ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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公式からの情報量が圧倒的に不足しているイシュマウリさんの設定を勝手に追加しちゃおうの回。



注意!イシュマウリの設定にとんでもない量の改変が入ります!ご了承ください!




ちょっと気取った文が途中で入りますが、面倒になったら斜め読みしてもらっても大丈夫です。








第二十七章 転生者と月の民

ハロー、月の世界に初潜入!の道化師ドルマゲスです。勇者たち…そろそろ船は手に入れられましたかね?いやいや、なんてったって勇者ですから大丈夫でしょう!今はせっかく見つけたこのチャンスに集中します…あ、オリハルコンの新しいアイデアが…いやいや集中!…そうだふしぎな泉のサンプルを…しゅ、集中!!

 

 

 

 

「『月影の窓』…」

 

ふしぎな泉に建設した仮設テントの骨組みから伸びる影は、もう一つのテントの白幕に『月影の窓』を作った。俺が世界を遊行していた6年間、願いの丘で待てどもトロデーン城で暮らせども現れなかった窓が今目の前にある。神秘への入り口を前に、俺は飛び込まずにはいられなかったのだ。

 

「!ここが…」

 

確証が無かったわけではないが、俺は無事に別世界の地面に着地した。ゲームで見たまんまの世界だ。もちろんここ以外の場所も全てゲームで見たままの景色なのだが、なんというか、さらに現実味がないというか…そう、端的な言葉で表すならば『幻想的』。通り一遍の言葉しか扱えない自身の語彙が恨めしいが、それが一番この世界には似合っている。藍より蒼く、浅葱よりも淡い、得も言われぬ色彩で彩られた世界は見ていてため息が出るほど美しかった。

 

「月の世界へようこそ、お客人。」

 

勇者たちはきっと驚いただろう。でも俺は驚かない。ここがどこか、声の主が誰か知ってるもんね。俺は声の導きに従ってイシュマウリの館に足を踏み入れた。

 

 

「…ここに人間が来るのはつい数日ぶりだ。私にとっては数秒前の出来事にすら感じる。」

 

「…初めまして。私は道化師の“ドルマゲス"と申します。以後お見知りおきを。」

 

原作でも最後まで謎の多い人物だったイシュマウリだが、今相対した一瞬で妙な魔力を感じた。これは『偽らない方が良い』。そう直感で判断した俺はドルマゲスと名乗った。

 

「…偽らないか。君ならきっと偽名を使うと思っていたが…」

 

「心外ですね。私と貴方は初対面のはずですが?」

 

「ふむ、それは失礼した。私も名乗るとしようか。私の名前はイシュマウリ。月の光の下に生きる者。()()()()()()()()()()()()()

 

!!!

 

「な…」

 

この男、何を知っている…?俺は危うく張り付けた笑みを崩しそうになった。そして、イシュマウリはそんな俺の隙を見逃さず、少し微笑んだ。

 

「やはりそのようだ。『筋書き』を知っているのは君だったか。ようやく見つけられた。」

 

「…!」

 

口は(わざわい)の元。イシュマウリはまだカマをかけている可能性がある。状況を把握できるまでは俺は口を閉ざすことに決めた。

 

「…おしゃべりは嫌いかな?…だがせっかくの客人だ。今少し私のおしゃべりに付き合ってはくれないか。」

 

「…」

 

イシュマウリはゆっくりと歩みながら話し始めた。依然として表情はにこやかなままであり、敵意は感じない。しかし俺はラプソーン戦以来の最大限の警戒をしていた。

 

「君が何を考えているのか、私には分からない。しかし私は君の服や靴が何を考えているのかは手に取るようにわかる。」

 

「私は君のように未来に何が起こるかは知らない。ただ『星の筋書き』が乱れていることだけしか知らない。」

 

「君は外なる異分子だ。そうだろう?肉体と魂が異なる人の子よ。」

 

「…」

 

イシュマウリはハープを取り出してポロロンと音を奏でた。あれはアスカンタで見た『月影のハープ』か…?よかった、勇者やパヴァンは無事に任務を遂行できたようだ。…と手放しで喜べたならいいのだが。

 

しかし状況は分かった。イシュマウリはまだ俺を『疑っている』段階である。特に目的なく歩き回り、言葉と言葉の間隔も故意に空けている。俺がこの世界の本来の住人ではないことはそれなりの確信を持っているようではあるが、なかなか本題に入る様子が見られない。少し早計な気はするが…、言われっぱなしと言うのも癪だ。

 

俺は気楽に生きていたいのだから。

 

「あえて問おう、昼の光の下生きる子よ。記憶は人の子だけのものとお思いか?」

 

「…いいや違うね。」

 

イシュマウリはようやく言葉を発した俺を見て少しだけ目を見開く。俺は師匠(ライラス)に正されて以来徹底していた「ドルマゲスとしての口調」を外した。

 

「俺の服も、あんたの服も、家々も、家具も、この空も大地も、みんな過ぎていく日々を覚えている。自然とは惑星(ほし)の化身であり、生命の持つ別の姿。風も氷も生きてるし、なんなら『光』や『音』だって生きてる。そんな単純な事実は、しかし今のこの世界ではほとんど忘れ去られている…。どうだ?」

 

「ほう…!」

 

イシュマウリは今度こそ驚きを露わにした。ふふん、一矢報いたり。

 

「…"万物には魂が宿る"。私の述べる事実を妄言と切り捨てず理解を示してくれた人の子も何人かはいた。しかしこれほど深い造詣を持つ者は『旧き世界』にも…」

 

「イシュマウリ、俺はあんたの言う通りこの世界が持つ未来を知っている。でもあんたが何を知っているかは何も知らない。教えてくれ。…ここらではっきりさせておく、俺はあんたの敵じゃない。」

 

俺はイシュマウリの青い瞳をじっと見つめた。イシュマウリもまた俺の目から視線を逸らさない。

 

「…。…私も、君のことをずっと観測していたわけではない。君が王女の生誕祭に呼ばれ、君がそれを拒んだ。その瞬間、星の筋書きが乱れるのを感じ私は転寝(うたたね)から目覚めたのだ。」

 

「星の筋書き…?」

 

「昼の世界、月の世界、闇の世界。全ての世界に属する全ての生命は『運命』の奴隷だ。世界には始まりと終わりがあり、星の描く筋書きに従って進む。世界が終われば、いつかどこかで新しい、しかし全く同じ世界の物語が始まる。」

 

「無論私もその世界に組み込まれた一部分。始まる世界も、終わる世界も認識したことはない、認識できない。……しかし『筋書きは繰り返している』という事実だけはこの世界の奥底…月の記憶が教えてくれるのだ。」

 

「…」

 

「少し、君には難解だったかな。」

 

イシュマウリは歩きながらまた浅く笑った。…ふんだ、ナメてくれちゃって。俺のこの高スペックな脳みそを侮るなよ?…まあ原作ドルマゲスの身体なので借りものの脳なんだけど。

 

「いや、問題ない。この世界の『運命』はあらかじめ定まっていて、物語を辿って終わり、そしてまた別の次元で全く同じ物語が展開されるってことだろ?『星の筋書き』ってのは。」

 

 

 

『運命』とは一種の『機構』である。と俺は考えている。(めい)(神託)を(まわ)すという行為はある意味で機械的、システマチックなものだ。人間が「運命の歯車が動き始めた」と表現するのはきっとこれに由来している。

『機構』の真髄は『回転』である。それは先ほどの歯車の話、それと運命の語源(命を運す)も踏まえるが、回転(ローテーション)なくして成り立つ機構はない。また回転は「推進」の意味も内包する。船のスクリューなどはまさに回転で推進力を得ている良い例だ。もしくはサイコロの様に回転を『運命』に直結させることもできる。

そして同時に『回転』は『永続性』・『輪廻』の象徴である……つまり『運命』は本来繰り返すのが道理なのだ。

 

 

 

「始まり、進み、終わり、廻る…。それが運命ってことじゃないか?さあ、続けてくれ。」

 

「やはり君は…いや、そうだな。続けよう。」

 

少し表情が引き締まったイシュマウリは足を止め、語り始めた。もうさっきまでの冗長な話し方ではない。

 

「君が王女の生誕祭を拒んだ時に星の筋書きが乱れるのを感じ、私は昼の世界の観測を始めた。広い昼の世界から筋書きを乱す異分子を探すのは途方もない時間が必要だった…さながら広大な砂漠で蟻の子の落とし物を探すかの如く―――」

 

まだ割と冗長だった……ま、まあこれも彼の個性なので否定はすまい。彼の言い分を要約すると、

・本来たどるべきストーリーがおかしくなったので、昼の世界の調査を始めた

・数年にわたる捜索の末、俺を含む何人かの怪しい候補者をつきとめた

・俺が月の世界に来たのでハープで調べてみると、案の定身体の内と外から異なる記憶が聞こえたため俺を異分子と確信した

ということらしい。最初からこれくらい短くまとめてくれよ…

 

「…」

 

イシュマウリは一通り話し終わったらしいので質問をぶつけてみる。

 

「…なぜもっと早く俺のところに『窓』をよこさなかったのか?もう少し早いタイミングで来ることもできただろうに。」

 

「『月影の窓』は本来人の子の願いから開かれるもの。こちらから昼の世界に接続することは容易ではないのだ。しかし今回は『場』が良かった。」

 

「…ふしぎな泉か」

 

俺は顎に右手を当てた。これは俺が何かを考える時の癖だ。…泉、湖は古から妖精の住処とされ、神秘的なものであると洋の東西を問わず認識されてきたもの。泉の神秘と月の神秘が上手く迎合したのかもしれないな。

 

「じゃあ、次が本題だ。イシュマウリ、あんたは俺をどうするつもりだ?」

 

「…」

 

イシュマウリは目を閉じ、口をつぐんだ。

 

トントーン、ポロポロロン──。  静かな部屋の中でひとりでに動く楽器たちの優しい音色が響き渡る。

 

「…」

 

「…私は、星の筋書きを乱したくはない。『不変』とは『調和』だ。私はここで微睡(まどろみ)ながらゆるやかに終わっていく世界で揺蕩(たゆた)っていたかった。……運命から外れた未来へ導こうとする君を忌々しく思った私は、君を月の世界に引き込み、干渉できないよう昼の世界から隔離しよう──」

 

「…!」

 

「──そう、思っていた。しかし…」

 

イシュマウリはまた口をつぐんだ。

 

「…」

 

「実際に邂逅して、私は君に興味が湧いた。郷愁──と言うのだろうね。君のその聡明さ、知識、想像力…それら全てがかつての『旧き世界』の私の仲間たちを想起させるのだ。先の大戦が終わり、私の仲間たちと共に()()()()()()()()()()()()()()()いくつもの夜を数えたが…こんなことは初めてだ。…きっとどの『運命』の私もこんな経験をしたことは無いだろう。」

 

「それはつまり…?」

 

 

 

「……私は君の存在を()()する。『異分子』ドルマゲスよ。」

 

イシュマウリは静かに、しかし澄んだ瞳で真っ直ぐにこちらを見つめ、言い放った。無風のはずの月の世界に舞い込んだ一陣の風がイシュマウリのローブを翻す。その雰囲気はまるで…!

 

「あ、あんた、いやあなたは…?」

 

「…ふふ、私はイシュマウリ。ただ月の光の下で生きる者。…外なる人の子ドルマゲスよ。私は君の導く世界の行く末を観測させてもらうことにする。時間を取らせて悪かったね。」

 

「…こちらこそ、あなたに会えて良かった。…観測者の許しも出たことだし、これでようやっと伸び伸び活動できるな!」

 

イシュマウリから感じていたプレッシャーはいつの間にか無くなっていた。すっかり柔和な雰囲気になったイシュマウリがハープを爪弾くと、俺の服が眩く光り輝く。ふむ、この光が『服の記憶』というものだろうか。

 

「…ふむ。なるほど…」

 

「この期に及んで何か文句でも??」

 

「いや…、君を月の世界に隔離しようとしたお詫びがしたくてね。」

 

「お詫び?」

 

月にちなんだ何かをくれるのかな?

 

 

 

 

 

 

「マスター・ライラス、君の師匠──」

 

「──彼の魂はまだ、絶えてはいないよ。」

 

 

 

「…え?」

 

月の風は俺の頬も優しく撫でてくれたような、そんな気がした。

 

 

 

 

 




もちろんイシュマウリの当初の目論見通りドルマゲスを隔離したとしても、ドルマゲスは物語の重要な歯車の一つなので十分星の筋書きは狂います。イシュマウリは世界が何巡もしているということのみを知っていて、これから何が起こるかなどは全く知らないので。





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