獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第36話

「轟け、獣の鼓動!!臨気激装(ビースト・オン)!!」

 

ゲキチェンジャーを装着した零一が拳を合わせると激気と臨気が高められ、鎧のように変化しながら纏われていく。零一が使用する激技、臨気激装のそれと全く同じだが何処か違っている。零一は力を溢れ出させただけでそれからはゲキチェンジャーが自動的に行ったように見えた。装着が終了すると拳を握ったり、軽く廻し蹴りをしてみたりすると……満足したように頷いた。

 

「完璧だ、俺の臨気激装と全く同じだ」

「フゥッ……漸く成功したわね。やっぱりと激気と臨気に対応させるのは大変よね」

 

特別開発室の特別実験修行室、そこに場所を移した零一たちはそこで様々なアイテムの試験を行う事になった。その手始めとしてこれまで臨気に対応出来ないかったので使用出来なかったゲキチェンジャーのテストを行っていた。

 

「漸くって事は、今までは出来なかったんですか?」

「ええ。ゲキチェンジャーは元々激気にしか対応出来なかったんだけど、零一は臨気も扱うからそれに対応させる必要があったの。これまでは何とか誤魔化してきたんだけど零一が大成する毎に増大していく臨気に耐えきれなくなって来たから大規模改修をしたの、言うなればゲキリンチェンジャーね」

 

その名前を聞きながらも演武を行う零一の様子を見る。落ち着き払いながらも、舞うように軽やかに駆ける。

 

「ゲキリンセイバー!!」

 

ゲキリンチェンジャーから己の武器を取り出して構える、ゲキセイバーも臨気に耐えきれなくなっていたので同じく大改修を受けてゲキリンセイバーにバージョンアップが成されている。しなる程に薄いが、切れ味が抜群。それを活かす為に回転を主軸にした動きを行っていく零一に部屋の端から巨大な岩が放たれる。

 

「零一!!」

「危ない!!」

 

それに思わず二人は飛び出してしまいそうになった、その行いに夏希とシャーフーは獣拳使いに相応しい正義感だと思いつつも制止する。岩は迫り続けるが零一はそのまま身体全体で剣を振るって一息に斬撃を繰り出した。それによって岩は十字に切り裂かれて床に落ちた。

 

「な、なんて切れ味……」

「まだまだよ、だってまだ激気や臨気を纏わせてない物。その気になればあの剣は鋼鉄だって簡単に切り裂くわ」

「切島の硬化すらぶった切るような剣って事か……」

 

深く息を吐きながらも背中に剣を隠すようにしながらも臨気激装を解除、零一の表情は酷く晴れやかで満足気な物だった。

 

「如何かしらゲキリンチェンジャーとセイバーは」

「完璧です」

「それじゃあ雄英にはこっちから連絡しておくわね、貴方は元々コスチューム申請してなかったからこっちから資料を送れば問題なく通ると思うわ」

「さてと、お主達二人にもこれを送ろうかな」

 

そう言いながらシャーフーは尾白と轟にゲキチェンジャーを手渡した。

 

「えっでも、良いんですか?」

「勿論じゃ。何かと便利じゃぞ」

「有難う御座います……零一とお揃い」

「俺もいるけどね」

「分かってるって」

 

そんな事を言いつつもゲキチェンジャーを装着してみる二人、初めてつけるのにも拘らず奇妙な程にしっくりくる感じがしている。これを使えば零一のように臨気激装見たいな事が出来るのだろうか……と思ったりする。

 

「それもこっちで貴方達のコスチューム登録はしておくわよ、それに元々のコスチュームを入れておけばそれを付けておくだけで着替えなんてしなくて済むわよ」

「それって、零一みたいにですか?」

「そうよ。激気を纏えばゲキチェンジャーがそれを検知して高次元圧縮してあるコスチュームを自動的に装着してくれるわ、時間かかるけど激気に合わせた特別スーツもこっちで製作可能だけど試してみる?」

「お願いします!!」

「是非」

 

その為にも激気を調べなければならない、此処で激気を用いた実験を行えば自動的に激気の分析が始まるのでアイテムを試して貰う事にしよう。

 

「そうね、零一がゲキリンセイバーだからそれに合わせたら……あれかしらね」

「そうじゃなあれらじゃな」

 

その言葉の意味を二人は理解出来なかったのだが、直ぐに分かる事になった。自分達に使ってみて欲しいというアイテムが此方へと運ばれてくるのだが……それを運んできた人物に尾白は目を限界まで見開いてしまった。それはゴリラのような人……というよりも人のようなゴリラだろうか、普通に服を着こなしつつも知的さを感じさせる眼鏡をかけていた。

 

「やぁっ零一君、久しぶりだね」

「お久しぶりですマスター・ゴリー」

 

そう、運んできたのは七拳聖の一人、荒ぶる賢人、レイジングハート。激獣ゴリラ拳の使い手のゴリー・イェンだった。彼は零一の姿に顔を綻ばせるが直ぐに傍にいた尾白の姿を見ると何処か嬉しそうにしながらも肩を叩きながら声を掛けた。

 

「何年振りかな尾白君。君とこうしてまた顔を会わせる事が出来るとは嬉しい限りだ、しかも獣拳使いとしてね」

「はっはい!!お久しぶりですゴリーさん!!恥ずかしながら零一に指導を受けて獣拳使いになりました!!」

 

まさかこの場でこうして会えるとは思わなかったのか、涙目になりながらも姿勢を正して挨拶をする尾白。彼にとっては獣拳への憧れのオリジン、ゴリーに憧れて獣拳を志したのだから感極まっても致し方ないだろう。

 

「話には聞いているよ、クロコダイル拳を修得したとね」

「はい!!今はクロコダイル拳ですが、何れはゴリラ拳を修得したいと思ってます!!その、その時は」

「勿論私が指導をしよう、あの時の約束だからね」

 

その言葉が何よりもうれしかった、憧れの人と同じ獣拳を、しかも指導して貰えるというのだからこれ以上に嬉しい事はないだろう。そんな再会もありながらも二人にアイテムが渡される事になった。

 

「ゲキハンマーとゲキファンだ。ゲキセイバーは既に零一君が使っているからね、この二つをチョイスしたんだが……二人は何方を使ってみたいかね?」

「えっと……俺はゲキファンですかね」

「それじゃあゲキハンマーで」

 

尾白がゲキファンを、轟がゲキハンマ―を手にすることになった。

 

「所謂、鉄扇……って奴なのかな。軽く齧った事あるけど……確か開いて盾、閉じて突いたり叩いたりとかだったかな……」

「間違ってない。激気を込めるから強度に感じては十二分に扱える筈だ、後はそれをどう扱うかの技が試される」

「ハンマー……如何扱えばいいだろ」

「まあ、ハンマーの名の通りだな。だがそいつは激気を込めれば鎖が伸びるから変幻自在な戦いが出来る」

 

先輩になる零一がアイテムの説明を行いながらも早速テストがてらに扱ってみる二人。ゲキリンセイバーを手にした零一相手に使ってみることになる。

 

「よし来い」

「行くよ!!」

 

ゲキファンを手にしてまま駆けだして行く尾白、そのまま突撃しながらも閉じた状態で勢い良く突きを繰り出す。それは零一に軽くいなされるが直ぐに切り返して薙いだり振り下ろしたりとしてみたり、自分なりに模索している尾白に対して零一も刃をもって応える。

 

「うおっ!?やべ!!」

 

しなり程薄いが撓った際に発する音は酷く力強く鋭い、空気を両断しながら迫るそれに対して回避し続けもなんとかゲキファンを広げながら激気を纏わせて受け止めようと試みるのだが……

 

「ハァッ!!」

「ぐぅうっうわぁぁぁぁぁ!!?」

 

受け止めきる事が出来ずに身体ごと弾かれてしまった。腕全体が痺れるような痛みに歯を食いしばりながらも向かってくる零一のそれを今度は閉じた状態で受け止める。今度は何とか防御出来たが……第二撃は防げずに又もや吹き飛ばされてしまった。

 

「駄目だ、全然違う気がする……なんて難しいんだ」

「俺も修行で扱った事があるけどかなり難しい武器だ。ゲキファンは技の武器、唯闇雲に扱うだけじゃ使いこなせない。防御、受け流しの選択を瞬時に行いながらも舞うように動く。これが基本」

「技を極めないとダメって事か……面白いじゃないか」

 

何とも難しいアイテムだが、それ故か燃えて来た尾白。絶対に使いこなして見せると思っているとそこへゲキハンマーが飛んできて尾白の顔の前を通り抜けていった。

 

「……あっぶな!!?」

「ゴ、ゴメン。扱いが難しくて」

 

硬直したのちに飛び退きながらも崩れ落ちる尾白、目の前を突然鉄球を通り過ぎたのだから無理もない。轟もその事は反省しているのだが……それだけゲキハンマーの扱いに苦心している。

 

「う~ん……難しい」

「まあ最初はそんなもんだ、徐々に慣らして行こう。尾白大丈夫か」

「あ~吃驚した……まあ俺のゲキファンですら難しいんだから当然だよね……」

「一回激気込めてみる、ホントに伸びるかどうか」

 

一旦二人には避難して貰いつつも伸びるかどうかを試してみる轟、激気を込めながらも振り回してみると零一の言う通りに鎖は伸び始めた。試しにその状態で投げてみると先程よりも断然制御がしやすくなった。自らの激気を込めているからか、自分の身体と繋がったという実感がある為だろうか。そのまま振り回してみると激気を通じて途中で軌道を変え、UFOのジクザク軌道を取らせる事も出来た。

 

「相変わらずなんて呑み込みの早い……」

「本当に才能の塊だな」

 

尾白は早くもゲキハンマーの扱いが出来始めている轟に呆れ半分と言った様子、零一は相変わらずの才覚の良さに苦笑いだった。修行で使った時は自分は相当に苦労したはずだが―――

 

「……ごめん助けて」

「「どうやったらそうなるんだ!!?」」

 

少し目を離したら、轟はゲキハンマーの鎖に雁字搦めにされている状態になっていた。しかも妙な縛り方になっていてボディラインがハッキリしてしまっている。それに気付いた尾白は心底驚いた。

 

「ちょっ!?轟なんか胸!?えっどうなってんの!?」

「そう言えば尾白に言ったか?」

「……あっまだだった。ごめん尾白、俺女なんだ」

「いやいやいや如何言う事なの!?意味分かんないだけどぉ!!?」

「訳はちゃんと話す……だからまずは助けて……」

 

ギャアギャアと騒ぎながらも轟の救出を始める尾白と零一、そしてそんな二人に助けられつつも縛り方のせいで時々艶っぽい声を出してしまう轟。

 

「んんっ……」

「と、轟そう言う声出すのやめて貰えないかな!?なんか変なことしてるみたいなんだけど!!?」

「悪い、でも胸のあたりが特にきつくて……」

「なぁんでこんな事になってんだろうな……あのエロゾウの武器だからか」

 

そんな様子をマスター・シャーフーとゴリー・イェンは酷く懐かしい物を見る様な目で見つめてしまっていた。在りし日の弟子たちの風景に酷く、似ていたのだ。賑やかで楽し気に毎日を過ごしながらも修行の日々に身を置き、人々の平和と笑顔の為に戦った獣拳の戦士達の事を。

 

「儂も歳じゃな……つい、あの子達の事を思い出してしもうた……」

「私もですよマスター・シャーフー。本当に、本当に懐かしき日々です……まさかまたあの子らのような子達と出会える日が来るとは……人生というのはこれだから素晴らしいですな」

「ウム……」

 

そんな二人のマスターを見た夏希は自分の名前の事を思わず思ってしまった、自分の名前は獣拳を習っていた母がシャーフーの弟子であった先祖から取ったという。きっとその時を一緒に共有した人たちなのだろうと思うとこの場に居られる事も何処か誇らしかった。

 

そして……この三人が、新たな獣拳のトライアングルになってくれる事を願う。

 

「すいません手伝って貰えます!?なんか妙に胸のあたりの縛りがキツくなってて……!」

「これ如何なってんだぁ!?全然、ビクともしない……!!」

「分かったわ」

「……取り敢えず、今度エレハンの奴を叩きに行きますかな」

「そうしよう」




夏希「心技体。この三つのトライアングルこそが獣拳の極意。そして今回零一たちが使った武器も心技体のトライアングルに属しているわ」

零一「ゲキセイバーが体、ゲキハンマーが心、ゲキファンが技だ」

夏希「因みに、零一は臨気を確りとコントロールする為にこの全部の修行を何年もみっちりさせられてたわ。一番大変だったのは?」

零一「断然ゲキハンマー、修行というか師匠が……」

夏希「ああ……轟ちゃんこれから大丈夫かしら」
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