ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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感想欄みていつも爆笑してます。みんなチャゴス嫌いなんですね~。私も好きではないですが、イジりがいのあるキャラクターではあると思ってます。
でも書いてると腹が立ってくるのでそろそろ退場していただきたいところですね。



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あとがきにイラストを載せています!是非ご覧ください!








第三十三章 ボス戦と自罰

ハロー、少年の身体を利用して冒険を楽しむ道化師ドルマゲスです。元の姿だと仮に私がドルマゲスだと知らなくてもここまで勇者たちは仲良くしてくれないでしょうからね…。ショタパワーは底が知れないです。

 

 

 

 

飄々とした振る舞いをしている俺のことがチャゴスは気に入らない(一方で『霊竜』云々の作り話は信じ切っている)ようだが、食事については話が別らしく、文句もつけずにもぐもぐと食べている。昨日初めて料理を振舞った時は「平民の作った料理など食えるか!」などとぬかしていたが…

 

チャゴスは料理に一通り手を付けると食器を置いて口を拭った。コイツ、食事中は音もたてないしテーブルマナーも完璧なんだよな。おおよそ来賓として外で食事をする機会があった時に恥をかかないようクラビウスから仕込まれたのだろうが、テーブルマナーだけ完璧なのもそれはそれで腹が立つ。クラビウスはテーブルマナーと一緒に対人マナーも教えてくれればよかったのに。

 

「おい、この料理はなんだ?城でも似たものが出るが少し味が違うな。」

 

「それはオムレツですよチャゴス王子。炒めた肉や野菜やチーズを手早く焼いた卵で包んだものです。その土地柄によって味付けも異なります。」

 

「卵?鶏の卵か。」

 

「…広義で言えば鶏の卵と言えます。」

 

狭義で言えば「バードファイター」の卵です。…バードファイターって鶏に分類していいよね?

 

ベーコンはともかく、野菜は勇者たちの馬車にあった市販のものを使うしかなかった。この世界に「オニオーン」や「ダンスキャロット」、「ナスビナーラ」、「ズッキーニャ」などがいないのが悔やまれるな。ピーマンとパプリカはいっぱいあるんだけど。

 

「気に入ったぞこの料理。貴様の態度は気に入らないが、特別に厨房で雇ってやる。」

 

「嬉しい申し出ですがお断りさせていただきます。料理は趣味で嗜んでいるだけなので。」

 

「ぼくの厚意を無下にする気か?サザンビーク王子にして正式な王位継承者であるぼくの権限で、浮浪者の貴様を定職に就かせてやるというのに。」

 

「…王子、あんまりうるさいと次の料理にはトカゲを入れますよ。それかトカゲをスムージーにして飲ませてあげます。」

 

「な!?ふ…ふん、そ、それでぼくを脅すつもりか?本当に気に入らない奴だ!」

 

なぁんでサザンビークなんかでコックさんをしなきゃいけないのか。どうせ料理人になるならアスカンタかトラペッタで料亭を開くっての。あと冒険者のことを浮浪者って言うな。

 

「王子のトカゲ嫌いと同じように、私にも苦手なタイプの魔物がいるわ。たとえば目がたくさんある魔物とか身体がぬるぬるベトベトした魔物なんかは見るのもイヤね。」

 

ゼシカはニッコニコの笑顔でカツサンドを頬張る。美味しそうに料理を食べてもらえるのはこちらとしても本当に嬉しいし有難い。お礼にそのカツサンドがまさにそのタイプの魔物でできているという事実は言わないでおこう。

 

「オレもそういった魔物にはできるだけ近寄りたくないもんだ。…マイエラ修道院の前身となった施設にはそういった魔物がうじゃうじゃしてるって噂を聞いたことがあるが、最近は町でもそういう噂もぱったりと聞かなくなったな。…ところで、オレと兄貴が抜けた最近の修道院はどうなってんのかね?」

 

「おっ、ククール。ホームシックでがすか?青くて良いでがすねえ…」

 

「そういうんじゃねぇって。」

 

食事中はチャゴスがほとんどしゃべらないこともあるだろうが、勇者たちはチャゴスがいる空間でもかなりリラックスして会話ができるようになってるな。順応性が凄い。エイトもククールたちの話に混ざりつつ、トロデやミーティアと談笑している。うーん、わちゃわちゃした食卓はやはり良い、冒険はこうじゃないと!

 

 

「ごちそうさま、今日も美味かったぜ。おまえ、ホントにウチのパーティに来てくれよ。歓迎するからさ。」

 

「ん?これ儀式が終わらなければずっとディムの飯を食い続けられるんじゃないでがすかね?」

 

「えぇー。それは私、流石にイヤよ。」

 

「僕と皆さんは闇の遺跡までも一緒ですから、儀式が終わってももうしばらくは作ってさしあげますよ。」

 

俺は魔法で皿を洗いながらヤンガスに笑いかけた。まあ、ゼシカの言う通りずっとここにいるわけにはいかないのも事実だ。ラプソーンがいつまでも『闇の遺跡』に留まっているとは限らない。ここはゲーム通りの世界じゃないんだから。

 

王家の山イベントで最も重要な案件である「チャゴスが自力(笑)で戦って得たアルゴンハートを取得する」という目標は昨日達成した。まあ一撃しか入れてないけど。これを渡して説明すればクラビウスは俺たちの任務達成を認めて『太陽のカガミ』を譲ってくれるはずだ。

 

また、次に重要だった「チャゴスがいかに自分勝手で最低な人間かをトロデに示す」という目標も昨日のゼシカの件と今朝のミーティアの件で達成したと言えるだろう。正直何もしなくてもトロデは勝手にチャゴスに失望していたような気がするが、念には念をということで昨日一日は「アルゴリザード」との追いかけっこに付き合ってあげたわけだ。トロデが席を外していた際にそういうクソイベントが起きた時のために「ミラーシールド」の受けた魔法を記録して再出力する特性を応用して作った録音機を忍ばせていたのだが、必要なかったかもしれないな。

 

つまりもうこの山に用は無いし、王子のお守りもそろそろ勘弁なので帰りたいのだが、せっかくなので最早世界でも有数の実力者である勇者たちの戦闘データの収集、そして勇者たち自身の研鑽のためにちょっとした試練をぶつけてみようと思う。原作で本来戦うはずだった「アルゴングレート」よりも強いボスだ。俺はかつて『旧修道院跡地』のボス「なげきの亡霊」を勝手に浄化してしまったので、原作より勇者たちはボス戦が一回分少ない状態にあるが…まあ誤差の範囲内ではであるはず。なのでちょうどいい…と思う。

 

「おい、さっきまで地面に埋められていたせいか肩が痛い。マッサージしろ。」

 

俺はチャゴスをガン無視して食事の後片付けをエイトたちに任せると、「お花を摘みに行ってきます」と言い残してその場を去った。

 

 

「えーと確か目印は大岩が二つの洞窟…ああ、ここか。」

 

仮想自律戦闘人形(プロトオートマター)四号機『書記(メモリア)』。実験中の不慮の事故でお亡くなりになってしまった「アルゴングレート」を素体にして作成した兵器である。圧覚を始めとした感覚器を多く搭載しており、受けた衝撃をデータとして数値化し、同系統の攻撃を再現して相手に返すことができる。どんな攻撃にでも対応できるようにしたためスペック的に反射の威力は大したことは無いのだが…コイツの本来の運用目的はデータの収集・記録・保存なのでさしたる問題ではない。その代わり、と言ってはなんだが「はぐれメタル」などの流体メタルを人工筋肉に練りこんで耐久値はかなり高くしたので滅多なことでは斃れない。

昔試運転をした際、サーベルトが全力でダメージを与えようとしていたが、「ヒノカミカグラ」をぶっ放せば普通に『メモリア』が壊れる可能性があるのでやめさせた。

 

「ん…よいっしょっと。…えーと?……ふんふん、異常はないようですね!よし、じゃあ…発進!」

 

魔力炉を起動させると、『メモリア』は眠るように丸まっていた状態から立ち上がり、のそのそと洞窟から這い出た。特筆すべきはその大きさだ。民家より少し小さいくらいの初號機~参號機よりも大きいその赤紫色の体躯は、「アルゴングレート」をそのまま大きくしたような…「キングスライム」三匹分ほどの全長を誇る。見上げるとその頭部が太陽に重なり、俺は目を細めた。『メモリア』の身体が影で黒くなると、かの大怪獣ゴジラとそっくりだ…というかそれをちょっと意識して作ったところもある。『メモリア』は洞窟から出ると勇者たちを呼び寄せるために大きく咆哮した…おっと、データを集める側の自分が戦闘に参加しちゃあ意味がない、隠れてないとな。俺は椅子を出して少し離れたところで腰かけると、『ラグランジュ』で姿を消した。ふふふ、お手並み拝見。

 

 

 

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ガオオオォォォン…

 

「!?」

 

王家の山全体に届くかのような咆哮が響き渡る。ちょうど皿を片付けていたヤンガスは危うく皿を落としてしまいそうになった。

 

「な…なんでがすか!?」

 

「分からないわ。アルゴリザードの鳴き声にも似ていたけど…」

 

「その通りだ!今のはアルゴリザードの鳴き声、しかもかなりの大物とみた。よし、確かめに行くぞ!」

 

「…」

 

「片付けなんて二の次だ!…早くしろ!!」

 

「はあ…。」

 

王子はエイトたちを急かすが、かといって絶対に一人では行こうとしない。王者の儀式とは一体何なのか…一行は全員深いため息をついて声のする方へ向かった。

 

 

「おおー!あれは正にアルゴリザードの親玉に違いな…い…え?」

 

「おいおい…こりゃあデカすぎねぇか?」

 

「どうみてもアルゴリザード10匹分はあるでがすね…」

 

「あんなのがこの山に巣食っていたなんて…」

 

鳴き声の発生元に駆け付けたチャゴスと一行は相手の想像以上の大きさに思わず自分の目を疑った。

 

「ちょ、ちょっと流石に?アレを相手にするのはいくらぼくが強くてもなかなか骨が折れそうだな?時間の浪費というか、えぇと、別の手ごろなリザードを探しに…」

 

「王子、でもきっとあのリザードからはとても素晴らしい『アルゴンハート』が取れますよ。きっとクラビウス王も満足します。」

 

「そうよ。ねぇ、最後くらい勇気を見せたらどうなの?この際だから言っちゃうけどね、王子。あんたこの山に来てから何の見せ場もないわよ。期待してくれている王様や国民たちに申し訳ないとか、期待に応えてやろうとか思わないわけ?」

 

「な、え?いや…でも…どうしよう…」

 

「あのリザードを倒せば王様も喜んでカジノ行きを許可してくれるかもしれないぜ?」

 

「チャゴス王子、これは国民たち全員を見返す大チャンスですぞ。」

 

本来ならここまでデカい魔物なら勇者たちは戦おうとは思わなかっただろう。戦略的撤退である。しかし勇者たちはトカゲ探しと王子のお守りに飽き飽きしていた。端的に言うともう疲れていたのだ。そこに現れた巨大なリザード、アレを倒せば確実に最大規模のアルゴンハートが手に入る。王子が満足すれば儀式は終わる。……そう考えれば勇者たちが巨大なリザードに挑もうと考えるのはほとんど必然であった。

 

「え…じゃあ…たたかう…?いや、「よし!じゃあ行ってくるでがす!!!!」は?なっ!?」

 

ヤンガスは王子を持ち上げると魔物に向かって放り投げた。昨日までの彼なら絶対にそんなことはしなかっただろうが、ディムがずっと王子をからかって遊んでいたことで王族に対する扱いがマヒしていたのと、王子に対する極度のストレスが原因の蛮行である。巨大なリザード…『メモリア』は目の前に落ちてきたチャゴスが視界に入ると、先ほどと同じような爆音の雄たけびを上げた。

 

「あっ、あっ、む……無理だあぁぁぁ!!!」

 

「おっ、王子!どこへ行かれるのですか!」

 

「あんなやつに構うなエイト!こっちにくるぞ!」

 

「さーて…今度こそ冴えないおぼっちゃんとの旅の幕を下ろしてやるわ…」

 

「おっさんと馬姫様は安全な所へ隠れてるでげすよ!」

 

逃げたチャゴスには目もくれず向かってくるメモリア。ククールは弓を構え、射程に入った瞬間「さみだれ打ち」を放つ。矢の一つが相手の目玉に直撃するが、なんでもないように突進してくる。ゼシカは魔法を唱えようとしたが、動きを止められなかった場合を想定し、まずは突進の回避に専念する。

 

「よけろっ!」

 

「うっ!?」

 

「ククール!?どうしたでがすか?」

 

「なんだ…?あいつ口から唾を矢のように…」

 

「まずいっ!」

 

突然のことに回避が遅れたククールだが、ヤンガスがククールを突き飛ばしなんとか初撃を避けることに成功する。

 

「動きは遅いみたいだ。落ち着いて攻撃しよう。」

 

「そういうことなら安心ね。『メラミ』!」

 

「シギャアアァァァ!!」

 

「えっ!きゃあっ!」

 

「ゼシカ!!」

 

「大丈夫。でもアイツも火球を…いや、アルゴリザードも火を吐くんだったわね。」

 

「…?(何か、違和感が…)」

 

「背中ががら空きでがすよっ!」

 

ヤンガスが突進直後の硬直姿勢にある『メモリア』を後ろから斬ってかかる。「かぶと割り」だ。命中し相手の守備力が下がる…所までは良かったのだが。

 

「!ヤンガス!危ない!」

 

「え?」

 

『メモリア』の尻尾がオノを模した形状に変化し、ヤンガスを薙ぎ払った。先ほどとは反対に「かぶと割り」の硬直状態にあったヤンガスは尾の一撃をまともに食らって吹っ飛び、後方の崖に叩きつけられる。

 

「ぐ…っ!」

 

「ヤンガス!大丈夫!?」

 

ヤンガスはぐむぐむと口を動かしたかと思うとペッ、と血を吐き出した。内臓が出血している証だが、そんなことはお構いなしとばかりに平然と立ち上がる。

 

「心配には及ばないでがす、兄貴。…しかし、なんでぇ。アイツはアルゴリザードの親玉じゃあないんでがすか?今の攻撃はトカゲの動きを超えていたように見えたでがすが。」

 

「分からない…ん?でももしかすると…はっ!また来る!突進だ!!」

 

『メモリア』自体の動きは鈍い為、体力の減ったヤンガスでも回避に問題はない。

 

「あんたがトカゲかそうでないか見破ってやるわ!『ヒャダルコ』!」

 

「今度は眉間を打ち抜いてやるぜ…」

 

「ダメだ!矢継ぎ早の攻撃は…っ!」

 

ゼシカが呪文の詠唱を始め、ククールは弓を引き絞る。エイトは違和感の正体に気が付いて慌てて制止するも遅く…

 

「ギシャアァァァ!!」

 

「いやあっ!」「ぐああっ!」

 

二人からの攻撃を受けた『メモリア』は口から連続で唾を弾丸のように撃ち出し、着弾した唾はその場で炸裂して全方位に石礫のような大きさの氷柱を発射する。唾の直撃を受けたゼシカは氷柱によって身体に無数の穴が空いて倒れ、ククールも氷柱でかなりのダメージを受けてしまった。

 

「え、エイト…これは一体…」

 

「今は回復が先決!僕とヤンガスが陽動するから、ククールは『ベホマ』で自分を癒してからゼシカの復活をお願い!」

 

そう言うとエイトは『メモリア』の突進攻撃を誘導すべく駆けだしていった。ククールはエイトの言う通り自身の身体を回復し、『ザオラル』でゼシカを蘇らせる。

 

「うぅ…ありがと、ククール。ベルガラック地方で死に慣れてるとはいえ、戦闘で死んだのはしばらくぶりね。…それよりさっきのは何?飛び道具のようにも魔法のようにも見えたけど…」

 

「オレも防御で精一杯だったからよくわからなかったが、どうもエイトは何かに感付いているみたいだな。」

 

「兄貴!こいつはどういうカラクリでがすか?ほっ…っと遅い遅い!」

 

「ククールとゼシカも聞いて!おそらくだけど、このリザードは攻撃を反射する!…というか攻撃された形式と同じ形で反撃してくる!そのかわり動きは遅い!だから…」

 

エイトは最低限の動きで突進を避けると、懐のトーポに「かちかちチーズ」を食べさせ、その息をヤンガスに集中して吹きかけさせた。それを見て意図を正しく理解した二人もそれぞれ『スカラ』『バイキルト』をヤンガスに付与する。

 

「反撃を最小限に抑えながら攻撃する!ヤンガス、いける?」

 

「なるほど!そういうことならまっかせてくだせぇ兄貴!昨日と今日のストレスを全部あのトカゲモドキにぶつけてやるでがすよ!」

 

ヤンガスはテンションを溜めると跳びあがって再度「かぶと割り」を放つ。反撃の尾の一撃を食らうも、さっきほどのダメージは負っていない。すぐにククールが『ベホマ』をヤンガスにかけて回復、ゼシカは『ピオラ』を付与し、エイトは『ギラ』で周囲の植物を焼き払って煙を出し、『メモリア』の視界を阻む。

 

「まだまだっ!おらあっ!でやあっ!」

 

「シャギャアァァァッ!!」

 

「かぶと割り」の3連撃を受け、流石の巨大リザードも…ということはなくオノの形をした尻尾をムチのようにしならせ縦横無尽に振り回して反撃する。しかし『ピオラ』を受けたヤンガスは山賊としての持ち前の勘も相まってその反撃をも避け続ける。

避けて殴る。受けたら癒す。切れたら掛けなおす。補助魔法を一身に受けたヤンガスはさながら飛び回る蜂のように大怪獣の身体に傷を付けていく。

 

 

「ギ…シャアアアァ!」

 

「くっ…コイツ、とんっでもなくタフでがすね…!」

 

戦闘開始からはや数十分。反撃を受けるのはあくまでヤンガスのみだが、通常攻撃としての薙ぎ払いや突進、火球やもうどくの息には他メンバーも気を張らねばならないため、MPが無尽蔵ではないエイトたちはジリジリと削られていった。

 

「ヤンガス!MPの回復アイテムが尽きた!『ベホマ』が使えるのはあと一度だ!お前のタイミングでかける!」

 

「…ッ!ならそれは今でがす!次で決める!」

 

「…わかった!『ベホマ』!頼んだぞ!」

 

ヤンガスは戦いながらも相手の消耗を感じ取っていた。おそらく相手の体力ももう僅かだ。ならばこちらのMPが尽きる前に押し切る。ヤンガスは未だかつてなく俊敏で、強力で、強靭だった。

 

「うおおおおおっっ!!!『蒼・天・魔・斬』!」

 

「ガオオアァァァ!!!」

 

 

故に尺度を誤った。

 

 

「シャギャアァァァッ!!」

 

「た、倒しきれな…」

 

反撃が来る。しかし、大技を打ったヤンガスに避ける暇はなく…

 

「!」

 

来るはずの衝撃が来ず、ヤンガスが恐る恐る目を開くと、目の前に尻尾を剣で押さえるエイトの姿があった。

 

「兄貴…!」

 

「ぐ…っ…ヤンガス!もうあと一押し…っ!」

 

尊敬する兄貴分に一度ならず二度も救われて男を見せないわけにはいかない。ヤンガスはキングアックス・レプリカを大きく振りかぶった。

 

「ゼシカ!あっしに合わせるでがす!」

 

「でも!反撃が来るわよ!」

 

「次は確実に終わらせる!信じてくれ!」

 

「…!わかったわ!」

 

刹那、放たれる『メラミ』。今までのものよりひときわ大きな火球が『メモリア』の頭部に直撃し、意識がゼシカに向いた一瞬の隙を逃さずヤンガスは下から『メモリア』の顎に向かって振り抜いた。

 

ズガアァァン!!

 

「…ふぅ、いっちょ上がり。とんでもない強敵だったでがすな。」

 

会心の一撃。完全に沈黙した『メモリア』を見据え、ヤンガスは朝からどっと疲れたでがす、と笑いながらエイトたちに愚痴をこぼした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

…。

 

一部始終を見ていた俺は今までにないほど複雑な感情に苛まれていた。きっかけは単にデータの収集を目的として思いついたイベント。しかし、いつしかそれは自分の発明した兵器が今どこまで通用するのかを試す、という興味関心にとって代わられつつあった。

 

俺はエイトたち勇者を神格化しすぎていたのかもしれない。彼らは確かに世界を救う冒険者ではあるが、それでも人間である。殴られたら痛いだろうし、生命が維持できなくなれば死ぬ。俺はそれをわかっているようでわかっていなかった。結果、勇者たちは傷つき、ゼシカが死んだ。原因は全て俺の好奇心にある。俺が『メモリア』をけしかけなければゼシカは死ななかったのだ。やっていることは何ら悪役と変わらない。

 

途中で助けに行けばよかったのでは?と思いつつ、一方で勇者たちの戦闘を目に焼き付け続けたい、とも思った。…なんのことはない。俺は、俺だけがまだこの世界を「ゲームの世界」だと思っているのだ。勇者たちにとってはここが現実なのに。俺は自分の浅はかさと軽率さを酷く恥じた。

 

『メモリア』を一度『ラグランジュ』で見えなくしてから『賢人の見る夢(イデア)』に回収する。故障はしているが破損はしていないので復元は容易だ。しかしこればっかりはキラちゃんやアジトの魔物たちに修理を一任するわけにはいかない。今日徹夜で修理を行うことが俺の中で今決定した。

 

 

「あっ、ディム!大丈夫だった?さっきまで巨大な魔物がいて…」

 

「?」

 

「ディム?どうしたの?何か嫌なことでもあったの?」

 

「みなさん、僕をおもいっきりぶってください。」

 

俺は全員の目を見て大真面目に言い放った。

 

「「「??????」」」

 

「い、いきなりどうしたんでがすか?何か悪い物でも食べたんでげすかい?」

 

「ばか、食い物作ってるのはディムなんだから、悪いものなんて入れてたらオレたちも全滅だろ。……てか、お前ホントに何を言ってんだ?」

 

「ごめんなさい。僕はみなさんの信用を裏切るようなことをしました。僕は最低です。みなさんがこんなに傷ついていたというのに、僕は…」

 

「「「??????」」」

 

勇者たちは俺が何の話をしているのかてんで見当もついていない様子だ。本当なら全てを曝け出して謝りたいところだが、ここで勇者一行と敵対すると本当に全てが水の泡になってしまうので核心部分だけは言えない。…もしかしなくともこれ余計怪しいな?

 

「(ねえ、もしかして)」

 

「(なに?エイト)」

 

「(ディムはどこかから僕たちの戦いを見ていて、でも何か理由があって戦いに参加できなかったことを謝ってるんじゃないかな)」

 

「(なるほど、線としては十分あり得るな)」

 

「(ディムみたいなガキンチョならあんな怪物、見るだけでも怖気づくのが普通でがすよ)」

 

「ねぇディム。さっきまでに何があったのかわからないけど、私たちには貴方を殴る理由がないわ。今までいっぱい私たちを助けてくれたじゃない。」

 

「仮にお前がオレたちを裏切るようなことをしたとしてもだ。お前はオレたちにそれを告白して懺悔したじゃないか。神様もきっと赦してくださるさ。」

 

「みなさんの優しさ、本当に痛み入ります…それでも…僕の気が晴れないんです。どうか僕をぶってください。お願いします。」

 

「へっ、ディム。もしかして()()()()()()に目覚めたんでがすか?」

 

ヤンガスが茶化すように言ってくるが、もうこの際何でもいい。全て自分が仕組んだことではあるが、彼らに傷を負わせて、それを安全なところから見ていた張本人がその後も何食わぬ顔で旅に同行するというのはどうにも心持ちが悪い。

 

「はい。()()()()()()です。みなさんに一発ずつぶってほしいところですが、どうしてもというならゼシカさんに殴ってほしいです。」

 

ゼシカを死なせてしまったからね。俺がここまで堂々と言い切ると、茶化した本人であるヤンガスですら言葉を失ってしまった。

 

「お…おおう…そうでがすか…」

 

「ど、どうするみんな…?」

 

「…はあ、仕方ないわね…。私がやるわ。この子も変に頑固で、てこでも動かなさそうだし。……ディム。今回はキミの特殊な趣味、()()()()()()()()()()()()()()。でも、やるからには手加減しないからね。」

 

ゼシカはため息を吐くと俺の前に立って屈み、顔を近づけてウィンクをした。…容姿といい決断力といいほんとにもう、端から端まで魅力的な女性だ。俺が転生したのがドルマゲスでなくリーザスの村にいる誰かだったなら、きっと朝から晩までゼシカのことを考えるような人間になっていただろう。俺はそれに応えるように目を閉じた。

 

「え?ゼシカほんとにやるの?」

 

「当たり前じゃない。ふうぅ………おりゃああああっ!!」

 

パシン!!!!

 

愛の籠ったゼシカ全力のビンタは、俺のHPを有り得ないくらい削った。

 

「はあ…はあ…どうよ!これで満足かしら!」

 

「あ…ありがとうございます!」

 

「「ディム………」」

 

こんなもので許されたとは思っていないが、残りは俺が精力的に彼らの手助けをすることで償っていきたい。

 

まあ、本当に()()()()()()があると思われたのならばそれはそれで非常に心外ではあるが。

 

 

 

 

 




人造モンスターを倒したので勇者たちのレベルはめっちゃ上がりました。

少し長くなってしまいました、すみません。今回は本作勇者たちにとってはほとんど初のボス戦ですね。話の都合上初戦で撃退していますが、かなりの強敵で、しかも耐久値だけやたら高いため実際のゲームで実装されていればクソボスとして認識されることでしょう。

一方で悪役をやめると決めたドルマゲスにとって今回の浮かれた自分の軽率さにはかなり参ったようで、後半はかなりキャラが崩壊して暴走してしまいました。これからは自分の発明品を勇者たちにけしかけるようなことは無くなるでしょう。(勇者たちが勝手に首を突っ込んできた場合は別)「剣士像の洞窟」にいる仮想自律戦闘人形(プロトオートマター)二号機『エスパーダ』もこれを機に回収されることになります。


セキュリティサービスとプロトオートマターの違いについて

セキュリティサービスは大部分が魔物の本来の肉体でできています。身体の一部を人工筋肉で強化したり表皮を合金で覆ったりする程度の改造と、脳の中枢部に行動を制御する単純な装置を埋め込まれています。(セキュサの元になる魔物は既に絶命しているため意志は無い)人間には絶対に危害を加えない、魔物は撃退する、の二点を遵守するように作られており、メンテナンスすればアスカンタのセキュサたちのように荷物運びをさせたり、子どもの遊び相手になったり、日常生活を共にすることも可能。

プロトオートマターは科学技術と魔法技術を駆使して一から作られた機械兵器であり、魔力炉を原動力としています。複数の魔物の細胞を埋め込むことで様々な特殊能力を持っており、「殲滅(一号機、形状モデルは「バベルボブル」)」「攻撃(二号機、モデルは「ヘルクラッシャー」)」「速攻(三号機、モデルは「キラーパンサー」)」「耐久(四号機、モデルは「アルゴングレート」)」と様々な能力に特化しています。プログラム次第では今回のように人間を襲わせることもできますが根底には人間第一のルールがあります。操作権限はドルマゲスとキラ(三号機のみ)にしかありません。











最近出番のない彼女のイラストを描いてみました。絵柄は藤森ナッツ先生リスペクトです!




【挿絵表示】


普段キラが移動する際に足となるプロトオートマター参號機の『ソルプレッサ』は乗り込み型なので、別にキラがライダースーツを着用する必要はないのですが、そこはカッコいいもの好きなドルマゲスの趣味にまんまとのせられちゃった形です。
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