ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
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ハロー!旅の目的の一つである『師匠の復活』を無事に遂げられて上機嫌の道化師ドルマゲスです。そして勇者一行も船を手に入れたと!ようし、場は整いましたね。残った所用を済ませたらサザンビーク王国にレッツゴーです!
…
─アスカンタ国領北部 U.S.A.─
コツ、コツと鳴る俺の靴音は魔物たちの喧騒に飲まれすぐに消える。
俺と師匠は秘密基地(と呼ぶにはそろそろ限界があるかも)であるU.S.A.にやってきた。もちろん身体の動かせない師匠のリハビリのためだ。…ここは資産も情報も労働力も全て揃っていて、その代表たる俺の権力を存分に行使すればきっと世界一待遇の良い療養地になる。肝心の治療に関しては、もしかすれば薬草園で有名な雪国『オークニス』に行けば良い薬が見つかるかもしれないが、長い目で見れば十分ここの環境でも完治まで持っていけるはず。
「あっ、ドルマゲス総監督じゃないっすか!お久しぶりっす!何抱えてるんすか?」
「現場監督ですか?お久しぶりですね。…あー、これは私の師匠です。わけあってこうやって運んでいるんですよ。また後でドン・モグーラ"リーダー"を通して全体に通達しますね。」
「…おい、仮にも師匠であるわしを『これ』呼ばわりするんじゃない…」
「ご、ごめんなさい…」
向こうから歩いてきた「いたずらもぐら」に話しかけられた。彼はこのアジトの建設業を取り仕切っている現場監督だ。カラッとした快活な性格で、裏表のない良い魔物である。
長時間死亡した状態のまま凍らせていた影響で身体機能が著しく衰弱している師匠をそのまま運んでしまうと、耐え難い激痛が走るので(師匠ならやせ我慢するだろうが)念力で一番安定した体勢に固定して運んでいる。その様子はさながら等身大パネルを抱えて街を闊歩するヲタク(死語)のようだ。『死後』だけに。あは。
「了解っす!ところで総監督が外出している間の達成報告が27件あるんっすけど…書類取ってきた方が良いすか?」
「え!?う…ちょ、ちょっと今は急いでいるので…!」
相も変わらず仕事が早い。今は情報隠蔽の関係から地下の改造にしか手を入れていないが、地下街が完成して地上に進出するのも時間の問題だな。俺は『
「(くっそー…覚えてろよ俺…!)はぁ…はいはい、達成報告をお願いします。…ああ、すみませんそこのホークマン。ドンモグーラリーダーと研究所のチーフたちを呼んできてください。えぇと営業報告書はどこに提出するように言ってましたっけ…」
俺を睨んでいながらもテキパキと動く分身の俺。ここは彼に任せることにして俺は地下の奥の方へと進む。
…
俺は師匠を抱えて、第一層から四層まである内の最下層、U.S.A.の第四層を歩いていた。このアジトで暮らす魔物は確かに多いが、度重なる掘削工事によって拡大されたアジトの広さはそれを大きく凌駕する。外部からの宿泊施設(未稼働)や大型ショッピングモールがある第一層、従業員たちの寮がある第二層、研究所や工場のある第三層…をさらに降下すると、ただコンクリートで整備されて、何件か仮設住宅の立っているだけの階層に到着する。ここは静かで師匠の療養にはピッタリだ。
もちろん日向ぼっこをしたり散歩をしたりするために、地上に続く直通の『
「…ドルマゲス」
「はい?」
俺が視線を下へと下げると、師匠は何やら難しい顔をしていた。
「ここは…この施設はお前が作ったのか。」
「はい。私が建てたわけじゃないですけどね。」
「そんなことはわかっておるわ。…わしが言いたいのはこの施設建設にいたるまでのあれこれを全てお前が主導したのかということだ。」
「そうですね。工場の製品の原案や研究所の研究テーマはもちろん、労働システムを整備したり、アスカンタ王国から土地の権利書をいただいたり、従業員である魔物を統制しているのは基本的に私です。」
「…」
待ってましたとばかりに俺は自分の功績を列挙したのだが、師匠は何も言わない。…もしかしてあまりお気に召さなかったかな?
「…やるな」
「えっ…」
「わしは…わしではこのようなことは絶対に成し得ない。この何十年、ずっと魔法の研究をしてきたわしは、魔力の塊であるはずの魔物を利用することすら考えもしなかった。しかしおまえは柔軟な発想を忘れず、知識に貪欲で、どこまでも自分の可能性を疑わなかったな。結果、魔物の言語を習得しこんな巨大な施設まで作り上げた。…わしが死んでいる間に大きく"成った"ものだ。」
「!?」
し、師匠に褒められた!?!?師匠の方を向いていた俺は慌てて前を向いた。あの偏屈ジジイの研究バカが誰かを褒めるなんて…!」
「…途中から聞こえておるぞ…!誰が偏屈ジジイだ!!『これ』発言といい、さっきから失礼だぞお前!!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「ふん!……まあお前のようなひよっこに、魔法の才では絶対に負けんがな!」
「…はい!」
そう言うと師匠はそっぽを向いた。首を動かすのも激痛が走るだろうに…。でも、嬉しい。認められるというのはこんなにも気持ちいいのか。サーベルトやキラちゃんは俺が何かするたびに手放しで褒めてくれる。そこに世辞は無くて、目をキラキラ輝かせて称賛してくれる。それはもちろん嬉しいのだ。でも、俺を叱責し、どこまでも自分は上位者だという姿勢を崩さなかった師匠が、改めて俺を認めてくれたのは違う感覚で、嬉しかった。
俺は師匠が向こうを向いているのをいいことにニッコリと微笑んだ。…つもりなのだが、すれ違う魔物たちはみな俺の顔を見てテンションを下げていく。全く失礼なやつら!
…
「──では、基本的に電気治療によって硬直したままの筋肉を少しずつ弛緩させていきます。えーと大体腕が動くまでに必要な時間は3時間、脚が動くまでは10時間、指が動くまでは12時間、内臓機能の完治までは──」
「分かった分かった。詳細は全てそこの紙に書いてるのだろう?腕が動くようになったら手前で勝手に読んでおく。」
俺は仮設住宅の内の一つを借り受けた。そこのベッドに師匠を横たえ、電針を師匠の身体に接続する。
「承知しました。何かあったらそこらで歩いている従業員を呼んでくださいね。ここで作業する従業員は後で全員人語を解する者を割り当てておきますので。私の分身はサザンビークの『太陽のカガミ』によって『闇の遺跡』の封印が解けるまではしばらくアジトに常駐する予定ですから、車いすで地上に出たくなったり、
師匠にジロリと睨まれた。ただのジョークなのに…
「サザンビークへ行くのか?」
「先にベルガラックに立ち寄ってから行きますよ。ラプソーンがあれから動きを見せないので安心してすっかり忘れてしまっていましたが、目的は賢者に話を聞くことですから。」
「そうか。では世界のためにせいぜい励めよ。わしは少し眠る。」
そう言うや否や、師匠は早速寝息をたて始めた。無理もない。肉体はありえないほど疲労しているし、精神はこの数か月の間一度も眠っていないのだから。
俺は師匠に毛布をかけると、アジトを出て『ルーラ』でベルガラックに移動した。
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─ベルガラック─
「うっわー…すごい人ですねぇ…」
ギャリング邸では王城と見紛うほどの数の兵士が番をしていた。おそらく先の襲撃でギャリングは自分が狙われたであろうことを正しく察知したのだろう。原作では腕力自慢で豪気な男であるくらいしか情報は無かったが、なかなかどうして賢明な男じゃないか。…まあいい。さっさとギャリングに会いに行こう。俺には最高の
「もし、ギャリング氏にお会いしたく参ったのですが。」
「なに?うーむ、お前のような興行師の来客は聞いていないぞ。名を何という。」
「ドリィと申します。ベルガラックの町長であるギャリング氏にどうしてもお伝えしたいことがあり参上しました。」
「知らん名だな…用件はここで言え、あとでギャリング様に伝える。」
「…」
それは困る。賢者の話題を一門番に言伝を頼むのは少々センシティブすぎるし…。よし!俺は懐から紙を取り出して門番に見せた。
「こちらをご覧ください。アスカンタ王国の国王直筆の証書です。本当は大っぴらにしてはいけないのですが…私はアスカンタ王室の
「なにっ」
門番は紙をまじまじと見ている。こんなこともあろうかと昔パヴァンにサインをもらっていて正解だったな。もちろんパヴァンやシセルには許可を貰っている。むしろ「僕のサインと判が証書としてドルマゲスの役に立つならば、存分に使ってくれ!」と全面的に協力してくれた。優し過ぎである。
ふっふっふ、三大国の一国であるアスカンタの証書を前にして慄かない人間はいまい。
「むむむ…いよいよ怪しい!貴様!何者だぁっ!」
えええええっ!?
「えっと、だからアスカンタの密命だと…」
「問答無用!!アスカンタの名を騙り、ギャリング様の命を狙う賊めっ!」
「(めちゃくちゃだ…)ん?」
門番はいきなり斬りかかってきた(もちろん刃はしまっているが)。よく見ると相手の兵装は門番というよりも旅人のそれである。もしやギャリングは門番を傭兵で賄っているのか!?
門番が声を荒らげながら暴れるので、他の衛兵たちも何事かとやってきた。もう…面倒だなあ…
「『
「えっ!?アレッ?消えた?」
俺は姿を消して屋敷に潜入した。不法侵入は事後処理がややこしくなるためあまり好ましい手段ではないのだが…門番があそこまで世間知らずな人間ならあそこから巻き返すのは不可能だろう。はーあ…。
…
一度テラスから屋敷に入ってしまえばこっちのものだ。俺は古き良きチート呪文『アバカム』で屋敷内の扉を開けまくってギャリングの私室へと向かい、最後の大扉を勢い良く開いた。…うーん、これじゃ十分賊だな。そういう意味では門番の言い分は正しかったかもしれない。
「ギャリングさん!初めまして!」
「なんだ!?扉がひとりでに…!?」
まあ聞こえないよね。俺は扉を閉め、『
「ぬっ!?なんだ、貴様は!どこから現れやがった!」
「初めまして、ギャリングさん。私はドルマゲスと申します。…単刀直入に申し上げます。本日は先の襲撃についてのお話をしに来ました。」
即座に戦闘態勢を取るギャリング。しかし「先の襲撃」という言葉で彼の眉が少し上がった。
「何?……貴様、あの件の関係者か?…わざわざおれの前に現れるとはいい度胸だ!歯ァ食いしばれよ…!」
「ちょっちょちょ!やめてください!私は犯人じゃないですよ!」
門番と言い家主と言いなんでこんなに喧嘩っ早いのか。…なんかもう嫌になってきたなぁ。
「賢者の末裔」
「!?」
「…」
「貴様、何故それを…」
ギャリングは今にも俺を殴ろうとしていた腕をピタリと止めた。ああよかった。一か八かの賭けだったが…ギャリングは自分が賢者の末裔であることを自覚していたようだ。
「話を、聞いていただけますか?」
「…」
「…」
ギャリングはしばらくこちらの目をじっと睨みつけていたが、俺が全く退かないであろうことを悟ると諦めたように目を逸らした。
「ちっ、話したいなら話せ。…ほら、そこに座んな。」
ギャリングはどかっと部屋の中央にあるソファに座り込み、俺を向かい側に座るよう促した。ギャリングは脳みそまで筋肉で出来ていそうな豪傑だが、考えなしではなさそうだ。早速俺はお言葉に甘えてソファの端に腰かけ、暗黒神の話をし始めた。
…
「ほう…トロデーン王国の崩壊、マユツバものの話だと思っていたのが真実で、しかも犯人はお前だとな。しかも暗黒神はお前からお前の女に乗り移って、それがおれの屋敷を襲ってきたとは……ウーム、どうも信じがたい。」
「信用を得られないことは覚悟しております、しかし──」
「だが、
「はい。」
ギャリングは俺が手渡した
ところで『私兵団』…?ああ、原作でギャリングの敵討ちのため闇の遺跡に来たはいいものの、『太陽のカガミ』が無くてうろうろしていた人たちのことか。
「信じていただきありがとうございます。」
「いいってことよ。……で?それだけか?お前の用件は。」
「本題はさっきの話ですが、持ってきた話はそれだけではありません。ここだけの話、実は私『組織』を持っていまして、現在アスカンタ王国とは取引しているのですが、
そう言った瞬間、ギャリングはニッと笑った。俺も大概だが、この人の笑顔もなんか怖い。アウトローな雰囲気が全面に出てるんだよな。
「つまり、商談だな?…面白い!おい、フォーグ!!ユッケ!!いるんだろ?そんなとこで盗み聞きしてねぇで入ってこい!」
「えっ?」
ギャリングがドアに向かって声をかけると、ギイィ…という重厚なドアの音と共に俺が入ってきた方とは逆の扉が開き、少し気まずそうに少年と少女が入ってきた。周囲の気配には注意していたつもりだったが、全然気が付かなかった…
「えへへ、バレちゃってた…?」
「ユッケ!妹よ!お前の鼻息が荒いのが原因だぞ!」
「何よ!お兄だって聞き耳立てようとしてドアに頭をぶつけてたじゃない!きっとそれが原因よ!」
「ゴチャゴチャ見苦しいぞお前たち!おれァお前らがドアの前に来たときから気づいてんだ。」
盗み聞きがバレた原因を擦り付け合っていた二人だが、ギャリングに一喝されるとしおらしくなってしまった。
この二人はギャリングの養子。鮮やかな水色の髪をしているのが兄のフォーグ、鮮やかな黄緑色の髪をしているのが妹のユッケだ。原作で出会う時には父であるギャリングは既に亡くなっていたため、元々の性格とゲームの性格は異なるところもあるかと思っていたが、この様子だとそこまで変わりはなさそうだ。そう判断した俺は小声でギャリングに耳打ちをした。
「彼らはいつから聞いていたんですか…?」
「少し前からだろうな。でも安心しな、むやみやたらに言いふらすようなガキ共じゃあねぇ。」
「そうですか…」
まあ…それならいいか。いいのか?…いいか。
「改めて紹介するぜ。コイツらはおれのガキ、こっちがフォーグでこっちがユッケだ。」
フォーグはこっちを見て軽く一礼したが、ユッケはあっかんべーをした。どうやらまだ信用してくれてはいないらしい。最低限の礼儀を以って接しているが、フォーグもおそらく気持ちは同じだろう。
「パパ、この人信用して大丈夫なの?もしかしたら例の襲撃犯で、今度は直接パパを襲いに来たのかもしれないのよ?」
「妹の言う通りだ父さん、あの時は何故か屋敷には傷ひとつついていなかったからよかったものの、今度はどうなるか…」
フォーグとユッケはギャリングに詰め寄る。いくら親だとはいえ、こんなマフィアのドンみたいな男を前にああも強気に出られるのはちょっと羨ましい。
「あー、この道化の言うことには、あの時屋敷を守ったのはコイツの張った結界らしいぜ。コイツはむしろおれたちの恩人じゃあねぇのか?」
「ええ~~!?そうだったの!?ゴメンねドルマゲスさん!疑ったりして!」
な、なんて単純n「ええ~~!?それでいいのか!?単純!単純すぎるぞ妹よ!!」うんうんそうだねフォーグ君。君が正しい。
「ムッ!あたしがどう思おうとお
「今は父さんとギャリング家全体の問題なんだ!」
再びギャースギャースと口論を始める兄妹。流石のギャリングも手を焼いているようで、どうしたものかと頭を掻いていた。
「い、いつもこんな感じなんですかね?」
「ああ…顔を合わせりゃいつもああやって口喧嘩だ。仲が悪いわけじゃねぇんだがな…」
確かに、本当に仲が悪いなら相手を「妹」だの「お兄」だの呼ぶことは無いような気がするので、本当は仲良しであることはなんとなく推測できるが…難儀なものだなぁ。
「で、パパ?なんであたしたちを呼び入れたの?」
「そうだな。何かわけあってのことじゃないか?」
ほら。ここぞという時は息ぴったりだ。
「あ、ああ。コイツが商談を持ってきたって言うんでな。いい機会だ。将来ギャリング家を継ぐ者としてコイツとの商談を成立させてみろ。」
「え?」
「…成程。彼の持ってきたビジネスがギャリング家の利になるか否かを判断しろ、ということだな。」
「よし!じゃあより良い条件で商談を成立させた方がギャリング家の次期当主ってのはどう?お兄ちゃん!」
「乗った!」
「がっはっは!何でもいい!好きにやってみやがれ!!」
「イヤ、私あなた達個人と取引するわけじゃないんですけど…」
俺の声はギャリングの豪快な笑い声でかき消され、そのまま商談が始まった。なんかこの町に来てから「え?」ばかり言っている気が…。…しかし二人とも経営者としての手腕は大したもので、俺がいざプレゼンを始めると真剣にメモを取ったり質問をしたり、兄妹で真面目に話し合うこともあった。ギャリングはそんな二人を満足そうに頷きながら見ていた。
結局、こちらの発明品を格安でベルガラックに輸出する代わりにベルガラックは継続的にU.S.A.に資金援助を行うことで合意。ベルガラックに入ってきたセキュリティサービスを始めとした防衛システムの管理権はフォーグに、『
…
「ふう…最初こそ胡散臭く思っていたものの、なかなか面白い御仁じゃないか。」
「あら、やっとお兄も気づいたのね。あたしは最初から分かっていたけどね!」
「…今回ばかりはお前が正しかったようだな、妹よ。」
「うふふ。でしょ!」「ふん…」
「あの~、そういうのって私が帰ってからやってもらえますかね…」
俺はまだ部屋の隅で帰る準備をしていたのだが、それをよそに二人は勝手に兄妹の絆を深めていた。門番から当主、その子供たちまで、もう本当にここの家の人たちは行動に予想がつかない。彼らは嫌いじゃないし、むしろ好ましいタイプの人間だけど…。うーん、ちょっと疲れる…かも…。
「これは失礼した。…そうだ、そろそろ日も傾く。夕食でもいかがかな?」
「それ、いいアイデアね!」
「…いや、嬉しい申し出ですが遠慮させていただきます。少し急いでいるもので。また別の機会があればよろしくお願いしますね。」
これ以上一緒にいるといよいよツッコむ体力がなくなる。食事はまたの機会にしたい。
「そうか。ではまたいつでも来てくれたまえ。」
「残念。でもあなたならいつだって歓迎するわ!」
俺は二人に手を振ると部屋を後にし、そのまま屋敷から出ようとしたところでギャリングに呼び止められた。
「もう帰るのか。」
「ギャリングさん。はい、流石に少し疲労が溜まってしまって…まだやることもありますしね。ここらでお暇させていただきます。」
「そうか。」
「では…」
「待て。」
「?」
「その…ありがとうよ。おれを、おれの家を暗黒神の襲撃から守ってくれて。色々あって結局礼は言えてなかった。もしおれがあそこで死んでたらガキ共に遺言の一つも残せなかったろうからな…」
「…!ギャリングさんって意外に不器用なところもあるんですね。」
「おう、言ってくれるじゃねぇか!仁義を重んじる男と言いやがれ!」
ギャリングは力強く肩を組んできた。ちょっと痛い。…やっぱり彼も豪快な性格で裏表がない。そういう意味ではウチの現場監督とも似ているかもしれないな。好ましい人間だ。…死んでほしくない。
「では!何かあったら直ぐに私に連絡を取ってくださいね!」
親指を立てて返事をしたギャリングに手を振り、俺は『ルーラ』でサーベルトのいる『王家の山』へと移動した。
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─闇の遺跡・深層部─
滴る水滴の音すら大きく響き渡る暗闇の
「ククク…傷は癒えた。これで問題なく動けるぞ…!」
端正な顔に似合わぬ邪悪なオーラを纏う女は、ひた、ひたと一歩ずつ歩きながら身体の感覚を確かめる。
「折角自由になったことだ。あの陳腐な道化を今すぐにでも殺しに行きたいところだが…生憎『準備』の方を優先せねばな…」
その瞬間、女の
「ぐうっ!?…相変わらず忌々しい
女は持っている杖で自身の首を絞める腕を突き刺し、肩の関節を外して腕が動かないようにすると、またひた、ひたと暗い遺跡の更に深いところへ向かって歩いていく。
「ハァ…忌まわしい…我は根源的恐怖、闇を支配する神なるぞ…!昼の世界と闇の世界、二つの世界を融合させてその世界に君臨するのは我だ…ハハ…くははっ!あははははははははははははははっ!!」
女の笑い声は反響して遺跡中に響き、闇の遺跡の彷徨える魂たちは主の帰還の喜びに打ち震え、滂沱の涙を流したという。
ギャリングに賢者の自覚があったかどうかですが、きっとあったと思います。むしろ自覚度ランキングではかなり上位ではないでしょうかね?
賢者の末裔自覚度ランキング~!(私調べ)
1位:メディばあさん…めちゃくちゃ自覚してると思う。家の近くに暗黒神の配下を寄せ付けない結界も張ってあるし。息子グラッドが神鳥レティスのことを知っていたのもメディが教えたのではなかろうか?
2位:ギャリング…かなり自覚しているのでは?そもそも彼の先祖もギャリングである。名前を世襲制にしたのはおそらく賢者の自覚が薄れないようにするためではないか。他にも竜骨の迷宮イベントや3DSのイベントでは「自分が生きていれば世界は平和」という発言もあったため(それが先祖か現代は不明だが)やはり賢者としての自覚はあったと思われる。
同3位:オディロ院長・法皇…それなりの自覚はあったはず。しかし二人ともあの世界では珍しい真の聖職者であったため、慈愛の心に充ち溢れすぎていた。結果対話を試みて失敗。できれば自分が死んだ後の世界についても考えを巡らせてほしかった。
5位:マスター・ライラス…それなりの自覚はあったはず。数字の関係上5位に落ち着いているが多分上位層と変わらないくらいの自覚はあったと思う。しかしメディばあさん以外の上位層全員に言えることだが、子孫を残さないのは最早七賢者への反逆と言えるのではなかろうか。血筋絶やすな言われてるでしょ…。
6位:サーベルト・クランバートル…自覚無し。そもそもクランバートル家とアルバート家の家系図がかなりややこしい上に、両家がそこを有耶無耶にしてしまったため大事な情報が正しく伝達しなかったのだと思われる。
7位:チェルス…自覚無し。しかし悪いのは間違いなくハワードの方である。なんなら七賢者クーパスのハワードとチェルスの関係を繋げるという判断もおかしい気がする。繋げるならせめてどちらが正当な賢者の末裔かぐらいははっきりさせる呪いも一緒にかけた方が良かったんじゃないかな。
こんな感じです。ここはこうでないの?という意見がありましたら是非コメントをお寄せください!それではまた!