ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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(ドルマゲスくんの健闘むなしく)舞台は整いました。








第六章 道化師の成長と因縁の城

ハロー、お久しぶりです。六年の時を経てついに初級呪文を使えるようになった魔導士道化師のドルマゲスです。呪術の方の成長はさらに凄まじいものになっておりますので呪術師道化師のドルマゲスでもあります。長らくこの町に住んでいますがトラペッタは代わり映えがないですねぇ。そしてそれがこの町の良いところでもあります。

 

 

 

 

俺が呪術を習得してから六年が経った。この六年の内に色々なことを経験した…というのも原作ドルマゲスが港町ポルトリンクからマイエラ地方に渡った時のような海の上を歩く術(理論的には、念力で自身を持ち上げて移動させている)を身に付けてからは度々小旅行に出かけていたので、各地の情報が耳に入ってくるのだ。訪れた場所を列挙するとリーザスの村、ドニの町、アスカンタ王国、願いの丘、メダル王女の島、ベルガラック、ラパンハウス、サザンビーク王国などだ。余所者を異常に排撃するマイエラ修道院や、治安が最悪なパルミド、魔物のレベルアベレージが高いリブルアーチ以北の町、まあまあ遠い上に物資を補給するところのない聖地ゴルドやサヴェッラ大聖堂には行っていない。当たり前だがトロデーンには行っていない。アスカンタやサザンビークなどでトロデーン行きを勧められたが、全て丁重に断った。

 

現在のレベルは教会の神父さんに聞いたところ28だと言われた。六年も費やした割にレベルが低い?主人公はひと月もかからずに暗黒神を倒した?そんなものは知らん!大体俺の一日のスケジュールはかなり厳しい。朝のうちに家事を終わらせ魔法の修練。昼前に昼食と夕食の準備。昼から呪術の修行と筋トレ。夜に言語の勉強と科学研究。魔物と戦ってレベルを上げようと思ったら夕方くらいしか時間がない。旅行中にレベルを上げようにも、こちとら呪文は初級のものしか使えないもんで。マヒや眠りにしてくる敵とは絶対に戦えないし。遊び人(ピエロ)の一人旅なめんなよ!アスカンタ地方の魔物くらいとは何とか戦えるが、サザンビーク地方では基本的に逃げてばっかりだった。

 

一方で装備については盤石だ。海渡りを覚えてしばらくしたころに「人跡未踏の森」に海側から入ったことがある。森に入った直後は軽い気持ちだったが、生息する魔物の凶悪な強さに何度も死を覚悟した。奇跡的に集落である「三角谷」には命からがら到着したが、もう二度と行くまい。そこで「ふぶきのつるぎ」を購入したのでしばらくは買い替える心配はないはずだ。また、六年間各地でこつこつと集めてきた「ちいさなメダル」をメダル王女に見せることで、王女から「道化の衣装」を下賜された。道化師たるもの、形から入らねばな。うんうん。

 

あとは、武者修行を兼ねて旧修道院跡地に赴いて伝染病の残滓に苦しみ襲い来る亡霊たちを全滅させたり、大道芸人としてリーザス村へ行って赤ん坊のポルクとマルクを笑わせたり少女ゼシカを手品で楽しませたり、二年前には危うく崖下へ滑落しそうになっていたアスカンタ王国の王妃シセルを助けたり、最近はドニの町でククールとポーカーで勝負したり…とにかく色んな事をやった。ククールがイカサマをすることは分かっていたので、こっちも呪術でズルをしてやった。勝負後も憤ったりせずに「やれやれ、一本取られたね」とすました顔でいうあたり、なんとも見上げた伊達男だと感心したのも記憶に新しい。

 

今から俺は戦闘の訓練だ。俺はレベルこそ低いが戦闘のスキルは悪くない。なにしろ良い修行相手が現れてくれたからな。

 

「さて、ドランゴ。始めましょうか?」

 

そう、俺はついに宿敵ドランゴに打ち勝ったのだ。打ち勝ったといっても搦手を使いまくって粘り勝っただけなのだが、勝ちは勝ちだ。バトルロード闘技場には寄っていないのでモンスターを連れていくことは叶わないが、ドランゴは俺を認め、修行に付き合ってくれることになった。

 

修行の時は万一のことを考えてドランゴには木刀を持たせてある。木刀と言ってもサザンビーク王国のバザーで仕入れた一級品だ。当初ドランゴは自身の半身ともいえるハルバード以外の武器を使うのを躊躇っていたが、俺がこの木刀を入手するのにどれだけ苦労したかを説き伏せるとドランゴはしぶしぶ応じてくれた。

 

そう、()()()()()。俺はなんと魔物と対話できるようになったのだ!

 

きっかけは数年前…研究の一環で魔物を観察していた時だ。モンスターの群れを遠くから見ていると、時折魔物同士で向き合い、鼻を掻いたり、首を斜めに動かしたりと特徴的な仕草をすることがあった。俺はそれをコミュニケーションの一種と仮定し、「滝の洞窟」から人語を解するスライムを引っ張り出してきて、毎回料理を御馳走するという条件付きで魔物のコミュニケーションについてレクチャーを受けることになった。多言語を解する魔物は(自称)めちゃくちゃ賢い魔物らしく、俺はスライム先生の自慢を適度に聞き流しながら魔物のコミュニケーションについて勉強した。

 

何百種といるモンスター全部の言語を覚えるのは無理だろうなあと思っていたのだが、スライム先生曰く同系統の魔物は同じ言語が通用するらしい。つまり、スライム系の魔物は全てスライム語が通じるということだ。また意思の疎通が不可能な魔物が多いゾンビ系とマシン系の魔物の言葉は難解な上、覚えても大した強みにはならないという。よって俺はスライム語・自然語・魔獣語・ドラゴン語の四つの言語に絞って少しずつ勉強することにした。悪魔語と物質語はめちゃくちゃ賢いスライム先生でも知らないらしいので仕方ない。エレメント語も覚えても良かったのだが、一気に色々覚えても逆に効率が悪そうだったので今回は断念した。

 

スライム先生はドラゴン語も知っていると豪語していたくせに、では教えてくださいと言うと途端に焦り始めたので、おそらくほんの少ししか分からないのだろう。俺としてもドランゴとの対話はぜひできるようになりたかったので、トロデーン近郊にある「荒野の山小屋」に行き、井戸の中に詰まっていたスライムたちを救出して話を聞いた。トロデーン近郊には「デンデン竜」がいるので、あるいはと思ったのだが、見事そのスライムたちはドラゴン語を習得していたので、了承を得てスライムを一匹連れ帰りドラゴン語を教えてもらうことにした。『スライム先生』だとどっちか分からなくなるので、滝にいた方を『先生』、荒野にいた方を『教授』と呼ぶことにした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「だーかーらっ!その体の振り方じゃ『このアホウ』って意味になっちゃうよ!『ありがとうございます』はこう!わかる?」

 

「は、はい・・・」

 

夕食が済んだので今日も町の外で授業を受けているのだが、正直スライム語が一番難しい。スライムたちは体どころか手足も鼻も耳も無いので、ぷるぷるとした身振りだけで全ての言葉を伝えるのだ。些細な違いが大きな誤解を招きかねない。先生たちも初めは他人行儀だったのだが、五年も言語を教えていると慣れたもので、かなり砕けた口調になっていた。

 

「そう!今のが『ありがとうございます』だよっ!よーし今日はここまで!また明日!明日の料理はお菓子がいいな!」

 

「先生、ありがとうございました」

 

「うん!じゃあね!ドルマゲスくん!」

 

そう言うと先生は教授と共にぴょいぴょいと滝の洞窟へ帰っていった。先生は教授よりも感覚派の講師なのでなかなか理解できないことを言う時も多いが、めちゃくちゃ賢い魔物というのもあながち誇張でもないらしく、俺は簡単な会話程度なら4つの言語全てで出来るようになった。これもそれぞれの言語がかなり単純なことと、この肉体の高い頭脳スペックのおかげである。俺は体をくねくねと振って反復練習しながら家に帰った。その姿は町の人からはたいそう奇妙に映っただろうが、道化師が奇妙な動きをするのは当然っちゃ当然のことなので誰もたいして気にしてはいないだろう。

 

 

「おお帰ったかドルマゲス」

 

「はい師匠、ただいま帰りました」

 

「早速だがな、ついさっき良いニュースと悪くはないニュースができた。悪くはないニュースから教える」

 

何故か師匠のテンションが高い。何か良いことがあったのだろうか。

 

「なるほど、ではお願いします」

 

「うむ、実はついにわしの研究が完成の一歩手前まで来たのだ!」

 

「おお!というと例の魔法薬のことですね?」

 

「そうだ!わしはこの薬を『大魔聖水』と名付けた。魔法を使えない者の才能を強引に引き出す秘薬だ。」

 

師匠はアメジスト色に淡く輝く液体の入った一本の試験官を自慢げに取り出した。おお、ついに完成したのか!苦節数年、魔法の使えない俺のために研究を続けてくれた師匠に惜しみない感謝の念を送りたい!しかしここで『師匠、私のために…』など言うと師匠が照れ隠しをしてややこしいことになりそうだったので、少し返事を工夫する。

 

「それはそれはおめでとうございます!……!もしや、その薬には私の魔法問題を解決する可能性もあるのでしょうか!」

 

「…うむ、その通りだ。ぜひお前にはこの大魔聖水の実用試験の実験台になってもらおうと思ってな。」

 

「それはありがたい!了解しました。では早速…」「こら待たんか!」

 

俺は師匠から大魔聖水を受け取ろうとしたのだが、その手をぴしゃりと叩かれてしまった。

 

「最後まで話を聞け!この薬はな、希少鉱物である魔力の結晶体『マデュライト鉱石』の原石をふんだんに使用した魔力の塊だ。一度飲むと体内で魔力の奔流が巻き起こり、体内の魔力生成、蓄積、放出を阻害するあらゆる障害を無理やり洗い流す非常に強い力を持つ。もしこの薬を飲むときは体内の魔力を空にしてから使うことだ、さもなければ…」

 

「さ、さもなければ…?」

 

「最悪の場合爆発四散して肉片の一つも残らない」

 

怖すぎる。そんなもん秘薬というより劇薬じゃないか…しかし用法・用量を守れば世界をひっくり返す大発明であることには変わりないだろう。やはりこの世で使えない魔法は無いとまで言われた賢者マスター・コゾの子孫なだけある。ただの頑固おやじではなかったのだ…いやそんなふうに思ったことないけども。

 

「そ、それは怖い。では師匠が持っていてください。然るべき時に譲り受けますので…ところで、良いニュースというのは?」

 

「うむ…。それで良いニュースはだな、来週ミーティア姫の18歳の生誕祭が開かれることになった。本当は先月の予定だったのだが、急遽トロデ王が今回で成人となる娘を盛大に祝いたいとのことで準備のため今月に持ち越されたのだ。その規模は六年前の生誕祭をも超えるらしい。」

 

あ。またか。また嫌な予感がする。

 

「なるほど、それは喜ばしいことですねぇ。して、今回も師匠が向かわれるのですか?」

 

「それがな、今回王はお前をご指名された。なんでもアスカンタのパヴァン王から熱烈な推薦を受けたらしく、それで国内の各地でお前について調べさせたところ、お前はたいそう優秀な道化師らしい、ということが分かり今回のトラペッタ代表をお前に決められたのだそうだ。王に直接指名されるとは…こんなに名誉なことはないぞ。師であるわしも鼻が高いわ。」

 

うーわ…余計なことしちゃったかな…なるほど、確かにトロデーン国領の町には全て道化師の遊行として訪れた。行ってないのはトロデーン城だけだ。どこの町でも滞在していた時間は一日もなかったはずだが(リーザス村には何度も行った)、何人かの物好きは俺の名を覚えていた、というわけだ。この指名を断るわけにはいかない。トロデ王は良識ある人物なので断ったところで即座に俺を投獄したりするようなことはないだろうが、王の厚意を無下にしたとしてトロデーン王国内での俺の評判はガタ落ちするだろう。最悪トラペッタの町にもいられなくなるかもしれない。

 

「(仕方ない、心底気は進まないが…)それはなんとも光栄なことです。ぜひ行かせていただきましょう。」

 

「それから、わしも同行する。六年前に姫の誕生日を祝った身だ、今回もぜひご尊顔を拝みたい。」

 

「おお、それは心強いです!出発はいつになりそうですかね?」

 

「明後日だ。明後日の夜明けに迎えの馬車が到着することになっている。準備は早めに終わらせておくのだぞ」

 

「はい!!(急すぎんだろ!)」

 

さてはこのジジイ、自分の研究の完成と合わせたくてずっとこの話を伏せてたな?…俺は嫌々な気分を押し殺し、死んだ目でクッソ良い返事をした。本音と建前が逆になるというベタなボケをかます気力すらなかった。

 

 

 

 

 

 




作中ではシセル王妃の死因は明かされなかったので(国民や王のセリフから、おそらく他殺や自殺ではなく、病死か事故死と考えられる)、今作では事故死であるとします。

少し6年間の中身が分かり辛かったので時系列をはっきりさせ、語られなかった出来事も少し書いておきます。


6年前
(第五章終了時)魔術書を受け取る

呪術の才能が開花、海渡りを習得、リーザス村に初めて遊びに行く

マイエラ地方でレベル上げ、旧修道院跡地に籠る

レベルが上がってMPが微増し、なんとか初級呪文を使えるようになる

アスカンタ地方でレベル上げ(かなり危険だった)、願いの丘を観光する

5年前
軽い気持ちで人跡未踏の森に侵入し、地獄を見るもなんとか三角谷に到着、そこで魔物の意思疎通について疑問を持つ

トラペッタ地方の魔物を観察し、魔物同士で会話する方法があると仮説を立てる

スライム先生に教えを乞う、荒野の山小屋でスライム教授を連れてくる

「ぶきみなひかり」や「あやしいひとみ」「呪いのきり」など搦手を駆使してドランゴを打倒する

4年前
ドラゴン語をあらかた習得し、改めてドランゴに会いに行き修行をつけてくれるように頼みこむ

師匠に頼んで大図書館の魔導書とマスター・コゾの手記を読ませてもらい、この世界では珍しい魔法も習得する

サザンビーク地方に遊びに行く(戦闘からは逃げ回る)

サザンビーク王国のバザーに参加する

ラパンハウスに行くもキラーパンサーには懐かれなかったので帰る

ベルガラックのカジノで大負けして帰る

3年前
工具さえあればガラクタから自律機構を持ったマシンを作れるようになる

アスカンタ地方でレベル上げをしながらフィールドの宝箱を回収して回る

マイエラ地方とリーザス地方でも宝箱を回収する

集めた「ちからのたね」などの種を培養しようと試みるが断念する

2年前
生前少しかじっていた現世の魔術を少しだけ呪術で再現できるようになる

自然語と魔獣語は大体扱えるようになる

アスカンタで遊行中、川沿いの教会近くを散歩中に崖下に落ちかけたシセル王妃を救出する

去年
ドラゴン語を習得する。スライム語だけはなかなか覚えられない。

ドニの町でククールとポーカーで勝負して勝つ。イカサマVS呪術。

メダル王女の城へ行き道化の衣装を貰う

第六章開始



ドルマゲス(男・28歳)
趣味:鍛錬・研究・勉強・料理
レベル:28(一人だとサザンビーク地方でも苦戦するレベル)
魔法:初級攻撃・妨害呪文+初級回復・補助呪文+この世界では珍しい魔法(ザバ、ジバリア、ベタン、インパス、トラマナ、アバカムなど)
呪術:まあまあ色んなことができる
言語:魔獣語・自然語・ドラゴン語は日常会話なら問題ないレベル。スライム語はまだちょっと怪しい
科学:まあまあ色んなものを作れる
好きなもの:旅
嫌いなもの:チャゴス王子
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