獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第29話

いよいよ迫る準決勝、その舞台に出る零一はのんびりとしつつも柔軟を行っている。其処でぶつかるのは轟、同じ獣拳使いとしての対決は彼女も非常に楽しみにしてくれていた。それは自分も同じなので全力で望むつもりでいる、というよりも此処で全てを出し切る覚悟で臨むので決勝は辞退する事も視野に入れている。まあそうなったら戦うであろう一人は絶対に認めないだろうが……。

 

「さてと、行くか」

 

そろそろ出ておくかと思って控室を出るのだが―――そこに待っていたのは

 

「激励に来たぞい」

「やっほ~零一!!」

「マスター・シャーフーにマスター・シャッキー!!」

 

シャーフーとシャッキーであった。自分が尊敬する師二人が直々に来てくれた事に対して嬉しさが込み上げて来たので思わず頭を下げるが、笑いながら下げなくていいと言われてしまう。

 

「準決勝進出おめでとう!!いや~本当に強くなったね、激気にも益々磨きが掛かってる。勿論臨気もね」

「有難う御座います」

「しかし、次の相手は楽とは言えぬな」

 

その言葉に頷く、相手は轟。単純な個性だけでも凄まじい物があるのにそこに獣拳が加わった事で戦力的には大きな向上となっている。修行相手になっているのでどんな激技を使うのか、獣拳を使うのか把握しているが戦いの最中に新しい物を編み出す事も考えられるので油断が全く出来ない。

 

「個性も凄いのにあの激気も凄かったですね」

「うむ。個性に激気を込める事でその力を倍増させておる、さながら零一の激気と臨気の融合のようにな」

「ならば対等という事です」

 

組み合わせて強化しているならば条件は同じ、それに先達として獣拳で負ける訳には行かないというプライドもある。絶対に勝つという強い意志を持ち続けている弟子にシャーフーは笑うのであった。

 

「では我々は席に戻るとするかの」

「そうですね、それじゃあ零一シャッキーン!!で頑張ってね!!」

「優勝祝いの席も準備出来とるから無駄にしちゃいかんぞ~」

 

さり気無く優勝しなきゃダメだぞとプレッシャーを掛けられるが、特にそんな気持ちはなかった。とにかくやれる事をやるだけでしかない―――そして零一は振り返ると曲がり角で待機している影へと声を掛けた。

 

「何の用だ」

「話をしているようだったから邪魔をする事はないと待っていただけだ」

 

現れたのはエンデヴァー、轟の実の父親である№2ヒーロー……轟を歪ませた原因だと思うと臨気が溢れそうになって来るのを必死に押さえつける。

 

「準決勝進出おめでとう。まさか無個性であるのにも拘らずこの雄英体育祭で此処まで勝ち上がるとは思いもしなかった」

「だろうな、今の社会から見れば俺は弱者でしかない。弱者が強者を蹂躙される様は意外か」

 

相手がどんなに実力があるヒーローだろうが、№2ヒーローだろうとも自分にとってはどうでもいい。目の前の男は自分にとっては轟に強引に夢を押し付けて苦しめ続けてきた男でしかない。そんな男に対して零一は極めて冷淡で何時も以上に言葉に棘を含ませていた。

 

「随分と口が達者だな、だが言っておくぞ。君ではウチの焦凍には勝てん、獣拳とやらがどれほどのものだろうともな」

「如何だろうな。俺は轟の修行相手になってるが例え炎を使ってこようが負けねぇな」

「―――なんだと」

 

その言葉は炎があったとしても勝つ、という事よりも焦凍と修行をしているという所だった。という事はこいつが焦凍に妙な事を噴き込んだり左側でも氷を扱えるようにしたのかという怒りを抱き始めた。

 

「貴様が焦凍を変えたのか」

「変えた?違うな、あいつは自分で変わったんだ。自分の意志でな」

 

獣拳を習い始めたのだって自主的にだ、教わりたいと言われなければ自分だって教える事は無かった。それを自分のせいにされても困るしそれは轟の努力を完全に否定する言葉でもある、それを許す事は出来ない。

 

「エンデヴァー、あいつは炎を使いたくないと俺に言った。だから俺は使わなくていいと言った」

「貴様……焦凍にオールマイトを超える義務があるのだ、炎を使わず氷だけでトップを取れる程ヒーローの世界は甘くはない!!!」

「言ってる事だけは正しいな、その結果が今だぞ。娘に男装させてる気分は如何だ」

「ぐっ……」

 

話には聞いていたがまさかあそこまでとは……仮にも娘に何をして来たのか分かっているのだろうか、その轟は娘として扱われる事も嫌って男装している。それは父親から向けられる家族の情すらも拒絶している事になる。それなのに此処まで言えるのはある意味であっぱれだ。

 

「だったら自分の目で見ればいいさ、あいつが今日までやって来た修行の成果を」

 

そう言いながら零一は歩き出して行く、背中にエンデヴァーの視線を感じるが何とも思わずに突き進んでいく。背後では何かを殴り付ける音が聞こえてきたが、無視して進み続ける。

 

 

『準決勝第一試合、その対戦カードはぁぁぁっ!!!此処まで圧倒的な実力で勝ち上がって来た氷河!!ヒーロー科 轟ぃ焦凍ぉ!!ヴァアアアサスッ!!獣拳一つで此処まで駆け上がって来た同じくヒーロー科 無月 零一!!!』

 

遂に始まろうとしている準決勝、その舞台に上がった零一と轟。互いにこの一戦が来るのを楽しみにし続けてきた、こうして舞台に上がると本当に気が引き締まるし闘志が燃え滾る。同じ獣拳使い同士の戦い、マスター達に情けない所を見せる事は絶対に出来ないと思いながらも構えを取る。そして直ぐに戦いの開始が告げられる―――と同時に零一は臨気激装を発動し鎧に身を包んだ。

 

「轟、全力で来い。今出せるお前の全部を俺にぶつけて来い」

「ああ。全力で行く……勿論、こいつもな……!!」

 

そう言いながらも轟は全身から激気を溢れ出させた、その激気は修得した獣拳の差こそあるが先に学んでいた尾白の物よりもずっと強い物になっていた。それを見て零一は思わず笑いながらもそれに負けじと臨気を剥き出しにしながらも名乗りを上げる。

 

「勇往邁進。魂から全身へ、猛る勇気の力―――勇者の魂(ヒーローズ・ソウル)!!激獣ライガー拳、無月 零一!!」

 

それを見て轟も笑みを浮かべた、そして自分なりの演武を行いながらも高らかに名乗りを上げる。

 

「活殺自在。己が未来は、己が力で切り開く―――我が道を行く(ゴーイングマイウェイ)!!」

 

そして激気を高めながら行った震脚、深々と地面に突き刺さりながらも一瞬でフィールドを凍土へと変えてしまった。その凍土の上に立つ轟の背後に見えるのは巨大な影、それは咆哮を上げた。

 

「激獣ポーラベアー拳、轟 焦凍!!」

 

轟の中に眠っていた獣は最大級の獣であり、同時に地上最大級の肉食獣ともされるホッキョクグマ。それの力を手にする獣拳こそがポーラベアー拳。

 

『まさかとは思ってたがお前も獣拳使いだったのかぁ~!!!ブラザー、ポーラベアー拳の解説ヨロ!!』

「OKブラザーマイク!!激獣ポーラベアー拳はホッキョクグマを手本とした獣拳、そしてその特徴は圧倒的なパワー!!そもそも熊自体が自然界における頂点の一つに立つと言われていますが、何せホッキョクグマ!!最強の肉食獣としても名を馳せます!!圧倒的なパワーに加えて持久力にも優れると言われてます!!」

『パワーとタフネスに優れているのか……シンプルに強い組み合わせだ』

 

「ポーラベアー拳とはのぉ……マクを思い出すのぅ」

「う~ん……なんか複雑な気分になっちゃいますねぇ」

 

シャーフーは轟が修めている獣拳に驚きつつも過去の事を思い出し、シャッキーはなんとも複雑そうな表情を浮かべていた。過去に酷い目にあっていたりもするのだが、そのお陰で世界が救われていたりと本当に何とも言えない思い出がある。だがあれはベアー拳であってポーラベアー拳ではないので上手く切り替えようと決意するのであった。

 

 

「「―――行くぞっ!!」」

 

互いの名乗りを終えると同時に駆け出して行く、凍て付いたフィールドにも拘らず轟は零一以上の速度で走っている。零一も決して遅いわけではないのだが……そのまま互いは同時に拳が放たれて激突する。周囲に轟の激気と零一の激気と臨気が溢れて行く。

 

「らぁぁぁぁ!!!」

 

雄たけびを上げながらも強引に拳を振り抜こうとする轟、ホッキョクグマの圧倒的なパワーは零一を抑えつけてそのまま押し込んでいこうとするが、零一は直ぐに拳を引くと轟はそのまま前へと飛び込んでしまう。そこへ廻し蹴りが飛んでくるが咄嗟に氷柱を足元から伸ばして真上へと跳んで回避。

 

「激技、吹吹氷!!」

「剛勇咆哮波!!ゴオォォォォォォッ!!!」

 

緑谷にも使った吹雪と氷塊を放つ激技を発動させる、猛烈な吹雪と氷塊が迫って来るがそれに対して激気と臨気を合わせて咆哮と共に撃ち放つ。放たれた咆哮は吹雪と激突しながらも氷塊をも砕いていく、そして落下してきた轟は両手に氷で巨大な爪を作り出しながらそのまま切りかかって来た。

 

「俺の烈光爪撃のつもりか!!」

「あれを、参考に!!させて、貰った!!氷氷爪撃!!」

「ならテストしてやるよ!!烈光爪撃!!!」

 

零一も轟に合わせるかのように激技を発動させて真正面から迎え撃つ、激気と臨気によって超高熱になっている光の爪に轟は恐れる事も無く向かって行きながらも幾重にも切り合って行く。激気の扱いはまだ拙い、だがポーラベアー拳と轟の個性は極めて相性がよく、かなりの威力を既に持っている。

 

「オォォォラァ!!!」

 

攻撃を受けながらもその氷の爪を切り裂くのだが……即座に氷は再生するかのように再び厚みと切れ味を取り戻して行く。

 

「零一君、果敢に攻め続けて来る轟にやや押され気味か!?それもその筈、ポーラベアー拳は寒冷地において無敵とも言われる獣拳。自ら氷を生み出せる轟君との相性は抜群なんです!!だけど彼だって簡単には負けないはず、まだまだ目が離せません~!!!」

 

「零一、負けない!!」

「上等だ、全力で来い!!」

 

 

「なんだ焦凍、その笑顔は……知らない、ぞ……俺は知らんぞ……!!」




はい、轟の獣拳は激獣ポーラベアー拳、ホッキョクグマですね。尾白と違ってこっちは直ぐにこれにしようと思ってました。
大地の拳魔、マクのベアー拳と似ているからかマスター達は何やら思いを巡らせてます。

これで獣拳使い三人が出揃いました。ライガーにクロコダイル、そしてポーラベアー。なんか凄い攻撃的な感じになったな……まあ言うてゲキレンジャーだってタイガーにチーターにジャガーだからそんな物なのかもしれない。
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