ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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今回は短めです。







第二十六章 転生者とメダル王国

ハロー、道化師ドルマゲスです。勇者たちが船を手に入れるまでの時間つぶしとして暗黒神復活阻止のための下準備を整えているわけなんですが、よく考えたらいつ勇者たちが船を手に入れたって分からないですよね。どうしましょう…なんてね。ちゃんとラプソーンを追尾させているものと同じ型の監視機をトロデ王につけてます。ふふん。

 

 

 

 

俺が次に向かったのは『メダル王国』。北の大陸と南の大陸の間に位置する小さな島国だ。かつて俺が『ポルトリンク』からマイエラ地方へ渡る定期船からもその王城は見えた。本来ここに来る予定は無かったのだが、勇者たちがまだ船を持っていないと聞いて、訪れることにした。船がないと来られないこの場所なら鉢合わせる心配も無いからな。本来ならいつも通り変身していればいいのだが、痛いことに俺は初めて訪れた時にこのドルマゲスとしての姿で来訪してしまっているので、変身したままではせっかく集めた「ちいさなメダル」のカウントがリセットされてしまう。しかも四六時中の変身は体に毒だ。『モシャス』ならMPを、『妖精の見る夢(コティングリー)』なら集中力を大きく消費する。その意味でも安全にメダル王国を訪れられるのは今しかなかったわけだ。

 

「ふう、着いた。」

 

ギイィ…

 

俺が扉を開けて中へ入ると、早速メダル王女と大臣が出迎えてくれた。

 

「あら?…まあ!ドルマゲス様じゃないですか?お久しゅうございますわ!」

 

「ええ、ご無沙汰しております。メダル王女。メダル王はご健勝にてお過ごしでしょうか?」

 

「ええ、元気ですわよ。でもまだベッドからは出られなくて…ドルマゲス様の顔を見られないことをさぞ残念がられることでしょう。」

 

「ドルマゲス殿、数年ぶりでございますな。今日もちいさなメダルを持ってきてくださったのでしょうか?」

 

「もちろんです大臣。それと今日は大事なお願いがありまして。」

 

「ほう、お願いですと?」

 

「なんでしょうか?ドルマゲス様の頼みとあらばわたくし、一肌脱いでみせますわ。ドルマゲス様はわたくしが王家の使命を果たした最初のお客様…お客様?お客様は少し違いますわね…」

 

「王女、王女。そういうことは何でもよいのですぞ。」

 

メダル王女は頑張り屋だがまだまだ若い少女だ。加えてこの城が小さな島国なのでどこか世間とズレているところもある。しかし王や大臣も含め悪い人ではない。

 

「それではまずメダルを…」

 

俺が王女と大臣のコントを遮るように囁くと、王女はハッとしたように玉座に座りなおして襟を正し、大臣は元居た場所へ戻る。しかし閑散としてるなぁ。王女も大臣も普段は何してるんだ?

 

「おほん、では改めて…よく来てくださいました。わたくしはメダル王女。世界中に散らばる『ちいさなメダル』を集めております。わたくしのもとへちいさなメダルを持ってきてくだされば様々な褒美と交換いたしましょう。」

 

「王女よ、これが私の集めてきたちいさなメダルです。お納めください。」

 

俺はメダルの入った革袋を王女に献上した。

 

「まあっ、なんと美しい…!えぇとひぃ、ふぅ、みぃ……27枚ですね。それでは前回のものと合わせて82枚です。褒美として『きせきのつるぎ』を差し上げます。」

 

おおっ、きせきのつるぎか。サーベルトにあげようかな?

 

「これが83枚になったら『オリハルコン』を差し上げます。どうかがんばってくださいましね。」

 

…。

 

…は???おいおいおいおいちょっと待ってくれ。

 

「お、王女様。あと一枚であの『オリハルコン』を賜ってくださるのですか?」

 

「ええ。ですからがんばって集めてきてくださいね。」

 

待った。この機を逃すと次はいつここに来られるか分からん。超硬度と魔力を持つ希少な鉱物「オリハルコン」、どうしても欲しい。喉から手が出るほど欲しい。うむむ…

 

「…王女様、失礼を承知で申し上げます。」

 

「なんでしょう?」

 

「き、きせきのつるぎはお返ししますので、それをちいさなメダルの代わりとしていただくことは…か、可能でしょうか…?」

 

「「へ?」」

 

王女と大臣はポカンと口を開けた。何を言っているのか理解できないという顔だ。うん、ですよね。

 

「え…えええっ!?」

 

「な、何をおっしゃいますかドルマゲス殿!そのようなことは認められておりませんぞ!?」

 

「お願いします!!どうしてもオリハルコンが欲しいのですっ!」

 

「えっ、えっ、ええっ!?だっダメですよ!そんなことは!」

 

「お願いします!お願いします!!この通りです!!」

 

俺はトラペッタで師匠に土下座した時よりも深く頭を擦り付けて土下座した。頭を下げて研究ができるなら、こんな頭いくらでも下げてやるさ。てかオリハルコンホントに欲しい。ホントに欲しいオリハルコン。おおオリハルコンよ。しんでしまうとはなさけない!

 

「ええええっ!!どっ!ドルマゲス様!!頭を上げてください!!」

 

「ドルマゲス殿!?そ、そんなことをしてもダメなものはダメなのですぞ!?早く頭を上げてくだされ!」

 

「じゃあ今度いっぱいメダル集めてきますから!なんなら利子も付けます!!」

 

「じゃ、じゃあいいのかしら…?」

 

「おっ、王女!?なりませんぞ!?メダルを受け取って褒美を与えるという儀式を行うことは、メダル王家に代々伝わる使命。王女といえど、個人の裁量でおいそれと捻じ曲げてよいものではないのです!!」

 

「うう…」

 

「だ、ダメでしょうか…?」

 

散々ごねたが、無理を言っているのも分かっている。…王族に対して不敬を働いたことも。国によっては普通に捕まるだろう。仕方ない、またお忍びで来るか…俺は肩を落とした。

 

「お待ちになってくださいましドルマゲス様!だっ大臣!

 

「なんですかな?」

 

「これでもしドルマゲス様のちいさなメダルを集める気が失せてしまいましたらどうしましょう…!」

 

「なっ!?そ、それは…」

 

「今現在メダルを集めてくださっているお方は世界でドルマゲス様のみ…そのドルマゲス様がメダルを集めてくださらなくなると…」

 

「し、使命の遂行不能…王家の断絶…ヒッ…」

 

「大臣、わたくしたちのプライドと王家の存続を天秤にかけてくださいまし!」

 

王女と大臣は何やら小声で相談している。お?この流れは…もしや…?

 

「し、しかし王女…たかが一枚、されど一枚ですぞ…!」

 

「大臣?あなたも初めてドルマゲス様がいらっしゃったとき、嬉しさのあまり『道化の衣装』を無償で譲渡したでしょう?あれも本来は褒美のひとつなのを分かっていまして?」

 

「グッ…それは…その…一時の気の迷い…と言いますか…」

 

「あら?でしたらわたくしが()()()()()()()でメダルを数え間違えたとしましても、文句は言えませんですわよね?」

 

「!…はい…」

 

なにやら話はまとまったようだ。メダル王女はニッコニコでこちらへ歩み寄ってきた。

 

「ドルマゲス様?申し訳ありません、わたくし、メダルの数を数え間違っていたようですわ!」

 

「あ、あはは、王女はおっちょこちょいですなー…」

 

「???と、言いますと?」

 

どういうことだろうか。きせきのつるぎは没収?それとも…!

 

「お恥ずかしい限りですわ…正しくは83枚。…大臣?」

 

「はい、王女様」

 

大臣は一旦奥に戻ると、大きな箱を抱えて戻ってきた。

 

「褒美として『オリハルコン』を差し上げましょう。」

 

「え!?いいのですか!?」

 

「も、もちろんメダルは83枚あるのですから…!ね?大臣!」

 

「そ、そうですとも!!」

 

やったーー!!!!マジで嬉しい。何事も言ってみるもんだな!!ふふふ。

 

「では、ありがたく頂戴します。」

 

俺は王女から下賜された『オリハルコン』の入った箱を受け取った。

 

「ドルマゲス様、く・れ・ぐ・れ・も!今後もメダル集めをがんばってくださいましね!!」

 

「お、おお?もちろんでございます。」

 

俺は王女に手を取られぶんぶんと振り回された。凄い気迫だ…!

でもゴメン、しばらくここに戻るつもりないんだよね。

 

「(ふう…あとで王になんと弁明すればよいものか…)さて、ドルマゲス殿、お願いというのはなんですかな?あまり強引なものは引き受けかねますが。」

 

「ええ、はい。私の願いはただ一つ。この先現れるであろうメダルを集める者には私の素性を明かさないでほしいのです。」

 

「?そんなことでしたら容易いですぞ。…そもそもそんな者が現れる保証もないですし

 

「ありがとうございます。それとこれを。」

 

俺は遠隔通話のできる石板こと携帯念話参號(フォンⅢ)を大臣に手渡した。

 

「これは?」

 

「それは私の作った魔法道具でしてね。それがあれば私といつでも連絡が取れます。何かあればいつでもお申し付けください。」

 

「ほほうそれは珍しい。ではありがたく頂戴しますぞ。」

 

「それでは私はここらでお暇させていただきます。」

 

「またいらしてくださいましね、ドルマゲス様!」

 

「いつでも、お待ちしておりますぞ!」

 

俺は恭しくお辞儀をすると、オリハルコンときせきのつるぎを持ってさっさとその場から去った。

 

 

─隠者の家─

 

「ほう、オリハルコン…間違いなく本物、見るのは久しいな。」

 

「おじいさん、オリハルコンを見るのは初めてではないのですか?」

 

俺は実験の結果報告と、老魔術師に研究についての指南を仰ぐため、再びサザンビーク近くの森に舞い戻った。『ふしぎな泉』に立ち寄ったところホークマンたちは書類をまとめている最中だったので、先に老魔術師の家で待っておくことにしたのだ。俺はオリハルコンを箱から出して老魔術師に見せていた。

 

「ドリィくん、私は世界一の大国サザンビークの宮廷魔導士だったんだ。魔石オリハルコンの研究をしていたことももちろんある。」

 

盲目のはずの老魔術師は目を細めた。それは魔石の放つ水色の輝きによってか、過去を想起したことによるものか。

 

「本当ですか!?とっ、当時の資料など残っていたりは…」

 

「ああ、あるとも。見たいかい?なら持ってこようか…」

 

「おっ、お願いします!」

 

老魔術師が席を立つと、俺は小さくガッツポーズをした。彼とお近づきになっていて本当に良かった。オリハルコンについての資料がもらえるなら性質を調べる手間が省けるし、加工方法なども分かるかもしれない。

 

「はぁ…ドリィ、じいさんの研究から甘い汁を吸おうって魂胆がみえみえっち。」

 

「全く君はあまのじゃくなんですから。素直に『ドリィさんは賢い人だっち』って言えばいいものを。」

 

「さっきのは嘘偽りない本音だっち!!」

 

「(ところでドリィさん、オリハルコンの研究をして、何に使用するおつもりです?)」

 

「(うーん、それはまだこれから考えるのですよ、どろにんぎょう。むしろオリハルコンを何に使うか、それを考えること自体が目的であるとも言えるかもしれませんね。)」

 

俺がスライムの口に手製のカップケーキを突っ込んで機嫌を取っていると、老魔術師が研究室から戻ってきた。

 

「目が見えないと探し物一つにしても一苦労だね。しかし見つけた。これがオリハルコンを研究した時の資料だ。よもや私の研究が再度日の目を浴びようとはな…」

 

「ありがとうございます。早速拝読させて…」

 

「じいさん!コイツ、一回何か読みだすとてこでも動かないっち!さっさとこの家から出て行ってもらうっちよ!」

 

「ほっほっほ、つれないのうスライムよ…しかし私も今から物置を整理しようと思っていたのだ。悪いがドリィ君、少し席を外してもらおうかな。その資料は君にあげるよ。存分に役立ててくれたまえ。」

 

「はーい。」

 

俺は老魔術師に空返事をすると、視線を資料から外さぬまま立ち上がって隠者の家から退出した。退出するまでに1回頭をぶつけ、3回転んだ。

 

 

─ふしぎな泉─

 

「あ、ドルマゲス所長!」

 

「…」

 

「所長?」

 

「…」

 

「わわっ!泉に落ちますよ所長!?所長ー!?」

 

「…わっ!!危なっ!?」

 

もう一歩踏み出せば泉に真逆さまというところで間一髪、ホークマンたちが助けてくれた。あぶねー…。歩きながら資料を読むのはこれからやめておこう。ホークマンたちは書類をまとめ終え、今は二つ目のサイトを建設している途中だったようだ。こちらを心配そうに見ているホークマンの肩越しに骨組みだけのテントが見えた。

 

「あ、ありがとうございます…。助かりました。」

 

「いえ。でもお気をつけて…」

 

「所長、これが研究結果報告書です。」

 

「ありがとう。ではここからは私が研究を続行します。報告書を読んで適宜指示を出しに行くので、それまでは自由にしていてもらって構わないですよ。」

 

「「承知しました。」」

 

俺がそう言うと3匹のホークマンは一礼してどこかへ飛んでいった。U.S.A.に戻ったのかな?俺はそれを見送ると、報告書に目を通した。

 

やはり。俺の目論見通りふしぎな泉の泉水は、ただの水と虹色に輝く解呪物質に分離することができたようだ。分離を成功させた実験はサンプルナンバー05…「ふしぎなきのみ」か。魔力で育つこのきのみなら泉水の魔力を固定化できるのも納得だ。俺が報告書から視線を上げると、テーブルの上には抽出された解呪物質が入っている試験管が数本置いてある。

 

物は試しとばかりに、俺は前まで使用していた椅子…木材に呪いをかけて無理矢理椅子の形に変化させていたものに試験管の内容物を振りかけてみた。すると椅子は、まばゆい光を放ったかと思うと元のバラバラだった木材に戻った。

 

「おおっ…!これは興味深い…」

 

後はこれをこの泉から持ち出しても使えるようにすれば良いのだが…

うーん…とりあえずそれは後で考えよう。俺はまたオリハルコンの資料を読み始めた。

 

 

「ん、もう夜か…」

 

俺がオリハルコンの資料と実物を見比べたり、オリハルコンを使った仮想自律戦闘人形(プロトオートマタ―)や強化セキュリティサービスの構想を練っているうちに、夜は更けてしまっていたらしい。俺は大きく伸びをした。空には大きな月…4日か5日前くらいが満月だったのだろうか?

 

「…?」

 

しかし何か妙だ。この場が謎の魔力に満ちている。「ふしぎな泉」の魔力とは違う、感じ慣れないチカラだ。俺が目を凝らして見ると、ゆっくりと、しかし異常なスピードで影が伸びていくのがわかった。

 

「!…これは…まさか…」

 

骨組みのテントに当たった月光が影を作り、影はもう一つのテントの白幕へと伸びていく。虹色の泉も相まってますます幻想的な雰囲気だ。俺はオリハルコンや資料を『賢人の見る夢(イデア)』に収納し、影の行く末を見守った。

 

ここで来るのか…イシュマウリ…!かつてトロデーンに出発するまでイシュマウリを探し続けた6年間ではなく、今ここに『月影の窓』が現れるのはきっとただの偶然ではないはず。…であればここで入らない選択肢は…ない!

 

俺はテントの幕に出現した影の扉を迷いなく開いて進入した。

 

「…!」

 

 

「!ここが…」

 

「月の世界へようこそ、お客人。」









全然短めになりませんでしたね。反省反省。

てかほんとにメダル王国の国民って普段何して暮らしてるんでしょうね。
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