ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
スギ花粉とかいう生物兵器のせいで執筆に支障が出てました。失礼千万。
荒野の古代船を復活させるべく手掛かりを探す一行は、呪いで荒廃したトロデーン城を探索し、図書室で古代船について記述された本を発見するが、その内容は古代船復活に直結するものではなかった。全員が肩を落としていたところ、図書室に月光と共にふしぎな魔力が満ちて壁に扉が現れ、エイトたちは月の光に導かれるまま扉へ入っていくのだった。
…
「「『未来国家』アスカンタ??」」
「うむ。パルミドやベルガラックで聞いた、アスカンタ王国の別称じゃ。何でも、ここ最近で急激に国力を伸ばしておるらしい。わしらの想像も及ばぬような面妖な道具を大量に生産しておるのだという噂じゃ。」
「未来国家…なかなか大層な名前でがすね。まあアッシは全然興味なんてないでげすが。」
「そんなこと言っちゃって。ヤンガス、歩くスピードが速くなってるわよ?」
「やれやれ、『未来』だなんてくだらないな。…『予定説』。先のことってのは全部神サマがお決めになってることなんだ。オレたち人間には到底どうにかできるようなもんでもない。『未来国家』なんてのはたわごとさ。」
「ククール、ちょっと待って…歩くの速いよ…!」
現在、一行はドニの町までトロデーン城から移動し、そこで準備を整えたのちアスカンタ王国を目指して歩いていた。天気は晴天、気候は温暖、ミーティアもご満悦の旅日和である。マイエラ地方の魔物などはもはや相手にもならないのでエイトたちも気を張らず幾分かリラックスできているようだ。
「しかし、『月の世界』なんてものが実在するとはな…わしの人生、決して短くはないが、まだまだ世には知らないことが多すぎるわい。」
「…ま、修道院も追い出されてみるもんだな。おかげで珍しいものも見れたんだ。」
そう、エイトたちがあの時、影の窓枠から入り込んだ先に広がっていたものは、想像だにしなかった場所『月の世界』だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
─半日前 月の世界─
「ここ…えぇ?だってさっきまで私たち、トロデーン城に…あれ?」
「(瞬間移動した!?いや、そんな感覚は無かった…!)」
「ここがあの世ってやつですかい?もしもそうならかなり退屈そうな場所でがすね。」
「見ろ、向こうに小さな館がある。道はそこに続く一本しか延びてないし…行ってみようぜ。」
トロデーンから月影の窓を開いたエイトたちは眩い光に包まれたかと思うと、全く見たこともない静かで幻想的な空間に立っていた。地面にあたるであろう浮遊する半球は見慣れない装飾が施されており、煌めきで囲われた見えない道は、ククールの言う通りふしぎな造形の建造物へと続いていた。
「まっ!とにかくせっかくヘンテコな世界にやって来たんですし、ククールの言う通りあの館に行ってみましょうぜ!」
「うん。そうだね。…トラペッタの占い師が示していたのは図書館じゃなくてこのことだったのかもしれない。」
しかしそうは言っても人間、未知なるものを恐れる生き物である。エイトたちは一歩一歩を緊張しながら踏み出しつつ小さな館へと進んでいった。
…
館の内部は更にふしぎなオブジェで溢れていた。一定のリズムで上下に動く光の玉、たくさんの楽器のようなもの、回転し続ける大きな青い球体…。しかしそれらに見惚れるより早く、エイトは部屋中央のせりあがった柱の上で佇む青髪の人物を発見した。
「(誰だ…?)」
「…ここに人間が来るのは随分久しぶりだ。月の世界へようこそ、お客人。」
「!?」
様子を窺っていた矢先、青髪の人物はこちらに背を向けたまま口を開き、そのまま振り返った。
「か、勝手に入ってきてしまって失礼しました。私たちは迷い込んでここに来た旅人です。…ここは月の世界という場所なのですか?」
「そうとも。ここは月の世界で、私の名前はイシュマウリ。月の光の下に生きる者。…ふふ、迷い込んだ…か。君たちは迷い込んだのではなく、『窓』に導かれたのだよ。」
「え…。」
イシュマウリと名乗る男性は、この不思議空間の例に漏れず神秘的な雰囲気を湛える人物だった。しかし悪人や魔物のような邪気は感じない。エイトが振り返ると、仲間たちも頷きを返した。とりあえず話を聞く価値はありそうだ。
「さて、いかなる願いが『月影の窓』を開いたのか?君たちの靴に聞いてみよう…」
イシュマウリは携えていた竪琴を弾き鳴らした。空気の振動は「音」となって実体化し、エイトたちの靴に吸収されていく。
「靴?ちょっと
「…ふむ。荒野に忘れられたあの船を再び海の腕に抱かせたいと言うのだね。それなら容易いことだ。」
「「!?」」
まるで
「おや、驚いた顔をしている。…ああ、説明をしていなかったね。」
「…」
「…昼の光の下生きる子よ。記憶は人の子だけのものとお思いか? その服も、家々も、家具も、この空も大地も、皆過ぎていく日々を覚えている。物言わぬ彼らは、じっと抱えた思い出を夢見ながらまどろんでいるのだ。月の光はその夢…記憶を形にすることができる。」
「…夢…記憶?」
「少し疑わしいかな?であればもう少しやってみせよう。」
イシュマウリはさらに竪琴の弦をその長く美しい指で弾いた。心地良い音色がエイトたち…正しくはエイトたちと彼らの服に吸い込まれていく。
「…ふむ、君の名前はヤンガス、山賊だったが今は足を洗っているんだね。良いことだ。昼の世界の人の子は天道と仲睦まじくあらねばならない。そちらのお嬢さんはゼシカ・アルバート、リーザスという村の貴族なのだね。そこの青年はククール。ククール…いや、やめておこう。君も貴族だったようだが、君の服はかつて貴族だった過去をあまり思い出したくないらしい。最後に君は…。」
「?」
「おや、これは…。ふふ、なんとも数奇な血筋…これも星の筋書きか…エイト。トロデーンという王国で兵士をやっていたようだね。」
「…!!」
エイトたちは驚きで開いた口がふさがらなかった。
「ご所望なら君たちの服や靴にもう少し深い記憶を教えてもらうが…」
「い、いえ結構よ。ありがとう、あなたの言っていることが嘘やデタラメではないことはわかったわ。」
エイトは半歩下がって小声でククールに囁いた。
「ククール…どう思う?この人…」
「見た目は普通だが…本当に物から記憶を見ているとしたら、どう考えても人間のなせる技じゃないな。…まあいいんじゃないか?あの手の顔は敵じゃない。本当にタチの悪い奴ってのはドルマゲスおじさんやマルチェロくんみたいにユニークな顔立ちになるからな。」
「理解を得られてよかった。…さて、本題に戻ろうか。打ち棄てられた船を再び大海原へと還してやりたいのだったね。」
「へ…ヘチマウリの兄ちゃん!そんなことができるんですかい?」
「イシュマウリ、だよヤンガス。…君たちも知っての通り、あの地はかつては海だった。その太古の記憶を呼び覚ませばいい。大地に眠る海の記憶を形にするのだ。ほら、このように…。」
そう言うと、イシュマウリは再び竪琴を弾いて音楽を奏でた。美しい音色に、思わずエイトたちも聞き入ってしまっていたのだが…
ブチンッ
「あ…弦が…!」
「ふむ……。やはりこの竪琴では無理だったか。これほど大きな仕事にはそれにふさわしい大いなる楽器が必要なようだ。さて、どうしたものか…。」
「…」
この部屋には竪琴がいくつも置いてあるが、やはり特別な竪琴でないと物の記憶は読めないのだろうか。イシュマウリは少し考えこんだあと、何かを思いついたように手を打った。
「そうだ!『月影のハープ』は確かまだ昼の世界に残っていたはず…。あれならばきっと此度の大役も立派に務めてくれるだろう。」
「月影のハープ?」
「よく聞くがいい。大いなる楽器は地上のいずこかにある。君たちからその気配を感じない…ということは君たちがまだ訪れたことのない場所…しかしそう遠くない場所でそれは役目を果たす
「月影のハープ…聞いたことある?」
「…いや、知らないでげすね。申し訳ない…。あ、でもゲルダの奴は竪琴なんてものは持っていなかったはずでがすよ。」
「細かい話はあとにしましょ。ねぇイシュマウリさん、私たちが『月影の窓』を出ちゃうと、また次の満月を待たなくちゃいけないの?」
「そんなことはない。今回『窓』は君たちを選んだ。君たちが願いを叶えるまで、月の光はいつでも君たちに夢を見せるはずだよ。」
「…エイト、それならいったん外に出て歩きながら考えましょ?トロデ王なら何か知ってるかもしれないし。」
「なるほど。そうしたほうが良さそうだね。ではイシュマウリさん、僕らは『月影のハープ』を探しに行ってきます。そして見事、ハープを持ってきたあかつきには…」
「ああ、必ずや船に海原の夢をみせてあげよう。」
イシュマウリはにっこりと微笑んだ。エイトたちは手を上げてそれを見届けると、『月影の窓』をくぐりぬけて元の世界へと戻ったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
─これが半日前の話。エイトたちは事のいきさつをトロデに話し、その後冒頭に戻る。
「そのイシュマウリとやらが言うにはワシらが訪れたことのない、しかしそう遠くない場所に目当ての竪琴はあるんじゃろう?それならアスカンタ王国しかあるまいて。」
「確かに。それなら占い師が言っていた『カギ』がトロデーンとアスカンタにある、ってのも筋が通っていることになるな。」
「そのとおりじゃ。」
一行は野を越え山を越え川を越えて教会まで辿り着いた。魔物との戦闘が楽だと移動もスムーズなものだ。
「おお、ここは見晴らしが良いの。遠目にアスカンタ王国も見えるわい。そこの教会で少し休んでから出発することにしようぞ。」
「兄貴…ドニで準備した後すぐこの教会まで飛んでくれば良かったんじゃないでがすかね…?」
ヤンガスが訝し気な視線をエイトに送るとエイトは少しばつの悪そうな顔をした。どうやら川沿いの教会に『ルーラ』で移動した方が早いことに気が付いていなかったようだ。その恥ずかしさを誤魔化すかのようにエイトは以前から気になっていたことをトロデに尋ねてみる。
「そういえば王様、アスカンタ王国のパヴァン王は確か姫の生誕祭に際して、余興に出演する旅芸人として
「「!?」」
「はぁ!?え、ちょ、ちょっとなんでそんな大事な情報黙ってたの!?」
「おい、おっさん!これはどういう了見でげすか??」
「エイトもエイトだろ。最初にアスカンタ城の前を通過した時に教えてくれれば良かったじゃないか。」
あ、マズいこと言っちゃったな、と口を押さえるエイトだったがもう遅く、エイトとトロデはゼシカたちにじりじりと距離を詰められ始めた。トロデはため息を吐くと、悩み顔で眉間に手を当てた。
「…だからこそ、あの場でお前たちには言わんかったのじゃ!アスカンタ王パヴァン、彼は聡明で民想いの心優しい王だが、意志が弱く優柔不断なきらいがある。故に分からん。あの王が妻に関すること以外であそこまで真っ直ぐに、熱烈にドルマゲスを薦めてくる理由がわしにはどうしても分からなかったわけじゃな。つまり…」
「「つまり?」」
「アスカンタもドルマゲスの野郎に洗脳されている可能性がある、ってことでがすね、おっさん?」
「「!!」」
「…思い描ける最悪のシナリオだった場合の話じゃ。自治都市であるトラペッタとは違い、王国であるアスカンタ、しかもその中枢たる王が洗脳されていた場合、わしらが王国に安易に侵入すると思わぬ目に遭う危険性があると判断した。あの時はオディロ院長からドルマゲスは南東に向かったとの言伝を貰っていたから、大人しくそれに従っていたに過ぎん。実際ドルマゲスはあの時アスカンタにはいなかったようじゃしな。」
「じゃあ今になってアスカンタ行きに文句の一つも出さずに承諾したのは…」
「いずれは行かねばならぬ場所。来るべき時が来たと感じたからじゃな。それに今のお前たちはベルガラックの魔物の圧倒的な暴力にも耐え忍び得る強大な力を有しておる。もし兵士に囲まれたとしても、そう簡単には後れは取らんじゃろ。」
「まあ、確かに嫌と言うほど死んで戦闘力は上がった実感はあるな。体力や魔力もそうだが、なにより踏んだ戦闘の場数は一般人のそれと桁違いだって自覚はあるぜ。」
「なるほど…よし、ならまずはそこの教会でしっかり英気を養って、辺りを警戒しながらアスカンタ城に乗り込もうってことですね!」
「ああ、それなんじゃが…」
「?」
「よく考えれば、ワシはずっと馬車に乗っておるから大して疲れてないわい。このままアスカンタまで行くとしようぞ。」
「「!?」」
先程までの聡明さはどこへやら、急にいつもの調子に戻ったトロデにエイトたちは盛大にずっこけた。
「おっさん!おっさんと違って俺たちは今日ず~~っと歩いてんだ!少しくらい休ませろい!」
「じじい…あんたが馬姫様の代わりに馬車を引いてみるか…?」
「なんじゃなんじゃ…相変わらず軟弱なやつらじゃの…ワシが若い頃は朝から晩までバリバリ動いていたもんじゃが…あーあー嘆かわしいわい。」
「エイト~?」
「うん?どうしたのゼシカ?」
「トロデ王、一発殴ってもい~い?♡」「やめたげて」
額に青筋が浮き出たまま拳を振り上げ、ニッコリ微笑むゼシカを窘めている間にヤンガスとククールがトロデとケンカを始め、全てが収まるころには結局全員疲れて教会のベッドにダイブする羽目になったのだった。
本作の勇者一行で一番の苦労人はエイトだろうな~。次いでククールかヤンガス?ミーティアは責任も背負わないけど迷惑もかけないから中立だとして、一番気楽に生きてるのはトロデ…いやゼシカ!?ゼシカなの!?
次回は続きなのでさっさと書きます。
原作との相違点
・イシュマウリと初対面。
アスカンタに立ち寄っていないので月影のハープの気配が感じ取れず、ヒントが出しづらかったが、トロデの判断とトラペッタでの占いが功を奏し無事にアスカンタを目指すことができた。
・『未来国家』アスカンタ
現在、アスカンタ王国は『ある組織』と密接に提携しているため技術革新が凄まじい。
・トロデがパヴァンを疑っている。
トロデは今のエイトたちならアスカンタ王国とも戦えると思っているが、彼は未来国家アスカンタに大量のセキュリティサービスが配備されていることを知らない。
エイト
レベル:24
ヤンガス
レベル:22→23
ゼシカ
レベル:22→23
ククール
レベル:25