ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
はい。続きです。今更な感じが凄い補足ですが
「一行」→エイト、ヤンガス、ゼシカ、ククール、トロデ、ミーティア
「エイトたち」→エイト、ヤンガス、ゼシカ、ククール
のつもりで書いています。今まで分かりにくかったら申し訳ない。
『窓』の導きにより異世界へいざなわれたエイトたちは、そこで月の民イシュマウリに船を動かすために『月影のハープ』という竪琴が必要だと言われる。実際にイシュマウリのふしぎな能力を目の当たりにしたエイトたちは彼ならばと一抹の思いをイシュマウリに託し元世界へと帰還、トロデの判断によって今や『未来国家』と呼ばれる大国アスカンタへ向かうのだった。
…
「ねぇククール、あんたのお兄さんってどんな人なの?」
「ん?ゼシカにその話、したことなんてあったか?」
「この前トロデ王が言ってたわ。」
「(ジジイ…いや、別に言うなとも言ってないしな…まあいいか)…オレの兄貴は『マルチェロ』ってんだ。マイエラ修道院の元聖堂騎士団長で、プライドの高いイヤミな男さ。」
一行は「川沿いの教会」を旅立ち現在は道なりに進んでいる。優しい朝日の気持ちいい、本日も晴天である。アスカンタ城は目と鼻の先だ。
「えぇ…あんたとそっくりじゃない…」
「何か言ったか??」
「いーえなにも?…でもお兄さんのこと、そんなふうに言うのは良くないと思うわ。」
「でもよゼシカ、あの聖堂騎士団を束ねる団長ってんだから…その性格も窺い知れるってもんじゃないでげすか?」
「う…」
ゼシカはマイエラ修道院で聖堂騎士団から受けた仕打ちを思い出して苦い顔をした。確かに、『神の剣』を自称する組織とは思えないほど傲岸不遜で暴力的な男たちをまとめているというのだから、その時点でろくな輩とは思えない。不当な扱いに怒り狂う自分とヤンガスとトロデ王を引っ張って修道院の外まで連れて行き、そこでぶっ倒れたエイトには今でも頭が上がらないのだ。
「でも、ゼシカの言葉も一理あるよククール。僕やヤンガスには兄弟姉妹がいないから…」
「…ああ、ゼシカの兄貴は…そうだったな。」
「…。」
エイトはゼシカを気遣ってククールに耳打ちしたのだが、ククールが普通に返答してしまったのでそれを耳にしたゼシカは俯いた。
「…」
「…私、サーベルト兄さんが好き。一人の人間として尊敬してるし、家族としても愛してる。アルバート家…いえ、リーザス村の誇りだった。」
「…ん」
ゼシカは顔を上げ立ち止まる。それを横目で見たトロデも気を利かせて馬車をゆっくりと停めた。
「聞いて。私…兄さんを殺したドルマゲスを許せないの。でも…」
「…心のどこかで彼を信じちゃってるの。本当はドルマゲスは兄さんを殺してなくて、いつか兄さんはひょっこり現れるんじゃないかって…」
「…ドルマゲスはゼシカが小さいころから時々リーザスの村に現れてたんだよね。」
「そこで情が移っていたのかもしれないでげす。」
「…」
ドルマゲスの狙いはそれ─今のゼシカのように自分を疑えなくさせるのが目的で村に訪れていたのではないか…?とエイトたちはは考えたが、誰も口に出して言うことはしなかった。そう言うことは容易いが、そうすればきっとゼシカの精神はさらに不安定になってしまうだろう。
「それでゼシカは旅をしてるんだよな?」
「…そうよ。だからこそ私はこの旅でドルマゲスの正体と真実を暴くの。それが兄さんへの弔いにもなると思うから…。これが私の悲願で、母さんとの約束でもあるの。」
「うん、そうだね。ドルマゲスの正体を暴くのは僕たちの目的でもある。一緒に頑張ろう!」
「アッシは初めは兄貴の行く所ならどこへでも…って思ってたでげすが、ゲルダの奴を酷い目に遭わせた『物乞い通りの魔王』を一発ぶん殴ってやるって目的ができたでがす。」
「ああ、『魔王』を追うことはおそらくドルマゲスを追うことにも通じるだろうからな。…オレはオディロ院長に命じられたからここにいるだけだが、せっかく乗り掛かった舟だ。最後まで付き合うぜ。」
「うむ。おぬしら気合は十分じゃな。ワシも早く憎きドルマゲスを捕え、姫とワシ、そしてトロデーンにかけた呪いを解かせなければならん。ここに全員の利害は一致しておるわけじゃ。改めてこれからもよろしく頼む。」
トロデの言葉にエイトたちは力強く頷いた。ひょんなことから始まった会話だが、最終的には仲間たちの結束を強める言葉でまとめたトロデは、やはり人の上に立つ者の器だなとエイトは心の中で思った。
「して、おっさん。アスカンタ城はいつ着くんでげすか?」
「アホウ、目の前を見てみよ。…ここがアスカンタ城じゃ。」
ヤンガスが言われるがまま空を仰ぐと大きな城が崖に隠れるようにそびえたっていた。
「お、おお…こいつが…こりゃでけぇ!敷地こそトロデーンよりは狭いでげすが、あの中心の塔の高さはトロデーンのそれじゃあ到底敵わないでがすね。」
「ヤンガス!おぬしワシの城を侮辱するのか!」
「ちょ、ちょっとおっさん!感想を述べただけでげすよ!!」
「はぁ…お前らはすぐにそうやって諍う。もうちょい慎ましく生きてみたらどうなんだ?」
「はいはい王様行きますよ!城内に入ったら気をつけろって言ったのは王様なんですからね!」
「う…ううむ、悪いな。よし行くぞエイトよ!」
その言葉に続いて、一行は高く広い階段を上ってアスカンタ城に入城した。
「ま、待って待って!」
「ん、どうかしたゼシカ?」
ゼシカは眉間に指を当てながらトロデに質問した。
「あーっと、トロデ王?今回は城に入っても大丈夫なのかしら?ほら、ベルガラックの時は…」
あ…!とエイトは口を押さえた。トロデはベルガラックでは魔物だからという理由で不当に町を追い出された。今回も場合によっては追い出される可能性があるのだ。しかしトロデはそんなことは承知の上とばかりに首を横に振った。
「心配はもっともじゃ。…しかしワシはこの国の王パヴァンの言葉をこの耳でしかと聞かねばならない。誰に言われたわけでもない、ただワシがそうするべきだと思っただけじゃ。…おぬしらに迷惑をかけるつもりはない。城内に入ってミーティアを安全な所に隠したら、ワシは荷台から出て周りから見えぬよう袋に忍び込んでヤンガスに背負ってもらう算段じゃ。」
「へ、へぇ。そうなのね。じゃあいい…のかな?」
「それアッシに迷惑かかってないでげすかね…」
「なあエイト、このじいさんって昔からこう…アクティブなのか?」
「まあ、ね。」
謎の意気込みを見せるトロデを連れ、今度こそ一行はアスカンタに入城した。
…
─アスカンタ城─
城内はかなり…いや途轍もなく『変わって』いた。しかしこれを異常とは言えまい。アスカンタの国民にとってはこれが新しい日常なのだから。
「…!」
一行の誰しも言葉が出なかった。それもそのはず、城内はまるで別世界だった。魔物は闊歩し、しかし住民はそれに怯えるような所作は見せず、なんなら「デンデン竜」や「スライムベス」、「ドラキーマ」などに餌のようなものをやっている初老の男性の姿も目に映る。…しかしここまでならばトラペッタの町でも見られた光景だ。何より目を引いたのはその街並みである。
「あれは…何?」
「鉄の魔物か…?いや違う!中から人が出てきた!乗り物じゃないか!?」
「兄貴!あれを見るでがす!道路が動いてる!」
「見たことのない建造物…どういう構造なんだ…?」
「地面は石ではない何か…黒っぽい物質で完璧に整備されておる。…うむ、質感は硬くて滑らか…こんなものは自然界には存在しとらん、おそらく人工物じゃろうな…。」
目に映る全てが『未知』。慄きながらもエイトが一歩を踏み出したその時、今しがたくぐりぬけたばかりの城門の壁から声がした。聞きなれない…聞いたことのない質の声だ。
『ガガ…ようこそいらっしゃいました旅の方。こちらはアスカンタ治安維持局外務課、ただいまから皆様には国民安全保護のための入国審査を受けていただきます。…ご心配なく、「スキャン」を受けていただくのみ、十数秒で終了いたします…。そのまま楽な姿勢でお待ちください…。ガガガ…』
「おいっ!何者だ!姿を現せ!」
ヤンガスが壁に向かって凄むも、壁には小さな穴がいくつか空いているのみで人の気配はない。
「…オレたち、どこからか監視されてるみたいだな。」
「でもどこから…?高台の方からここは死角になっていて見えないわよね?」
一方で、エイトは「スキャン」という言葉になんとなく嫌な気配を感じていた。言葉の意味は全く分からないが、声の主は「国民安全保護」という言葉を使った。そして近くに衛兵らしき人間はいない。つまり「スキャン」という言葉の意味が『遠隔から入国者が危険因子か否かを判断する何らかの
「王様、こちらへ!」
「うおっ!?」
一か八か、エイトはトロデを抱きかかえ自分のコートで覆い、服の中にトロデを隠す形で来るであろう「スキャン」を待った。
『…「スキャン」終了…。!?しょ、少々お待ちください…ガガ…』
再び壁から声がするも、やはりそこに声の主はいない。
「何者なんでがすかね…?この声は」
「もしかしてその石壁の中に人がいるんじゃ?」
「…そもそも入国審査ったって門以外に何も内と外を隔てるものがないだろ。こんなの審査なんて言えるのか?ほら、結果なんて待たなくたってこの通り入国…ぶっ!?」
ククールは何もないところで顔を打ち、しりもちをついた。
「「!?」」
「ククール!?大丈夫!?」
「う…何だ…?これ…」
ゼシカが恐る恐る触れると、確かに何もないと思われた空間に硬い感触があった。
「透明の…壁…!」
「窓みたいなもんでげすか?あっしには全く見えないでげすが…」
「う…うむ、窓も、
「なんにせよ痛ぇな…」
『ガガ…お待たせして申し訳ありませんでした。一つ
壁からの声がそう告げたかと思うと、駆動音と共に目の前にあった透明の壁が取り去られた。…正しくは「取り去られたような気がする」である。何せ見えないのだから。エイトは胸を撫で下ろし、トロデを服から出した。
「ぶはーっ!はぁ…はぁ…エイト…おぬしワシを殺す気か!!」
「えー!?いや、そんなつもりは…も、申し訳ありません!」
「全く…ワシを庇ってくれたであろうことには礼を言うが、もう少し手心をじゃな…」
「おっさん!そんなことはどうだっていいでがすよ!それよりほら!目の前には待ちに待った『未来国家』!!くぅ~!楽しみでがす!さあっ!兄貴、行きましょう!」
「ほらエイト!ゼシカ、じいさんに馬姫様も!モタモタしてると置いてくぜ!」
「ヤンガス、やっぱり楽しみにしてたんじゃん…しかもククールまであの調子だし…」
ゼシカは呆れ顔で言うが、ヤンガスとククールはさっさと城内へと飛び出していってしまった。
「はぁ…やれやれ。エイト、私たちも行きましょ?」
「…よし。王様、しばらく荷台から出ないでくださいね。じゃあ姫、行きましょうか。お待たせゼシカ!行こう!あっ!ヤンガス財布忘れてるよー!ククールは逆にゴールド使いすぎないでねー!!」
「…。」
「…うんっ!私ももうちょっとしっかりした方が良いわね!!」
遠くでヤンガスとククールの返事が聞こえる。面倒見のいいエイトはまるでこのパーティのお母さんだ。…エイトが風邪でも引いて寝込もうものならこのパーティの統率がどうなるか…ゼシカは考えるのをやめ、もしそうなっても自分が支えられるようにしよう!とだけ決心するのだった。
…
「『家魔量販店』…?」
「ククール、『家魔』って何か知ってるでげすか?」
「いや、知らないな。面白そうだ、見てみるか?」
飛び出したククールは、とりあえずどこの町でも見る武器屋防具屋道具屋を後回しにして、「家魔量販店USA」なる看板がかけられた店に入ってみた。財布を取りに帰るのを面倒くさがったヤンガスもククールについてきた。ククールの読み通り店内には見たことのない品物がズラリと並んでいる。
「いらっしゃい、おや、見かけない顔だね。旅人さんかい?」
「ああ。ところでばあさん、『家魔』ってなんだ?聞きなれない言葉だが…」
「ああ、『
「ほう?じゃあばあさん、これは何だい?」
「お目が高い。これは『ヒンヤーリ』と言って、食品を冷気によって長時間保存することのできる箱さ。新鮮な食材が新鮮なまま食べられるよ。」
「なんと!そりゃ驚いたでがす!…えーとそんじゃばあさん、こっちの中に樽が入った箱はなんでがすか?」
「これは『グルピカ』。手洗いじゃあ面倒な衣類をこの箱に入れて起動させれば、あとは放っておけば勝手に洗ってくれるのさ。家事の時間短縮にもなるね。」
「そいつはいい。なんせオレたち旅人の服はいつも汚れてて、しかも洗う暇なんてものもないからな。じゃあ端の鈍重そうな黒い箱は?」
「これは最近市場に出回った最新家魔『シロクロ』さね。百聞は一見に如かず。御覧あれ。」
「?」
ククールとヤンガスが『シロクロ』なるものを覗き込むと映像が流れ始めた。内容は二人の女性が料理を披露するだけの番組であったが、そんなことより、ただただ迫りくる『未来』の濁流に翻弄され、思わず二人とも座り込んでしまった。
「…あっはっは!どうだい旅人さん、何もかも信じられないだろう。これが『シロクロ』。今や情報は家にいたって得られるのさ。そしてこれら三つを合わせて『三種の神器』。"ゆーえすえー"で発明されてアスカンタ国民の生活水準を大きく上げた三つの家魔さ。」
「ひえぇ…と、とんでもないでがす…」
「
結局ククールはどうしても気になっていた『グルピカ』だけを購入し、両腕に抱えて馬車まで戻ることにした。
…
一方エイトとゼシカも動く床や鉄の乗り物などに心躍らせながら王城へと向かっていた。
「これっ!エイト!これ動く床!楽でいいわね!」
「うん。そもそも地面が完璧に
「エイト!あれ見てあれ!」
「ん?どれ?」
キャッキャと騒ぐ二人。一方で馬車の荷台に隠れているトロデは不満たらたらだった。
「ワシが覚悟してこうやって馬車に身を隠しておるというのにおぬしらは…!」
「あっ……」
「も、申し訳ありません。少し静かに…」
「ちがーう!!わしにも外の景色を見せるのじゃ!」
「(あ、そっちなのね)」
「しかし王様、やはり今の…そのお姿を町や城の人に見られるのはまずいのでは?」
「少しくらいならいいじゃろう。きっと町の者も体調の悪い人だと見紛うに違いない。」
そう言うとエイトが判断を下す前にトロデは荷台からぴょいと飛び出た。
「ほお~これは確かに圧巻!非常に興味深いわい!どれ、向こうの方はどうなっとるのか…!」
「トロデ王!…もう、仕方ないわね…」
『未来国家』の街並みを見たトロデは本当に楽しそうであり、ゼシカとエイトは少しだけ気を抜いてしまった。
それが間違いだった。
「…」
「ん?」
「…」
「ま、待てワシは…」
ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!
老人に貰った餌を拾い集めて持っていた壺にしまっていた「デンデン竜」の視界に運悪くトロデが入り込んでしまい、デンデン竜はモンスターのものとは思えないほど機械的な鳴き声を上げてトロデを追い始めた。
「何!?今の音!?…って!トロデ王~!?」
「王様!?今向かいます!」
「おおお~!す、すまんかったエイト~!ワシが間違っておった~助けてくれぇ~!!」
慌ててトロデとデンデン竜の間にエイトは立ちはだかり、振り下ろされる拳を受け止めた。
「やっぱり硬い…ッ!そして重いッ!」
常人なら受けただけで吹き飛ばされるであろう重い一撃を、しかしエイトは受け切った。これも経験のなせる"わざ"だ。
「こっちよドラゴン!『メラミ』!」
ゼシカの放った大きな火球がデンデン竜に直撃する、デンデン竜は2mほど吹き飛ぶとギロリとゼシカの方を睨んだ。
「あ、ヤバいかも…?」
しかしデンデン竜はゼシカには目もくれず、再びエイトの後ろのトロデを狙おうとした。
「まずいっ!王様逃げてっ!」
デンデン竜は前足でエイトを押さえつけて動けないようにし、トロデに向かって炎の息を吐き出した。
まずい!エイトは直感で主君の危険を感じ全力で抜け出そうとするも、信じられないパワーで前足は固定されており、動かすことができない。ゼシカも必死に攻撃を続けているが見向きもしない。エイトが己の無力さを嘆き目を閉じた瞬間、ドゴォッという音と共にヤンガスがオノでデンデン竜を殴り飛ばした。
「おっ王様!無事ですか!?」
トロデはククールに抱えられており、炎の息に掠って火傷を負うようなことも無かったようだ。エイトは心から胸を撫で下ろした。
「落ち着けエイト、じいさんなら無事だ。と言ってもちょっとだけ危なかったがな。」
「兄貴!これは一体どういう状況でがすか!?」
「分からない!急にそいつが僕らを襲い始めた!」
「なーるほど。よく分からないでげすがつまりは…」
「ああ、あのカエル野郎をぶっとばしゃいいわけだな!」
「ええと…そう!行くよみんな!」
エイトとククールがはやぶさの如き4つの剣戟を繰り出し、ゼシカが『ヒャダルコ』を唱えた。そして三人がバックステップで飛び退き、戦場に残ったのは氷漬けのデンデン竜とオノを大きく振りかぶったヤンガス。
「まじん斬り」。当たれば会心という大技…しかし今は
「どりゃあっ!!」
『ガァァァ…ガガ…』
大きな破砕音がし、煙が晴れた後には、無残な姿となったデンデン竜の残骸があった。
「ふぃ…」
「…一体何だったんだ…?」
エイトたちはデンデン竜の死体を覗き込み、見えたものに顔を強張らせた。
「これは…!?」
「!コイツ…生身
デンデン竜の残骸には赤青のコードやよく分からない複雑な基盤が肉に交じって見え隠れしている。それはつまるところ…
「まさか…」
「「人造モンスター…!?」」
「おいおい…こんなものが存在してていいのか…?」
一行の背筋に悪寒が走った。ヤンガスとエイトはトラペッタの町を、ゼシカは故郷リーザスの村を思い出した。ということはやはりドルマゲスはこの国に関わっていたのだ。疑念は確信へと変わった。
「…」
ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!
けたたましい音が再び閑静な住宅街に響く。
「!?増援か!?」
見ると、先ほどの鳴き声を聞きつけたのか、「ブチュチュンパ」「サイコロン」「コサックシープ」など何匹もの魔物がこちらに押し寄せてきていた。
「これは…マズいだろ…」
「お…おお…」
「!!王様!もう一度僕の服の中へ!命に代えてもお守りします!」
「すまぬ…!お前たち、必ず生き延びるのじゃぞ!」
迫りくる魔物に対し、ヤンガスとククールが前衛、ゼシカとエイトが後方支援という陣形を取ったが、魔物たちは前衛のヤンガスやククールの攻撃など意に介さず、真っ直ぐにエイトを狙ってきた。
「ヤバい!エイト行った!!」
「兄貴!!!」
「!?(マズい…この数、捌ききれない…!)」
絶望の二文字が頭をよぎった瞬間、高らかな声が響いた。
「『OFF』!!止まってくださーいっ!」
その声に呼応するように魔物たちはいっせいに動きを止め、まるで糸の切れたマリオネットのようにばたり、ばたりと倒れていった。
「…?」
「一体何が…?」
事態を飲み込めない一行の前に、追い打ちをかけるように巨大な影が音もなく舞い降りた。
「!?」
「き、『キラーパンサー』!?…いや違う、それよりずっとデカいし、脚も多いでがす!!」
「何よ…こいつが人造モンスターの親玉ってワケ…?う、受けて立つわ…ッ!」
「王様は絶対に守る…!」
白銀の皮膚に深緑のたてがみ、6本の脚を持った異形の「キラーパンサー」に、今まさに一行が挑まんとした時、「キラーパンサー」の
「おっ!お怪我はないですか!皆様!」
「「??」」
降りてきた人物は金髪の少女、背丈はゼシカより少し低いくらいだろうか?知った顔ではないが、少なくともこちらに対する敵意は感じない。
「…あんたはアッシらの敵でがすか?」
「てっ!敵だなんてとんでもない!私は治安維持局からの通報を受けてセキュリティサービスたちの暴走を止めに来たのです!皆様には本当にご迷惑をおかけして、なんと申し開きをすればよいか…!」
「…じゃあ助かったってことでいいのか?お嬢さん。」
「はい!もう大丈夫です!」
その言葉に一行はようやく脱力した。怪我は一つもなかったが…。頑なにトロデのみを狙う敵とは一度も戦ったことが無かった。非戦闘員だけを狙う魔物との戦いがここまで面倒なものだとは誰も考えもしていなかったのだ。
「…とりあえず、話をどこかで聞かせてもらおうかしら。あなたの名前は?」
「はっ、はい!申し遅れました!私は"U.S.A.ホールディングス"所属、アスカンタ王国専属メンテナーの『キラ』と申します!」
キラと名乗った少女は、心底申し訳なさそうに深々と頭を下げた。
原作との相違点
・アスカンタ城の全て
めちゃくちゃ変わった。町並みなど昔の名残はほとんどない。しかしアスカンタ城の国民は原作でも異様なほどの柔軟性と忠誠心があるため、今回の魔改造も王の判断ならばと特に反対する者はいなかった。反対していた者たちも、実際に生活の質は跳ね上がったため文句を言いづらい雰囲気になっている。なお文化継承として、アスカンタ城の奥部には昔の面影を残す住宅街がある。
・街中でデンデン竜と戦闘
めちゃくちゃ硬くて強かった。その正体はただの魔物ではなく、人造モンスターだった。
・謎の金髪少女と対面
大きなキラーパンサーのような怪物から降りてきたこの少女は一体…?
エイト
レベル:24→26
ヤンガス
レベル:23→25
ゼシカ
レベル:23→25
ククール
レベル:25→27
謎のデンデン竜を倒して大量の経験を得た。
もちろんですがセキュリティサービスの暴走なんてそうそう起こりません。今回はちょっとイレギュラーが紛れ込んでしまっただけで…
えっ!?まだ勇者終わらないの?ドルマゲスくん待ちくたびれちゃうよ…!