ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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勇者とドルマゲスが共に行動している間は勇者視点とドルマゲス視点を交互に書こうかなと思っています。








第三十一章 姫様復活と王の再臨

ハロー、勇者と無事に合流した道化師ドルマゲス改めディムです。原作プレイヤーとしては勇者たちと一緒に冒険ができるなんて夢みたいですよねぇ。しかもよく見ると勇者とヤンガスが持ってるのは私が設計したレプリカシリーズ。自分の考えた武器がゲームで見たキャラの懐に収まっているのを見るとなーんかむず痒い気持ちです。悪い気はしませんけどね。

 

 

 

 

『ルーラ』は問題なく発動し、俺含めた勇者一行はサザンビーク王国に到着した。しかし勇者たちは俺を見たまま固まっている。…気が抜けて変装解けたとかじゃないよな?俺は咄嗟に手足や服装の確認をしたが、特におかしなところは無かった。

 

「うそ…『キメラのつばさ』も使わずに転移できるなんて…」

 

「え?いやエイトさんも使えますよね?『ルーラ』」

 

「う、うんそうなんだけど…」

 

「…わしも王位に就いて長い。宮廷魔導士も多く抱えていたが『ルーラ』を行使できるものは魔導士の中にはいなかった。さらには同時代に『ルーラ』の習得者は二人といないという学術論文まで発表される始末じゃ。そんな中現れたのが類まれなる「ゆうき」を持ち、『ルーラ』を習得したエイトじゃ。これで他に『ルーラ』を使えるものはおらんと思っていたのじゃが…だからこその驚きじゃ。」

 

『ルーラ』ってそんなスゴイ呪文だったのか…確かに主人公以外の誰かが『ルーラ』を覚えてるのは記憶の中のドラクエにはないが。ん?いや、ククールお前使えるだろ。

 

「ふーん。兄貴しか使えないはずの『ルーラ』をディムも使えるってことは、トロデーンの魔導士たちも結構いい加減な発表をしたんでがすね。」

 

「えーと…ヤンガス、あの論文は魔法を勉強したことのある人なら誰もが耳にしたことのあるくらい有名なものなのよ。だからエイトが『ルーラ』を使えると知った時、私、内心で小躍りしてたのよ?スゴイ人に出会っちゃった!って…なんでディムも使えるのよ…?」

 

いや、そんなこと知らん。俺はゲームで『ルーラ』を幾度となく見たことがあるのでイメージが容易で割と楽に習得できたんだけど。と言いたいが、そんなこと言っても話が長くなるだけなのはわかっているので「なんででしょうね。えへへ」と雑に濁して終わらせた。

 

「ま、そんなことはいいじゃないか。目の前にドデカい城がオレたちを待ってるんだ、さっさと鏡を借りに行こうぜ?」

 

さして興味も無さそうなククールの声に俺は威勢よく同調し、サザンビーク王国へ入城しようとした。トロデはお留守番らしい。まあ姿が姿なので仕方ない。別に俺の『妖精の見る夢(コティングリー)』で元のトロデ王の姿に外面だけなら変えてあげられるのだが、ミーティアを一人で城の外に待たせておくのは忍びない。『コティングリー』はただの変身術なので、姫を人間の姿には変えられても言葉を喋るようにはできないのだ。呪いを一時的にでも解く術があれば…あれば…?

 

ん?

 

俺は何かを思いつきそうで、勇者たちには見えないように『賢人の見る夢(イデア)』内をゴチャゴチャとまさぐった。手に触れたのは開発中の武器、予備のセキュリティサービス、整備済みのプロトオートマター、ナニカの肉…そして次に触れたのは薬瓶。直感で俺はそれを取り出してラベルを見た。「サンプルNo.05」…これだ!!

 

 

「お…お父様…!?」

 

その場にいる誰もが目を疑うような奇跡を目の当たりにして驚いている。無理もない、国が滅亡してからずっと馬の姿だったはずのミーティア姫が人間の姿を取り戻したのだ。勇者は久方ぶりに見る幼馴染の姿を、トロデは渇望していた娘の無事を、他の仲間たちは初めて目にするトロデーン王国の姫君を。ミーティア自身も信じられないといった面持ちで自分の手や足を見つめている。俺も驚いている。めちゃくちゃ可愛い…

 

「お父様!見てください!ミーティアは…ミーティアは人間の姿に戻りましたのよ!!」

 

興奮するミーティアは高ぶる感情をそのままにトロデに声をかけたが、当のトロデはその目玉が零れ落ちんばかりに目を見開き、何も言えずにただミーティアを見つめている。その様子を見てミーティアは不安になったのか、あからさまにおろおろし始めた。

 

「どうしたの?お父様…ま、まさかミーティアは人間の姿に戻った夢でも見てるというの?これは幻なの……?」

 

トロデはその悲しそうなミーティアの声を聞いてようやく我に帰り、涙を浮かべて何とか答える。

 

「おお…あまりに突然のことで思わず言葉を見失ってしまったわい。ちゃんと見えているぞ、姫よ…!さあ、もっと近くに来てその愛しい姿を見せておくれ…!」

 

「お父様っ!」

 

トロデとミーティアは手を取り合い、これまで奪われた時間を取り戻すかのように話し始めた。辛い思いをさせたと謝るトロデ、それをやんわりと否定し、みんなの役に立てて嬉しいと微笑むミーティア。俺含む勇者パーティたちはそれを温かく見守っていた。俺は内心で安堵のため息を吐く。ぶっつけ本番だったが、凝固させた「ふしぎな泉」の解呪成分は無事に泉の外でも効力を発揮してくれた。これも裏で研究を進めてくれていたウチの「ホークマン」たちのおかげだな!よし、これで勇者たちからの評価も爆上がりだろ!

 

「なあ…ディム…お前、ほんとなんなんだ?ドルマゲスにかけられた馬姫様の呪いをやすやす解いちまうあの薬はなんだ?なんでお前はそんな代物を持っている?」

 

逆に疑われてしまった。ククールに次いでゼシカやヤンガスも俺ににじりにじりと詰め寄る。疑う、というよりも困惑しているようだ。どーすっかな…。ふと勇者に目をやると、彼はトロデとミーティアをにこやかに眺めながら、拳をぎゅっと握りしめていた。きっと彼もあの中に混ざりたいだろうに、トロデの気持ちを汲んであえて傍観しているのだ。なんと健気な近衛か…。俺は勇者やトロデたちの邪魔をしないように、あらぬ疑いをかけられないように、この「ふしぎなサプリ」の説明をした。

 

 

─サザンビーク城─

 

「元の姿と寸分たがわぬこの顔!髪!身体!素晴らしいぞディム!」

 

「お褒めにあずかり光栄です!しかしトロデ王は本当に王様だったのですね。その姿が良くお似合いです。」

 

「褒めても何も出んぞ!わっはっは!」

 

「なんでい、魔物の頃と大して変わらねぇじゃねぇか。」

 

「なんじゃと!ヤンガスよ、表に出い!」

 

「まあまあ、トロデ王。あなたもお姫様も町に入れたんだからよしとしましょうよ。ね?」

 

「…」

 

ミーティアは無言で、しかしにっこりと微笑んで頷いた。その様子にヤンガスもトロデも毒気を抜かれて大人しくなる。ミーティアさんマジ姫様。

 

俺は『コティングリー』でトロデとミーティアを人間だった頃の姿に変え(トロデの造形に関しては本人からかなり厳しい監修が入った)、全員で堂々と入城した。「ふしぎなサプリ」の効力は原作ふしぎな泉よろしく数分で消えてしまったので、ミーティアは喋れないままだが、こうして黙って歩いている分には何も問題はない。どうしても話さなければならない時だけサプリを服用すればいいのだ。まだ数粒余っているのでなんとかなる。ミーティアは久しぶりに自由に動けるということもあってパタパタと走って色々なところを覗きながら進んでいた。

 

「ディムよ、重ねて感謝するぞ。…効果が切れて姫がまた馬の姿に戻ってしまったのは残念じゃったが、久方ぶりに姫と話すことができた。それも全ておぬしのおかげじゃ。姫も感謝しておるぞ。なあ?」

 

ミーティアは首を大きく縦に振り、駆け寄ってくると俺の手を取った。王族らしい綺麗な手のひら、その柔肌の感触、そして超至近距離から放たれる美少女スマイルの輝きに俺は飛び退きたくなる。へらへら生きている道化師にとって王女様の笑顔は眩しすぎるんだ…

 

「王様も言ってるけど本当にすごいよ、ディム。一瞬とはいえ、あのドルマゲスの呪いを解くことができる薬を作れるなんて…」

 

呪いかけたの俺じゃないんだけどなあ、と言いたいのを堪えて快活に返事をする。彼らにとってはまだ『ドルマゲス』が諸悪の根源なのだ。あっ、まさかこんな調子でキラちゃんとも話してたんじゃないだろうな?…もしかして最近キラちゃんが寄ってきてくれないのは勇者たちと話して俺の存在に懐疑的になったから……?今度改めて誤解を解いておかないとな。

 

「もし時間があればここから西にずっと行った所の隠者の家を訪ねてみてください。そこにさっき説明した、解呪能力を持つ『ふしぎな泉』が湧いていますよ。」

 

「もちろんじゃ!なあエイトよ!」「はい!」

 

勇者は力強く返事をした。彼も少しだがミーティアと話せて元気を取り戻したようだ。絶対にドルマゲスを倒して二人の呪いを解く、と息巻いている。ちょっと複雑…。とにかく、ここにトロデ王とミーティア姫本人がいる。そうなればサザンビーク王クラビウスもこちらの要望を無下にするわけにはいかないだろう。もしかすれば『王家の山』イベントもまるまるスキップできるかも?そうなったら次はどうしようかな。

 

 

「誰だ!武装した大人がこんな大勢で何の用だ!」

 

「…わしの顔を見て何も思わないのか?こやつらは護衛、わしはトロデーン王国の現国王であるぞ!控えおろう!」

 

「な、まさか……とっ、トロデ王!?!?なぜ今…いっいや!失礼しました!急ぎクラビウス王に報告して参ります!」

 

ぞろぞろと城に入ってきた俺たちを警戒する衛兵だが、そのうちの一人にさらりと三大国の元首が混じっていることを認識すると顔を青くして階段を駆け上がっていった。まあそうなるわな。むしろビックリしすぎてパニックにならなかったことを褒めてあげたい。

 

「…はえ~改めて、おっさんってほんとに王様だったんでがすね。」

 

「ああ…別にエイトも認める手前、心から疑ってたわけじゃないが…いざこういうところを見せられると王様!って感じがするな…」

 

「わっはっは!こんな反応をされるのは久しぶりじゃ、愉快愉快!さっ!クラビウス王に会いにゆこうぞ!」

 

王族貴族がすこぶる嫌いなククールは顔を顰めていたが、快活に笑うトロデを見て、彼はやはり彼だということが分かったのだろうか、肩を竦めて階段を上るトロデについていった。

 

「ところで、ディムは私たちが船を探している間はサザンビークにいたのよね?なにをしてたの?」

 

ゼシカが尋ねてくる。…まあ、色んなことがあったな。メダル王国に行ったり、月の都に行ったり、あんたの兄ちゃんとお茶したり。

 

などと言えるわけもなく、「太陽のカガミ」について調べていたんですよ。と無難な回答をしておいた。ゼシカも「ふーん。すぐに借りられるといいわね」とそれ以上の詮索はしてこなかった。

 

 

「こ、これはトロデ王!クラビウス王はこちらの玉座の間にいらっしゃいます。いくらトロデーン王国の国王とはいえ、国王様の御前では変な気を起こされないようお願い申し上げます…」

 

「物騒じゃな。何もわしは宣戦布告をしに来たわけではないんじゃ。ディム、例の薬を姫にあげてもらえるかの。」

 

「あっ、はい。姫様これをどうぞ。」

 

「…!」

 

「おっさん、クラビウス王に何を話すつもりなんでげすか?」

 

「なに、トロデーン王国の現状報告と王国復興までの簡易的な不可侵条約の締結くらいじゃ。もちろん『太陽のカガミ』についても掛け合うぞ。クラビウス王は硬派だが話の分かる王じゃ。何らかの便宜は図らってくれるじゃろう。」

 

「王族ってのは考えることが多くて大変そうでがすね。」

 

俺が「ふしぎなサプリ」を渡すとミーティアは嬉しそうにそれを飲み込んだ。まばゆい光があたりを満たすが、元々馬の姿だったものを『コティングリー』で人の姿に変えているため、外側だけ見れば別段姫に変わったところはない。

 

「えーと、姫様に変わったところは見られないけど、実際は今だけ呪いが解けているってことよね?」

 

「ええ!ゼシカ様!ミーティアはこの通り、お喋りができるようになりますのよ!」

 

「わっ、ビックリした。ミーティア姫は元気で素直なお姫様なのね。…馬姫様だったころからなんだか気品のようなものは感じていたけれど。」

 

話せるようになると分かればミーティアは途端に饒舌になる。まあ数か月の間言葉を発することができてないことを考えると、むしろいくら話しても話し足りないくらいだろう。

 

「ミーティアや。相変わらず可愛い声じゃが、今はクラビウス王との面会が先じゃな。チャゴス王子ももしかすれば玉座の間におるかもしれんの。」

 

「あっ…そうでしたわね…チャゴス王子が…」

 

ミーティアの顔が少し暗くなる。…無理もない、あんなブタくんが婚約者、しかも勝手に決められたものだったら誰だって顔を顰める。他の人、例えば俺の連れならばどうだろう。…良くも悪くも正直なユリマちゃんはきっと顔に出るだろうし、女神のように優しいキラちゃんでさえ頬を引きつらせるだろう。…いや、この時のミーティアはまだチャゴスには会ったことないんだっけか?だとしたらなおのこと可哀想。なんせこれから絶望することになるんだから。

 

「兄貴、チャゴス王子って誰のことでげすかい?」

 

「チャゴス王子はこの国の王子で、姫様の許嫁にあたる方だよ。僕も姫も顔は見たことないな。」

 

「へーぇ。姫様がこんなに美しい女性なんだ。そのチャゴスって王子もオレほどじゃなくとも、なかなかの美形なんだろうな。」

 

「では開きますよ!」

 

俺はさっさと進みたくて会話を遮るような形で扉を開ける。サプリの効果はもっても5分が限界だ。中途半端なところで効果が切れられてはたまらない。扉を開くと、そわそわした様子でクラビウスが座っており、その横で大臣が同じくそわそわしている様子で佇んでいた。そりゃそうだ。何のアポもなくいきなり他国の、しかも無視できない規模の国の王が城内に現れて面会を求めてきたのだ。多少なりとも緊張する。俺だってここがゲームで見た世界でなければ緊張で震えているだろう。だが勇者たちはトロデが今までの姿と特に変わらないので緊張はしていないようだ。うーん流石は一流冒険者。

 

「ようこそ。トロデ王。」

 

「うむ、久しぶりじゃ。クラビウス王よ。」

 

傾いた太陽の光が差し込み、クラビウスの額に汗が浮かんでいることを知らせる。しかしそれはトロデも同じようだ。何となく重苦しい、しかし苦痛というよりは少し神々しい、思わず跪きたくなるような…ああ、そうか。これが『王』か。俺は一人で勝手に納得していた。

 

緊急の国家間会談が始まる。

 

 

 

 

 

 




ミーティアの一人称がミーティアなのって可愛いですよね。これだけでもミーティアがどれだけトロデに甘やかされて、それでも立派に育ってきたのかがなんとなく推測できます。
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