ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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主人公視点難しそうだなぁ…書けるかなぁ…


(閲覧自由)設定資料集を更新しました。2022/9/30
序盤の町やダンジョンの説明、トラペッタの町のキャラクターの説明を追加しました。
良ければどうぞご覧ください。

あと改めて世界地図を確認したところ自分のイメージと少し異なっていたので第六章を一部修正しました。ストーリーに影響は与えませんので見直さなくとも問題はないです。








第八章 収束と暗黒 ①

ハロー、リーザスの村を出てからは驚くほどに何もなくてかなり暇な道化師、ドルマゲスです。日頃めちゃくちゃ忙しくしているので、何もせずに馬車に座っていると逆にそわそわしてしまいます。通行用に開拓された道を通っているので魔物もあまり出ないですし。仕方ないので体内に流れる気を素早く循環させて体内の魔力と霊力を分離させる練習をしています。動かなくてもできますしね。

 

 

 

 

馬車での旅は問題なく進んでいる。あったことはと言えば、途中で休憩のため降りた浜辺で襲ってきた「エビラ」を一匹捕まえて大きなガーリックシュリンプを作り、みんなで食べたことくらいだ。サーベルトは俺のことを怪しみながらも最終的にはおいしいおいしいと喜んで食べてくれた。御者などは言葉も忘れてエビラにむしゃぶりついているので、みんな少し引いていた。御者とは、意外に稼げない仕事なのだろうか?そうこうしているうちにポルトリンクの近くまで来た。遠くに既に出航した船が小さく見える。

 

「本当はですねぇ、このまま真っ直ぐ進めば近道なんですけど、生憎つい先月大きな崖崩れがあってですね…ほら、この通りですよ」

 

俺たちが馬車から出ると、大きな岩が荒野に続く道を塞いでいるのが見えた。そういえばこんなイベントあったな。今のままじゃどうやっても馬車では越えられそうにない。

 

「なるほどなるほど…確かにこれは遠回りする必要がありそうですねぇ…」

 

「でしょう?先の一件でかなり時間を食ってしまったのでかなり急がないと…ああっ!」

 

突然御者が素っ頓狂な声を出すので、俺はビックリして幌の柱に頭をぶつけてしまった。一方師匠は落ち着いたもので、お前は何をやっているんだという目で俺を見てから御者に質問する。

 

「どうしたのですかな?」

 

「ふ、船の事を完全に失念していました…本日は海流変動の関係で便が減っていて、我々が乗るはずだった便が最終便だったのです…!」

 

「そういえばそうでしたね…すみません、ポルトリンクに船を出すよう命じているアルバート家の者でありながら、俺もすっかり忘れていました…」

 

「つまり、姫様の生誕祭には間に合わないということですか?」

 

「そ、そういうこと…です…ど、どうしよう…」

 

顔を青くして焦る御者、困惑するサーベルト、やれやれと呆れる師匠。三者三様のリアクションを見せる中、俺はというとこれでトロデーン行きが取り消しになるなら願ったり叶ったりだと内心小踊りしていた。暢気なものだ。もっとも周囲から見ればたいそう邪悪な笑みに見えたことだろうが。しかし、その目論見は轟音と共にかき消された。

 

「な、何事です!?」

 

「お、大岩が…!」

 

突然大岩が崩れ、()()()()()()()()馬車ならばギリギリ通れそうな隙間が現れた。

 

「おお…少々危険そうですが、あれならなんとか通り抜けて、荒野から王城に向けて進むことができるのではないでしょうか?」

 

「ああ、なんてことだ…神様は本当にいたんだ!これでクビにされなくて済む…!」

 

「ふん、わしは城に着くならなんでもいい」

 

「…」

 

「では道がまた塞がってしまう前に行きましょう!」

 

先程までとは全く反対で安堵する三人とは裏腹に、俺は心の中で盛大に舌打ちをした。

 

「(クソ、ラプソーンめ…俺を何としてもトロデーン城へ到着させるつもりだな…)」

 

実際、魔力を抑制する結界の中に封印されている状態のラプソーンにこんな芸当ができるかは不明だが、偶然というには明らかに出来すぎている。もしこの手引きをしているのがラプソーンでないのなら、このドラゴンクエストⅧの世界そのものが相手ということだろうか。世界が俺に対し「早く物語を始めろ」と急かしているかのように思えて仕方ない。…いや、それは流石に考えすぎか。ともかく、俺たちは荒野を通過してトロデーン城まで向かうことになった。

 

「すごい…俺は初めて荒野に来ましたが、荒野には船が置いてあるのですね…いったい誰がどうやって…」

 

「この辺りは遠い昔は海だったのだ。あれはその当時に乗り捨てられた船、ということだろう。もっとも、船と言ってもただの船ではなく古代の超技術で作られた魔道船のようだがな。」

 

「なるほど…マスター・ライラスさんは何でも知っておられるのですね。」

 

「最近読んだ本にそう書いてあったのをたまたま覚えていただけだ。」

 

師匠とサーベルトにつられて俺も幌から顔を出す。大きな船だ。この荒野はトロデーン国領なので、もう少し王室お抱えの研究者などが色々調べても良さそうなのだが、原作では図書館の隅っこに一冊の書物として情報が残っているだけで後は放置されていた。トロデ以前のトロデーン王のことは知らないが、トロデが考古学分野の話に微塵も興味がないのは確かだろう。

 

船のイベント繋がりで思い出したが、俺は結局この数年間では月の民イシュマウリに会うことができなかった。「旧き世界」の時代からこの世を生きているイシュマウリに話を聞けば、色々有益な情報を得ることができると思っていたのだが、願いの丘の頂上で待てど暮らせど「月影の窓」が現れることはなかった。単純に俺の知らない条件があるだけなのか、月の世界側が俺を拒否しているか、今は会うときではないかのどれかだろう。イシュマウリ本人も「人の子に月影の窓が開かれるのは一度きり」と言っていたので、本当に必要な時にしかこの世界と月の世界は接続されないのかもしれない。

 

俺は「ばくだんいわ」や「イーブルアイズ」との戦闘後に「おおさそり」の群れを見かけた。うーん?奴らはこの辺りには生息していなかった気がするのだが。サーベルトにそれとなく聞いてみると、同種との縄張り争いに敗れた魔物が、ごくたまにこうして自分の生息域外へ移住することがあるのだと言う。俺の原作知識もだんだんあてにならなくなってきたな。サーベルトは生態系が荒れる原因にもなるから、生息域から離れたモンスターは狩っておいた方が良いと言うので、俺はサクッとおおさそりを絞めてモツを抜いたり甲殻を剥くなど軽く加工して、空間魔術『賢人の見る夢(イデア)』の亜空間に放り込んだ。亜空間内はまあまあ気温が高く乾燥しており、空気も薄いしおまけに若干時間の流れも違うという精神と〇の部屋のような環境なので、おおさそりはきっといい保存食になるだろう。俺も小旅行中にマイエラ地方でおおさそりを食べたことがあるが、少し臭いくらいで悪い食感や味ではなかった。

御者とサーベルトはギョッとしている。師匠は魔法薬の関係でこういったゲテモノには慣れているのか興味もなさそうだ。

 

「た、食べるおつもりなのですか…?」

 

「?ええ、まあそのつもりですがどうしました?欲しいのなら喜んで譲りますが…」

 

「い、いえいえ!結構でございます…!」

 

なんだなんだお前ら!エビラは喜んで食うのにおおさそりは食わず嫌いか!?そーいうの差別だぞモンスター差別!差別反対!!

 

とは言わない。基本的に体内に魔力を蓄える魔物は食用には適さないというのが一般常識だからだ。食べられないわけではないが大味だし(それは調理せずに焼いて食っているからだが)、リスクの方が大きい。今回は毒袋を既に摘出しているが、本来おおさそりは毒もあるしな。まあサーベルトは貴族だしこういうものとは無縁だっただろうから仕方あるまい。

 

その後荒野地帯を抜け、荒野の山小屋で教授の仲間のスライムたちに挨拶をしたり、御者から『魔法玉』の交易を打診されたりした。俺はもちろん断った。魔法玉一個作るのにもまあまあMPが必要なのだ。一日に一個か二個作るのが限界な俺に国単位の交易は荷が重い。そんなこんなで俺たちはトロデーン西の教会にたどり着いて一泊し、明日の旅に、そして明後日の生誕祭に備えた。御者の話では明日の昼前にはトロデーン城に着く予定だと言う。

 

いよいよか。俺はまとわりつく不安を拭い去るように布団を頭までかぶって寝た。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

…夢を見た。ラプソーンの魂が封じられた神鳥の杖を手にして正気を失った俺がトロデーンを滅ぼし、師匠を殺し、サーベルトを殺し、そしてけたたましく狂った笑い声を上げながらまだ見ぬ賢者の末裔を殺しに行く…

 

「い、嫌だ!!!!」

 

俺は自分の叫び声で目が覚めた。もう俺以外は全員起きていたらしく、窓の外も既に明るい。

 

「どうしたドルマゲス、悪い夢でも見たのか」

 

「え、ええ…ハハ…これはお恥ずかしい…」

 

「全く…こちらの神父様が朝食を用意してくださっている。さっさと食べて出発するぞ」

 

師匠と御者は呆れたように笑い、教会の神父さんとシスターもニコニコとしている。俺は苦笑しながらも、一人だけ真剣な顔で俺を見ているサーベルトの視線は見逃さなかった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「皆さん、ついにトロデーン城まで到着です!お疲れさまでした!」

 

「ほほう…これがトロデーン城ですか…」

 

「わしは6年ぶりだな」

 

「俺もまだ小さい頃に一度来たきりです。懐かしいな…」

 

俺たちはトロデーン城の正門まできたところで馬車を降りた。威厳のある城だ。大きさはサザンビークの城には及ばないが、DQⅠの竜王の城みたいないかつい立地をしているので重厚感がある。御者に旅の礼を言って別れ、入城手続きや明日の式典の予定の確認などを終わらせ、俺たちは夜に宿屋で落ち合うことに決めて別々に城下町の観光へ繰り出した。と言ってももはや時間のない俺が向かうのはトロデーン城内の大図書館だ。時間の許される限りここで魔法や科学などの情報を仕入れたい。

 

俺はできるだけ宝物庫から遠い裏門から城内に入ったのだが、そこで強い強迫観念にとらわれた。『宝物庫に侵入し、杖を手に入れて大きな力を手に入れたい』という強い欲求が心の中に現れたのだ。続いて脳内に声が響く。『己を嗤った者を見返すための力を欲する道化よ、宝物庫に侵入し我を解放せよ。さすれば望む力は与えられん。』『己を嗤った者を見返すための力を欲する道化よ、宝物庫に侵入し我を解放せよ。さすれば望む力は与えられん。』同じ言葉が何度も頭に反響する。反響する。反響する。うるさい…!

 

くそ、頭がおかしくなりそうだ。ラプソーンは城内の人間にずっとこんな念波を送っているのか?…いや、『道化』の言葉通り、奴が指しているのは俺の事だろう。いつからラプソーンが俺に目をつけていたのかは知らないが、お生憎さまだ。確かに原作ドルマゲスは嘲笑されバカにされながら黒い感情を蓄えて来ていただろうが、今のこの身体の主人は俺だ。そして俺はバカにされてきたことなど覚えていない。だれが杖なんて解放してやるかよ。

 

俺は心の中でラプソーンにあっかんべーをすると手ごろな本を何冊か亜空間に放り込んで、逃げるように城を出た。見た目は明らかに王城から書物を盗んだ犯罪者(実際そう)だが、今は世界の危機なので見逃してほしい。俺は一足先に集合場所の宿屋へ行って本を読むことにした。

 

その数時間後、夜になって師匠とサーベルトが帰ってきた。二人とも満足のいく観光ができたようだ。

 

「なんじゃ、ドルマゲス。随分と早いな。」

 

「ええ、気になる本を見つけると読まずにはいられない性分でしてね。」

 

「相変わらず道化師のくせに辛気臭いやつよの…どうでもいいが、その本はちゃんと貸し出し手続きを行ったのだろうな?」

 

「も、もちろんでございますとも!当り前じゃないですか!いやですね、人を盗人みたいに!」

 

もうほんとごめん、あとでちゃんと返すからさ…

 

「ということはドルマゲスさん、町の飾りはまだご覧になってないのでは?」

 

「はて?飾り、ですか?」

 

「そうです。明日がトロデーン王国のミーティア姫のめでたい生誕祭なので、町中をきらびやかに装飾しているようです。なんとも幻想的ですよ。」

 

俺が宿の窓を開けると、そこには何とも美しい光景が広がっていた。赤青緑、色とりどりの飾りが篝火の揺らめく光に反射してキラキラと輝いている。その光と夜の闇との対比が、より深い美しさを引き出していた。

 

「おお…これは…」

 

なんと美しいのだろう。道行く人みんなが笑顔だ。なんと素晴らしい国だろう。

 

…こんな美しい景色を奴に奪われるわけにはいかない。俺は…俺は、絶対にこの生誕祭を乗り切ってみせる。

原作を知るものとして、ではなく一人の道化師として、だ。この国の笑顔を一つたりとも奪わせない、奪わせてたまるか。

 

俺は決意を新たに、生誕祭の前夜祭に賑わうトロデーンを眺めていた。

師匠とサーベルトは、そんな俺をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 




これから少し投稿頻度が下がります。(三日に一話くらい?)しかしまだまだやる気はございますので、引き続きよろしくお願いしますね。


御者「ああ、なんてことだ…神様は本当にいたんだ!」

ドルマゲス「(神と言ってもラプソーンだぞ…)」
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