ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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ハーメルンのドラクエ二次小説はどうも過疎化している気がします。(今でも大作を綴ってらっしゃる方たちはもちろんいらっしゃいますが)まあそれも仕方ない話で、おそらく原因は「ドラゴンクエストが物語として完成しすぎている」「最新作からかなり時間が経っている」「そもそも人気漫画などと比べると知名度に差がある」などの二次小説として書き起こしづらい特徴がいくつかあるからだと思われます。それでも私はドラゴンクエストというゲームが大好きですし、この小説だって書きたいから書いてるのでいいんですけどね。

…ドラクエ12が出たらドラクエに興味がある人も増えるかな?


UA数150000、総合評価3000ptありがとうございます!この小説を評価してくれる人が一人増える度に、(ああ、この人もドラクエを知っているのかな、好きなのかな。)と少し嬉しい気持ちになります。
お気に入り、ここすき、評価、感想、いつでもお待ちしております!








Chapter12 ベルガラック地方 ②

歓楽街ベルガラックでドルマゲスの手掛かりを探すもどうも決め手に欠けていた一行。そこで目下の目標をゲルダの船奪還に置き、街を出発しようとした矢先、町長ギャリングの邸宅が何者かに襲撃される。襲撃者は最恐の敵『魔王』であり、さらに彼女がトロデーンの秘宝の杖を持っているところまで一行は目撃し混乱するも、とりあえずは当初の目的である船を探しに行こうというところで合意したのだった。

 

 

 

 

ベルガラック北部。一行はヤンガスが町人から聞いたゲルダの船『うるわしの貴婦人号』があるという場所に向かっていた。

 

「…ねぇ、町長…ギャリングさんだっけ?あの人に話を聞きに行かなくてもいいの?」

 

「うーん、僕もそれを考えてたんだけど…ククール?」

 

ククールはいつもより少し足早で、エイトもゼシカもミーティアも意識して歩いていないと置いていかれそうになる。ヤンガスと道を確認していたククールだが、エイトとゼシカから質問されると振り返って答えた。

 

「まあ、それでもいい。…でも、オレが思うにギャリング町長もきっと今回の襲撃については何も分かっていないんじゃないか。そんな気がするぜ。」

 

「…と言うと?」

 

「さあな?これといった証拠もない。勝負師の勘ってやつさ。」「イカサマばかりのクサレ僧侶がよく言うでがすよ。」

 

ヤンガスのボヤキに聞こえないふりをしてククールは続ける。

 

「マスター・ライラスって奴のことはよく知らねえが、オディロ院長とギャリングに接点はない。住んでいる国も違うしな。マイエラ修道院は地方の大型宗教施設であると共に神の剣―─周辺警護が教会本部から与えられた使命だ。だから修道院の聖職者たちがマイエラから移動することはあまりない。伝道師たちはほとんど『聖地ゴルド』に常駐しているからな。そしてあんたらもドニで見た通り、教会の賭け事に対する印象は良くない。ベルガラックにも教会はあるがありゃ形式上建てざるをえなかっただけで、教会上層部は賭け事の街ベルガラックのことも蔑視している。ベルガラック側も当然そのことは分かっているはずさ。だからギャリングがわざわざマイエラ修道院まで来ることも無いだろうよ。」

 

「接点がないとなぜ襲撃を知らないことになるのじゃ?」

 

「…今まで俺は、大きな力を得たドルマゲスが自身の気に食わない奴らを襲撃していたのかと思っていた。ゼシカの兄貴も相当ドルマゲスを警戒していたと聞くぜ。」

 

「…ええ、兄さんはドルマゲスを警戒するあまり、半ば強制的にトロデーン城まで同行することを決めたのよ。」

 

「もしかしたらゼシカの兄貴とドルマゲスは旅の道中にひと悶着あったのかも、オディロ院長もオレが拾われる前にドルマゲスと因縁があったのかも…そう思ってた。だがそこに…」

 

「『魔王』でがすね。」

 

「そうだ。…なあじいさん、一つ聞きたい。トロデーンの『秘宝の杖』はこの世に二本以上存在するか?」

 

「…それは有り得ん。あれはトロデーン王家が先祖代々守ってきた、世界に一つだけの代物じゃ。」

 

「…じゃあ今度はエイト。さっき魔王が持っていたアレは『秘宝の杖』か?」

 

「うん、間違いないよ。僕は時折見張り番として働く中で、本物の『秘宝の杖』も何度か目にしたことがある。アレが放っていた魔力、見た目、大きさ、全て本物だと言い切れる。」

 

「ならば、だ。一連の事件、その首謀者がドルマゲスでなく、『杖』の意思だったとしたら…?」

 

「「!!!」」

 

「ま、突飛も無い憶測だ。魔王がドルマゲスから杖を強奪して好き放題やってるって可能性や、二人が結託してるって線も普通にあり得る。…ただこれはオレの聖職者としての勘だ。これはよく当たるぜ?勝負師の勘と違ってな。」

 

「…」

 

「ところで、なんでギャリングさんに話を聞きに行かないの?」

 

「え?そりゃ襲撃の後いきなり話を聞きに行ってもパニックだろ。落ち着いてから話を聞きに行く方が効率良いなと思っただけさ。」

 

「…」

 

どうやらククールはどさくさに紛れてただ自論を語りたかっただけらしい。しかし彼の論には考えさせられるような妙な説得感もあり、しばらく一行は頭を捻りながら歩いていくのだった。

 

 

「…ま、こんなもんでげす。」

 

「今でも殴りあったらてんで敵わないけど、なんとなくここらへんの魔物の動きは読めるようになってきたわね。」

 

「魔物の性格や動きにそこまで個体差が無いのが幸いだね。」

 

「今まで死ぬほど死んできた甲斐があったな。」

 

「さて、地図によるとここらへんで見たらしいでげすが…」

 

一行は森を抜けて海岸に出た。森の中でのゲリラ戦闘ももう慣れたもので、傷を負いながらも死者は出さずに進むことができるようになっていた。町人の情報によると、ここで煌びやかな船を見たという。森を抜けて広がる青い空と青い海。さあどこだと見渡そうとして、エイトは人影を見つけた。しかも見覚えのあるものだ。

 

「あれ?君は…」

 

「あっ!エイトさん!皆さんも!」

 

最初は相手を窺っていた他のメンバ―も、その声を聞いて相手が誰か思い出したようだ。

 

「久しぶりでがすねえ!」

「あっ!ねえ!!」

「ああ、この前の。」

「ん?おお、お主は」

 

「「「ディム!」」」

 

「はい、みなさんお久しぶりです!」

 

ディム。彼は一行がパルミド地方で出会ったフリーの冒険者で、かつて一夜を共に語り明かした友人である。以前パーティに誘った際、やらなければならないことがあるという理由で丁重にお断りされてしまったのは記憶にも新しい。

 

「息災か?ディムよ。」

 

「はい、トロデさん、ありがとうございます。この通り元気です!」

 

ディムは得意げにポーズ(ダブルバイセプス)を決めてみせる。その仕草は少年のそれそのもので、ゼシカはポルクとマルク、エイトは数年前の生誕祭の時のミーティア、ヤンガスは昔の自分と重ね合わせ思わず微笑んでしまった。

 

「(でもコイツ、ここにいるってことはこう見えてベルガラック地方の魔物たち相手に一人で立ち回れるってことだよな。一体どんな戦い方してんだ?)」

 

ククールのみ彼に訝し気な視線を送るが、別に彼もディムのことが嫌いなわけではない。ディムがパーティに加わりたいと一言いえばすぐに歓迎するだろう。

 

「ところで、君は何でこんなところにいるの?」

 

「え?…」

 

「?どうかした?」

 

「いえ、実はですね…」

 

「───。」

 

一行は驚いた。ディムも『闇の遺跡』を目指していたということ、しかし『闇の遺跡』には暗闇の結界が張ってあり中には入れず、ここまで戻ってきたということ。結界を打ち破るにはサザンビークの『秘宝の鏡』こと『太陽のカガミ』が必要であること。ディムの話した内容はどれも一行の知らないことばかりだったからだ。

 

「ど、どうしてまた、『闇の遺跡』に…」

 

「僕の『目的』のためです…詳しくは言えません、ごめんなさい。」

 

「…これ、重要なことじゃぞ。お前さんのような子供がおいそれと近づいていいような場所ではないはずじゃ。」

 

「…」

 

「ま、人間誰しも聞かれたくないことの一つや二つあるでがすよ。それにおっさん、よく考えるでがす。ディムはこの地方でも一人で元気にやってる、つまりアッシらより強いか、野生で生きていく術を持ってるってことでげす。」

 

「むぅ…ヤンガスのくせにまともなことを言いよるわい。ディムよ、浅慮な質問をして悪かったの。」

 

「いいえいえ、お気になさらず…あっ、そういえば!皆さん、あそこにある船に心当たりはありますか?」

 

「?」

 

ディムが指さした通りに一行が崖下を覗き込むと、一隻の船がある。それは間違いなく奪われた『うるわしの貴婦人号』であった。

 

「「あれは!!」」

 

「え!?皆さんご存じで!?」

 

「ほんとにあった…外観は大きな破壊も無さそうね…よかった…」

 

「あれはアッシの連れの船でしてね。探してたんでげすよ。」

 

「ツレ…そっちかー。」

 

「??そっち?」

 

「いえ…みなさんはアレを自分の船にしているのですか?」

 

「いや、アレは今から持ち主のもとに返しに行くんだよ。オレたちは定期船でこの大陸までやってきたからな。」

 

ククールがそう言うとディムは何故か頭を抱えた。

 

「え、えーとですね。まず、何故かここの海域では海の魔物が狂暴化し始めています。もし船を無傷で返しに行くなら早めに行っておいた方が良いかもしれません。同様の理由で民間船で『闇の遺跡』まで向かうのは危険です。かなり大型で自由な航行ができる自前の船を用意すれば安全かと。」

 

「ほうほう。ちなみにディムはどうやって『闇の遺跡』まで行ったの?」

 

それを聞いてヤンガスたちもディムの方を見つめる。

 

「そうじゃな。わしらの志は同じ、もしお主の船があるなら共に乗せていってもらいたいのじゃが…」

 

急に注目されたディムはしどろもどろな様子だ。

 

「あー、えーと。そう、僕にはイカの下僕がいてですね。それに乗っていったというかなんというか…」

 

「???」

 

一行とディムの間に変な空気が流れる。

 

「あー、悪いディム。オレたちは今の冗談で笑うべきだったか?」

 

「あ、あっはは!ククールさん!わざわざ言わないでくださいよう!」

 

どうやら冗談だったらしい。茶目っ気のある少年だ。

 

「「「(…で、どうやって行ったんだろう)」」」

 

有耶無耶にされてしまったが、結局彼がどうやって海を渡ったのかは謎のままである。

 

「おほん。…兎にも角にも、まずはサザンビークです。僕は一足先にサザンビークへと向かうので、皆さんも船を用意してまたこの大陸に戻ってきてくださいね。」

 

「待って!もう行くの?私、キミともう少し話していたいんだけど…」

 

「アッシもまだ兄ちゃんに、前回語り切れなかった兄貴とアッシの兄弟愛物語を話していないでがすよ。」

 

「すみません、ゼシカさん。ヤンガスさん。今は一刻を争う状況なので…またサザンビークでお会いした時にぜひお話ししましょう?」

 

「ああ、そうなんだ…うん、わかった。またすぐ会いに行くわね。」

 

「次会うまでに新しいエピソードを増やしておくでがす。」

 

では、とディムが手を上げて別れようとした時、エイトが呼び止めた。

 

「そうだ、ディムはここからどうやってサザンビークまで行くの?」

 

「?普通に徒歩で行きますね。」

 

「じゃあこれ、長旅になるだろうからあげるよ。」

 

エイトはディムに袋一杯のチーズを渡した。戦闘には使えないただの食用チーズである。しかし、味の方は間違いなく最高級のものだとあのトロデも太鼓判を押した特製の代物である。

 

「わぁ!ありがとうございます!…えーと何かあるかな…あ、これでいいか。ちょっとお待ちを。」

 

ディムが指を鳴らすと何もないところにテーブルが現れた。そしてカバンからパンを取り出して慣れた手つきで上下に切り分け、どこから取り出したか、よく焼けた謎の合成肉をはさみ、つづいて赤い野菜、緑の野菜、そして先ほど渡されたチーズをスライスしてはさんでテーブルに人数分置いた。あまりの所業と手際の良さに、一行は目を丸くするばかりである。完成した料理を前に、ディムは両手を向けている。

 

「…今は何をしとるんじゃ?」

 

「料理を内側から温めてます。温かい方が美味しいですからね。」

 

「へぇー…」

 

「「「(凄すぎないか??)」」」

 

「はい、できました。ハンバーガーです。」

 

「はんばーがー?」

 

「はい、僕の創作料理『ハンバーガー』です。エイトさんのチーズを見て、今思いつきました。ご賞味あれ。ああ、それとエイトさん」

 

「うん?」

 

ディムはもう一つのハンバーガーをエイトに渡した。こちらには肉ははさまっておらず、しかし野菜は他のものよりも瑞々しく見える。

 

「これはそちらの馬のお嬢さんに渡してあげてくださいね。」

 

「姫に!?ありがとう!」

 

「ではみなさん!またサザンビークで会いましょう!」

 

「達者でな~!」

 

「次はオレがお前に料理を作ってやるから待ってな!」

 

ゼシカ、ヤンガス、エイトはもちろん、ククールもトロデも笑顔で手を振りディムを見送った。ミーティアも嘶いてご満悦である。

 

「…さて、このはんばーがー、温かいうちに食っちまうでげすよ。」

 

ディムが森に入って見えなくなったところで落ち着き、全員がごくりと唾をのんだ。彼を疑っているわけではないが初めて見る料理、しかも何かわからない肉を使っているとなれば少しは緊張する。しかしその肉の香りはいい具合に全員の食欲を刺激して…

 

「あいつの作る料理がマズいわけないさ」

 

意外にも最初にハンバーガーにかぶりついたのはククールだった。それを皮切りに他のメンバーも食べ始め、エイトもミーティアと共にハンバーガーを口に運んだ。

 

「うまい!」

 

「なにこれ、やっぱりおいしすぎ…」

 

「わしが元の姿に戻ったらあやつを宮廷料理人として正式に雇おうかのう…」

 

「おいしいですか?姫。」

 

ミーティアは馬なので心情は図れないが、その表情は喜んでいるように見える。

 

「まったく、何者なんだろうなぁあいつは…」

 

「もぐもぐ、またすぐに会えるわよ。そのためにも早く船を手に入れましょ。もぐもぐ」

 

しっかり食事をとって回復した一行はディムのアドバイス通りに『うるわしの貴婦人号』に乗ってパルミド地方を目指すのだった。




全然話進まなかったな?

原作との相違点

・まだ船を手に入れていない。
今までは定期船が出ていたが、魔王が杖の魔力を抑えずに飛行したため、闇の遺跡周辺の海の魔物が狂暴化しはじめた。よって普通の船では航行できない。しかし勇者たちは自前の船をまだ持っていない。

・ディムに再会した。
今回も短時間ながらふしぎな少年ムーブを見せつけた。もちろん物体生成の魔法や対象を内側から温める魔法など存在しないのだが、魔法学に詳しい人物がその場にいなかったため「すげ~」で済んだ。

・闇の遺跡に行かなかった。
原作では一度闇の遺跡に向かうも結界が張ってあるため入れない、というイベントが発生するが、ディムが全て説明してしまったのでそのイベントも丸々カットされた。なお、古代船やベルガラックの親衛隊が乗ってきた魔道船のような強い作りでない『うるわしの貴婦人号』では海上の戦闘には耐えきれず壊されてしまう可能性がある。



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