獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第4話

個性把握テストにおいて、獣拳という個性とは何の関係も無しであるのにも拘らず、個性を凌駕するような力を見せつけた無月 零一はA組の中でも不思議な立ち位置になりつつあった。

 

「結局のところ、獣拳で重要なのは己の内に秘めた獣を感じる事だからな。感じた情熱を燃やす事で生まれるのが激気」

「獣を感じる……か、もしかして今まで俺が感じられなかったのってゴリーさんの事を意識しすぎてたのかな」

「それはあるな。本来ある獣を感じるよりも、まだない獣を感じ取ろうとしても激気は生まれない」

 

通常授業が始まった雄英高校、その中でも尾白と話をする事が基本。向こう側としても是非とも獣拳の事を聞きたいと思っていたりしているのでそれについて答える事は別段何とも思っていない。

 

「獣拳ねぇ……ネットで調べても全然ヒットしなかったんだよねぇ~」

「私も調べてみたけど全然だったわ」

 

A組では獣拳についての興味がわいたので調べてみようと思い立ったものが大多数だった。だが、幾らネットで探しても情報は出てこない。図書館や図書室などで調べてみようとも思っても該当は0。本当にあるのか、という疑いすら持ちあがる程ではあるが、個性把握テストで見たライガーは絶対に幻覚などではないという実感がそれを阻害する。

 

「まずは自分の獣拳を収める事に集中するべきだな。後からゴリラ拳は覚えればいい」

「あっ、やっぱりと思ったけど、後から他のも覚えられるんだね!ちょっと安心したよ」

「当然だ、俺だってライガー拳しか使えない訳じゃないからな」

 

と聞こえてくる話は非常に気になる物ばかり。そんな話も授業に流されていき、遂に時間は皆が待ち兼ねていたヒーローになる為の重要授業、ヒーロー基礎学の時間がやって来た。

 

「わぁあたぁあしぃぃがっ……普通にドアから来たぁっっ!!!」

 

大きな声とともに教室へと入ってきたのは平和の象徴と呼ばれ、現代における大英雄、皆が憧れる№1ヒーローのオールマイトだった。皆の憧れのスーパーヒーローに教えて貰えるという事だけで皆のテンションは爆上がりしていく……但し、零一を除いて。

 

「さて、では早速行こうか!!私が受け持つ授業、それはヒーロー基礎学!!少年少女たちが目指すヒーローとしての土台、素地を作る為に様々な基礎訓練を行う科目だ!!正にヒーローになる為には必須とも言える!!単位数も多いから気を付けたまえ!!そぉして早速今日はこれ、コンバット!!即ち戦闘訓練!!!」

 

その手に持ったプレートにはBATTLEと書かれている。オールマイトが指を鳴らすと教室の壁が稼動をし始めていく。そこに納められているのは各自が入学前に雄英へと向けて提出した書類を基に専属の会社が制作してくれた戦闘服コスチューム。

 

「着替えたら各自、グラウンドβに集合するように。遅刻はなしで頼むぞ」

『ハイッ!!』

 

各自は勢いよく自分のコスチュームが入った収納ケースを手に取ると我先にと更衣室へと向かっていった。そこにあるのは自分が思い描いた自らがヒーローである姿を象徴すると言ってもいい戦闘服、それをプロが自分たちの為に制作してくれるなど興奮して致し方ない、なんて素敵なシステムだろうか。

 

「―――形から入るってことも大切なことだぜ少年少女諸君、そして自覚するのさ!!今日から自分は"ヒーローなんだ"と!!!」

 

皆が着替える為に更衣室へと向かって行くのだが、零一はそのままの格好でグラウンドβへと姿を現したのであった。それを見てオールマイトは笑いながら声を掛ける。

 

「おや、無月少年は申請しなかったのかい?」

「必要ないですから、激技、臨気激装!!」

 

激気と臨気、二つを放出する零一にオールマイトは表面上はトレードマークの笑顔を崩す事は無かったのだが溢れ出す二つのそれを肌で感じていると内心では僅かに汗を流していた。

 

「(何という存在感のオーラだ……)これが激気、か」

「……獣拳を御存じで?」

「ああいや、相澤君から話を聞いて知り合いに話を振ってみたら知っている人がいたのさ」

 

先日の事は相澤から教職員全員に通達されている、零一は獣拳という武術を扱うと。オールマイトは全く知らなかったが、もしかしたらと思ってある人に電話をしてみたのだがその人物は獣拳の事を知っていた。

 

『獣拳だぁ?お前の口からその名前が出るとは驚いたな』

『ご存じなのですか!?』

『知ってるも何もお前の師匠も世話になってた武術だ、なんだ聞いてなかったのか?』

『な、なんと!?』

 

それを聞いて驚かされた、嘗てのオールマイトの師が助けを借りた事のある武術であると。そして獣拳は正義の心を持つ者しか扱えない特殊な武術である事も知らされたが、それを聞いて益々オールマイトは獣拳に対する興味と零一に対する認識が変わっていた。そんな子が雄英に来ている、ヒーローを目指してくれる事に喜びを感じていた―――先程までは。

 

「(……この冷たく研ぎ澄まされた刃のような凄まじい殺気のような物も、激気、なのだろうか……これは到底正義の物ではない、これは……寧ろ悪のそれだ)」

 

オールマイトのそれは寧ろ正常な感覚、そう零一が放っているのは正義の獣拳使いが放つ激気だけではない。かつて、人々に恐怖を齎し正義の獣拳と敵対していた獣拳の一派―――臨獣拳 アクガタが纏っていた気……即ち臨気。人々の苦しみや悲しみ、絶望といった負の感情が増幅するとより強さを増すという性質を有する悪の気力。

 

「(……まるで奴のそれだ、無月少年君は何故こんな物を放てるんだ……!?)」

 

正義と悪、その二つを有しそれらを扱う零一。仮にそれが正義の心を持つ筈の彼が何故それを扱えるのかとオールマイトは激しく動揺してしまっていた。だが……零一の心は極めて穏やかだった、何故ならば……臨気は悪の激気などではないからだ。

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