獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第25話

『さあぁ続けて第三試合行くぞぉぉぉ!!!お前らリスナーが一番気になってる戦いでもあるんじゃねえかなぁ!!?』

 

いよいよ第三試合が始まろうとしているが、マイクの実況通りにこの試合を一番望まれていたのではないだろうか。マイクの実況にも熱が乗っている、その熱がスピーカーを通じて会場のボルテージを更に過熱させていく。ステージへと足を進めていく零一の心もその熱に乗っかり、気分が高揚する。矢張りプロの実況は場を熱くして舞台に上がる人間の心をも熱する力がある。フィールドに上がった両雄は凄い集中を発揮するように互いを睨みつけている。既に戦闘準備は整っているので開始の合図を待っていると言わんばかりだ。

 

『結構便利な尻尾持ってるなぁ!!ヒーロー科 尾白 猿夫!!ヴァアアアサスッ!!!個性はねえけどその手に獣拳あり!?獣拳ってマジで何なんだ!!同じくヒーロー科 無月 零一!!』

 

無個性である人間が此処まで勝ち上がってきたのは予想外ではあるが、それなのに個性を持超えるような力を持つ獣拳を引っ提げて堂々のトーナメント入り。十分過ぎるほどのインパクトを纏っている、そしてプロヒーローは未だに獣拳についての情報集めに躍起になっている。だが芳しくなく、せめてこの戦いでヒントでも見出そうとしている。

 

「零一、この時を待ってたけどまさかいきなりとはね」

「全くだ。だがお互いにベストな状態だ、楽でいい」

「それは言えてる」

 

個性という個人によって大きく違う関係上、完全に公平な戦いという物は成り立たない。だがこの二人の場合は別、尾がある事を踏まえると尾白が有利とも取れるのだが、互いに武術でぶつかり合う事を考えると限りなく近い戦いになる。

 

『おっとおっと、互いにもう気合十分みてぇだな!!!それじゃあ―――レディィィィスタァアアアアアトッッッ!!!!』

 

スタートの合図が響いた。同時に尾白は一気に地面を尻尾で蹴って駆け出していく、先手を取った。脚の力よりもずっと強いな跳躍力で一気に距離を詰めていきながらのラッシュ、しかし零一はそれらに冷静に対処しながらも全てを捌く。廻し蹴りと共に飛んできた尻尾との二重攻撃を対処する、その時に尾白は笑った。防御した零一の腕が鎧で覆われている、それを見ると後ろへと跳んで距離を取った。

 

「チェッやっぱり間に合わないよな」

「狙いは悪くない、だがそれを俺が考慮しないとでも思ったか」

「いや思ったけど狙わない理由にはならないでしょ」

「だな―――臨気激装」

 

その言葉と共に腕を覆っていた激気と臨気は全身へと巡っていき、純白の鬣を携えたライガーの姿へと変貌する。それにプロヒーローから再びどよめきの声が聞こえてくるが、そんなものはどうでもいいと言わんばかりに零一は構えを取った。

 

「勇往邁進。魂から全身へ、猛る勇気の力―――勇者の魂(ヒーローズ・ソウル)!!激獣ライガー拳の無月 零一!!」

 

溢れ出る激気と臨気、これが自分との分かりやすい差かと思わず笑いが込み上げて来た。面白いじゃないか、この舞台での試合だ、存分に力を尽くして立ち向かわせて貰う!!尾白も軽く地面を踏みしめながらも尻尾をしならせながらも構えを取る。

 

「願望成就。願いと誓いを胸に、極めてみせよう己が技―――高潔な願い(インテグリティ・プレイ)!!激獣クロコダイル拳の尾白 猿夫!!」

 

高らかに名乗りを上げると同時に己も激気を発する尾白、二人の激気はぶつかり合って激しくスパークする。

 

『って何だ何だ!?尾白も獣拳使いだったのかよ!!?』

「はいそうなんです~尾白君は以前から獣拳の手解きを受けておりました、元々武術をやっていたからか呑み込みも早かったと零一君は言っておりました~さあ今や幻とも言われるようになった獣拳同士の対決、ライガー拳とクロコダイル拳の激突にこれは目が離せないぞ~!!!」

 

「「―――……ハァッ!!」」

 

構えを取り続けていた両雄は同時に駆け出して行く。そして激気を込めた拳を放つ、激突するそれは周囲に猛烈な爆風を生み出す。尾白の方が押されているが、クロコダイル拳の防御力と自らの尻尾で身体を支える事で零一の一撃に持ち堪える。だが押された隙を見逃がす事も無く、尾白の腹部に掌底打ちが炸裂する。それを受けて吹き飛ばされる、いや自ら後ろへと跳ぶとそのまま地面に向けて尾を叩き付けた。

 

「激技、万降石!!続けて―――尾尾旋打!!!」

 

地面を砕いて辺りに破片を降り注がせるが、降って来た物に尻尾に激気を込めたまま高速回転して打ち付けて零一へと向けて撃ち放つ。

 

「連続の激技だぁ!凄まじい勢いで零一君に向けて巨大な破片が向かって行きます!!如何する零一君っと全く動じる事も無く迫り来る破片を砕いて行くぅ!!」

 

「やっぱりそうだよなぁ!!なら、どっせぇぇぇえええええい!!!!」

 

全く平気そうに迫り来る破片を砕き続ける零一に対して尾白は特大の破片を渾身の力で弾き飛ばす。人間の数倍はありそうな巨岩は真っ直ぐ零一へと向かって行く。これには主審ミッドナイトと副審のセメントスも一瞬焦った。これは流石に不味いと思ったが零一はそれを察知したのか、邪魔をされない為にも自ら巨岩へと向かっていく。

 

「剛勇衝打!!」

 

そして臨気を込めた一撃でそれを粉々に粉砕してしまう。彼にとってはこの程度の物なんて恐れるような物ではないと言わんばかりの行動―――が、すぐさま傍にあった大きめの破片目掛けて蹴りを入れる。

 

『なんだいきなり破片に蹴りいれたぞ!!?』

『実況ならしっかり見とけ』

「私は見てました~!!破片に隠れていた尾白君を狙ったのです、破片をカモフラージュに使って潜んで攻撃を狙っていた尾白君の企みを打ち砕きました!!」

 

即座にフォローを入れるバエの実況。巨大な破片を弾くと同時に走り出し、そのまま零一が砕くと同時に大きめの破片に潜んで攻撃を狙っていたがすぐさまそれに気付かれてしまったので尾白は距離を取った。

 

「クソッ流石にバレるか!!」

「流石にな、さて―――お前がちゃんと成長してるか見てやる。激技、烈光爪撃!!!」

「(来たっ!!)」

 

距離を取るのであれば此方から攻める、と言わんばかりに飛び込みながらも強烈な一撃を放ってくる零一。訓練の中で常に烈光爪撃を維持しながらも攻撃され続けてきた尾白にとってこの場は本当の意味での成果を出す場面。

 

「ハァァァァァッ……!!!」

 

激気を全開にしながらもそれらを全て全身へと纏う、そしてそれをクロコダイル拳特有の硬い鱗の上に重ねていく。より硬い激気を纏いながらも超高温によって相手を切り裂く烈光爪撃を真っ向から迎え撃った。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

輝く爪と激気によって完全に固められた尻尾が激突する。矢張り激気は凄い勢いで削られていく、だが負ける訳には行かない。簡単にやられてしまっては今日まで修行を付けてくれた零一に顔向けできない。更に情熱を燃やす、自分はこんな物じゃないと激気を燃やして渾身の力を込めると―――烈光爪撃を押し返し始めた。

 

「オオオオオリャアアアアアアアア!!!!」

「ぅぉ……!!」

 

烈光爪撃を尾白の激気が完全に押し切って零一を弾き飛ばした、それでも零一は上手く着地するが尾白からすれば今まで一度も出来なかった事を成し遂げた瞬間だった。

 

「零一君を弾き飛ばしたぁ!!これぞ攻防一体のクロコダイル拳の特性が生きた瞬間!!」

 

バエの言葉に思わず頬が緩んだ、だがクロコダイル拳に頼った勝利という訳でもない。それはシャーフーとシャッキーも認めるほかない。

 

「マスター・シャーフー、今彼が行っていたのって」

「うむ。激気を堅く変化させおった、あれこそ激気堅甲」

「あの激気研鑽に通ずるというあれを修得しちゃってるなんて……凄い子ですね」

 

シャッキーの言葉に頷く。激気をより堅い物へと変える激気堅甲、それは七拳聖ですら修得出来なかった激技、激気研鑽にも通ずるとされる物。まだまだ未熟な部分も目立つが修練をし続ければ、研鑽の域にまで届くかもしれない。零一は良い友達を持ったものだと笑う。

 

「行ける―――行くぞ零一!!」

 

激気堅甲を行ったまま迫って来る尾白、硬い身体は更にそれが増しており一撃一撃が更に重い物へと変化している。防御を極め攻撃をも極める、クロコダイル拳が目指すものこそ尾白の行っている物なのかもしれない。

 

「やるな尾白」

「兄弟子の、教えが良かったからねぇ!!」

「そうかなら……もっと厳しさを上げるとするか!!」

「グガァッ……!?」

 

ラッシュを捌きつつも尾白の顎にアッパーを入れた。それだけならば驚きはしない、が激気堅甲の防御を貫通して身体にダメージが走っていく。痛みに身体を震わせながらも立ち上がる、とそこにあったのは右手に激気、左手に臨気を集中させている零一の姿だった。そのまま殴り掛かって来るが、今度は受けるのはまずいと判断したのか回避するが先読みされ、今度は脇腹に掌底が炸裂し荒々しく息を吐く。

 

『一転攻勢!!さっきまで無月を押してた筈の尾白が逆にぶっ飛ばされたぞぉ!?これもゲキワザって奴なのかブラザー!!?』

「イエースマイブラザー!!尾白君はクロコダイル拳の防御を激気によって高めておりましたが、零一君はそれを拳に激気を集中させる事で突破したのです!!激気の強さや量で言えば零一君の方が圧倒的ですからね!!」

 

「そうか、一点に……!!!」

「激技、激気一擲。激気と臨気を完全にコントロールして望む場所に集中させる、これならばお前の防御なんてないも同然だ」

 

確かに激気堅甲は天才でなければ修得は出来ない、零一は使えないので指導もした事もない。尾白が自力で試行錯誤して到達した技、だが零一にはこれまでに積み重ねて来た修行がある。それは天才であっても決して崩す事の出来ない牙城、例え天才であっても彼のそれは揺るがない時間。

 

「尾白、お前は俺以上の天才だな。これからが楽しみだ」

「兄弟子に、そう言われると嬉しいなぁ……」

「だから手向けと受け取れ―――激臨威砲!!!」

 

両手に集めた激気と臨気を激突させて光球へと変え、それを尾白へと放った。尾白はそれを避ける事も無く、残った最後の力と激気を振り絞って激気堅甲を行いながらもそれに立ち向かうが―――立ち向かえる訳もなくそのまま光球を諸に受けて場外へと吹き飛ばされていった。

 

「尾白君、場外!!無月君の勝利!!」

 

注目の第三試合、勝利を掴み取った零一だが……勝利以上に友人の成長に頬が緩んで致し方なかった。




激気堅甲:激気研鑽に至る為の前段階とも呼ばれる激技。激気を更に強固な堅い物へと変える激技。拳聖も此処までは至る事は出来るがこの先が極めて難しいとされる。
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