獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第46話

「エンデヴァー、お世話になりました」

「……なりました」

「何、此方としても面白い日々を過ごさせて貰った」

 

1週間の職場体験期間も終了し、これから帰る事になる零一と轟はエンデヴァーに頭を下げていた。保須市での活動は保須でのパトロールと巨大戦で破壊してしまった道路などの復旧の手伝いなども含まれていた。これもヒーローの仕事の一つだと言われ、二人は主に其方を手伝わされていた。だが平和に過ごす人たちの為になると零一は真面目に取り組んでいた。途中、マスコミに群がられそうになったが……その都度、現場作業員の人達が追い払ったり、様子を見に来たエンデヴァーの一喝で散らされていた。

 

「ライガー、お前はこれからヒーローを目指すのか。ハッキリ言わせて貰うとお前にはヒーローに対する熱意という物が感じられなかった、だが修繕作業を行っている時のお前は生き生きしているように感じられた」

 

時折様子を見に来ていたエンデヴァーとしては、零一は其方に行った方がいいのではないかと思った。能力は兎も角、本人にその気持ちがない事をさせても効率としても悪いし思わぬ落とし穴を作る事にもなりかねない。零一ならば個性ではない獣拳も重宝される警察でも活躍出来るだろう。寧ろ、警察に獣拳が普及すれば凶悪なヴィランの抑制にもつながるとエンデヴァーは思っている。

 

「俺が雄英に来た理由は修行の一環、ヴィランによる凶悪犯罪に対する知識や対処法を蓄える為だ」

「成程。そういう物は少なからずいるな、警察を目指す者が敢えてヒーロー校に入学し、そこで得た経験を基にするというのもよく聞く話だ。お前もその類か」

「―――だけど、ヒーローを目指すのも悪くはないと思えた。俺にとっての希望のようになるヒーローになる未来も」

 

その瞳は輝きを帯びていた、それは手伝いをしていた時と同じような瞳の色。確かな熱意がそこにある、それを知れてよかったと思えるエンデヴァーは彼らが思うよりかはヒーローなのかもしれない。

 

「何時でも来い、獣拳の指導をするならば歓迎してやる」

「それかよ」

「此方はヒーローとして働いているんだ、当然だろう」

 

最後の数日、エンデヴァーや他サイドキックからの希望を受けて零一は獣拳の手解きを彼らに行った。別に師匠たちから獣拳を広げてはいけないと言われていないし、寧ろ平和の為にならば喜ばしい事だと言っていた。流石の数日の手解きでは限界があった……と思ったのだが

 

「この激気、悪くない……」

「やっぱりアンタ轟の親父だな、親譲りって事かよこいつの才能」

 

エンデヴァーである。あっという間に激気を扱うコツを掴んでしまったらしく激気を引き出せるようになっている、それに獣もかなり感じ取れるようになっているらしく本格的な獣拳使いになるのも時間の問題。轟の才能は間違いなく、エンデヴァー譲りだ、もしかしたらお母さんも凄い才覚持ちなのではないだろうか……。

 

「フフン、如何だ焦凍。俺の激気は」

「……まだまだ未熟、私のポーラベアー拳に比べたら相手にもならない」

「当然だろう。俺とお前では期間も密度も違う、それを同格と捉えて否定するのは筋違いだ」

「ムムッ……」

「まあ見ていろ、お前にはない経験でこの獣拳をあっという間に俺の物にしてみせる」

「―――負けない、零一修行付けて」

「はいはい」

 

エンデヴァーと轟の関係は何処か軟化している、親子というにはまだまだ刺々しい物はあるが修行仲間やライバルといった物に近いだろうか。兎も角いがみあうような事はしなくなったように思える。まあ殺気を漂わせるような険悪な状態よりかは余程健全だろう。

 

「獣拳に個性を乗せる事は轟を見て居た通りに可能、だけどその分扱いも難しく成る筈。エンデヴァーなら火力調整はお手の物だろうが、注意はしておいてくれ」

「ああ、忠告は有難く受け取っておく。此方もまだまだ未知数且つ不安定な物を戦力とするつもりはない」

 

この辺りは流石№2ヒーロー、自分の事をかなり俯瞰的に観た上で客観的に分析している。これでオールマイトへの執着さえなければある種完璧なのだが……。

 

「兎も角、焦凍も鍛錬を怠るな」

「言われるまでもない」

「ならばいい」

 

それを最後にもう一度頭を下げて去ろうとする、色々あったが今回の経験は為になった。これを基に新しく修行をするのも悪くない、可能ならば獣拳合体の特訓をしたいが……あれは色んな意味で目立ち過ぎるのでサイズダウンして行う事を考えなければ……

 

「ライガー」

 

事務所を出ようとした時に呼び止められた、轟を先に行かせながらも振り向くとそこには穏やかな笑みを浮かべているエンデヴァーがいた。

 

「娘を頼むぞ、立派な獣拳使いにしてやってくれ」

「あくまで手解きまでだ、後は轟が発展させる」

「それでもだ」

「……分かった」

 

そう言い残して零一は今度こそエンデヴァー事務所を後にする。先に出ていた轟は何を話されたのかと聞いてきたが、単純にちゃんと鍛錬しろという事を言われたという事にしておく。

 

「……焦凍の相手としては十分か」

 

 

「零一、あの獣拳合体って私でも出来る」

「出来るかで言えばYES、今出来るかといえばNO」

 

二人はエンデヴァーが手配してくれたヒーローも利用する絶対秘密主義を掲げるタクシーを利用していた。お互いに顔が売れているのもあるが、何より零一は獣拳合体で騒がれている身なので気を利かせて貰ったのである。その最中に轟は獣拳合体について質問をする。

 

「最低でもゲキビーストを具現化出来るようにならないと無理だろうな、それにあれは激獣拳の奥義とも言われる技だ」

「奥義……それを使えるって零一って凄い」

「その結果があれだ、褒められたもんじゃない」

 

ハッキリ言って課題だらけの獣拳合体、マスターの話では昔、臨獣殿と戦っていた時には一人で獣拳合体を行っていた獣拳使いが居たらしい。しかもそれは臨気に近い激気を扱っていたらしく、ある意味で自分にかなり近い存在とも言えると笑っていた。

 

「じゃあ私も鍛える、鍛えて直ぐに獣拳合体に参加できるようになる」

「そうしてくれるとありがたいが……そもそも、そんな事態にならないのが一番だ」

 

そもそも、あの時に自分がマリカキを仕留めておけば獣拳合体が必要になる事態にはならなかった。結果論ではあるが、結局マリカキはステインに殺害されてしまった。ならば自分が息の根を止めるべきだったのでは……これも結果論だ。結果だけを見て後悔するのは愚かだとは分かる。

 

「……修行、あるのみだな」

「うん」

 

独り言のつもりだった言葉に思わず轟は反応してしまった、そして隣に座っている零一の肩に頭を預けた。

 

「私もいる、尾白もいる。大丈夫、私達でチームを組めばいい」

「チームか……それも、ありか」

 

それを聞いて思うのはシャーフーが言っていたかつての獣拳使い達。臨獣殿と戦い、人々の笑顔と暮らしを守り続けた戦士達。そんな戦士達を倣って自分達もチームを結成するのは良いかもしれない。自分だけでは対処できない事もあるだろうし……そんな事を思っていると轟の家に到着した。

 

「零一、泊っていく?」

「いやいきなり押し掛けるのはまずいだろ、それに俺の方も家を一週間放置してる。掃除やらもしないとならない、今度頼む」

「分かった。それじゃあ明日」

「ああ、明日」

 

そう言ってタクシーの運転手に自宅の住所を伝えて走って貰う、家に着いたら掃除と洗濯をしてから買い出しやらもしなければ……本当に日常生活という物は修行するのに申し分ないと思っていると自宅近くに到着したのであった。

 

「ご利用ありがとうございました。料金はエンデヴァー事務所の方に請求いたしますので」

「分かりました」

「それと―――お客様のご事情には関わらないのがポリスーですが、保須を救って頂いて有難う御座いました」

 

運転手はそう言いながら深々と頭を下げた。如何やら保須市の病院には入院中の婚約者がいるとの事、それを救った巨人には感謝してもしきれなかった、それが目の前の少年だというならば頭を下げなければならない。

 

「気にしないでくれ、あとポリシーだろ」

「タクシージョークに御座います」

「面白くねぇ~……」

「あっサイン頂けます?」

「んっ俺にもサインが居るのか、領収書系のサイン?」

「いえ、ヒーローとしてのサインを」

 

何処か力が抜けそうな運転手をしてから零一は家への中へと入ろうとする。その時、家の前で何やら立ち往生をしているような男が居た。近くには大きなトランクがあった、客人の予定は無かった筈だが……と思った、その後姿を見てすぐに誰か分かってしまった零一は溜息混じりに声を掛ける。

 

「なんか用か」

「んっああいや、此処の家主に用があるんだけど留守みたいなんだよなぁ……参ったぜ、何時帰って来るかマスターに聞けばよかったな……」

「応、今テメェの真後ろに居るのが家主だよ」

「ゲッ!?」

 

分かりやすくビックリし、錆び付いた歯車のように首を動かして此方を見る。紫色の瞳がトレードマークな零一よりかは線が細めで腰には石の剣のような物を指している。それは零一を見ると震えた声を無理矢理高くして挨拶をしてくる。

 

「よ、よぉっ零一!!久しぶりだなぁ半年ぐらいかなぁ?」

「……久しぶりだなぁシドー、マスターに御迷惑を掛けたんだってぇ……?」

「いやあれは不可抗力というかミスったというか!!ほら、俺の個性って色々できるだろ!?それと俺の激気と合わせて実験してたら見事に失敗しちゃってさ……ハハハッ参った参った」

「そもそも―――北極なんぞでそんな事すれば当たり前だろうがぁぁぁぁ!!!」

 

零一の激気と臨気が込められた拳が少年の頭へと振り下ろされ、三つほど重なったたんこぶが出来ながら倒れ伏した。

 

「ひ、久しぶりの親友との再会にこれは無いんじゃありません……?」

「黙れ駄犬、んで如何してウチに来た」

「い、いや……編入試験までは零一の家に泊めて貰おうかと思って……マスターにもそれが良いって勧められたからさ……」

「ハァッ……入れ」

「ああ、ありがぁぁぁ!!?」

 

地面に転がった少年を踏みつけながらも零一は鍵を開けて家へと入る、それに続くようにトランクを引き摺って少年も家へ入る。

 

「マジで酷くねこの扱い……」

「お前にはこれが妥当な所だ、駄犬シドー」

「お前、好い加減にそのニックネームマジでやめて……マジでハートがブロウクンしちゃう……」

「してしまえばいい」

「酷い!!」

 

と全く遠慮のないやり取りをするが、最後には零一は溜息混じりに拳を突き出した。それを見て笑顔を浮かべて同じように拳を突き出す。

 

「修行、ちゃんと付き合えよシドー」

「任せとけよ零一」

 

少年の名は紫道 狼我、零一と共にマスター・シャーフーの元で修行に励んだ修行仲間であり零一の親友とも呼べる友人。

 

「一先ず、家賃として掃除と洗濯、買い出しに付き合え」

「参ったぜ……着いて早々それか?」

「嫌なら出てけ」

「分かった分かったって」




夏希「ゲキリンセイバーは双剣合身を行う事で、刃を一つにして一本の剣とする事が出来るのよ」

零一「手数による攻撃から変わって一撃重視の物となる」

夏希「必殺技は激気によって生み出した水を使って相手を切り裂く波波斬よ」

零一「俺の場合は臨気も併せて火力を上げた波波漸斬だ」

夏希「なんか読みづらいわよね、漸と斬って似てるから」

零一「メタい……」
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