獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第10話

『なんと初日でそこまで至るとは……末恐ろしい才能じゃ』

「はい、ハッキリ言って手解きで済ませていいレベルではありません」

 

手解きから数日、零一はシャーフーへと連絡を行っていた。内容は当然手解きをしている尾白と轟の事、此処までの手解きで尾白は獣を更に感じられるようになれる所まで、だが轟に至っては既にその尾白に追い付こうとしているだけではなく追い抜こうとまでしている、獣拳の事を何も知らなかったにも拘らず。

 

「マスター達の元で確りとした獣拳を学ぶべき、そう思わざるを得ない程に素晴らしい才覚の持ち主です」

『ふぅむ……途轍もないのぉ、今風に言えば才能マンと言った所かな?』

「実際そんな風に言ってた奴もいましたね」

 

自分の元で長年修行を積み続けている愛弟子がそこまでいる逸材、少しばかり興味が湧いたのかシャーフーは一度会ってみたくなってきた。

 

『よし、それでは近々其方に顔を出そう。その時に詳しい話を煮詰めるとしよう』

「分かりました」

 

 

そんな話を朝にしていた日のヒーロー基礎学、今回の内容発表を相澤が行った。

 

「今回のヒーロー基礎学は俺ともう一人も含めての三人体制で教える事になった。そして今日の授業内容は災害水難なんでもござれの人命救助(レスキュー)訓練。今回は色々と場所が制限されるだろう。ゆえにコスチュームは各々の判断で着るか考える様に」

 

伝える事を伝えたからさっさと行動しろと言わんばかりに相澤はバスで向かうと最後に言い残して教室から出ていった。今までの事を考えれば遅れたら即刻除籍すると言われかねないと皆思っている為かテキパキと動きながら集合場所へと向かっていく。早急に準備を整えて集合バスに向かうのであった。そこでは

 

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!!」

 

と笛を吹きながら張り切って先導している飯田の姿があった。マスコミのセキュリティ突破騒動があった日、緑谷は自らの委員長職を飯田へと譲渡した。セキュリティ突破による警報によって食堂で起こったパニックを飯田が身体を張って鎮めたからとの事。実際先導するのはあんなタイプの人間の方が優れているのかもしれないと皆が思う。

 

「くそ、こう言うタイプだったのか……!!」

 

と、バスは所謂公共機関でも使われているような物だったので席順が余り通じなかったりとやや空回り気味でこそあるがクラスを統率しようとしている努力は感じられるので彼が委員長で良かったかもしれない。

 

「という訳だ、近々俺の師が会いに来るかもしれない」

「零一の師匠か~……どんな人なんだ?」

「激獣フェリス拳の使い手で七拳聖のリーダーのような存在だな」

「フェリス*1……猫か?」

 

バスの中では朝あった事を二人に伝えつつもこれからの事を話している零一。素直な事を言うと自分はまだ精進すべき立場なので誰かを指導するには値しないのでシャーフーが顔を出してくれるというのは素直に有難い申し出あった。

 

「尾白は兎も角、轟の指導は俺には荷が重い」

「そんなもんなのか?」

「自分の才を自覚しろ」

 

自分と比較として思わず溜息をついてしまうが、零一の場合は過去の経験が余りにも心に強く刻まれてしまっている為に無意識的にも臨気が起きやすいという状態にもなっている。その制御やそれと釣り合うようにするための修行もあったので獣を感じるのはかなりの時間があった、同じ条件にすれば轟との才に大きな開きはない。

 

「無月の師匠か……」

 

どんな人なのかなと楽しみにする尾白とは対照的に轟はその人の教えを受けれたらもっと先に進めるのか……と何処か黒い炎を燃やす轟、それは臨気にも似ている感じがすると零一は感じた。獣拳を教えてよかったのだろうか、と僅かな疑問が生まれて来たのであった。そんなこんなで到着した訓練の舞台……巨大なドーム状の施設でその入り口には一人のヒーローが待っていた、宇宙服のようなコスチュームを纏っている宇宙ヒーロー・13号。そんなヒーローに伴われて入ったドームの中は―――

 

『USJかよ!!?』

「水難事故、土砂災害、火事、etc……此処はあらゆる災害の演習を可能にした僕が作ったこの場所――嘘の災害や事故ルーム――略して“USJ”!!」

『本当にUSJだった……!?』

 

色々と危ないネーミングだと冷や冷やする。そんな中でこれからの訓練で何を見出して欲しいのか、個性という力の危険性、それを活かせばどれだけの人を救える事かを説きながらこの授業ではそれを人を助ける為に使う事を学んでほしいという強い思い。それらを感じた所で授業に入ろうとした時の事―――それは現れてしまった。

 

「っ!?」

「ど、どうしたの零一!?」

 

それは突然だった。ジャージ姿だった零一が突然に臨気激装を使用して戦闘形態とも言うべきライガー拳使いとしての姿に変化した、尾白は何かあったのかと問いかける。

 

「身体の中が冷える様なゾワゾワする……悪意、敵意だ。ヴィランが来るぞ!!」

「えっヴィ、ヴィラン!?」

「お前も感じてみろ、今のお前なら出来る筈だ!!」

 

その言葉には尾白どころか相澤や13号も驚いていた。ヴィランが居る筈はない……だが彼が嘘を言うとは思えずに尾白は意識を集中させてみた、獣を感じようとするように神経を尖らせてみる……そしてその途端に感じ取った。酷く嫌な気配を。

 

「確かに、凄いゾワゾワする……!」

 

その直後だった、広場の噴水の前に黒いモヤが漂い始めた。USJには火災現場もある、そこから煙が漏れているのか、いや距離がありすぎる上に靄は徐々に大きくどす黒くなっていき空間が奇妙なほどに捻じ曲がり広がっていく光景に素早く指示を飛ばしながらゴーグルを装着、それを見ながらも13号も動き出す。

 

「皆さん避難します!!これは訓練ではありません!!」

 

その言葉で漸く今のこの状況が緊急事態だという事を飲み込む事が出来たのか、その指示に従い始める。相澤は自らの得物である捕縛布を握り締めながらも飛び出すタイミングを見計らう。此処まで進入するヴィランだ、恐らく先日のマスコミの一件もあれらの手があったのだろう。ならば油断せずに行くしかない、覚悟を固めると相澤は単身、黒い靄から次々と姿を現してくるヴィラン達へと突撃していく。その間に13号は皆を連れてUSJからの脱出を図ろうとするのだが……

 

「逃しませんよ、13号と生徒の皆様方」

 

自分達の向かう先、出口を封鎖し立ち塞がる霧のような姿をしているヴィラン、他のヴィランをここに連れてくる役目も担っている黒い霧のヴィランが立ちはだかって来た。そしてそれは此方をバカにするように仰々しく頭を下げ慇懃無礼な口調をしながらも明確な敵意と悪意を向けてくる。それらから守るように13号が一歩前に出る。

 

「はじめまして生徒の皆様方。我々はヴィラン連合。この度、ヒーローの巣窟であり未来のヒーロー候補生の方々が多くいる雄英高校へとお邪魔致しましたのは他でもない。我々の目的、それは平和の象徴と謳われております№1ヒーローであるオールマイトに息絶えて頂く為でございます」

「オールマイトを……随分な事を言いますね」

 

その目的が語られた時、その時皆の思考は死んだ。オールマイトを殺す為に態々雄英に乗り込んできた、その言葉の意味が分かっているのか問い返したいほどに狂った目的だ。ヴィランにとってオールマイトは最も恐れる存在で彼らからしたら最悪の悪魔、避けようとするのがベターなのに敢えてそれを殺そうとしているその神経が信じられない。

 

「大胆不敵でしょう、不敵、正しく我々ヴィランの特権です……そして生徒の皆様が金の卵という事も承知しておりますので―――散らさせて頂き嬲り殺しにさせて頂きます」

 

そしてヴィランは靄を今度は広範囲に広げながらもA組の皆を包み込んでいく。身体が何処かに飛ばされているかのような感覚を味わうが直ぐにそれは明らかになった。

 

「あっちぃ!?」

 

そんな声が聞こえて来た、周囲を見てみると見渡す限り火の海、此処はUSJの火災ゾーンだという事が直ぐに分かったが異質な点もあった。そこには数多くのヴィランが自分達を待っていたかのように待ち構えていたのだ。

 

「尾白か、無事でよかった」

「零一!?良かった、一緒に居られたみたいで安心したよ」

「だと良いがな」

 

頼ってくれるのは嬉しい限りだが、状況はあまりよくない。周囲は火の海でその中には火をものともしないヴィランが群れを成している。

 

「さあ来たぜ、やったきたぜエサがよぉ!!」

「殺すぜ、ぶち殺してやる!!」

「高学歴の坊ちゃんか、女がいないのは残念だが殺して発散してやるよぉ!!」

 

凶悪なヴィランというには十分過ぎる位の言葉を吐きながらも此方を明確に敵意を向けながらも迫って来るヴィラン相手に互いに背中を合わせるようにしながら構える二人。

 

「戦えない、なんて甘ったれた言葉を吐かないだろうな」

「言って状況が変わるなら幾らでも言うよ、気の利いたジョークが聞けるなら是非聞きたいよ」

「生憎俺はそっちはサッパリだ、ゴリー・イェンに憧れるお前は何か言えないのか」

「そうだね……生憎だけど思いつかないかな。だって文字通りの三流の台詞しか言わないから、それに返したらこっちだって三流しか言えなくなっちゃう」

 

「ンだとぉ!!?」

「このガキ!!俺たちが三流だって言いてぇのか!!」

 

余裕の笑みを浮かべながらも、戯けるようにしながら言った言葉は見事にヴィランの怒りに火を付けた。

 

「ほら、火でも付かない導火線に火が付いた。こんなに扱い難いって事は三流の証拠だよ」

「ゴリー・イェンより余程ジョークの才能があるな」

「そうかな、ゴリーさんのもあれはあれで僕は好きなんだよね。単純明快で」

 

その言葉に笑みを零しながらも零一は意識を集中させながらも名乗りを上げた。

 

「勇往邁進。魂から全身へ、猛る勇気の力―――勇者の魂(ヒーローズ・ソウル)!!激獣ライガー拳の無月 零一!!」

「俺はまだそう言うの無いけど……ライガー拳、無月 零一の弟弟子、尾白 猿夫!!」

「「さあどっからでも掛かって来い!!」」

 

 

「さてさて……いきなり行ったら零一はびっくりするかの、ニャニャ……しかし少し胸騒ぎがするのぉ……零一、確りと励むのじゃぞ」

*1
猫の学名。フェリス・シルヴェストリス・カトゥス

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