獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第35話

『本当に、本当に有難う!!!』

「好い加減に感謝botになるのはやめろ、うっとおしい」

 

それは余りにも突然すぎる事だった。体育祭の翌日と翌々日は振り替え休日なので自宅を掃除している時に連絡が飛んできた。しかも初手が超連続の有難うの連打。何とか相手を落ち着かせようとして漸く相手は落ち着いた。

 

「それにな、それをやったの俺はじゃねえんだからそっちに礼を言え」

『いやその方の連絡先などは知らないんだ!!それにその方は君に言えと!!』

「ったく……分かった分かった、俺経由で転送してやる。こっちも色々とあるんだ、切るぞ」

『あ、ああ済まない!!だが重ね重ねお礼を言っておいてくれ!!』

 

漸く電話を切る事が出来た、自分にだってこれから用事があるのだからこれ以上家に居る事は難しいのだ。掃除も切り上げて支度を済ませてしまおう。

 

「全くあの人は……」

 

そんな言葉を作りながらも零一の表情は微塵も困っていない、それ所か嬉し気ですらあった。

 

 

「あっこっち、こっちだよ~!」

 

約束をしていた駅前、そこには私服姿の尾白と轟の姿があった。今日はせっかくの休日なので二人と約束をしていた。

 

「待たせたな、来る前に感謝botから平謝りされてな」

「感謝botって……一体どんな電話だったのか分かりやすいけど一体誰だったんだ……」

「だけど、今日で良いの?」

 

お昼過ぎに集まった一同。心配する轟の先にあるのは零一の体調だった、体育祭であれだけの事をし続けていたのだからまだ回復しきっていないのではないだろうかと心配している。

 

「何、心配するな。これでも大分回復しているんだ、激臨威砲と激激ビースト砲だって撃てる程にはな」

「タフだなぁ……」

「兎も角行こうか」

 

そう言いながらも零一は二人を連れて歩き出し始めた。二人は心なしかウキウキとしているのか、今日という日を楽しみにしている様子だった。

 

「楽しそうだな」

「そ、そりゃそうだよ!!だって拳聖に招待されたんだからさ!!」

「ああ、純粋に待ち遠しかった」

「ご期待に沿える事を願うな」

 

今回二人を連れて行く先は―――日本における獣拳の活動拠点と言っても差し支えないスクラッチ社。元々はスポーツ用品メーカーだったのだが、現在はヒーローのサポート産業にも参加しており超一級の品質と柔軟な発想から来るアイテムはトップヒーロー御用達と言われる程。そこへと招待されたので二人は様々な思いを浮かべているが、対する零一は慣れ親しんでいる会社に出向くので極めて平常心。

 

「ここが、スクラッチ社―――ってデカァ!!?」

「凄く、大きいんだな……」

 

歩くこと30分程度、やっと到着したスクラッチ社の敷地はまるで巨大な工場を兼ねているかのような大規模な物だった。それも本社を構えているのだから当然とも言える。そんな二人を他所に零一は守衛へと声を掛ける。

 

「零一君じゃないか、久しぶりだね」

「守さんお久しぶりですね。お変わりなさそうで何よりです」

「ハハハハッまだまだ若いもんには負けんよ!!話は聞いてるよ、はい入館証ね。後体育祭お疲れ様」

「ええどうも」

 

入館証を受け取りながらも尾白と轟を伴って奥へと進んでいく。その途中でも思わず広い敷地に呆然とする、敷地だけならば雄英にも負けない程に広い。此処では様々な事が行われているのでこの位は広さはいるのである。そして一際巨大で目立っているビルへと入ると受付のお姉さんたちが零一を見ると声を出した。

 

「あら零一君、あっそっか今日だったわね」

「行くのは特別開発室だったね?」

「ええ、マスターはそこに?」

「そ~首を長くして待ってるんじゃないかしら?」

「喉鳴らしてるんじゃない?」

「どっちもありそうだ」

 

軽くお姉さんたちと談笑を交えながらも手続きをする零一を尾白は大人しく見ているが、轟はその様子を何処か複雑そうな瞳で見つめていた。同時に僅かに胸が痛みを訴えており、如何したのだろうか首を傾げる。

 

「んじゃ行きますんで」

「行ってらっしゃい」

「あっ今度デートしてあげてもいいわよ~?」

「未成年ナンパする暇あったら合コンにでも行ってろ」

「生意気を言うな~!!」

 

そんなやり取りをしながらも許可証を手にしながらも二人を連れてエレベーターへと乗り込む。

 

「なんか受付のお姉さんとも仲良さげだったね」

「よく来てたからな……向こうからしたら弟って感覚があるんだろ、後あの二人に下心は抱くなよ」

「えっ?」

「相手の思考を読める個性と真偽が分かる個性、それで受付という名の防壁を張っているんだ」

 

スクラッチ社は大きな会社なので様々な考えを持って中に入ろうとする人間が後を絶たない。中にはヴィランのような目的を持った人間が居るのでそれを食い止める役目をしている。そしてあの二人はプロヒーローとしての資格を持っているのでいざとなったら実力行使も行える。

 

「す、凄いなぁ……」

「そんな所なんだ……」

「さて、もう着くぞ」

 

止まるエレベーター、扉が開いて廊下を少し歩いて行くと部屋が見えてきた。扉にカードキーを当てると扉は開いて中へと入れるようになった。

 

「あらっ来たわね」

「遅くなりました」

「早い位よ、相手を待たせないって言うのは美徳よ」

 

中にはスーツを見事に着こなしているやや長髪の女性が出迎えてくれた。零一を親しげに迎えると直ぐに此方にも目を向けて来た。

 

「ようこそスクラッチ社の特別開発室へ、私は此処で主任をさせて貰ってる真咲 夏希よ」

「え、えっと尾白 猿夫です!!」

「轟 焦凍です」

「宜しくね。零一から話は聞いてるわ、新しい同門の子が出来て嬉しいわ」

 

その言葉に思わず二人は反応してしまった、同門、という事は……もしかしてと見ると夏希はウィンクをしながらも猫型の頭部で両腕が大型のパンチグローブを付けてたトレーニング用ドロイドの方をへと向くと―――」

 

「えいっ!!」

 

そんな軽い声と共に激気を飛ばした。それを受けたドロイドは吹き飛ばされながらも彼方此方に跳ね回ってしまった、まるで挨拶をするような軽さで放たれた激気の強さに二人は驚いてしまった。

 

「私も獣拳使い、激獣レオパルド拳を修得してるわ」

「凄い……あっポーラベアー拳です」

「お、俺はクロコダイル拳です」

「どっちも強力な獣拳ね、これは将来有望ですねマスター・シャーフー」

「そうじゃのう」

 

部屋の奥の椅子に座っていたシャーフー。二人は挨拶を済ませると如何して招待をしてくれたのかを聞いてみる事にした。

 

「一つは新しい獣拳使いにスクラッチを知って欲しかった事じゃな、スクラッチ社は獣拳使いを全面的にサポートしておるからの。知っておいて損はないぞ?」

「あっ……もしかして、サポートアイテムとか此処にお願いとか出来たりとか!?」

「勿論できるわよ、というか今回はそれを目的で呼んだのよ?」

「激気専用アイテム……って感じですか?」

「そういう事だ」

 

そう言いながらも零一はその手に二振りの剣を携えていた。それはしなるほど薄い刀身の剣、だがこれも歴とした激気を使用して扱う武器にして零一が敬愛する師の元で修得した獣拳と共に扱うアイテムなのである。

 

「ゲキセイバー、やっと帰ってきた」

「ゲキチェンジャーと一緒に貴方の臨気にも適応するようにパワーアップさせてあるわ、ごめんなさいね時間掛かっちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。これからはこいつも使えるんですから」

 

そう言いながらもゲキセイバーをまるで腕の延長のように自由に扱っている零一の手から瞬時に消えてしまった。

 

「け、剣が消えた!!?どうなってるんだ!?」

「此処にある」

「ここって……ガントレット?」

 

轟の視線にあるのは何時の間にか零一が付けていたガントレット型のアイテムだった。その中にあると言われてもどういう事なのか分からなそうにしている二人に微笑ましそうに見ていた夏希が説明に入る。

 

「これはゲキチェンジャー、激気を増幅する力を持っていて獣拳使いはこれを使用して戦っていたのよ。これを使う事で全身に激気を纏う事も出来るの、貴方達も見てるわよね零一の技は」

「あっ臨気激装って……」

「そう、それも原理としては同じね。そしてこれには高次元圧縮を用いた倉庫があってね、様々な物を入れておけるのよ。例えば……」

 

そう言いながらも激気を出しながらも零一のゲキチェンジャーへと手を突っ込むとそこから蒸籠が飛び出してきた、それをテーブルの上に起きながらふたを開けると中には三人分の美味しそうな肉まんが入っていた。

 

「こんな風に色んな物を入れておけるのよ」

「ってなんで俺のゲキチェンジャーにンなもん入れてるんですか」

「いいじゃない高次元圧縮しておくと冷めたりしないから便利なのよ?」

「だからって……」

「さっ二人も食べてね、それを食べたら二人にも色々とアイテムを試して貰うから!!」

 

納得が行かなそうな表情を浮かべながらも肉まんを頬張る零一に釣られて二人も手を伸ばした、どうやら此処は自分達の想像を超えているモノが沢山ありそうだ。




夏希「獣拳使いの基本装備のゲキチェンジャー、これは激気を様々な物に変えたりアイテムを入れておく倉庫にもなるの。戦闘の時には大活躍ね」

零一「まだなんか入れてないでしょうね」

夏希「あっそうだわ、ごめんなさい出前のラーメン入ってたわ」

零一「自分のに入れてください!!」
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