『さあぁ先頭がいよいよ第二の関門へと差し掛かったぞぉ!!!落ちれば即アウト、それが嫌なら這いずりなっ!!!ザ・フォォォオオオオオル!!!!』
第二の関門として姿を現したのは巨大な峡谷のように大口を開けている地の底へと向かっているような真っ黒い闇、切り立った崖のような足場とそれらへと架けられているロープの橋だった。つまり、ロープを綱渡りの要領ので渡っていく事で奥へと進んで行けという事になる。
「この程度っ……!!」
『おっとぉ流石推薦入学者!!轟は足でロープを凍らせてその上を滑って移動していく!!中々に速いしこりゃ有利ぃ!!』
足を押し付けるようにしながらも同時にロープを凍てつかせ、氷の上をすべるように移動していく轟。あっという間に先へと進んでいくのを見ながらも尾白もそれに続いて行く。
「ハッ!!よっ!!タァ!!」
「尾白君は自慢の尻尾で地面を殴った勢いを利用しての跳躍!それぞれ個性を生かしてますね!!」
そんな中、零一は一旦後ろへと猛ダッシュして十分な距離を取った。
「よし、この位の距離があればいけるな……」
『おーと此処で零一が逆走!!?おいおいそっちは逆だぞって止まった、一体何をする気だぁぁあああ!!?』
「再び走り出しましたぁ!!そしてそのまま―――跳躍ぅぅぅぅ!!!」
十二分に距離を付けて十二分に加速し、そのままの大跳躍。尾白のと似ているがその距離を段違い―――が
「あぁ~と流石に飛び過ぎたのか闇に落ちていくぅ!!零一君の勢いは此処で途切れて、おりません!!何と零一君壁に爪を食い込ませるようにしながらも壁を蹴って攻略していきますぅ~!!」
深い深い闇に立つ円柱状の足場、それを利用して柱から柱へと飛び移っていく事を何度も繰り返して行く。そして最後には鋭利な爪を食い込ませようにして凄い勢いで壁を登っていき第二関門を突破。その直後に轟と尾白も並ぶように突破していくが―――
「待ちやがれぇぇ!!」
「爆豪、来たか!!」
「やっぱりスロースターターだ、時間が立てばたつほどに爆発の勢いが増して行ってる!!!」
背後から迫ってくる凄まじい爆音と怒号、爆豪も迫ってきている。既に自分達との差は余りない、この先で差を詰められる訳には行かない。脚に込める力も増して行く中、轟は地面を凍らせながらもその上をスケートのように滑って進んでいく。尾白も先程の尻尾による加速を上手く使ってスピードを上げていく。
「生憎―――負けるつもりはない!!」
正直体育祭での成績なんざどうでもいいが、同じ修行をした物として簡単に負けるのは癪だ。故に自分も負けないと言わんばかりに激気を強めながら駆け抜けていく、背後から迫る爆豪にも警戒しながら進んでいくと遂にラストの障害が見えて来た。
「さあ遂にラストの障害へと足を踏み入れてまいりましたよぉ!!っておっと危ない危ない近づきすぎたら私も危ないのでしたね!!」
『そうだから気を付けろよブラザ-!!何せそこにあるのは無数の地雷が仕掛けられてるぜ、しかも空中個性に対応する為にミニガンや空中攻撃ドローンも完備ぃ!!そこだけは完全な戦場!!名付けて―――ラースオブアフガン!!!まあ競技用に威力は皆無だから安心しな!!!まあ衝撃と音はド派手だけどなぁ!!』
「っそがぁ!!」
と爆豪は突然高度を下げた、茂みから飛び出したミニガンから放たれた弾丸を回避する為だ。高度が一定まで下げるとミニガンも追尾を止める、此処からは低高度、つまり地上を走る者も空中に手が届く事を意味する。
「チッ!!」
「流石にこれはまずい、かなぁってうおおおお!?」
此処までトップスピードだった轟と尾白も流石に速度が落としてゆっくりと進んでいく。幾ら競技用とはいえ地雷は踏みたくない、だがそこへ爆豪が乱入して二人を攻撃しながらも前へと進もうとするが二人は二人で爆豪を行かせないようにするので中々三人は前へと進めない―――のだが、そこに地雷の連鎖爆発が起き始めて行く。
「おっと突然の連続爆音!!何が起こっているのかって零一君まさかまさかの超正面突破ぁ!!臨気激装の防御力でのごり押し戦法だぁ!!!」
『こいつはシヴィィィィィィ!!!』
『十分な防御があるなら合理的な判断だな』
臨気激装からすれば威力もない地雷など気にする意味はない、うるさいのを我慢すれば地雷を踏みつけながら進む事も苦ではない。どんどん前へ、前へ前へと好き進んでいく。そして一早く地雷を踏み越えたと思った時、真横から何かが通り過ぎた。
「ここまで有難う!!!」
「お前、緑谷―――!!!」
「なんとぉ!!此処で零一君を抜き去ったのは緑谷君です、地雷の爆音と衝撃で気付かなかったのでしょうがまさか此処での順位変動だぁ!!」
零一を抜いたのは全身に個性の光を待っていた緑谷だった。今日までオールマイト考案のアメリカンドリームプランをやり続けていた結果、緑谷はある成果を引き下げてこの体育祭に挑んだ。
「ワン・フォー・オール・フルカウル―――!!!」
それこそがフルカウル。大基となったのは零一の臨気激装、全身をオーラで包んで鎧とするという事から着想を得て個性を全身で発動させる事を可能にして身体能力を向上させた。そして大逃げの態勢を作っていたトップに喰らいつくように動き、最後の最後で溜めて来た力を開放して一気に抜き去った。
「やってくれる―――だが、俺とてそう簡単に負けるかぁ!!」
「さあ零一君も駆け抜ける、いや後ろでも一気に轟君爆豪君尾白君が一気に迫ってきますぅ~!!!さあ第一種目、長距離障害物競走を1位で突破するのは一体誰なんだ~!!?」
隙を狙い続けながらも切り札を解き放った緑谷、見事な戦略にやられつつもそれによって激気と臨気を滾らせている零一、クールで居ながらも負けないという情熱を燃やしている轟、強敵が多い事に嬉しさを覚えつつも激気を纏って突き進む尾白、爆破の勢いが最高潮に達しているのかこれまで以上に勢いがエグくなっていく爆豪。誰が1位を取っても可笑しくない状況、そして間もなくゴール、一体誰がゴールを最初に潜るのか―――!!?
「ゴォオオオオル!!一位は見事に作戦勝ち、最後の最後に見事なごぼう抜きを見せた緑谷君ですぅ~!!二位は此処まで圧倒的な激気と臨気を見せてくれました零一君!!三位は氷をテクニカルに扱って高いスピードを維持してきた轟君!!四位は爆破のインパクト勢いは伊達じゃない、爆豪君!!五位は肉体こそ彼の武器、此処まで見事な力を見せてくれましたが最後に惜しくもこの順位!!ですが皆さん拍手でお出迎えを、尾白君です!!!」
「ったく……最後の最後にやられたな」
「ハァハァハァッ……抜かれたぁ……」
「零一は兎も角、緑谷にやられるなんて……くそ予想外だ」
獣拳三人組にとって緑谷は完全なダークホースだった。個性こそ凄いがそのコントロールは余りにも未熟で体育祭を戦い抜き事を考えたら使ってこないと考えていたが違った。緑谷は今日に至るまで相当な修行を積んできたのだ、肉体面だけではなく精神面も同時に鍛えられた結果、自らを破壊するだけの使い方しか出来なかったのが自分の身体を活かす使い方を編み出したのだろう。
「―――だったらやりがいはある、そう来なくちゃ面白くない」
「おい白獅子野郎」
緑谷を敵として認めたようなときに爆豪が迫って来た。その表情には何処か強い敵意を感じる、だが純粋な敵意だ、悪意などは一切ない闘争心が生み出す敵意。
「テメェは俺が潰す、半分野郎も尻尾野郎も、そしてデクも。テメェら纏めて俺が潰してやる、俺以外に潰された容赦しねぇぞ」
「宣戦布告か?いいぜお前みたいな闘志を剥き出しにする奴は歓迎だ」
爆豪は零一の事を入学当初から意識していた。それは無個性なのに個性持ちにも勝る力を持っていたから―――だが同時に理解していた。零一のそれは積み重ねて続けてきた努力の結晶である事を。故か、爆豪は零一に苛立ちは感じなかった、何故ならば自分の無力を理解した上で自分を限界上に追い込んでいる。
だからこそ、真正面から潰したくなった。その時間も、獣拳も自分の力で全て吹き飛ばしてやりたくてしょうがない。
「―――テメェは俺が潰す」
「やってみろ」