ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

79 / 147
何も知らない勇者たち
VS
何も分からないドルマゲス(寝てる)
VS
何も興味がないユリマ

レディ…ファイッ!!








Chapter24 闇の遺跡地方 ②

フリーの冒険者ディムの行使した魔法によって魔法の鏡は「太陽のカガミ」となり、その力で闇の遺跡の結界を打ち破った一行。これで『物乞い通りの魔王』や、その後ろで暗躍するトロデーン滅亡の元凶ドルマゲスに大きく近づくことができると希望を滲ませる。しかし闇の遺跡に一歩踏み込んだ瞬間、ディムは謎の力で宙に浮きあがり遺跡の奥へと連れ去られてしまったのだった。

 

 

 

 

「オオーン、オオーン……。何百年も破られることのなかった暗闇の結界がついに破られてしまった…。ここは我らのあがめるラプソーン様の復活の日を願って──」

 

「やっかましいわね!私たちは今それどころじゃないっての!」

 

「──ぁ」

 

闇の遺跡内部を漂う「さまようたましい」を消し飛ばしながらゼシカはズンズン進んでいく。一行はディムを追う形で、闇の遺跡の最奥を目指していた。

 

「ちょっと落ち着いて…もしかしたらここの遺跡の構造にも詳しいかもしれないし、何か有用な話も聞けるかもしれない。でも…心配なのはわかるよ。」

 

「…。」

 

「ん……そ、そうよね…ごめんエイト、ちょっと混乱してた…。」

 

ゼシカは自らの額をぺち、と叩き、はやる気持ちを落ち着かせた。どこまでも続くモノトーンの壁と床は、確かに気が滅入る。ゼシカのように苛立つ気持ちも分からないわけではなかった。そんな中、思いつめた表情をした者がもう一人いた。

 

「──」

 

「…はぁ?ディムがドルマゲス?突然何言い出すんだお前、頭がバカになったか?」

 

「…言い方…いや、今はいいでがす。兄貴も、ゼシカも…ディムがいなくなっちまったこの機に聞いてほしいことがあるでがすよ。」

 

「ん?どうしたの?ヤンガス」「なになに?階段でも見つけた?」

 

「いえね…これからアッシが話す内容は少し…特にゼシカには酷かもしれないでがすが…一旦は黙って聞いてほしいでがす。…ディムの正体について」

 

このパーティの中で唯一ディムを訝しがる者、ヤンガスは闇の遺跡を進みながら、己の持論を語り聞かせた。

 

 

「…というわけで、アッシはディムこそがドルマゲスなんじゃないかと疑っているんでがすよ。」

 

「…」

 

「…なにそれ?くっだらない!ヤンガス、アンタ私を怒らせたいなら素直にそう言いなさいよ!!」

 

動揺を隠せず、一行は思わず足を止めた。エイトとククールは困惑した表情で俯いている。一方、ゼシカは鬼気迫る表情でつかつかとヤンガスに歩み寄り、その分厚い胸倉をむんずと掴む。

 

「ドルマゲスは…私の兄さんを殺した張本人なのよ。その話はあんたも知ってるでしょ!?私たちに良くしてくれたディムの正体がそのドルマゲスなんて…」

 

「…アッシもこんなことを考える自分がイヤになりそうでがしたよ。でも…ディムが本当にドルマゲスなら、アッシは兄貴に報いるためにもディムをふんじばって尋問しなければならないんでがす。」

 

「確かに……ディムが闇の遺跡に行く理由を聞いた時、オレもちょっと違和感を覚えたんだ。どうにもとってつけたような…お前の言葉を借りるなら『嘘』の匂いってやつがした。オレもイカサマは大得意だからな、そこらへんは何となくわかるんだ。」

 

「ディムが行く先々の事情を熟知していたのも…それら騒動の元凶がドルマゲスだと仮定すると辻褄が合うね。」

 

「…実際にアッシだってサザンビークでディムが誰かと話しているところを見るまでは微塵も疑ってなかったでがすからね。」

 

ククールもエイトも、言われて考えれば思い当たる節はあった。ただ「ディムを疑う」という発想自体が全く頭になかったため、今まで本当に何も感じていなかったのだ。それほどにディムはエイトたちの心の深いところまで入り込んでいた。

 

「ゼシカ…信じてほしいとは言わないでげすが、どうか分かってほしいでがす。アッシは、手前が嫌われ役になって全員が助かるなら、別にそれでもいい。全員がドルマゲスの手に堕ちる可能性があるんなら、アッシはそれを黙ってみているわけにはいかないんでがすよ。」

 

ゼシカは力なくヤンガスの胸倉から手を放し、後ろを向いた。

 

「……。私だってヤンガスがこんなとこでデタラメを言うような性分してないって…知ってるわよ。でも、でもね。私、ディムのこと気に入ってたのよ。料理も上手で、面白くて、粋で、優しい。…そうでしょ?」

 

ヤンガスは黙って頷く。

 

「兄さん…サーベルト兄さんは私のたった一人のきょうだいで、お母さんはいつもあんなだから、ずっと私は兄さんと一緒だったの。そんな兄さんを私がどれだけ慕っていたか、ヤンガスもきっとわかるはず…」

 

暗にゲルダのことを示しているのだろう。ヤンガスは正しくその意図を理解し、顔を顰めた。

 

「ゼシカ。だが…」

 

「うん。ゴメン。もう文句言わないわ。ヤンガスだって『魔王』にゲルダさんを傷つけられてるもんね。子どもだったのは私のほう。真偽はどうあれ、やることは同じでしょう?……行きましょ。ディムを探さなきゃね。」

 

「ゼシカ…」

 

張り詰めた雰囲気が緩み、エイトとククールは息をついた。

 

「…一旦話はまとまったって感じか?じいさんもここにいれば説明の手間が省けたんだがなぁ…」

 

「なるほどの。ワシとしても思うところはあるが…ディムを見つけんことにはどうにもならなさそうじゃな。」

 

「…」

 

「「「「おっさんいつの間に!?」」」」

 

「さっきからおったわい!それとエイト、お主さっきわしのことを『おっさん』と呼んだな?聞こえておったからの…」

 

「すっすみませんでした!つい…」

 

「…まあいいわい。じゃ、ワシは馬車で待っておるからな!…とと、何のために危険を冒してこんなところに来たのか忘れるところじゃったわい。」

 

本当にいつの間に近くまで来ていたのか分からないトロデは、エイトに十字架を模した大振りな剣を手渡した。

 

「これは?」

 

「おぬしらが遺跡に入ったあとすぐに錬金が終わったのでな、持ってきたのじゃ、『ゾンビバスター』。陰気な遺跡の魔物どもに天誅を下してやるのじゃぞ!」

 

「王様、ありがとうございます!」

 

エイトが頭を下げると、トロデは手を振って反対方向へと戻っていった。

 

「…じいさん一人で大丈夫なのか?オレたち結構奥の方まで来ちまったが…」

 

「おっさんは魔物でがすから他の魔物にも狙われないんじゃないでがすかね。知らないでがすけど。」

 

「王様は意外と武闘派だから大丈夫だよ。それよりも…」

 

「ええ、行きましょう!ディムを探しに!『魔王』を倒しに!!」

 

元気とやる気を取り戻したゼシカに続いてエイトたちも先に進むことを決めた。

 

 

 

「(…ん?『サーベルト』はゼシカの兄だったんでがすか…ディムも同じ名を口にしていたような…?)」

 

ヤンガスはちらりとゼシカを見た。手に持った杖で「エビルスピリッツ」をボコボコに叩きのめしている。

 

「(…また拗れても面倒でがす。黙っておくことにしやしょう…)」

 

ゼシカの兄への感情の重さを考えると、ヤンガスがこの時サーベルトのことを黙っていたのは賢明な判断だったと言えるだろう。新たな武器も手にした一行は、遺跡内の魔物を蹴散らしながら進軍していった。

 

 

「オオーン、オオーン…しばらく前、ラプソーン様のお力を感じたのだ。まさかラプソーン様はここをお通りになったというのか?」

 

「知らないわよそんなの。それよりアンタ、この先に随分面倒そうな仕掛けが見えるじゃない?…あれの答えのルート教えてよ。私たち急いでるの。」

 

「オオーン…さては貴様、神殿を汚しに来た異教徒だな?…去ね、異教徒と話すことなど何もない…」

 

「ククール、お願い」

 

「へいへい…『ベホイミ』」

 

闇の遺跡の中腹、異教徒を阻む大迷宮を前に、ゼシカは一体のたましいに目を付けた。こういう時のゼシカの頭(悪知恵)のキレは流石のククールも感心するしかない。聖なる祈りが亡者の魂にまとわりついて少しずつ浄化され、魂の輪郭はみるみるうちに小さくなっていった。

 

「オオオオーン!!!やめろっ!昇天してしまうっ!」

 

「じゃあ教えてくれるわよね?」

 

「オ、オオーン…貴様、悪魔か…?」

 

「悪魔を信仰してるやつが何言ってんだか。」

 

ククールは肩を竦めた。一行は「さまようたましい」に(脅して)道案内をしてもらい、レバーを操作して足場を上下させる迷宮を最速で駆け抜けた。

 

「なかなか厳重な作りになっているんだね…僕たちだけじゃ結構時間がかかったかもしれない…。」

 

「案内役さまさまでげすな。わざと正解の宝箱を間違えて「ミミック」と戦わされたときは殺意が湧いたでがすが。」

 

ここは闇の遺跡の地下二階層。厄介なギミックなどはなく、壁一面に巨大な壁画が描かれている大広間である。壁画を目にした瞬間、ククールに抱えられている「さまようたましい」が歓喜の声を上げた。

 

「オオーン!生ある者よ、見よ!あの壁画を!!」

 

「なっ、なんだいきなり?」

 

「壁画…というとアレのことでがすかね。」

 

ヤンガスが指さした先にある大きな壁画には、凶悪な形相をした一体の魔物が、無数の魔物を引き連れているという、お世辞にも趣味の良いものとは言えない絵画だった。

 

「あの壁画こそ、世に暗黒をもたらすために戦われたラプソーン様の勇姿を描いたものである。」

 

「(ディムはその名も口にしていたでがすな…)そのラプソーンってのは何者なんでがすか?」

 

「オオーン、痴れ者が…!異教徒がラプソーン様の名を軽々しく口にするな…!」

 

そう言いながらもやはりラプソーンへの畏敬は隠し切れないのか、「さまようたましい」は口早に語り始めた。

 

「かつて闇の世界の調律者であるラプソーン様は、分断された光の世界と闇の世界を一つに融合させて暗黒の世界を作るため、我らに従わない者どもの屍で大地を埋め尽くそうとなされたのだ。数百年前の竜神族との戦いにも勝利し、光の世界の征服は目前…というところで…オオーン…ラプソーン様は憎き鳥レティスと配下の賢者たちによって封印されてしまった…」

 

魂は力なく俯いた…実体がないのでそう見えるだけであるが。

 

「…僕たちが生まれるよりずっと前の話みたいだね。」

 

「オオーン、オオーン……この奥にラプソーン様を祀る暗黒の祭壇があるぞよ。」

 

「ってことはそこがディムの言っていた『最深部』か?」

 

「十中八九そうでがすね。てことは案内はここまでで良さそうでがす。」

 

「…だってよ。ここまで案内してくれた手前、悪いと思わないでもないが、オレは聖職者なんでな。迷える魂は天に導くように言われてんだ。」

 

「私の魔法で消し飛ばされるよりは有情でしょ?」

 

「……オオーン…ラプソーン様は今も世界のどこかで復活に向けて動いている…いつか貴様らのような異教徒を踏み潰し、この世界を暗黒に染め上げてくださるだろう…──」

 

「さまようたましい」は呪詛の言葉を吐きながらククールの手によって昇天させられ、消え去った。

 

「さ、早くいこうぜ。その暗黒の祭壇とやらに。」

 

さらに進むと、先ほどとは違う絵が描かれた円形の部屋へ到達したが、隠し通路の壁が破壊されたのか、素通りできるようになっていた。尚も襲い来る「トロル」や「しにがみきぞく」「ブラッドマミー」「なぞの神官」を下し、ついに祭壇へ続く扉へと辿り着いた。

 

「ここが…」

 

「ああ、おそらくここが『暗黒の祭壇』、ディムの言っていた最深部だ。」

 

「「…」」

 

「たましい達が口にしてた『暗黒神ラプソーン』ってのも気にかかるけど、今は『魔王』に集中しよう。多分ディムを連れて行ったのも『魔王』だと思う。」

 

「兄貴の言う通りでげす。ここいらの魔物も驚異的な強さだったでがすが…」

 

「そうだな。あの時の『魔王』に比べちゃ全然大したことなかった。仮に『魔王』を倒せても、この中の誰かが永久に帰らぬ人になってるかもしれないぜ。」

 

「やめてよククール…縁起悪いなぁもう…」

 

「ううっ…アッシはみんなのことを一生忘れねぇでげすよ…」

 

「ヤンガスも妙な悪乗りはやめてよね。まるで私たちのうちだれか死ぬみたいじゃない!みんなで生きて帰ってくるのよ!」

 

重厚な扉を前にして緊張していた全員の心がふっと軽くなる。ヤンガスがおどけてみせたせいだが、それは仲間のためを思っての行動だということはみんな分かっていた。

 

「いよいよ正念場だね…行くよ!」

 

エイトが先導し、全員で扉を押して開いた。

 

 

「ディム!ねぇディム!!いるんでしょ!!返事して!!!」

 

「ゼシカ!ディムはドルマゲスかもしれねぇんだ。気持ちはわかるが……隙は見せるなよ?」

 

部屋に入ると真っ先にゼシカはディムを探し始め、ククールはそんなゼシカに警戒を促す。闇の遺跡の最深部、暗黒の祭壇は道中よりも暗く広い場所だった。蝋燭の明かりだけが部屋を照らし、生温かい風がエイトたちの頬を通り抜ける。目を凝らしてよく見ると部屋のいたるところに破壊跡が確認できた。

 

「(明らかに老朽化のひびじゃない…ここで誰かが戦っていたのか…?)」

 

そして部屋の中央、最も暗くなっている場所に人影を認めた。人より眼の良いヤンガスはその正体に一目で感付く。

 

「てめェ…『魔王』だな…」

 

人間の可能性もある相手、よく考えれば自分たちは『魔王』と意思の疎通を図ったことは無い。相手がこちらの存在に気づき、エイトはダメ元で尋ねてみる。

 

「僕らは旅の冒険者です。少し…お話を聞きたいのですが。」

 

しかし相手は少し首をひねると、あなたたちのことは知らないと答えた。それに憤ったのはヤンガスだ。

 

知らない…だと?こっちはダチがてめェの世話になってんだぜ…『魔王』…!よくもゲルダを!!!」

 

激高したヤンガスをエイトは止めることができず、ヤンガスは『魔王』に飛び掛かって「かぶとわり」を放とうとする。しかし相手は強烈な風を発生させてヤンガスを地面に叩きつけた。

 

「ぐおっ……」

 

「ヤンガス!…仕方ない、行くぞ!」

 

ヤンガスをサポートすべく、ククールが飛び出した。やはり戦いは避けられないかとエイトは肩を落とすが、すぐに気を取り直して部屋中を見回してディムを探しているゼシカにも開戦を促す。

 

「ゼシカ、ディムの行方はあの人が知ってるかもしれない。とりあえず今は!」

 

「ええ、大丈夫よ。…『魔王』見てなさい!震えて動けなかったあの頃の私とは違うのよ!」

 

ゼシカは杖を構え、エイトは剣を抜き、戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 




原作との相違点(ほとんど全部)

・ヤンガスが語る。
ヤンガスがディムを疑い始めたのはChapter22から、確信したのはChapter23から。エイトとククールは「そう言われてみれば…!」と言う感じ。ゼシカは大丈夫だと言っていたが実はまだちょっと混乱中。ドルマゲスの良い面(自分や村の子どもたちと遊んでくれた)を知っているのがゼシカだけなのも混乱に拍車をかけている。

・道中でトロデが来る。
錬金が完了したのでわざわざ届けに来てくれた上に面倒な話を二回もする手間が省けた。用が済んだらさっさと安全なところへ退散、有能極まりない王である。

・迷宮スキップ。(プレイヤーはできない)
先を急ぐ勇者たちによって捉えられた「さまようたましい」によって面倒なギミックを無視して進むことができた。暗黒神を信仰する闇の手先なので、ちょっと可哀想だが、最期は昇天させられてしまった。ちなみにレティスの翼にレーザーを当てて焼くことで道が開けるみみっちい嫌がらせのギミックもあったが、そっちは例の女に破壊された。

・ドルマゲスがいない。(最重要)
「原作との相違点」シリーズで一番重要な相違点。厳密にはいるにはいるのだが、ゼシカの兄とアスカンタの魔物使いと共に天井に張り付けられて眠っている。代わりに変な女がドルマゲスの位置に居座っている。



エイト
レベル:28→29

ヤンガス
レベル:28→29

ゼシカ
レベル:28→29

ククール
レベル:29→30(ベホマラー習得)

原作ドルマゲスとならなんっとか戦えるかな…?って感じ。(間接的に)ドルマゲスに貰った「しあわせの耳飾り」さまさまです。

闇の遺跡って明るすぎると思うんですよね。いくら暗闇の結界が破壊されたと言ってもあの鏡には「海竜」一匹分の魔力しかこもってないし。なので本作ではかなり薄暗い設定にしてあります。なので勇者たちが天井に張り付けられたドルマゲス達に気づくことはありません。…さて、次回が闇の遺跡編のラストになります!乞うご期待!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。