獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第40話

零一の手合わせに続き、今度は轟の手番となった。エンデヴァーの息子、という事で事務所の面々は実力は把握しているつもりだったが獣拳を手にして戦い方が一気に上がっている事には驚いた。個性による力押しではなく、個性を戦術に組み入れた戦い方には目を見張るものがある。そして……焦凍が手に入れた新しい武器、ゲキハンマーもその一助になっている。

 

「氷氷槌!!」

「ぐっ!!」

 

激気を込めればどこまで伸びて行く鎖という特性を利用して変幻自在の戦い方を可能にする事を既に理解し、練習し続けている轟はゲキハンマーの扱いにかなり慣れてきている。ポーラベアー拳という個性との相性も抜群なので、冷気を纏った激気はゲキハンマーの鉄球に即座に纏われてゲキハンマーを絶対零度の氷塊の槌へと変える。その威力はエンデヴァーですら油断出来ず、炎を纏っているというのに体温が一気に下がっていくという威力。

 

「中々やるな、だがこれなら如何だ!!」

 

足元に炎を溜め、放出する事で爆発的な勢いを得て加速していくエンデヴァー。何処までも伸びる鎖鉄球というのは確かにこれ以上ない自在性を持っている、だが故に泣き所は超接近戦。懐に飛び込もうとするエンデヴァーだったが―――次の瞬間には目を見開いてしまった。振り回していた鎖を腕に巻きつけて長さを調節して、至近距離に対応してきた。そして鉄球は自分の顎を捉えようと迫って来る、咄嗟に胸から炎を放出して速度を落として回避する。

 

「くっ!?」

「くそ避けられたか、だが逃がさない!!」

 

一気に距離を取るエンデヴァーだが、それに対して鎖はどんどん伸びながらも意思を持っているかのように自在にコースを変えながらも迫って来る。溜めてジャンプすれば垂直に鎖はコースを変えてくる、それに対処する為に天井を蹴りつつも炎を纏った拳で鉄球を殴り付ける。鉄球はそのままの勢いで床へと叩き付けられる。

 

「フゥッ……全くなんて恐ろしい武器だ」

「これが俺の武器」

「成程な……何処までも伸び、相手を決して逃さぬ鎖鉄球か……良い武器だ」

 

汗を拭いながらもエンデヴァーはゲキハンマーを回収している焦凍を見ながらも、素直に称賛した。最初は鎖鉄球は扱いが難しい部類なので使えるのか、と思った。だがまだまだな所こそあるが、それを激気で上手くカバーしつつ本人の柔軟な対応で補えている。

 

「いやぁ……ライガーの戦いも凄かったけど、ショートの戦いも凄かった」

「なんだよあの武器、エンデヴァーさんを完全に追い詰めようとしてたぜ」

「激気って奴を込めれるだけ伸びるって言ってたけど、マジなのか……やべ、獣拳習いたい」

 

零一と轟に共通しているのは、手合わせとはいえエンデヴァーに危機感を感じさせ本気を引き出したという点。その要は矢張り獣拳、特に零一は個性こそないが獣拳を極める為に10年という年月を捧げている為に体術や武器の扱いなどは既にプロヒーローにも引けを取らない、いや獣拳を合わせて言うなれば凌駕している点も多い。

 

「二人の実力は良く分かった、如何やら同行させたとしても問題はない所かサイドキックとしてカウントしても問題はなさそうだ」

「って事は、あれですねエンデヴァーさん!!」

「ああ。渡してやってくれ」

 

エンデヴァーの許可を得ながらバーニンが胸元からカードのような物を取り出して手渡してきた。そこには零一、轟、それぞれの顔写真がある運転免許証のような物だった。説明を求めるように視線を上げるとバーニンが揚々と説明しようとするのだが―――

 

「それは個性使用許可証の仮の物だ。知っての通り、個性使用許可はプロヒーローや行政から許可を得た企業や現場でなければ発行されん。だが、一定以上の実績や時間を積み重ねている者は使用許可証を一時発行する事を許されている。お前達に分かるように言えば、仮免の仮免といった所か」

 

詰まる所、自分達の職場体験は職場体験とは言えなくなる。寧ろその先のインターンに近い物になるという事、いざという時は自分達もヴィランとの戦闘を強いられるので覚悟しておけという意味を含んでいる。だが二人からすれば望む所でしかない。

 

「なんてアタシの台詞取るかな~……空気読めねぇから№2なんだよ」

「なんだと貴様ぁ!!」

「おっやるかいエンデヴァーさん」

「貴様サイドキックとしての弁えが無いらしいな!!今度という今度は徹底的に扱いてやる!!」

「アハハハッ望むところ~!!」

 

トレーニングルームの奥、特別鍛錬場と銘が彫られている所へ連行されていくバーニンだが、その最中に二人に対してパトロールでも行ってきな~と言葉を漏らしていた。思わず顔を見合わせる二人にサイドキック達はあ~あ、と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「悪いな二人とも、バーニンは口が悪いんだよなぁ……」

「エンデヴァーさんの事、尊敬してんのに躊躇なくああいう事言うから扱かれてんの」

「でも本人も意図してやってるっぽいんだよな、ああやって強くなったって自覚あるから」

 

バーニンのああした事はよくある事らしい、寧ろバーニン自身はそれを利用して自分の力を高めるための機会にしている節があるとの事。エンデヴァーとしても自身のサイドキックの筆頭とも言えるバーニンの実力向上と把握を兼ねているらしい、仲が良いのか悪いのかよく分からない。

 

「兎に角、二人にはヒーロー業務についての詳しい説明をした方が良いだろ。許可証渡したなら猶更現場に連れてくの増えるだろうし」

「だな。んじゃ行ったん上に上がろうか、そこで詳しい説明をするよ」

 

その途中、特別鍛錬室から凄まじい音が聞こえてきたりするのだが……一体どんな事をやっているんだろうかと思わず二人は気になったりもしたのであった。

 

 

 

「小僧、中々に悪くないじゃないか」

「あ、有難う御座います……」

 

そんな風に言われつつもボロボロになっている緑谷の姿があった。彼も彼で職場体験に赴いたのだが……その先は何とオールマイトの担任だったヒーロー・グラントリノ。ワン・フォー・オールの事も知っているという事なので、他に指名をくれたヒーローには悪いと思いつつもそこへと行く事にした―――結果、オールマイトも恐れるのも納得な実戦訓練の嵐に揉まれ続けていた。

 

「全身にワン・フォー・オールを使う、規模こそ違うがオールマイトに近い。問題はそこからどう発展させるかだな」

「は、はい……い、一応考えてたりするのはあって……」

「言ってみろ」

 

それはオールマイトの強力な一撃、それに必ず付き纏っていると言ってもいい猛烈な風圧。元々轟との戦いで自損覚悟での全力ブッパで氷を相殺していたように、風圧での攻撃を目指すのがいいのではないか、と思っている。

 

「成程、悪くねぇ選択肢だな。だが今の出力じゃ風圧で相手を倒すなんて事はぜってぇ無理だな」

「お、仰る通りです……ですからとにかく今は、身体を鍛えないと……」

「だがそのアイデアを殺すのも惜しいな……ちと待ってろ」

 

そう言うとグラントリノは何処かに行ってしまう。緑谷はその背中を見送りながらも痛みで震えている身体を摩りつつも、グラントリノの強さに驚いた。小柄なご老人といった風貌なのに、フルカウル7%を簡単にあしらう程の実力を持っている。自分もあんなところに行けるのだろうか……と思っているとグラントリノが戻って来た。そして何やら詰まった小袋を投げつけて来た。

 

「こ、これは?」

「パチンコ玉だ。風圧が出来ねぇなら何かを投げたり飛ばしたらいい、オールマイトはそう言う小細工しねぇが、小細工だって立派な工夫だ」

「―――あっそうか!!これで風圧での攻撃を想定した練習も出来るし遠距離攻撃手段に出来るって事ですね!?」

「理解が早くて結構、だが指で弾いたりするのは難しいぞ。そいつの練習も使いするぞ、可能なら実戦訓練中にそれで俺を攻撃してみな」

「はい、頑張ります!!」

「(思考は柔軟で回転も速い、加えて素直で伸びしろも十二分。良い奴を見つけたな俊典)」

 

 

「オ、オールマイト……震えてた意味が、身に染みて分かり、まし、た……」

『……怖いでしょ?』

「はい……」




夏希「ゲキハンマー、達人級になれば激気を込めれば伸びる鎖の特性も相まって手足のように使うだけじゃなくて相手を絶対に逃さない狩人のようにもなるわ」

零一「本当に何処までも伸びるから、やろうと思えば大空を舞う鷹すら捕まえると言われてるんだ」

夏希「でも、如何してか女性が使うと妙な絡まり方をするのよね」

零一「絶対あのエロゾウのせいですよ」
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