ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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ちょっとおまけです。
おまけを四つ投稿です。







番外編 元王室侍女キラの憂鬱

活動報告書Vol.12

 

ユナイテッド・サービシーズ・オブ・アスカンタ(以下Uと表記)

ドリーム重化学工場(以下D)及びマゲス研究所(以下M)

 

 

報告者名:

いたずらもぐら・マッドドッグ(言語研修中のためマドハンド代筆)・ホークマン

所属組織/部署:

ユナイテッド・サービシーズ・オブ・アスカンタ及び下部組織

 

 

活動概要:

【U】

・領域最終拡張工事の完了及び領域内全土地整備の完了

・第一層の大型商業施設開業

・全従業員の人間語習得学習の継続、第5期新規従業員へのセミナー開催

 

【D】

・『家魔』製造の低廉化に成功

・第一層、第二層に上下水道を整備

 

【M】

・未知のエネルギー『電力』の研究に着手

・掘削工事中に発生、採取した可燃性のガスの日用品及び兵器転用実験(詳細は別紙参照)

 

活動詳細:

【U】

・前報告からの拡張は18%、U.S.A.発足以前の『モグラのアジト』から領域は750%増加。これ以上の掘削は海水の浸入を招くと判断されたため掘削工事は終了した。しかし一部の従業員が無視して掘削を続行しようとしたため現場監督がこれを鎮圧、懲戒委員会に連行した。従業員の一部が仕事を任せないと暴動を起こすと宣言したため、掘削した土地の整備に割り当てた。

 

・第一層大型商業施設の初週の売り上げはほとんどなし。従業員は自由に利用できることと、外部からの顧客を招くことに難航しているのが主な理由。南の大陸本土に出向き、マイエラ地方やアスカンタ地方で積極的な告知を行う案が提言されている。なお、二階の宿屋と道具屋で計二件のトラブルが発生したものの、他の従業員によって取り押さえられ事態は早期に収束。破壊された備品の代替品はアスカンタ王国に発注済み。クレーマーは懲戒委員会に連行した。

 

・現在の全従業員の人間語識字率は56%、前報告から17%減となった。一週間前に『王家の山』の魔物を中心としたサザンビーク地方の魔物(197名)が新たに従業員に加わったことが理由。一時的に下落した識字率を立て直すために、新規従業員への会社説明を兼ねた基礎言語セミナーを開催。『先生』と『教授』による17時間にも及ぶ講釈の末、新規従業員の識字率は2%から21%に上昇。途中セミナーに耐え切れなくなった34名の「マッスルアニマル」「かくとうパンサー」が暴れ出すも、駐屯していた安全委員会がこれを鎮圧。当該従業員たちは懲戒委員会に連行した。

 

【D】

・アスカンタ王国の技術者を客員研究員として5名招き、共同で研究を行うことで『家魔』の低廉化に成功。製造コストの25%カットに成功した。なお、客員研究員たちは人間であるため、魔物のみの当該施設で研究施設で過ごすことによるストレスを考慮して、滞在中は常に橋渡し役として同じ人間である福祉委員会のキラを配置するという案が受理された。施行の結果は成功、客員研究員たちのストレスレベルは大幅に低下した。

 

・マゲス研究所と合同で製作していた海水淡水化装置(オートストレーナ)が完成したため、土地の整備を完了させて手の空いていたモグラたちを指揮して上下水道工事に着手。予定より2日早く工事は完了した。現在は第三層の工事が進行中。

 

【M】

・所長の助言により『電力』という概念を発見、研究に着手。サンプルとして所長から拝借した『デイン』の魔法玉を使って様々な実験を並行して行っている。詳細は実験レポートVol.11へ。

 

成果/結果:

【U】【D】【M】

N/A

 

課題/問題点:

・懲戒委員会の負担が大きい。

・モグラたちに任せる仕事がそろそろ少なくなってきている。

・人間に慣れていない魔物が多い。これは人間が我々に怯える原因の一つでもある可能性がある。

・新規従業員が増加した影響で施設内の治安が若干悪化している。

 

改善策/提案:

・懲戒委員会を増員する。モグラたちを交代制で懲戒委員会に通勤させる。

・呪文習得特訓の時間を一時間削って人間と魔物の共存をテーマにした道徳の時間を設ける。

・懲戒委員会を増員する。

 

従業員から寄せられた意見(一例):

・福祉委員会の食事メニューを増やしてほしい。

・情報委員会が何をやっているのかイマイチ分からないので公表するか解散すべき。

・隣人がうるさい。寮の部屋を変えてほしい。

・寮が狭すぎる。改築してほしい。

・新しく相部屋になったオークキングが自己中すぎるので寮の部屋を変えてほしい。

・懲戒委員会が厳しすぎる。懲戒委員会を解散してもっと自由に過ごさせてほしい。

・ショッピングモールの品ぞろえが少ない。もっと増やすべき。

・なぜ人間を襲ってはいけないのかが分からない。人間は襲うべきだと教育した方が良いと思う。

・トップには会ったことがないが、人間が自分の上に立つことが気に入らない。引きずり降ろして八つ裂きにすべき。

・新規従業員たちの気性が荒すぎる。────────。

・──────────────。─────────────、────────。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はあ…」

 

途中まで真面目に報告書を読んでいたキラは、「従業員から寄せられた意見」という項目でそれ以上読み進めることを断念した。意見どころかクレームばかり、まるでこれでは子供の目安箱ではないか。

 

「せっかくいい場所で暮らせてるのに、みんな文句ばかり…!」

 

「おや、キラ女史じゃないか。」

 

「あ、えーと…」

 

向かいからやってきた一匹の魔物。彼の名前を憶えていないキラはちらりと相手が首から下げている名札を見た。人間には魔物の判別がつきにくいのだ。

 

「ホーク(ワン)様。お疲れ様です。」

 

「お疲れ様。今日は非番じゃなかったかね?」

 

ホーク1は研究所で遺伝子工学部門(グリーン・チーム)部門長(チーフ)として働いている「ホークマン」だ。かしこさが高いためか理性的であり、人語も完全に習得しているのでまだまだ魔物に親しみきれていないキラでも話せる数少ない常識人(魔物)である。

 

「そうなんですけど…えーと…あっ、それよりホーク1様はこれからどちらへ?」

 

「私か?私はこれから道具屋へ寄って、それから第四層へ向かうところだな。なにやら所長の師匠という人間が休養しているらしく、挨拶に行くことにしたんだ。…かなり気難しいらしいので菓子折りの一つでも持っていこうかと思っていたところだよ。」

 

「はあ、なるほどドルマゲス様の師匠の…」

 

ドルマゲスの師匠であるマスター・ライラスという人間が昨日やってきたのは知っていたが、昨日は忙しくてキラはどうしても時間が取れなかったのだ。彼が師事する人間とはどんな人だろう?興味の尽きないキラは後で挨拶に行こうと心に決め、思わず報告書を強く握ってしまう。

 

「ああっ」

 

…と、報告書はくしゃくしゃになってしまった。折り目を伸ばそうと躍起になるキラをホーク1は不思議そうに見ている。

 

「ん?それは活動報告書?なぜキラ女史が?」

 

「あっえっ……こ、これをですね、今日は私に持って行かせてください!って情報委員会の方に頼んで渡してもらったんです。でも…」

 

「あー…、なるほど?なんでまたそんなことを…」

 

「ドルマゲス様は昨日ベルガラックから帰ってきてここにいますよね?だから渡さないといけないんですけど…」

 

「…」

 

「その…最近会ってなかったので気まずくて…」

 

「わかるよ。所長に報告書渡すのって緊張するよな。(怖いから)

 

まだ折り目が気になって何度も指で紙を引っ張っているキラの前で、ホーク1は腕を組んで心からそう思うという風に頷いた。

 

「え?ホーク1さんも緊張するんですか!?!?(え!?それって好…?)」

 

「え?それはするさ。ドルマゲス所長と会う時は多分みんな緊張してると思うぞ。(怖いから)

 

(!?!?!?!?)へ、へー…!」

 

「所長はすごい(怖い)人だから…呼ばれたり、何か報告しないといけない時は何としても行かなければ…!って気持ちになるな。(行かないと何されるか分かったもんじゃないし)

 

「た、確かにドルマゲス様はすごい方です。そんな方に呼ばれたら確かに行かないわけにはいかないですよね!」

 

「だからここの魔物はみんないつもドルマゲス所長(の顔色)を気にしながら毎日生活してるんじゃないか?」

 

「そ、そうなんですね…(まさか1000を超える魔物たち全員から心を奪っていくなんて…罪な方…)

 

「キラ女史、目が怖いぞ?それにしても同じ人間のキラ女史から見てもそう見えるんだな。少し意外だ。所長は同じ人間に対してはかなり慈悲深いと思っていたのだが…」

 

「え?むしろホーク1さんみたいな魔物の方がその…そういう目でドルマゲス様を見てる方が意外ですけど…!」

 

「だって、機嫌損ねると実験台にされるか煮て焼いて食われるし…」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

「はあ…」

 

結局勘違いだったらしい。キラは少し安心したが、よく考えると何が安心なのかもよく分からない。…ホーク1は最後まで「じゃあ私が報告書を持っていってやろうか?」とは一言も言わなかった。たとえ言ったとしても彼女は渋るだろうが。

 

「あっ!」

 

その時、キラの懐から大人の握りこぶし程度の大きさの箱が転がり落ちたかと思うと、みるみる箱は展開して獣の姿を象った。仮想自律戦闘人形(プロトオートマタ―)二号機、『奇襲(ソルプレッサ)』だ。彼はベルガラックでパーティから飛び出したキラを迎えに来て以来、すっかりキラのパートナーとして懐いている。彼女がアスカンタ王国でメンテナーとして業務を行う時も同行し、今こうやってアジトで過ごしている時も、場を弁えない魔物によって襲われる可能性があるキラを護るために一緒にいる。今は普通の「キラーパンサー」と同じサイズだが、ドルマゲスの考案した特殊な技術によって肉体を「折り畳んだり」「展開したり」することで小さな箱になることや民家より大きな八足の豹になることができる。

 

「がるる…」

 

「あっ、もしかして慰めてくれてるんですか?…ありがとうございます」

 

「くるるる」

 

「ああ…私を理解してくれるのはやっぱりソルプレッサさんだけです!」

 

「…」

 

キラはソルプレッサに抱き着いた。ごわごわした毛並みがむしろワイルドで、王室育ちのキラにとってはそれが愛おしい。ソルプレッサは「キラーパンサー」をベースとしているので意思疎通の手段は専ら自然語に限られるが、当該言語を既に習得済みのキラにとっては些事である。

 

「この報告書…渡さなくてもいいでしょうか…?」

 

「!?」

 

「ドルマゲス様との気まずい空気を直したくて、勇気を出して情報委員会から貰ってきたはいいものの…やっぱりドルマゲス様と顔を合わせる勇気は私には無いです…」

 

「がう、がうう、がる」

 

「いや…でも私もこの数週間頑張ってお仕事してきたんです。ソルプレッサさんも一緒にいてくれますし、私、もう足手まといじゃないですよね?」

 

ソルプレッサは満足そうに大きく頷いた。

 

「よし!じゃあ渡さなくていいですよね!」

 

「!?!?」

 

「だって、もう足手まといじゃないんだからドルマゲス様と仲直りする必要は無くて、だから報告書は渡さなくても良くて…え?私おかしなこと言ってないですよね?」

 

ソルプレッサはぶんぶんと首を横に振った。

 

「や…やっぱり渡さなくちゃダメですか…?うぅー…」

 

その後も散々迷ったが結局キラは直接渡しに行くことができず、そこを偶然通りかかったドン・モグーラを捕まえて報告書の配達を懇願し、持っていってもらうことにした。

 

「せっかく仲直りするために報告書を貰ってきたのに…いや、でも…」

 

「…」

 

ソルプレッサは報告書を渡してなお葛藤している友人を見て大きくため息を吐いた。彼女のこの煮え切らなさは優しさの裏返し、美点なのだが、ご主人(ドルマゲス)はそれに気が付いているのだろうか。できれば友人とご主人には早めに仲直りしてほしいものだ。

 

そんなことを考えていると少し腹が減ってきたソルプレッサは、まだ目の前をうろうろしているキラをせっついて福祉委員会に昼の配給を貰いに行くよう促すのだった。

 

 

 

 

 

 




仮想自律戦闘人形二号機『奇襲(ソルプレッサ)』

科学による戦力増強を目指したドルマゲスによって作られた人造モンスター。一号機に殲滅特化の『踊り子(バイラリン)』三号機に物理特化の『侍(エスパーダ)』がいる。モンスターの素体に制御装置を組み込んで人工筋肉で補強しただけのセキュリティサービスとは異なり、プロトオートマターは細胞単位で創造されている。そのため機械というよりは生物に近い。二号機ソルプレッサは豹の魔物「キラーパンサー」をモデルに作られた素早さ特化の兵器であり、例えば「はぐれメタル」や「メタルキング」が逃げ出した時に
 ▼ しかし まわりこまれてしまった!  できるくらいには速い。「すばやさのたね」をモリモリ食べて『ピオラ』を重ね掛けし、「ほしふるうでわ」を装備したLv99の勇者の「しっぷう突き」と並走できるくらいには速い。


U.S.A.ホールディングス内の部門

総監督、所長、工場長、代表取締役社長(全部ドルマゲスAが兼任)

現場監督(モグラの子分)、研究部門長(ホークマン)、グループリーダー(ドン・モグーラ)

情報委員会(情報を管理する。何やってるか詳細は不明)
安全委員会(施設内を循環し、危険な場所を報告したり危険因子を排除したり暴動を抑えたりする)
福祉委員会(従業員たちに衣食住と娯楽を提供する。有休もここで申請する)
懲戒委員会(企業倫理から大きく外れたり、社内ルールに違反したものを処罰する)

先生・教授等の客員講師、その他の膨大な魔物の共同体

一般魔物(王家の山で修行しているサーベルトが見込みのある魔物を次々送りつけてくるのでまた増えた)
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