ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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最近新規の方からも感想を頂けるようになってきて嬉しいです。反応を糧にこれからも頑張っていきますよ~








新・第二章 このはしわたるべからず

ハロー、決意を新たにした新生道化師のドルマゲスです。ベルガラックで邂逅した時からずっと懸念点だったユリマの問題も、ユリマの仲間入りという形で無事に解決して肩の荷が下りる思いです。これで全て丸くおさま…り…。……ん?何か大事な、とんでもなく大事なことを忘れているような…?

 

 

 

 

「あーーーーーーっ!!!!!!!」

 

雨雲広がる昼下がり、アジトに造設する遊戯施設の設計図を描いている途中で「とんでもない失態」に気付いた俺の絶叫がアジトに響き渡った。

 

「ドルマゲスさん!?どうしたんですか!?大丈夫ですか!?お水飲みますか!?」

 

「ウワーッ!?…ゆ、ユリマ…いたんですね、あ、ありがとうございます…」

 

気付くと隣にユリマが座っていた。さっきまでいなかったのにどこから現れたんだろうか。この部屋カギかかってるんだけど…いやそんなことはどうでも良くて!!

 

「ちょ、ちょうどいいです。ユリマ、サーベルトたちを呼んできてもらっていいですか?可及的速やかにです。師匠は実験中だろうが何だろうが構いません。応じてくれなければ重力魔法で引っ張ってきてください…あ、優しくね」

 

「了解ですっ!みなさんどこにいらっしゃいますか?」

 

「サーベルトは訓練室、キラさんは食堂、師匠は…多分第二実験室ですかね。お願いします…」

 

「はいっ!腕が無くなっても、脚が無くなっても、亡骸になっても連れてきます!」

 

表現が重いよ、と言いたかったが、既にユリマは部屋から姿を消していた。…だがやはりそんなことすらもどうでも良くて。心臓はどくんどくんと跳ね上がり、変な汗もかき始めた。どうやらひどく動揺しているらしい。こんな時は深呼吸だ。深呼吸……

 

しかし俺の心臓や汗腺はまるで言うことを聞いてくれそうになかった。

 

 

『杖の存在を忘れていたァ!?』

 

サーベルトたちの声がシンクロする。今、俺の自室は臨時の会議室になっていた。訓練中だったのに全力で駆けつけてくれた汗だくのサーベルト、エプロン姿にお玉をもったままのキラちゃん、やはり重力魔法で引っ張ってこられたのであろう顔に擦り傷のついた師匠、おそらく師匠に殴られたのであろう大きなたんこぶを頭にこさえたユリマを椅子に座らせ、俺は話し始める。

 

「そうです。自分でもわけがわからないのですが…今しがた突然頭に舞い降りたというか、戻ってきたというか…」

 

「む、確かに…わしも今の今まで頭になかったな。普通に考えればあんなものを忘れるわけがないのだが…」

 

「え、あ、あの杖ってユリマさんが持っていたのではなかったのですか?」

 

「あー、わたし、昨日ここで目覚めるまでの記憶があやふやなんです。杖を持ってた記憶はありますが、気が付いた時にはもう持ってなかったんですよね」

 

「ユリマはドリィと戦っている時まで確かに杖を持っていた。ということはやはり杖を紛失したのは『闇の遺跡』の中だろうな。…とはいえ不覚。俺まであんな恐ろしい杖の存在を忘れていたとは…」

 

「どうにも不可解だな。…しかし」

 

そう、ありえないのだ。特に杖の恐ろしさを何度も体験し、実際に憑依され、その出生の秘密まで知っている俺が『神鳥の杖』のことを忘れるなんて。何故闇の遺跡でユリマと一緒に回収しなかったのか!?絶対、ぜーったいおかしい。…だが。

 

「…逆境に絶望するのではなく、大事なのはここからどう動くか…ですよね、師匠?」

 

師匠は黙って頷いた。普通の人から見れば真顔にしか見えないだろうが、師匠のあの表情はかなり満足している時の顔である。よかった。今日の師匠は話を聞いてくれそうだ。

 

「…うむ。『魔法の才無し』の烙印をわしに押されたお前が『呪術』という魔法ならざる超常でわしを驚かせたのは記憶にも新しい。与えられた状況を無批判に受け入れるのは三流のすることだ。…そしてお前は違うのだろう?ドルマゲス」

 

そう。俺たちが杖のことを忘れていたのがラプソーンの力によるものなのか、()()()()からのお達しなのかは定かではないが、後手に回らされた程度で諦められるような事項ではないのだ。そっちがその気なら俺たちゃとことん抗うまでよ。

 

「はい。…ユリマの手から離れた後、杖が闇の遺跡に放置されたと仮定した場合、現在杖は十中八九勇者たちの元にあると考えてよいでしょう。…師匠、勇者については」

 

「当然、知っておる。そもそも身体を動かせずに暇を持て余していたわしに手記を渡してきたのはお前だろうが。…わしらとは異なるアプローチで暗黒神を追う一団だったな。尤も、現在はお前が標的らしいが。」

 

「ユリマはゼ…勇者たちと戦っていたよな。どんな感じだった?特に魔法使いの女性とか」

 

「だから、わたしの記憶は完全じゃないんですって。…あぁ、でも相手の中に非常識な大きさの肉玉を胸にぶら下げていた女の人がいたのは覚えてます。魔法のコントロールが巧みで中々苦戦させられましたね。それなりに鍛錬は積んでるんじゃないですか?」

 

「ほう、そうか!ほうほう!」

 

「ひっ、非常識な大きさの…」

 

「ああ、キラちゃんのは反対の意味で非常識な大きさですけどね」

 

「…。」

 

女性陣が愉快なやり取りを繰り広げているが、ああいうのに首を突っ込むと大抵ろくなことにならないのは分かっているので放置。サーベルトもなかなか棘のある言い方でゼシカを評価されていたはずなのだが満足そうだ。最終的に褒められていれば何でもいいのだろうか?ミスター・シスター・コンプレックスよ。

 

「…コホン、話を元に戻しますね。勇者たちは杖の中に暗黒神が封じられていることを恐らく知りません。そしてあの杖に不用意に触ってしまうと…」

 

「!」

 

ようやくサーベルトたちも事の重大さに気が付いたらしい。キラちゃんたちも口をつぐみ、緩んでいた空気が一瞬で締まるのが感じ取れた。

 

「暗黒神ラプソーンの端末となる、というわけだな。まったく、トロデ王は何故わしらにこんなものをお見せになろうと考えられたのだ…」

 

誰が杖を持っているかは分からない。仮に暗黒神と同等か、それ以上に強力な呪いを既に受けている勇者エイトが杖を手に取ったなら、ラプソーンに操られるようなことは無いだろうが、エイト本人の事なかれ主義的な思考やパーティー内での立ち位置を考えるとその線は薄いと思われる。そして…

 

「これは私の推測なのですが…勇者たちの中で最も杖を持っている可能性が高いのは…魔法使いゼシカ。そこにいるサーベルトの実の妹さんです」

 

展開的にも、性格的にも、あの杖を拾う人物がいるとするならば…それはゼシカだろう。

 

「!!!」

 

「さ、サーベルト様…」

 

「…」

 

「じゃあ、お兄さんの妹さんが杖に操られているかもしれないってことですか?…わたしみたいに」

 

「サーベルト…」

 

やはりというか、サーベルトは動揺している。視線の焦点はブレ、少しだがその肩も震えているようだ。

 

「…いや、大丈夫だ。俺は、フー…大丈夫。落ち着いている。」

 

「…?」

 

俺としては、そもそもの元凶である俺がゼシカがラプソーンの端末になることを宣言したようなものなので、サーベルトはもっと動揺するか、最悪俺に掴みかかるくらいのことは有り得ると覚悟していたのだが、そんな俺の予想に反してサーベルトはある程度落ち着いていた。

 

「…ゼシカさんがラプソーンに操られてしまったとするなら、それは「言うな」」

 

「…。」

 

「…言わないでくれ。そんな言葉は望んでないんだ。責任の所在はドリィにあり、俺にもあり、もちろんゼシカにもある。だから…」

 

「失礼、そうですね、失言をしてしまうところでした。今は対策を考える話でしたよね。ありがとうございますサーベルト」

 

サーベルトは笑った。よかった、特に無理をしているわけではなさそうだ。俺のことを責められればどんなに楽だろうに…。罪を共に背負ってくれるサーベルトの為にも行動を急がなければ。

 

「ドルマゲスさんに責任があるならわたしも背負いますよ!運命共同体ですからね!」

 

はいはいありがとうございます、と俺はユリマの頭をひと撫でしてから、世界地図を取り出して本題に入った。

 

「まず現在私たちがいる場所がここ…南の大陸の北東部、アスカンタ国領ですね」

 

この南の大陸だとか西の大陸だとかの呼称、どこを中心とした方角指標なのかが定かでない(まあ推測するに『聖地ゴルド』を中心としているのだろう)のだが、この世界ではその呼び名で広く知られているようだ。いっそミナミノ大陸・ニシノ大陸という名前だと思って覚えた方が手っ取り早い。

 

「そしてここが北西の孤島。『闇の遺跡』がある場所です。勇者たちがここから移動したとすると、おそらく現在は西の大陸にいるでしょう。可能性としてはサザンビーク王国が高いでしょうか」

 

「…まあ、道理だな。ベルガラックの可能性もあるが…お前が勇者共の行方を捜しているように相手もお前のことを捜索しているのであれば、情報が多く集まるサザンビークへ向かったという線は十二分に考えられる。わしも同じ結論だ。」

 

師匠は目を閉じたまま頷いた。……正直、ただの原作知識でそんなとこまでは考えていなかったのだが、とりあえず笑みを浮かべてそういうことにしておく。でもそろそろ原作知識も怪しくなってきたし、師匠が同調してくれるのはありがたい。

 

「…えと、ではこれからサザンビークに?」

 

「…の、さらに先を目指します。サザンビークには賢者がいないため、ラプソーンはサザンビークからもっとも近い賢者の末裔を狙いに動くでしょう。つまるところ、我々が向かうのは巨大な橋の上に建つ街、石工の聖地『リブルアーチ』です」

 

「ドリィの持つ未来の知識、というやつだな?そこにゼシカはいるのか?」

 

「…どうでしょうか。今すぐに向かえばギリギリ先回りできるかもしれません。ですが後れを取った今、時間はかなり限られています。ですので、私としてはすぐにでも出発したいですね。」

 

「…なるほど。そういうことなら仕方あるまい、わしも同行しよう。だが5分だけ待て。実験の引継ぎをしてくる」

 

そういうと師匠は即座に退出した。まだ一緒に来て欲しいとは言ってないのだが…まあ呪文に精通した大魔法使いである師匠が同行してくれるのは非常に心強い。

 

「俺はいつでも出発できるぞ。装備が全て揃っている訓練中だったのは幸いだったな。」

 

「わたしもいつでも出られます。暗黒神…でしたよね。長らく頭痛のタネだった暗黒神サマにはこれまでのお礼をしてあげたいと思ってたんですよ。」

 

「わっ、私も行きます!出先での雑務は全てお任せください!」

 

「…キラさんは…」

 

「キラちゃん、あなた大丈夫なんですか?あなたが人質に取られてドルマゲスさんの手を煩わせるようなことになったら…間違って相手ごとあなたをひねり潰しちゃうかもですよ?」

 

「…」

 

うーん、大分婉曲的な表現だがアレはきっとユリマなりにキラちゃんを心配しているのだろう。本人に意識があったかどうかは知らないが、実際ベルガラックでユリマ自身が人質のようなものになっていただけあって、その眼はいたって真剣だ。

 

「私は…」

 

「…」

 

「私は、戦えません。非力で、魔法も使えませんが…皆様の手を煩わせるようなことはもう絶対に致しません」

 

キラちゃんは手に持ったままのお玉を脇に置いてエプロンを脱いだ。その下はライダースーツ…ライダースーツ!?パツパツスーツの上にエプロンとか、大分ニッチですね、キラちゃんさん?キラちゃんはスーツのポケットからキューブを取り出し、こちらを向いた。俺とキラちゃんの視線がかち合う。

 

「ドルマゲス様のご厚意…決して無駄にはしませんから」

 

「あ~っ!?なんですかそれェ!?貰ったんですか!?ドルマゲスさんに!?」

 

アレは試作自律戦闘人形(プロトオートマター)の『奇襲(ソルプレッサ)』……。ちゃんと持ってくれていたんだな。…すばやさに特化した『ソルプレッサ』なら、前線に出ない限りキラちゃんの警護は完璧にこなせる。しかもキラちゃんは最早俺よりも巧みに『ソルプレッサ』を使いこなせるため、有事の際は乗り込みさえすれば一先ず安全は確保される。

 

もう、彼女は護られるだけの存在ではない。

 

「…分かりました。キラさん、一緒に行きましょう!」

 

彼女はかつて『足手まとい』だと、自分のことをそう思ってしまっていた時期があった。ある時にその思いを打ち明けてくれたことをきっかけに俺とキラちゃんのぎこちない関係は解消されたのだが、きっとその時、彼女なりに色々考えていたのだろう。此処に残ってサポートに徹する道もあった。今となってはこの施設内にキラちゃんをただの人間と侮る魔物はほとんどいないため、彼女にとっては此処が世界で一番安全な場所なのだ。

 

しかしその上で、安全よりも俺と共に歩む道を選んでくれたというのだから…俺としてはこれ以上なく嬉しい。

 

キラちゃんは嬉しいのか恥ずかしいのかわからないような顔ではにかんでみせた。ユリマがわたしもアレ欲しいです、とせがんでくるが丁重にお断りする。あんたはそんなのなくても戦えるでしょうが。

 

「戻った。さて、わしも準備は終わったぞドルマゲス。さっさと準備をせんか」

 

「OKです。早速行きましょうか!」

 

俺は天井ハッチを開き、『ルーラ』を唱えた。万が一に備えて、遠い昔にリブルアーチを『ルーラ』の行き先に登録しておいたことが功を奏したな。

 

 

─リブルアーチ─

 

「ここはリブルアーチ。石像作りの工房連なる職人たちの町だぜ」

 

「こんにちは。僕はディムと言います。お兄さん、少し質問してもいいですか?」

 

「よう坊ちゃん。いいぜ、何でも聞いてくれ」

 

リブルアーチは海峡の上という特殊な立地もさながら、町並みの美しさでたびたび名前の挙がる大きな街である。ちなみに隠し宝箱が一番多いのもこの街で、その総数はあの広大なサザンビーク王国を優に超えると言われている。天才彫刻家ライドン、天才呪術師ハワード、さらに七賢者の一人『大呪術師』クーパスの末裔であるチェルスをも抱える非常にボリューミーなスポットだ。

 

「…!……!」

 

「ユリマさん、鼻血出てますけど…あっ!もしかして杖の後遺症とか…!」

 

「とっととと年下に…!ドルマゲスさんが年下に…!」

 

「…。」

 

あー、冒険者ディム(ショタマゲス)の姿でユリマの前に出るのは初めてだったか。ユリマは鼻から血を垂らし、キラちゃんにペーパータオルを手渡されている。……なんかこの娘、こんな変態じみた子だっけ?…。る、ルイネロさんの育て方が特殊だったんだろう。きっと。俺は知らん。

 

「僕たち人を探しているんですけど、ここ最近で『北の関所』を通ってこの街に来た人はいませんか?」

 

「『北の関所』?…ああ、こっちで言う『南の関所』のことだな。」

 

やっぱり名前要るよね!?大陸といい関所といい、ややこしいんだよな!

 

「…うーん、俺ァ日中ずっとここで作業してるが、最近見た新顔といっちゃあアンタらくらいだな。なんだい?坊ちゃん先頭に、兄ちゃん、じいさん、姉ちゃん、嬢ちゃんと…ここへは家族旅行か何かで来たのかい?探し人は迷子か?」

 

「まあ、そんなところですかね。…ありがとうございました!」

 

「役に立てなくて悪いな!旅行楽しめよ!」

 

俺たちは街の入り口で町の紹介役を務めている男に礼を言って別れ、街の奥へと進んだ。

 

「…さっきの男の言った通りなら、この街にまだゼシカは来ていないみたいだな。…これからどうする?どこかに潜んでゼシカを待つか?…っと悪い。──もし、そこの御婦人、お荷物お持ちしましょうか」

 

サーベルト…ここではアインスか。はこんな時でも呼吸するように人助けをする。自分がどんな状況にあっても、周りの人間には関係のない事。サーベルトはその言葉を善行への言い訳に使うのだ。呆れるほどいいヤツである。そんなサーベルトを眺めていた俺は、これから向かう邸宅のことを思って気が重くなった。

 

 

「ここは…?」

 

「…ハワードという天才呪術師が住まう邸宅ですね。そしてこの家の使用人として賢者の末裔が働いているはずです」

 

俺はこれから訪ねる人間…胸糞の悪さだけなら()()チャゴスをも凌駕し得る男、天才呪術師ハワードのことを考えてため息をついた。

 

 

 

 

 

 




・マスター・ライラス
頑固なおじいちゃん。だがただの偏屈ジジイでなく、その脳内には世界を幾度ひっくり返しても足りないほどの知識を擁している。あと年の割に結構動ける。
レベル:50
職業:大魔法使い
特徴:ツンデレ
備考:本当は賢者に相当するのだが、本人が『大魔法使い』と言って譲らないので今の肩書に落ち着いている。


・ユリマ
棘しかないバラみたいな女。ラプソーンの影響から外れたことによって大幅に弱体化したが、未来の自分の視界を覗き見る呪術『少女の見る夢(リリィ)』と魔法の腕は健在。
レベル:45
職業:魔法使い(重力魔法特化)
特徴:体重は軽いが感情は重い
備考:本人曰く「世界一ちょうどいいサイズ」


・キラ
踏まれても萎れないたんぽぽみたいな女。本人は非力だが、『奇襲(ソルプレッサ)』を始めとした各種セキュリティサービスを駆使して防衛、サポートを行う。
レベル:12
職業:(広義での)魔物使い
特徴:手先が器用、頑張り屋
備考:まな板



次回から登場するハワードさんですが、根っこはまともな人なので王子よりは何千倍もマシな人だと思ってます。

正妻は?(単純な興味です)

  • ユリマちゃん
  • キラちゃん
  • ゼシカちゃん
  • サーベルトちゃん
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