「ぐっ……ぅぁ……」
直後、呻き声と共に臨気激装が解除されるように四散し零一の姿が露わになる。
「あれで漸く動きを止められたからな……あの威力じゃなきゃ多分駄目だっただろうが……無茶、し過ぎたな……」
動きを停止している脳無、対オールマイトの切り札というのは伊達ではなくとんでもないパワーとタフネスさだった。未だに殴られた部分は鈍痛が響き続けており肋骨が逝っているかもしれない。あれだけの化物を止める為に激臨威砲を使ってしまった……その反動はすさまじい。痙攣でも起こしているかのように振るえている両腕をそっと見ると酷い有様になっていた。あちこちで内出血を起こし腕が上がらなくなっている、特に酷いのは両手だった。
「ったく……修行が足りんな俺も」
両手は感覚すらない、緑谷が自爆覚悟で個性を使った際の指の状態が両手でなっているというべき状態だ。それだけ激臨威砲の威力を高めすぎたという事。そもそもこの技は激激砲という技をゲキバズーカと呼ばれるアイテム無し且つ一人で行う激技。両手を砲身にしつつ砲弾を生成して放つという自爆覚悟の反動技。それを今回は威力を高めるために限界まで激気と臨気を込めた。
「ハァッ……」
溜息は自分の情けなさと未熟さを孕み、自らを罰する為には吐いた。恐らく自分は今日の事を絶対に忘れないだろう。
「あっ零一君だ~お~いってわあああああ!!?なんか凄いのが居るぅ!!?」
「なら……こいつ、もう戦闘不能みたいだな」
「あっそうなの!?あっもしかして零一君が倒したやつとか!!?」
身体にへばりつく様な疲労に項垂れていると思わず奇声が聞こえて来たので其方へと目を向けてみると、そこには葉隠と轟が揃って一緒に居た。如何やら此方に来たらしいが倒れこんでいる脳無に仰天したらしい。まあ脳が剥き出しになっているから致し方ない。
「零一君大丈夫って腕と手が凄い事になってる!?それ大丈夫なの!!?」
「気にするな、痛みはない」
「いや緑谷の指みたいな事になってるぞお前」
「感覚がないから痛みもないから気にするな」
「いやそれ全然大丈夫って事にならないからね!?」
詳しい事を言ってしまえばダメージで言えば緑谷の自爆攻撃以上に酷い、緑谷のそれは使用した部位に甚大なダメージを及ぼすが零一の場合は反動が余りにも大きすぎる為に両腕全体が酷い状態になっている。
「あっそうだ!!轟っ……君が冷やして上げたらマシにならないかな!?」
「ああ、弱めにやれば痛みを和らげることぐらいは出来る」
そう言いながらも轟は零一の腕に軽く触れながらもかなり慎重に氷を出して腕に当てて行く。
「悪い、あれが手強くてな」
「あの脳みそが出てる奴だよね、あんなのと戦ってたの!?」
「無茶しすぎた。轟、悪いがこっちも頼めるか」
「何処だ」
ジャージを捲って脳無に殴られた部分を見せながら言う、その部分には見事に拳の跡が残っている青く腫れている。しかしそれを見て葉隠は少し抗議した。
「ンもう!!こんなになるまで無茶するなんて駄目だよ!!後女の子の前でいきなりそんな事したら駄目だよ!!」
「この前まで手袋とブーツ以外全裸だった奴に言われても説得力がないな」
「そういう事じゃないってば!!女の子が、此処に居るんですよ!?」
「ならその女が全裸の露出狂だったんだがな」
「今は違うんだから良いでしょうがぁ~!!」
因みに葉隠のコスチュームは確りと変更されており、個性に合わせてコスチュームが自動的に透明になる物になっているらしい。但し、肌に触れてしまうと自動的に透明になるので着る時が大変らしいのでその辺りの改良申請をするらしい。そんな言い合いをしている時に轟は何故か停止していた。
「轟、悪いが早く冷やしてくれると助かる。多分だが肋骨逝ってるから鈍痛がする」
「えっ折れてるの!?」
「っわ、悪い」
慌てながらも轟は慎重に触れながらも冷やして行く、以前に個性が余りにも力押し過ぎると言ったのと怪我人相手に個性を使うせいか何処か慎重というか引き気味になっている様子が見られる。そんな時、USJの入り口の方から凄い音が聞こえて来た。同時に吹き飛んできた何かが広場の噴水を粉砕した。
「もう大丈夫だ少年少女諸君―――私が来た……!!!」
オールマイトである、如何やら誰かがUSJからの脱出に成功し他の教師陣を応援として連れて来てくれたのだろう。今はオールマイト一人なのを見ると、恐らく先発として文字通り飛んできたのだろう。
「ねえ聞いた聞いたオールマイト!!もう大丈夫だね!!」
「やれやれ……これ以上のは完全に酷使無双だから有難いな」
「……っ」
流石の零一もこの状況でのオールマイトは非常に有難く感じる。激気も臨気も出そうと思えば出せるが流石にこの状態で戦う事は勘弁願いたい、まあいざとなったらライガーを繰り出すだけだが……そんな時に入り口から何かが此方へと跳んできたきっとオールマイトだ!!と葉隠が騒ぐのだが……
「ホッホッホッ如何やら修羅場だったようじゃな」
突然現れたのは猫……思い描いていた人物と違った為に葉隠は硬直し轟は素直に誰だ、と言いたげな視線を向けるが零一だけは思わず大きな声で叫んでしまった。
「マ、マスター・シャーフー!!?」
自分達の所にやって来たのはなんと師であるマスター・シャーフーであった。如何してシャーフーが此処に居るのか!?と思っていると直ぐに隣にオールマイトが跳んできた。
「シャッシャーフーさん勝手な行動は……って無月少年どうしたのその腕ぇ!?なんか緑谷少年みたいな事になってるんだけど!!?」
「ホッホッホッ如何やらあの怪人とやり合ったらしいの、強かったか?」
「まあ強かった、ですかね。対オールマイトの戦力だったらしいですから」
それを聞いて葉隠や轟はおろかオールマイトも驚愕した、オールマイトの為に用意された戦力と戦って勝ったという事実が信じられなかった。同時にオールマイトはそこまでの準備をして此処に来たのかというのと同時に獣拳はそこまでの力があるのかと様々な疑念を抱く。何故ならばこのシャーフーは自分とほぼ同時にUSJに到着していたのだから。
「話すべき事は色々あるじゃろうが、オールマイト殿は施設を回って生徒達の保護をした方がいいのではないかの?この子達は儂が見ておきましょう」
「そうですね、では私は行きますので!!トゥア!!」
そう言って跳躍して何処かに去っていくオールマイト、本当に如何言うレベルの身体能力をしているのかと言いたくなる。そしてシャーフーは零一の腕を見ながら突っついた。
「トニャ、トニャトニャ」
「触っても無駄ですよ、感覚ないので」
「無理をしたの、まあすべき無理だったじゃろうな―――よくやった、切り抜けて立派じゃぞ」
師のその言葉は素直に身に染みるようだった、心から有難かった。
「ええっと……零一君この人は?」
「俺の師匠で激獣フェリス拳の使い手にして激獣拳の重鎮、マスター・シャーフーだ」
「前に言ってたお師匠さんか」
「ホッホッホッ弟子が世話になっとるの」
しかし如何してシャーフーが雄英に来ているのか全く分からなかった、近々此方に来るという話は来ていたが此処まで早いとは全く思わなかった。シャーフーとしてはサプライズのつもりで忘れ物を届けに来たという体でこっちに来たのだが雄英にはどうやって入るべきか悩んでいるとその時に対応してくれた先生がいたらしい。
「激獣拳とは如何なる物なのか、という事を聞かれての。それで部屋に案内されてる時に突然その先生、確か八木先生じゃったかな?急いだ様子で何処かに行ってしまっての、儂も気になったので跳んできたという訳じゃよ」
「そうですか……いやそれはそれで此処に居るって割と問題になるのでは?」
「そうかの?大丈夫じゃろそれにしても美人な子達じゃな零一?」
軽く笑っているシャーフー、それに呆れている零一、愉快なお師匠さんがいるんだな~と思っている葉隠、そしてこの人が獣拳の……と思っている轟。様々な事がありながらその後、雄英の教師陣が到着しUSJの事件は終息する事となった。
「……バレて、ないよな?」