ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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第三十七章 収束と暗黒 ⑤

ハロー、運命の戦いが近づいてきてドキドキしている道化師ドルマゲスです。ユリマちゃん/ラプソーンのこともそうなんですがヤンガスがほとんど真相に到達しててヤバいですね。いずれはサーベルトたちと共に正体を明かすつもりなんですが、いつ明かすかとかは全然考えて無くて…とりあえずラプソーンとの戦闘中に不和は生まないよう、闇の遺跡においては現状を維持しておきたいですね。既に不安定な足場ですが。

 

 

─北西の孤島─

 

俺はサザンビークでボロを出してしまったことを今めちゃくちゃ後悔している。さっきから、というかサザンビークを出発してからヤンガスの目が怖すぎる。その視線は最早人に向けるものじゃなくて完全に仇の魔物を見る目なんですよぉ。ゼシカはともかくあんたには何もしてないのに。この風貌か!?おちゃらけたゲマみたいな見た目がいかんのか!?…いやいや今は変装(変身)してますし…。

 

「なーんか気味の悪い島…こんなとこにほんとに『魔王』はいるのかしら?」

 

「むしろピッタリじゃないか?オレからすりゃあんなのにベルガラックやサザンビークみたいな人の多い場所に居座られる方がずっとコワいぜ。」

 

「でも、闇の遺跡に『魔王』がいるってことを裏付ける証拠が魔王本人の独り言だけなのはちょっと心もとないよね。」

 

「うーむ、仮に魔王がここにいたとして、その間にドルマゲスがどこかで悪事を働いておる可能性もなきにしもあらずじゃ。魔王がいたなら魔王の討伐、いなかったらその時はその時じゃ。わしらにできることはさっさと闇の遺跡を探索して次に進むこと。そもそもの目的はドルマゲスなのじゃからな。」

 

「ドルマゲス、早く会いたいわ…会ったらこの手でボコボコに叩きのめしてやる。」

 

ゼシカがなにやら物騒なことを言っているが知らん。今の自分はディムだもんねー。俺たちは船を海岸につけ、北西の孤島に上陸した。流体力学を嘲笑うかのようなふざけた船だったが、乗り心地は良かった…流石は魔導船。ここはぜひとも分解して内部の機構を見てみたいところだが…そんなことしたら怒られるどころじゃ済まないだろうからやめておく。

 

北西の孤島は岩場と荒地だけで構成された物寂しい島だ。年中霧が立ち込め、闇の遺跡から発生している紫雲によって日の光も差さない。おまけに生息する魔物は毒やマヒの攻撃を使ってくるかなり面倒な種が多いと来た。できれば長居したくない場所だ。サザンビークから今までは経験値分配的な意味で勇者たちの戦闘には極力参加してこなかったが、補助くらいはしてもいいかもしれない。湿気の高さゆえか服が肌に張り付いて気持ち悪いので早く帰りたいです。

 

「ん?あれは船…どうやらアッシらの他にも誰か来てるみたいでがすね。」

 

ヤンガスが指さした方を見ると、なるほど、確かに小さな船が見える。遠いのによく見えるなあ。…あれは『ギャルーザー』…か?ベルガラック町長にして賢者の子孫ギャリングの私物の船だったはず。

 

「ほんとだね。…ちょっと見に行ってみる?もし僕たちと目的が同じ人が来てるなら協力を仰げるかもしれない。」

 

まあ無駄だとは思うけど…と言いたい気持ちを抑え、俺はエイトたちについていった。

 

 

「…このまま奴を追っていくのは危険ではないか?何しろ奴はギャリング様の邸宅を…」

 

「あの~…」

 

「むっ!何者だっ!?」

 

「いきなりすみません。僕たちは旅の者でして…こんなところでいったい何をしていらっしゃるのですか?」

 

「…私たちと奴以外にこんな島を訪れる者がいるとは……。モノ好きな連中だな。忠告しておいてやろう。この島の中央にある古い遺跡には近づかないことだ。もし忠告を無視して遺跡に向かうのなら何が起こっても知らないぞ。」

 

「…ありがとうございます。ところであなたたちは?」

 

エイトがそう尋ねると、先ほど丁寧に忠告してくれた顎のめちゃ長い戦士は立派な髭の僧侶と心細そうな表情の魔法使いを集め、自分たちこそギャリング私兵隊だと名乗った。

 

「ギャリング、ギャリング…聞いたことがあるな。」

 

「ククールさん、ギャリングはベルガラックの町長の名前ですよ。」

 

「ああ、どおりで。そういや結局ゲルダの船を返すために町を離れたまま、ベルガラックには立ち寄ることは無かったな。あんたらの御主人は元気でやってるのか?」

 

「うん?キミ、あの事件──ギャリング様の邸宅が襲撃された事件を見ていたのか?もちろんギャリング様もフォーグ様もユッケ様も息災だ。しかしあのような襲撃が二度無いとは限らない。私たちは襲撃事件の調査を命じられて犯人を捜索しているのだ。」

 

「ふむ。ならオレたちと一緒か。ならもちろんその相手があの悪徳の町(パルミド)で恐れられている『物乞い通りの魔王』だってことくらいは知ってるよな?」

 

「当たり前だ。我々はパルミドにもわざわざ足を運んだのだからな。」

 

あんな薄汚い街にはできればもう行きたくないものだが、と顎のすごく長い戦士はため息をつき、後ろに控える僧侶と魔法使いもうんざりした表情を浮かべる。どうやらこの顎のやたら長い戦士が私兵隊のリーダーらしい。ギャリングも独自に捜査を行ってくれているようで、それは結構なのだが、この私兵隊、どうみても任務に実力が見合ってない。レベルにして20前後だろうか?一般人にしてはかなり鍛えられていそうだが、こんなんじゃ闇の遺跡の魔物にも太刀打ちできなさそうだ。パーティも3人だし、かなり挑戦的な構成である。

 

「それで、ここでなにをしてるんでがすか?」

 

ヤンガスがそう言うと顎が超長い戦士はぐっ、と言い淀んだ。

 

「恥ずかしい話だが…ここら一帯の魔物が強力で前に進めんのだ。」

 

「…と言うのは建前で、そもそもギャリングさんにケンカを売るほどの度胸と実力のある相手を前に私たちの勝ちの目はあるんでしょうかってことなんです。」

 

こっそりと髭の立派な僧侶が付け足す。建前もくそも事実でしょうよ。あんたらにラプソーンが倒せるわけないし魔物にも勝てんよ。彼らも雇われの身とはいえ随分損な役回りを押し付けられたもんだ。可哀想に。

 

「あたしたちはギャリング様から『どうしても危なそうだったらそこで調査を切り上げてもいい』と仰せつかっているのよね。だから帰ろうかどうしようかでさっきまでみんなで相談していたわけなのよ…」

 

魔法使いは「私はもうさっさと帰りたい派です」と言わんばかりのげっそりとした顔をしてそう話をまとめた。なるほど、ギャリングもついに「いのちだいじに」を学んだわけだ。そうそう。エイトたち(こいつら)と違って我々は死んだら終わりですからね。

 

「でしたら…」

 

「キャシィィィア!」

 

「まずいっ!魔物の群れだっ!」

 

エイトたちは一斉に臨戦態勢を取り、俺は襲ってきた相手を注意深く観察する。…ふむ、「死霊の騎士」2体、「レッサーデーモン」1体、「きめんどうし」1体、「マージマタンゴ」3体か。状態異常にしてくる「きめんどうし」と「マージマタンゴ」が面倒か。数も多いし、ちょっと加勢が必要かな?

 

「ぐぅっ!おいっ!キミたち!コイツは任せろ!他は頼む!」

 

そう叫ぶとギャリング私兵隊は3人がかりで「きめんどうし」を囲んでタコ殴りにし始めた。その様子はどう見てもリンチにしか見えないのだが、正直厄介な呪文を使う「きめんどうし」を剥がしてくれたのは助かる。

 

「ありがとうございます!エイトさん!そっちの骸骨と赤い化け物は頼みます!僕はこっちのキノコの足止めをします!」

 

「わかった!すぐ終わらせてそっちに行くからなんとか耐えてて!行くよヤンガス!」

 

「がってん!」

 

ヤンガスの大きく振りかぶったオノが「死霊の騎士」の脳天に炸裂し、頭蓋骨がはじけ飛ぶ。しかし相手は死霊、頭が無くなったところで動きは止まらない。

 

「さて…」

 

俺は目の前の魔物に向き直った。こう見えて今、俺は内心でかなりドキドキしている。…なにも目の前のキノコが怖いわけではない。

 

……これまで幾度となく『運命が収束する』場面があった。俺が数年前から勝手に活動してチャートを乱しまくっていたのに、結局はトロデーンに向かう羽目になり、同国は原作通りイバラに包まれてしまった。勇者たちは原作でのイベントを、違う形とは言えほとんど消化して来ているし、俺が回避した役回りは現在何故かユリマちゃんが担っている。偶然にしては出来過ぎだ。ともかくなにかしら人知の及ばないことが起きていると断定してもいい。…となるとこの闇の遺跡で俺、あるいはユリマちゃんが死亡する可能性は大いにある。キャラクターならば俺、役回りならばユリマちゃんが死ぬ。もちろん本来死んでいるはずの賢者たちやシセルが生きているため根拠もへったくれも無いのだが、あえて言えば「イヤな予感」がする…ネットリ張り付くような死の気配に緊張が収まらないのだ。

 

…要するに、準備を怠ると芳しくない結果を催すことは確実、こんなところで立ち止まるわけにはいかない。

 

俺はじりじりと距離を詰めてくる「マージマタンゴ」たちに対話を試みた。

 

「(この島に杖を持った女性が現れましたね?その人は今もこの島にいますか?)」

 

マージマタンゴたちは一瞬驚いたように顔を見合わせたが、すぐに警戒した表情に戻った。

 

「(さぁナ。来たかもしれんし、来てないかもしれねェ。お前に教えてやる義理はねェ。)」

 

「(知ってるが、お前はどうせおれらの養分になるんだし関係ねェ。)」

 

「(せめて痛くないように眠らせてから息の根止めてやるヨ!)」

 

随分とガラの悪いキノコだ。ま、こんな荒んだ土地で育ったのだから性格も荒んでいたとして、誰が責められよう?俺はマージマタンゴたちの吐く「甘い息」を「ぎゃくふう」で押し返した。流石に相手も自分の息で眠るようなことはなさそうだが少し怯んでいる。俺はその隙を逃さず素早くマージマタンゴAとの距離を詰め、目玉をむしり取って口に腕を突っ込み、口内から『イオラ』を爆裂させた。すぐにマージマタンゴAの全身から黒煙が噴出し、物言わぬキノコとなる。目玉はおやつにでもしようかな。

 

「(お…な、なんだお前ェ!?)」

 

「(しらばっくれるのをやめたら逃がしてあげますよ。)」

 

「(ほざケ!)」

 

俺はマージマタンゴBの突進を躱し、懐から取り出した「鉄のクギ」で相手の足を地面に縫い付けた。

 

「(てめェ…何をする気ダ!)」

 

「(下拵えです。)」

 

「(…ハ?)」

 

俺はそういうや否や取り出した「ひのきのぼう」で思いっきりマージマタンゴをぶん殴った。ほとんどダメージは入っていないし、脚が固定されているので吹っ飛びもしない。しかし構わず俺はもう一発殴る。もう一発、もう一発、さらにもう一発。

 

「(テメッ!ぶっ!くそッ!がっ!なんの!つっ!もりっ!でっ!)」

 

「(キノコはですねぇ、『肉』なんですよ。)」

 

「(なにヲ…)」

 

マージマタンゴたちから表情が喪失した。

 

「(殴れば殴るほど肉質が柔らかくなる。変な粉も落とせて一石二鳥です。あなたが意識を失っても死んでも殴るのをやめません。この弱っちいひのきのぼうであなたの身体の輪郭があやふやになるまで殴ります。そうすれば人間の子どもでも安心して食べられる柔らかくてヘルシーなミートの完成です。きっと栄養もあるんでしょう。ああ、今から食べるのが楽しみです…。)」

 

「(エ…!?)」

 

殴られ続けているマージマタンゴBも、遠巻きに傍観することしかできないマージマタンゴCも言葉を失っている。殴っていてわかるがマージマタンゴ、こいつはかなりいい食材だ。水分の少ない荒地で育ったからか旨味が凄い。…というのはさっき爆裂させたAを少し齧っただけだが、味付け無しでもキノコの上品な香りが染みついていて美味かった。毒も無さそうだし、今度来たらいっぱい捕まえよう。

 

「(一度そうなってしまえば自然と魔力も抜け、保存も効くんですよね。何にしましょうか?強火で炒めてキノコステーキ?バターと一緒に閉じ込めてキノコホイル焼き?簡単に醤油(ソイソース)だけでキノコ炒めにするのもアリかも。…あ、もう意識ないですね。じゃあこのくらいにして…保存しときましょう。)」

 

俺は目玉も歯も全て抜け落ちた、辛うじてキノコの原形を保っているマージマタンゴBをパックに入れて異空間に仕舞った。

 

「(さて、アナタはどんな料理になりたいですか?)」

 

「(ヒ…も、もう…)」

 

「(もう?)」

 

「(もうかなり前になりますが確かに杖を持った女がこの島にやってきました。その女はまっすぐ闇の遺跡へと向かい、今日までそこから出てきたという情報は現在まで入ってきておりません。遺跡内から出てきた魔物たちの話によると『ラプソーン様がお帰りになった』と彷徨う魂たちが騒ぎ出したらしく、このことから遺跡にやってきた女は暗黒神ラプソーンの新たな依代であることが推測されます)」

 

さっきまでの片言はどうしたんだとつっこみたくなるほど流暢な喋りで、マージマタンゴCは情報を教えてくれた。やっぱり情報を吐かせるには同じ種族を相手の目の前で調理するのが一番手っ取り早い。全ての生命体には「食われる」ことに対する根源的恐怖が備わっているものなのだ。約束は約束なので情報をくれたマージマタンゴは逃がしてやったが、これでラプソーンがまだ闇の遺跡にいることが確定したので良しとする。

 

「…ふう」

 

料理はいい。料理のことを考えている時だけは他の悩みも全部吹き飛ぶから。どうやらエイトたちの方も無事に終わったようだ。

 

 

「それでね、赤い魔物はまぶしい光をぶつけてきてみんな目がくらんじゃったんだけど、私は全然大丈夫!ディムの『ジゴフラッシュ』の方がもっと眩しかったからね!」

 

ん?嫌味かな??サーベルトの妹君にしては中々良い性格してるじゃないですか~~~。

 

「あ、いや、違う違う!褒めてる!誉め言葉だから!」

 

俺の微妙な顔を見てゼシカは慌てて捕捉を入れる。褒めてくれていたらしい。サーベルトと似て良い子だね!!!

 

「ごめんね、僕たちが手こずっちゃったせいで加勢に行けなくて…大丈夫だった?」

 

「はい、相手は逃げていきました。分断したのが功を奏したのかもしれませんね。」

 

「ってか、ギャリング私兵隊だっけ?あいつら結局帰ったのかよ。何しに来たんだか。」

 

「まあいいじゃないでがすか。無理なことをさせて目の前で死なれる方が寝覚めが悪いでがす。」

 

「ま、それも一理あるな。」

 

そう、さっきの戦闘が終わった後、ギャリングの私兵隊は全員ズタボロの満身創痍になっていた。正直「きめんどうし」一匹に何をどうしたらそうなるのか小一時間ほど問い質したいものだが…まあ、全員無事で良かった。こんなんじゃ『魔王』には絶対通用しない、と伝えると戦士も僧侶も魔法使いも死にかけの状態ながら大きく頷き、船で逃げるように帰っていった。彼らは弱いわけではない、ただ来る場所が悪すぎただけだ、と彼らの名誉のために付け加えておくことにする。

 

「しかし、あの私兵隊とやらもこの島に来ておるということは、いよいよ『魔王』がここにいることは間違いなさそうじゃな。お前たち、気を引き締めていくんじゃぞ。」

 

俺たちは島の中央にある闇の遺跡の前まで到達した。霧は更に深い濃霧となり、紫の靄と混ざり合って気味の悪い何かが蔓延している。先ほどまで襲ってきた魔物も徐々に数を減らし、今は互いの呼吸の音が聞こえるほどの異様な静けさが場を支配していた。

 

「なんだ、結界なんてないじゃない。入り口もほら、開いてるわ!」

 

ゼシカは颯爽と遺跡の内部へ走っていったが、しばらくすると同じ勢いのまま入り口から飛び出してくる。

 

「あ…あれ?みんないつの間に先回りして…?」

 

「僕たちはずっとここにいたけど…ゼシカが戻って来たんじゃなくて?」

 

「あれぇ…私はまっすぐ走ってたつもりなんだけど…」

 

「まさか、これが『暗闇の結界』か?」

 

「はい、おそらくそうです。通常の結界が外界からの侵入物を鉄壁の守りで拒絶する『硬』の結界だとすれば、暗闇の結界は侵入物を受け流して中へ通さない『柔』の結界とでもいえますかね。『暗闇』の掴みどころのなさが結界にも反映されているのかもしれません。…そこで太陽のカガミの出番というわけです。」

 

小首をかしげるゼシカや困惑するククールたちに俺は適当な考察を述べ、エイトに太陽のカガミを手渡した。

 

「これをどこかに嵌めるってこと?でもどこに…」

 

「…ん、おっ!エイト、ここじゃないか?ちょうどいいところにその鏡くらいの大きさのくぼみがあるぜ。」

 

「…なあ、ゼシカ。アッシらはこのままアイツの言う通りにしてもいいんでがすかね?」

 

「?何言ってんのよヤンガス?ディムはリリコさんを探す、私たちは『魔王』を探す、利害が一致してるからこうやって協力してるんでしょ?」

 

「しっ!それはその通りなんでがすがね、アッシにはどうもみんながディムに操られているような気がしてならないんでげすよ。」

 

「えぇ…何言ってんのよ。……ゲルダさんが傷つけられて許せない気持ちはよく分かるわ。でもその怒りはディムじゃなくて『魔王』にぶつけるべきだと私は思うんだけど。何か気になることがあるなら…ってな、なに!?ご、ごめん後で!」

 

なんとなくヤンガスが余計なことを言いそうな気がしたので俺は急いでエイトに鏡をはめ込ませた。瞬間、鏡に蓄積された光の魔力がレーザーのように放出され、まばゆい光の輝きをまともに浴びた暗闇の結界は完全に霧散する。

 

「よし、これで闇の遺跡に入れそうじゃな!エイトよ!わしはお前たちの勝利を信じて姫と共に待っておるぞ!」

 

「はい!王様!行ってきます!」

 

「任せときな、『魔王』をとっ捕まえてドルマゲスのことも洗いざらい吐かせてやるぜ。」

 

「負けっぱなしでいられるもんですか!次は『魔王』に一泡吹かせてやるわ!」

 

「……まあ、今は目の前の魔王が先でがすな。」

 

「(ユリマさん…)」

 

俺たちは結界を破ってなお暗黒渦巻く闇の遺跡へ、初めの一歩を踏み出した。

 

 

 

…正確には「エイトたちは」か。俺は最初の一歩が最後の一歩になったわけだから。

 

 

─闇の遺跡─

 

俺たちが闇の遺跡に侵入した瞬間、「声」がした。おそらく脳内に直接語りかけるテレパシー。俺だけか、それともエイトたちも聞こえたのかどうかは知らないが、その声は良く知ったものだった。忘れられるはずもない。

 

『やっと、来てくれた…来てくれるって信じてました…』

 

「!!!ユ…」

 

その瞬間、俺の身体がふわりと浮き上がる。というよりかは『重力』で上に引っ張られていると言った方が正しいか。俺は直ぐに自分の身が危険に曝されていることを察知し、携帯念話弐號(フォンⅡ)に魔力を流し込んだ。

 

「きっ、キラさん!そっちの私に急ぎ連絡を!今すぐ準備を整えてください!」

 

『ひゃっ!え、ど、どるま、えっ!?あっ!はい!準備は既におわ、おわ、だ、大丈夫で─』

 

最後まで聞き終えることなく、ぐしゃん、と材質的に有り得ない音を立てて石板はグズグズに潰れてしまった。やばい…っ!

 

「でぃ、ディム…それどうなってるの…?」

 

「準備って…誰と話してんだ…?」

 

「…」

 

「エイトさん、僕は一足先に最深部に行くことになりそうです。虫のいいお願いでごめんなさい、できるだけ早く、早く最深部まで…!皆さんの力が必よ…」

 

俺の身体は浮き上がったまま前に強く引っ張られた…正しくは前に()()()。その速度は正しく自由落下、加速度的に速さを増していく…!間違いない、これは重力魔法!俺と師匠以外は使えないはずの…ッ!

 

「ぐ…ぅ…は…息が…」

 

(ディム)の名を叫ぶエイトたちの声が急速に小さくなっていくのを、俺はぼんやりと聞くしかなかった。

 

 

 

 

 

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