獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第45話

『お父さん、それって何なの?』

『これか、へへっ零一にはまだ早いかな~』

『えっ~ズルいよ教えてよ~!!』

 

そう言いながら、父は何時も勿体ぶって教えてくれなかった。毎日朝早くに起きて、庭で行っている不思議な動きに興味を惹かれていた、だが尋ねても教えてくれない。まだ早いと言われて拗ねて続けていると折れてくれたのか溜息混じりに言ってくれた。

 

『しょうがないな、じゃあ今度の誕生日だ。今度の誕生日に5歳になるだろ、その時に話してやる、いや教えてやるぞ』

『本当!?』

『約束だ、男と男の約束だ!!』

『うん約束!!破ったらお父さんと口きかないからね!!』

『それは怖いな、絶対に守らないとな!!』

 

そう約束したのが……あの日の三日前だった、あの日……地獄が作られた日、自分の誕生日だ。

 

 

 

 

「―――……あの日の、夢か」

 

目を覚ました時、広がっていた景色はやはり家じゃない。自分の家は全て無くなったのだからと、この瞬間にいつも思い知らされる。分かっている筈なのに……求めてしまっている自分が居て情けない気分になる。

 

「……此処は」

 

視線を彷徨わせると此処がエンデヴァー事務所が保須市入りした際に拠点として使う事になったホテルの一室である事に気付く。そしてここは自分の部屋だ、如何して此処に居るのかと思いながら身体を起こすと近くにメモが置いてあった。

 

「〈目が覚めたら連絡を入れる事、エンデヴァー〉……取り敢えず、連絡を入れるか」

 

近くに自分の携帯もあった、それを取って連絡を入れる。数度のコールの後に、電話は取られた。

 

『目が覚めたようだな』

「ご迷惑をお掛けしました」

『いや、寧ろ謝るのは此方だ。あの時お前を守り切れずにダメージを負わせてしまう事になった』

「ダメージ……?」

『気を失っていた時の事だ』

 

疲労からか、意識を失った直後―――なんとマリカキは再び活動を開始。全身から出血しながらも羽を広げて零一を抱えて飛び上がった、全員が即座に奪還に赴こうとした時……誰よりも先に動いたのは捕縛されていた筈のヒーロー殺し、ステインだった。隠し持っていたナイフでロープを切ると、飛び散っていたマリカキの血を舐めた。

 

「血を……」

『奴の個性は相手の血液を経口摂取する事で動きを封じる凝血という物だ、それでマリカキの動きを止めた。そして……奴はマリカキの頭部に深々とナイフを突き刺しながらお前を救った』

「……っ」

 

ステインに助けられたという事実よりも、マリカキが殺されたという事実に驚いた。獣人邪身変で姿を変えていたとはいえ、自分との戦いでボロボロだったマリカキにナイフを防御しきる術は無かったのだろう。

 

『兎も角、お前はよくやってくれた。保須を救ったのだからな、誇りに思っていい』

「……いえ俺はやりたい事をやっただけだ、同じことを繰り返させたくは無かった」

『ならば誇れ、そして次があったならば同じように阻止しろ。今日はゆっくり休んでおけ、以上だ』

 

一方的に通話を切るエンデヴァー、労ってくれている事は感じ取れる。それには感謝しておかなければ。

 

「……シャワー、浴びるか」

 

一先ず汗を流そう、その後に食事にでもしよう。そう思いながら部屋のシャワーを使う為に携帯を置くと近くのテーブルに新聞が置かれている事に気付いた。その見出しには―――

 

『保須に現れた巨人!!戦ったのは噂の獣拳使いだった!?』

 

そんな事が書かれていたが、今はとにかくシャワーを浴びたかった。

 

 

「エンデヴァーさん、ライガー起きたんですね」

「ああ、だが今日は休ませておく。あれだけの事をやったんだ、万全になるまでは時間がかかるだろう」

 

そう言いながらもエンデヴァーは様々な書類に目を通しながらもサインなどを済ませて行く。その中にはマスコミからの取材申し込みの物などもあるが、それらは纏めて後で処理する為に別にしておく。

 

「にしても……世間はステインとライガーの事で真っ二つですな」

「あんな騒ぎになったんだ、当然だ」

 

ニュースを見ればそこにはステイン関連のニュースと保須に現れた二体の巨人の激闘の話ばかりがある。と言っても後者についてはエンデヴァーが自分の名前を出して収めている、だからこそマスコミ各社はこぞって情報を得ようとコンタクトを取ろうとしてくる。

 

「お前達には迷惑だったな」

「良いんですよこの位、それに……救われた身なのに文句を言ってたら罰当たりますよ」

 

そんな風に笑うキドウにエンデヴァーはそれ以上言わずにさっさと書類を片付ける為にペースを速める事にした。

 

「ヒーロー殺し……捕らえられて尚、嵐を呼ぶか」

 

 

 

 

『贋物……!!正さねば……誰かが……血に染まらねば……!!英雄を取り戻さねば!!!ヒーローを、奴のようなものにしなければ……来い、来てみろ贋物……!!!俺を殺していいのは、本物の英雄(オールマイト)だけだ!!!』

 

インターネットに今大規模流通している動画がある、一つはゲキリンライガートーオウとマリカキの戦いの様子。そして一方はヒーロー殺しの最後を捉えている動画だった。ヒーロー殺し・ステイン。本名、赤黒 血染。彼もまた剣崎と同じようにヒーローに憧れながらもヒーローに深い失望を覚え、英雄回帰を促してきた男。ヒーローをあまり目指そうと思っていない零一からすればその意見は理解出来る部分が多かった。

 

「本当のヒーロー……」

 

幾ら救いを求めても、救いを受けられなかった零一は明確なヒーローに対するビジョンは無い。故か本当のヒーローという言葉は何処か重く感じられる。雄英に入学したのもあくまで修行の一環、あの時と同じ事を繰り返させない為の事を学ぶ為であった。

 

「ヒーロー……俺にとってのヒーローはマスター達だ」

 

誰かそれに当たる人がいないのか言われたらノータイムで出るのはマスター・シャーフー達、地獄から救い上げてくれた恩人で生きる意味をくれた、自分にとっての家族である師達しかない。

 

「師匠たちみたいなヒーロー……か、目指すとしたら」

 

無理矢理に形にすればそういう物になるのだろう。自分が目指そうと思うヒーロー……拳聖のようなヒーロー……今まで定まってもいなかった目標が、僅かに定まったような気がする中、携帯が鳴った。マスター・シャーフーからだ。

 

「零一です」

『零一、見たぞお主の獣拳合体』

「いやぁ……まだまだです、初めてでしたので激気と臨気の放出コントロールが全く出来てませんでしたからその後ヘロヘロで」

『うむ、そこが課題という事じゃな。慢心してはいかんぞ』

 

それもあるが、それ以上に話しておかなければいけない所がある。

 

「マスター、俺が戦った奴なんですけど……マリカキは臨獣殿を下らない物だとか、偉大なる御方だとか色々な事を言ってました。それに絶望なんかを集めきれなかったから獣人邪身変止まりだとか……」

『ムゥッ気になるの。分かった、此方でもなんとか調べておこう。それとな零一、恐らくじゃがこれからも獣拳合体をする機会があるやもしれぬ』

「修行ですか」

 

マリカキという存在があった以上、他にも同じような敵がいたとしても不思議ではない。その為に自分はもっと獣拳合体に慣れておく必要がある、その為には修行をするしかない。それをシャーフーは肯定するのだがさらに続ける。

 

『じゃがお主一人では荷が重かろう。かと言って、轟と尾白(友人達)ではそこまで激気を高めるのは難しかろう』

「じゃあどうしろと……マスター達には不闘の誓いがあります、矢張り俺が戦うしか」

『故に―――奴を呼び戻す事にした、連絡も取れて今日本に向かっておるそうじゃ』

「奴って……もしかしてあいつですか!?ロクに連絡を寄こさなかった癖に今更ですか!!?」

 

思わず大声を上げてしまった、奴が誰を指しているのかは零一には確りと分かる。だがそれ以上に怒りもある。

 

「あのバカ、今更連絡を取れたって今まで何やってんですか!!?」

『新しい激技を試しておったら氷漬けになっとったそうじゃ、それで様子を見に行ったピョン・ピョウに救出されてたようじゃ、連絡もちゃんと取れたわい』

「あのバァカ……マスターになんて手間かけさせてんだ……!!!」

『まあまあ言いたい事も分かるが、あやつならば獣拳合体は出来るからの』

「そりゃ……そうでしょうけど……はぁ……」

 

力が抜けてしまったのか椅子に凭れ掛かってしまう、無事であった事は嬉しいが何とも言えない気分になってしまった。しかし、奴が居れば間違いなく獣拳合体の負荷は減る。そういう意味では正しい。

 

『雄英の編入試験の申し込みをスクラッチから出しておくのでな、近々会えるぞい』

「会いたいような、会いたくないような……なんか複雑です俺」

 

 

「ぶえっくしょい!!」

「ほら、やっぱり風邪ひいてるじゃないか。薬飲んで寝とけ、寧ろ氷漬けになってその程度なのを喜ぶべきだな」

「ハハハッ……こりゃ参った、仰る通りで」




夏希「尾白君に渡されたゲキファン、閉じて良し、開いてよしの万能武器よ」

零一「その分扱い難しいけどな」

夏希「まあ一番難しいのはこれを扱うマスターだろうけど、ねっ零一君♪」

零一「……ノーコメント」
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