獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第28話

轟と緑谷の試合によってフィールドは著しいダメージを受けてしまったので修復の為に補修時間が設けられる事になった。その間に緑谷は保健室へと運ばれる事となり、そこでリカバリーガールの処置を受ける事となった。

 

「取り敢えずこの辺りかね……まだ痛みはあるけど大分楽になったろ?」

「はい、お陰様で……」

 

治癒を施された緑谷は全身に倦怠感と疲労感を感じつつも完治した右手と鈍痛こそするが包帯を巻く程度には回復した左腕を見た。入試試験ではもっと酷い状態になっていたが、あれから身体を鍛えたのもあってかあの時よりかは身体は楽な感じがする。

 

「大丈夫かい緑谷少年」

「オールマイト……いえ、余り大丈夫とは……」

 

其処に居たのは八木先生こと、トゥルーフォームのオールマイト。彼も弟子の事が心配になって保健室まで様子を見に来たのであった。傷の方は問題なさそうだが心の方は余り大丈夫ではなさそうだった。

 

「……僕は、轟君に失礼な事をしちゃったのかもしれません。あの時はなんか、アドレナリンドバドバでなんか暴力的な気分って言うか、興奮してたって言うか……」

「何かあったのかい?」

 

心のケアも保険医の務めとして話を聞こうとした、そこで緑谷が語るのは試合前に出会ったエンデヴァーから言われた轟が背負わされている事柄についてだった。そしてそれを聞いて感じたこと、考えたことに加えて試合中の事も付け加えて話して行く。

 

「エンデヴァー……君は、轟少年に……」

「親が子供に夢を託す、良くある話ではあるけどねぇ……」

 

正直、オールマイトからすればショックな事だっただろう。彼自身は平和の象徴として人々が笑顔で暮らせるように務めて来たつもりだったが、それが原因で別の暗闇を産んでしまった事に悔しさなのか、それとも歯痒さなのか……それを現すかのように拳を握り込んでいた。

 

「それで僕は反抗って言ってたので轟君は炎、エンデヴァーから受け継いだ個性が嫌いなんだと思って……でも、自分勝手に解釈し続けたのかもしれません……」

「それは間違いなくあるだろうね」

 

リカバリーガールは即答した。

 

「恐らくだけど、そっちはそっちで炎を使わずにすむ方法を模索してるんじゃないかね。それをやっている子にアンタがやったのはちと強引が過ぎる、余計なお世話はヒーローの本質って言う事もあるけど、既に乗り越えようと必死に努力している場合にはそれを無駄にしちまう事もある。人の事情に干渉するってのはそれだけ大変な上に相手を傷付けちまう事もあり得るって事を今回の事でよく覚えておいた方が良いさね」

 

そう言われて緑谷は頭を下げて保健室を出た、オールマイトもそれに続いて行く。共に廊下を歩いて行くが互いに会話は無かった、気まずいとオールマイトが思っている時に口が開かれた。

 

「僕、傲慢になってたのかもしれません」

「緑谷少年」

「オールマイトに個性を授かって、無個性じゃなくなったからってオールマイトみたいに誰かを救いたいからって……善意を押し付けてしまった……」

 

そんな風に思いを吐き出している弟子にオールマイトも少しだけ溜息を漏らしながら言う。

 

「確かにそうかもしれない、だが余計なお世話はヒーローの本質というのも事実だ。轟少年は既に乗り越えようとしているかもしれない、だが君の行動が無意味で終わるとも思えない。凝り固まっている所を動かす一助にはなるだろう」

 

オールマイトは肯定的な意見を送る、結果的には上手く行かなかったがそれだけで諦めるというのもヒーローとしてはらしくない。故に改めるべきは行動ではない、タイミングだった。まだまだやれる事はあると言葉を送りつつも弟子を励ますのであった。

 

 

『さあ無月対飯田、中々に盛り上がって来てんぞぉ!!!」

 

漸く修復が終了したステージの上を疾走する飯田、得意の機動戦で零一を翻弄しようと画策するのだが零一はそれらのスピードを完全に捉えているのか、飯田の速度を目で追いながら対応が出来ている。死角に回り込んでからの蹴りを入れようとしても屈んで回避しながらも反撃に転じて来る。飯田はそれを無理矢理回避するしか出来ていない。

 

「飯田君得意のスピードを存分に発揮しておりますが、零一君はそれらに全く動じません!!おっと此処で剛勇吼弾が飯田君に襲いかかるぅ!!回避し続けていきますが表情には苦しさが浮かび上がっております!!これは流石に苦しいか!?」

 

「クッ……!!」

 

飯田は自分の予測が甘かったと自らを罰した。これまでの戦いからして零一は基本的に攻撃と防御が高いタイプのバランス型と推察して自分の最大の武器であるスピードを使って戦う事を考えていた。高速戦闘ならば勝ち目があると―――確かに追い付くという意味では勝っているが、対応出来ているという意味では完全に負けている。

 

「消耗戦狙いか、好きなだけ付き合ってやる―――お前のスタミナと俺の激気と臨気、どっちが先に尽きるかなぁ!!」

「更に苛烈に!!」

 

剛勇吼弾が更に数を増して行く、最早一人で弾幕を張っているような状態。何とかスピードで振り切りたいがこれ以上加速すればカーブで曲がり切れなくなる、かと言って切り札を切ったとしても本当にそれで切り抜けられるのかという不安も付き纏う。

 

「いや、俺はそれを乗り越えない限り勝機なんて存在しないんだ!!!」

 

覚悟を固めながらも叫ぶ、唸りを上げるエンジン、マフラーから青い炎が噴出し個性が限界を越えた力を発揮しようとする。

 

「レシプロォ……バーストォ!!!」

 

超加速しながらも激気弾と臨気弾を切り抜けながらも零一の間合いへと飛び込む、そのまま加速を利用した一撃を放つ。それは零一の背中へと炸裂する、流石の零一も体勢を崩すようにしながら膝を付いた。

 

「まだまだァ!!」

 

そのまま切り返しながらも今度は踵落としを繰り出す、が今度はドーム状のバリアに攻撃が阻まれる。騎馬戦でも使用した剛勇雷来陣、それは完全に零一を保護する障壁として機能して飯田の攻撃を完璧に防ぐ。

 

『おっとぉここで騎馬戦でも使ったバリアだぁ!!飯田の切り札に対して守りに徹するのかぁ!?』

 

「くっあと6秒―――!!!」

 

飯田のレシプロバーストは10秒間という制限がある、その間にけりを付けなければならない。あと少しで半分を切ってしまう、と焦りながらも限界まで引き出された力を使って蹴りのラッシュでなんとか剛勇雷来陣を破ろうと試みる。高速の連打に陣は揺らぐが突破には至らない、後3秒を切ろうとした時―――飯田は思いっきり後退しながらも全速力で疾走して渾身の蹴りを放つ。

 

「いっけえええええええ!!!」

 

これで駄目ならもうおしまいだ!!そんな覚悟を込めながら放った一撃は陣に激突すると深々と突き刺さっていく、消耗が激しい激技だからかもう維持は出来なかったのか、それとも飯田の一撃が防御を上回ったのか定かではないが飯田は確かに剛勇雷来陣を突き抜けた。

 

「やったっ!!」

 

陣を越えた先で待っていたのは構えを取っていた零一、それを見た時、飯田は必死に体をよじって強引に蹴りを繰り出そうとする。もう時間がない事は分かっている、だからこの一撃だけは持ってくれ!!!と願いながらも蹴りを繰り出す。行ける、これならば!!!という確信があったが、それは無残にも臨気激装の鎧によって阻まれた。

 

「間に合わなかったか……!!?」

「時間制限に頭が慣れてないらしいな。使って慣れろ、慣れた時お前は―――俺にとってつらい相手の一人になる」

 

そう呟きながらも飯田の腹部に身体をバネのようにしならせながら臨気を込めた一撃を放たれた。それに飯田は顔を歪めた、必死にそれに耐えようともしたが空中に居たが為に踏ん張る事が出来ず、そのまま吹き飛ばされ場外へと吹き飛ばされた。そのまま壁に激突した彼は呻き声を上げつつも零一を見つめながら

 

「完敗だ……済まない兄さん……!」

 

そう言いながら意識を手放した。これで零一は勝ちあがった、それは同時に……轟と戦う事を意味する。

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