れていき、そこで腰を下ろした。夜風の中で冷えた俺の手に収まったキラちゃんの手は温かい。

 

「どるまれすさまはぁ~すごいです!つよいし、おもしろいし、かっこいいしぃ」

 

出来上がりすぎだろ…世界観時代背景とゲーム内描写を鑑みるにキラちゃんくらいの年齢で飲酒をするのも犯罪ではなさそうだが、とはいえ人には向き不向きがある。キラちゃんはお酒が強くないのだろう。俺も酒は得意ではない。

 

「…どるまれすさまはぁ、すきなひととかぁいらっしゃるんですか~?」

 

「ふーむ、好きな人、ですか…」

 

言われて初めて考えてみたが…恋慕する特定個人…いわゆる『好きな人』というものはいない。そもそも女性の知り合いが少ないことが原因なのだが、俺がユリマちゃんやキラちゃんに手を出すのは犯罪臭がするし、ゼシカとは敵対状態だし、ミーティア姫にはチャなんとかが(可哀想だけど)いるし。

教会のシスターさんなど慈悲深過ぎてたまに惚れそうになるが、そもそも彼女らには戒禁的な問題があるだろう。そもそもこんな奇抜で俗な道化師が関わって良い人じゃない。そして他の女性たちとはほとんど関わったことがないのが現状だ。

 

「いや、いませんね。強いて言うなら私は旅芸人。旅が恋人です。」

 

キラちゃんはあまり俺の答えがお気に召さなかったようだ。脚をぱたぱたさせ、両手で俺の腕を掴んで揺すってくる。

 

「ええ~つまんな~い!」

 

「そ、そうですか…?」

 

「キラは~おうさまもおうひさまも、おばあちゃんもおじいちゃんもだいすきで~す!」

 

あ、それアリなのね。じゃあ俺もみんな好き。

 

「でもどるまれすさまもすき!だいすき!」

 

キラちゃんはおもむろに抱き着いてきた。うーん、男女の逢瀬と思われる分には構わないが、少女をかどわかす犯罪者だと思われてこの町から追い出されると賢者ギャリングと話ができない可能性があるなぁ。昔からユリマちゃんにはよく抱き着かれていた(年々締める力が強くなっていて怖かった)ので今更恥ずかしがることなどないが、旅に支障をきたすわけにはいかない。俺が優しくキラちゃんを引きはがすと、今度はしょんぼりしてしまった。

 

「ありがとうございます。嬉しいですよ。」

 

「…どるまげすさまはキラのことぉ…きらいですか…?」

 

「そんなことはないです。出会えてよかったと思ってますし、仲間になってくれて嬉しいですよ。」

 

俺がそう即答すると、キラちゃんはトロンとした笑みを浮かべ、両腕を広げた。え、何それは…

 

「ん!」

 

「えーと?」

 

「きらいじゃないならだきしめてくださ~い」

 

…これ以上はそろそろマズいかも…。酔いは自然に醒ますのが一番いいと思うが、状況が状況なので仕方あるまい。酔いの原因であるアセトアルデヒドは有害物質、つまり『毒』だから…

 

「はやく~ほら!はずかしがらないでいいですよ~」

 

「『キアリー』」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「………」

 

「…じっかに」

 

「?」

 

「…じ、実家に帰らせて…いただきます…!」

 

突然素面に引き戻されたキラちゃんは、それだけ言うとはぐれメタルも驚くようなスピードでどこかに行ってしまった。…こうなるから気が進まなかったんだよなぁ…でもここで追いかけるのも正解じゃない気がする。俺は『イデア』から新作を含むセキュリティサービス達と、完成したばかりの仮想自律戦闘人形三号機「ソルプレッサ」を放ち、遠くから彼女を護衛させることにした。明日にはきっと頭を冷やして帰ってきてくれるだろう。

 

 

 

 

戻ってサーベルトにも事情を説明し、いつキラちゃんが帰ってきてもいいように起きていたのだが、まだ疲れが残っていたのか、俺はいつの間にか眠ってしまった。

 

 

 

 

そして次の日。無事に帰ってきていたキラちゃんと仲直りし、さっそくギャリングのところへ行こうとした矢先、ベッドの枕の下に羊皮紙が置いてあるのに気が付いた。

 

 

その羊皮紙は俺に宛てた手紙だった。

 

 

その内容に目を通した俺は、自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

 

 

「ドリィ?その手紙は…一体どうした!?」

 

 

俺はサーベルトの問いに答えるより早く『イデア』に飛び込み、目的のものを探した。おかしい。確かにこの位置に置いておいたはずなのに…!!!俺は真っ青な顔のまま『イデア』から出てきた。

 

 

「杖が…」

 

 

 

 

 

 

「暗黒神を封じた『神鳥の杖』が無くなりました…」

 

 

 

 

 

 

 

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