獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第22話

「よし乗れ心操」

「ああ、悪い重いかもしれないぞ」

「大丈夫大丈夫、というかちょっと軽くない?」

「そ、そうか?」

 

間もなく時間になるので騎馬を組む、二人で騎馬を組みその上に騎手が乗るという編成になる。他者に比べて人数が少ない分出来る事は少ないし機動性も落ちるかもしれない―――がそんな事はもう関係ないと言わんばかりに3人は通い合っている。そして心操は鉢巻を巻く、ここに自分達の努力の全てが詰まっている。そして次の努力を見せつける為にこれを奪われる訳にはいかないのだ、それを強く意識しながら額を締め付けるレベルで鉢巻を装備して騎手として声を上げる。

 

「尾白」

「ああ」

「零一」

「応」

「―――この鉢巻、俺も死ぬ気で守る。そして死ぬ気で取りに行くから頼む!!」

「言わずもがな!!」「任せておけ」

 

後数秒で始まる、そんな時に声を掛ける。騎馬たちから頼もしい声が聞こえてくる、それに笑みを作りながらも心操は自然と拳を握る。先程のバエとの事もあり自分の中では既に体育祭の結果による編入なんてあまり意識に登らなくなっていた、この友人達と何処まで行けるのか試してみたいという闘争心が燃え上がって致し方ない。

 

『さあいよいよ始まっぞぉ!!血で血を洗う仁義も情けもねぇ雄英大合戦、大戦国時代!!残虐ファイトの幕が今上がるぜぇ!!さあ狼煙が今―――上がったぁぁぁぁ!!!』

「流石に物騒すぎません!?」

 

というバエのツッコミも入りながらもいよいよ始まった騎馬戦、凄まじい熱気と共にほぼ一斉に1000万Pを狙う物が大勢いる。だがしかし、堅実にポイントを稼ごうとする者もいる。

 

「鉢巻寄こせやゴラァ!!!」

 

突撃してくるのはB組の鉄哲が騎手を務める騎馬、他にも自分達を狙ってくる騎馬は一定する。何せ人数的にも少ないので取る手は少ないのにポイント的にも美味しいからだ、確かにいい狙いだが……彼らは忘れている。自分達が狙ってしまっているのは獰猛な獣である事を。

 

「合わせろ尾白!!」

「分かった!!」

「ハァァァッ……ゴォォオオオオ!!!」

「ハァ!!!」

 

姿勢を低くするようにしつつも一気に力を解き放って跳躍する零一に合わせて地面を尻尾で打ち付けてサポートする尾白、その力は騎馬であるのにも拘らず騎手を跳び越す程だった。

 

「ンだ、とぉ!!?」

「ライガーを甘く、見るなぁ!!」

 

鉄哲を容易く跳び越えながらも着地するのだが、その時、零一は心操に向けてある物を投げた。それは鉄哲チームの鉢巻だった。

 

「何時の間に!?」

「今のすれ違いざまだ、腕が無くでも脚で十分だ」

 

すれ違いざまに激気と臨気を込めて蹴りを放ち、その爆風で鉄哲の鉢巻を外しつつも奪い取ったのである。それに何と器用な事をするんだ……と思いつつもこれは頼もしいと笑いながら鉢巻を付ける。

 

「まるで空飛んでるみたいだ……」

「流石零一だ、此処まで頼もしい騎馬もそうはいないな!!」

「そう褒めるな―――激気が溢れるだろうがぁ!!」

 

そう言いながらも勢い良く地面を踏みしめると地面に無数の亀裂が走っていく、しかもそれには激気が込められており亀裂と共に此方に向かってきた力が相殺された。それを見た犯人は驚愕した。

 

「嘘だろ失敗したのか!?」

 

鉄哲チームの騎馬の骨抜、その個性によって地面を柔らかくして機動力を奪って鉢巻を取り返そうとしたのだが……まさかそれがこうも容易く防がれるなんて予想もしなかった。その間、尾白は迫ってくる気配を察知したのか地面を叩いて跳躍した。

 

「気付かれたか!?」

「バレバレだよ、お前らそれでもヒーロー科かよ」

「なんだと―――」

「鉢巻寄こせ」

 

迫って来ていたのはB組の鱗チーム、それに素早く気付くと心操は個性を発動させながらも挑発した。相手はそれにまんまと乗って返事をしてしまい、洗脳下に置かれる。返事をしてしまうだけの個性の制御下に入ってしまうという凶悪な性能をしている心操の洗脳、正面突破が出来る零一にそのアシストも出来る尾白、そしてそれらに騎乗しつつ周囲を見回して搦手を繰り出す心操。三人チームだが、最も恐ろしい騎馬となっている。

 

「この野郎ォォォォォッ!!!」

「っ!?零一なんか来たぞ!?」

「爆豪か!!」

 

そんな騎馬に挑む者もいた、それは爆豪だ。騎手自らが攻撃を行うという何とも奇抜な戦法、まあ彼ならば納得だが……。

 

「寄こせぇぇぇぇ!!!」

「お前か、そんなので俺達に勝てるかよ!!!」

「死ねぇぇぇ!!!」

 

洗脳を試みるが全く効果を示さない、洗脳が通用するのはあくまで返事をされた時のみ。爆豪は絶え間なく爆破を起こして空中に浮いているのでその爆音で聞こえていない可能性が高い上に恐らく聞く耳を持っていない。故に洗脳が利かない、心操は一番厄介なタイプだと思うが直後に爆破と共に鉢巻へと手が伸ばされて、奪われる!!と思った時

 

「激技、剛勇雷来陣!!」

「ってぇ!!なんだこりゃ!!?」

 

騎馬を包み込むように展開された激気と臨気によるバリアドームに阻まれて爆豪は手が出せなくなっていた、何度も何度も爆破を叩き付けてそれを破ろうとするが破れないそれに苛立ちながらも爆破のせいで緩んできた鉢巻を巻きなおす為に撤退していく姿に安心感を覚える。

 

「れ、零一、獣拳ってこんな事まで出来るのか?」

「やろうと思えばな、だが長続きはしない。こいつは消耗が激しくて短時間しか張れない」

「っ―――今度は絶対に油断しないし渡さない!!」

「その意気だ心操!!」

 

其処からの心操は無駄な事を考える事を完全にやめていた、自分の全てを二人に託しつつも自らは俯瞰して自分達を見た上での判断を下して行く。時折、零一の剛勇雷来陣に頼ったりもしてしまったが、心操は手にした鉢巻を一度も相手に渡す事が無く騎手としての役目を見事に全うし続けて3位で騎馬戦を突破するのであった。

 

「やったぁ~心操、君ホント凄いよ一度も鉢巻奪われなかったし!!」

「言ったろ死ぬ気で守るって、俺は吐いた言葉には責任を持つタイプだから」

「気に入ったぞ心操。ならば俺も責任をもってお前にバエさんを紹介しよう」

「ああ、是非頼むよ」

 

人数的な不利を引っ繰り返し続けた結果、見事な勝利を勝ち取る事が出来た零一チーム。三人は屈託のない笑みを浮かべており、争いだらけの雄英体育祭としてはかなり異例なものがあった、一般的な体育祭で生まれるような友情の笑いがそこに出来ていた。

 

「それでは皆さんお疲れ様でした、この騎馬戦を持ちまして午前の部は終了となります。午後の部はお昼休憩を挟んでの開始となります。選手の皆さんは集合時間のお間違いのないようにご注意ください!!では心操君、折角ですからお昼をご一緒しながら獣拳についてお話しますか?」

「はっはい宜しくお願いします!!」

「ハハッ緊張してるね、折角だから俺も付き合っていいですかバエさん。俺も聞きたい事ありますし」

「勿論大歓迎ですよ。零一君は如何しますか?」

 

無事に突破した事で終わりを告げる午前の部、此処からは昼休みになるので食事でもしながらゆっくりと身体を休めようと思っていた零一はそれに付き合おうとしていたのだが……何やら此方を見つめて来る轟の視線に気づいた。何かを訴えたいような物を放置する事は出来ない。

 

「すいません後で合流します」

「分かりました~それじゃあ行きましょうか、雄英って美味しいご飯あるんですかね?」

「ここの食堂は滅茶苦茶美味しいですよ」

「そうそう今日は確かメンチカツが日替わりランチ出てたと思いますよ」

 

そんな話をしている皆を見送りながらも零一は誘って来る轟の後に続いて行く、付いて行った先は誰かに話が聞かれる心配がないような人気のない通路だった。そして轟はそこで漸く口をきき始めた。

 

「悪い、腹減ってるだろうけど少し話をしてもいいか」

「別に構わないさ、俺は別にレクレーションに参加する気はないからな。ンで話って何だ?」

「……その、話した方がいいと思った事があるんだ」

 

勇気を出している言い難い事を言おうとしている轟に何が飛び出すのかと少しばかりドキドキしてしまった。勇気を出すかのように深呼吸をすると轟は少しだけ不安げな目をしながらも言った。

 

「俺の親父は、№2ヒーローのエンデヴァーなんだ……その事は多分知ってると思うけど」

 

エンデヴァー、№2ヒーローとして名を馳せるトップヒーローの一人。事件解決数史上最多記録を保持するヒーローでもある故に知らぬ者はいないほどの超有名人なのだが……

 

「エンデヴァー……あ~エンデヴァーエンデヴァー……ああっ!!缶コーヒーのCMに出てるヒーローか!!」

「あ、ああ確かに出てるけど……」

 

ヒーローにはあまり興味を抱いていない零一からすればエンデヴァーは如何でもいい存在にしか過ぎない、それ所かトップヒーローである事も把握していなかった。オールマイトと比較される事が多かったような気もするが、それ以上にCMの缶コーヒーの方が余程印象に残っている。取り敢えず咳払いをして話を仕切り直す。

 

「兎に角、俺の親父はエンデヴァーなんだ。親父はずっとオールマイトの後塵を拝してる、故に親父は自分じゃオールマイトを越えられないって悟って自分の子供にそれを託そうとしている」

「つまり、轟にか」

 

憎悪を表にしながらも頷く、余程父親であるエンデヴァーの事を疎ましく思っているらしい。そしてエンデヴァーが取った手段が所謂個性婚、強い個性と個性を掛け合わせる事でより優れた個性にして引き継がせようとするという個性によって価値観が揺れていた時代の行いを行った。

 

「俺は、親父が憎い。無理矢理オールマイトを越えるための訓練を押し付ける日々、それを止めようとしてくれたお母さんにまで手を上げた……そのせいでお母さんはいつも泣いてた……だから俺はお母さんの個性しか使いたくなかった……!!!」

「……」

 

それを零一は静かに聞いていた、彼も無個性故に苦労してきたが個性故の個性をして来た轟は様々な思いがある。轟本来の個性は炎と氷を生み出す半冷半燃、だが轟は父への想いから炎を使いたがらない。父を否定したが故に、きっと獣拳を学びたかった根幹は父の炎を扱わなくても強くなれるという事を証明したかったのだろう。

 

「それで氷だけをか」

「……それだけじゃない、俺はあいつを徹底的に否定したかった」

 

その言葉の意図は掴めなかった、続けて轟は以前の訓練を持ち出した。

 

「尾白の激技を跳ね返した時に服が破れた時あっただろ」

「ああ、あの時か」

「その時に気付いてると思うけど……」

 

そう言いながらも轟は上着を脱いだ、その時に見たのは……何かを抑え込むようにしている晒。肌に吸い付く肌着と晒で抑え込むようにしているが、抑えきれないような膨らみが出来ていた。

 

「俺は、女なんだ……親父への反抗心でこんなことしてるんだ……母さんの一件からなんか今更女扱いしようとするあいつが嫌で……」

「マ、マジか……?」

「隠してて、ごめん……騙してるみたいでいやだから、話そうと思って……」

 

恥ずかしいなのか、それとも罪悪感からなのか顔を紅潮させながらも反らしている轟は少しだけ上擦った声で言った。その姿は個性を扱っていた時の力強さなどからは全く想像出来ない程に何処か儚げだった。そしてこの時に零一は理解した。

 

『―――それにしても美人な子達じゃな零一?』

「(あの時のマスターってこういう事だったのか!!?)」

 

シャーフーは既に轟の事に気付いていた、だから達と表現したのだ。それに自分は全く気付けなかったのか……と思う反面、なんだか轟に対して申し訳なさが出て来た。

 

「あ~……えっと、取り敢えず上着着たら如何だ?」

「あ、ああ……そう、だな」

 

一先ず、そんな言葉を掛けるのが精一杯だった零一であった。




という訳で―――轟は轟じゃなくて焦凍ちゃんでした。

うん、分かってたよね!!やっちゃったよね!!
そして男装は完全なエンデヴァーへの当てつけ、テメェのせいで娘がこんな事になってんだぞ的な。実はこれ、エンデヴァーには会心の威力を放ってます。
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