獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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第48話

その日、休日にも拘らず零一の姿は雄英にあった。理由は単純明快、雄英の施設を使わせて貰う為である。使用理由は鍛錬による戦闘技術と個性向上の為、ではあるのだがそれ以上に尾白と轟が自らの力を先輩である紫道に示すという事がある。

 

「すいません先生、お休みなのに施設を使わせて貰っちゃって」

「構わん。寧ろ個性向上の為に雄英の設備を使おうとするのは合理的だ、まあそれだけではないがな」

 

設備使用の監督という名目でその場にいる相澤。無論、確りと申請をすればこれでも通るのだが……それに合わせて零一は雄英に一人の入校許可を求めた、当然それは紫道の物なのだが、紫道は近々編入試験を受ける事になっている少年であり獣拳使い。獣拳についての情報を集めるのにも都合がいいという事で許可が下りたのである……だが零一としては全く乗り気になれない。

 

「マジでやる気か」

「マジもマジ、大マジって奴だ」

「ったく……知らねぇぞ、お前は手加減出来ねぇだろ。そのせいで北極で氷漬けになる始末だ」

「うるっさいだよ!これだから零一さんは口うるさいんだよ!!」

「あ"っなんか言ったか駄犬」

「何も言っておりません零一様」

 

零一の凄味を利かせた言葉に即座に土下座をする紫道。この二人の力関係が一瞬で分かる構図である。

 

「尾白、轟、油断せずに全力でぶつかれ。仮にもこいつは俺と一緒にマスターの元で獣拳の修行を積んでる」

「零一並に強いって事だろ、そもそも先輩を侮るつもりはないよ」

「まあ負けるつもりもねぇけどな……」

 

真剣な面持ちで腕を回したりして柔軟を行う尾白とかなりの怒気を露わにしている轟。やはりこの前のやり取りがかなり頭に来ているらしい……。

 

「だがあの二人はコスチューム装備だ、奴は良いのか」

「大丈夫です。スクラッチ社が専用のを作ってますから」

「スクラッチ社か……なら問題は無いか」

 

相澤は少しだけ楽しみにしていた、獣拳という力の凄まじさをまたこの目で見られるのだから。自分の個性で無力化出来ない大きな力があるというのは自分にとって大きな刺激であったし、自分が戦うならばどのように立ち回るのかという事も考えられる。

 

「「滾れ!!獣の力!!ビースト・オン!!」」

 

そう言いながらも二人はゲキチェンジャーからコスチュームを展開する、その光景に相澤はやはりあれは便利だな……と言いたげな瞳を向けるのであった。対する紫道は懐からある物を取り出した、それはゲキチェンジャーのようにも見えるのだが……格闘技で使われるゴングが内蔵されていた。

 

「目覚めろ、獣の咆哮!!ビースト・オン!!」

『ウォォォォォオオンッ!!』

 

高らかに鳴らされたゴング、直後にその身を紫色のバンテージのような激気が包み込んでいく。全身を包む紫と黒を基調したスーツ、そして頭部には狼を模ったようなメットが装着される。

 

「艱難辛苦を乗り越えて、辿り着くは己の境地―――貫き通した情熱(ペネトレイト・パッション)!!激獣ウルフ拳、紫道 狼我!!」

 

膝や肘にプロテクターが施されているコスチューム、そして腰に差されている剣、そして全身から沸き立つ紫色の激気。

 

「激獣、ウルフ拳……狼か」

「それより、何あの激気。まるで零一の臨気みたい」

「フン、如何やらぼんくらって訳でもなさそうだな。だけどそれだけじゃあ俺は認めてやらねぇぜ、さあ掛かってきな!!」

 

その言葉に尚更腹が立つ、二人は顔を見合わせると紫道に負けないようにと直ぐに名乗りを上げた。

 

「活殺自在。己が未来は、己が力で切り開く―――我が道を行く(ゴーイングマイウェイ)!!激獣ポーラベアー拳、轟 焦凍!!」

「願望成就。願いと誓いを胸に、極めてみせよう己が技―――高潔な願い(インテグリティ・プレイ)!!激獣クロコダイル拳、尾白 猿夫!!」

 

叫びをあげると直後に轟は攻撃を開始する、地面から猛烈な勢いで姿を現してくる無数の氷結の山。轟の得意技というべきそれに一瞬紫道は驚くが直ぐに激気を高めるとそれへと真正面から突っ込んでいく。そして激気と纏った拳や蹴りで次々と迫り来る氷を砕きながら進んでいく。

 

「と、轟の氷を突き進んでる……!?」

「くっ……それなら、氷柱乱!!!」

 

今度は激気を込めて放つ、これならば―――と思ったが、紫道は落ち着き払いながらも激技を繰り出す。

 

「剛剛撃!!」

 

その身に激気を纏いながら、更に強烈な一打を連続して繰り出し続けながらも前へ前へと突き進み続けて行く。その動きを見ていた尾白はゲキファンをその手に握りしめながらも突撃していった。氷柱を器用に跳ね回って指導の頭上を取ると、高速回転しながらも重力に身を任せるようにゲキファンを広げながら襲いかかる。

 

「扇扇旋!!!」

「ハァッ!!」

 

それに気付いたのか、氷柱を一際力を込めた一撃で破壊しながらも後方へと飛び退きながらもその手に持った武器を見た。

 

「へぇゲキファンじゃねぇか、誰に持たされた」

「マスター・ゴリーだ!!」

「へぇっあのゴリ先生が認めたってか」

「こっちも……!」

 

自らの氷を打ち砕くように真正面から迫って来たのはゲキハンマー。突然の登場に身を反らせて回避する、まさかゲキファンにゲキハンマーまでもが出て来るのは予想外だったのか驚いたような表情でそれを見た。ハンマーの後隙を殺すかのように飛び込んできた尾白はゲキファン、足技、尻尾を組み立てた連撃を繰り出す。

 

「へぇ……尾白の奴、技が上手くなった。それに何処か見せ技っぽくなってる」

「体験先がいい刺激になったようだな」

 

尾白が向かったのは武闘派でありながらもエンターテイナーとしても有名なビューティフルヒーロー・ジョー、鍛えられた強靭な肉体を駆使しつつも魅せる戦いにおいては他の追随を許さぬほどの美しさを発揮するヒーロー。其処で尾白が学んだのは自らの動きで誰かを魅せる事、技に美しさを付与し、スキルをアートに変える事。

 

「ハァァァッ……はいぃぃ!!!」

 

演舞のような動きからゲキファンを手放すとそれを尻尾で上手く拾いながらも予想外の方向からの一撃を狙う。華麗でありながらも狡猾、見ている側を常に刺激させ続ける動き。そして大きく身体を回転させるように跳ぶとそこから氷塊となったゲキハンマーが迫って来た。連携を取れてないと見せかけつつもバッチリと互いの呼吸を把握して、合わせていた事に紫道は笑いながらも腰に差していた剣を引き抜くとそれを盾にしてゲキハンマーの攻撃を防いだ。

 

「思った以上にやるな、だけどまだまだだな。武器の扱いがなってねぇ、身体の一部になってねぇし激気も未熟だ―――これから手本を見せてやる」

「何を……」

「Gソード・W!!」

 

剣の銘を叫びながらもそこへと自らの激気を送り込むと、石化して到底物など斬れるようには見えなかったボロボロの剣が一瞬のうちに一流の砥ぎ師に整えられたような光沢を取り戻した。

 

「ウルフ一刀流剣術、いざ参る!!」

 

剣を抜いた瞬間、一気に威圧感が増した。重苦しさではない、カミソリのような鋭い切れ味を纏った物へと変貌していた。思わず喉を鳴らしながらもそれぞれの武器を構えるのだが紫道は剣を鞘へと戻しながらも、腰を落とした。あれは―――居合だ。

 

「轟、氷を!!」

「ああっ!!」

 

咄嗟に判断した尾白は防御の為の氷を求めた、それに応じるように激気を込めた氷を山のように展開した。だがそれなど知った事かと言わんばかりに一気に溜め込んだ力を開放した。

 

「激技、紫合合!!!」

 

切り上げるように放たれた斬撃、それは激気を纏った飛ぶ斬撃。それは地面ごと氷を両断しながら氷の背後にいる二人へと迫っていく、あっという間に氷を切り裂くとそのまま尾白へと炸裂―――するが、尾白はそれに耐えていた。

 

「グゥゥゥゥッ!!!なんて、パワーなんだ……!!」

「激気堅甲たぁやるじゃねぇか、だが―――俺の紫激気はそう簡単に止められるような!!!」

「やり過ぎだ馬鹿」

 

尾白を吹き飛ばそうとしてた斬撃は真横からの一撃で消し飛んだ。それは零一の放った臨気弾、真横からの力を加えられて斬撃は砕け散ってしまった。尾白は思わずその場にへたり込んでしまった。

 

「何すんだよ零一、今いい所だったんだぞ!!」

「地面見ろ」

「えっ地面って……あ"っ」

 

そこには紫道の一撃によって地割れでも起きたが如く、引き裂かれた大地の姿がそこにあった。紫道は思わず汗をだらだらと流しながらも剣を収めながら相澤の方を見ながら全力で頭を下げた。

 

「すいませんでしたぁ!!」

「……問題ない、この位じゃウチは驚かん」

「おおっ流石は天下の雄英!!」

「だが―――自分の技の威力を把握していないのかお前は」

「いやその……すいませんでした……」

 

先程とは打って変わって頭を下げている紫道に二人は呆気に取られてしまった。戦いとそれ以外の時のギャップが余りにも激しい、一体如何言うタイプの人間なのか全く分からない。そんな二人に零一はお疲れさん、と言葉を送る。

 

「如何だ、強かったか」

「いや……零一とは別の意味で凄かった」

「……甘く見てた、零一の方が強いけど」

「剣技で言えばあいつは俺のより強いからな、剣を抜かせたって事はあいつはある程度の本気を出してくれたって思っていい」

 

零一としても、尾白と轟が此処まで紫道に食い下がるのは予想外だった。それだけ二人の実力が上がっているという事、だがそれでもきっと紫道は認めないだろう。それは悪意を込めているからではない、単純に甘い覚悟では弾かれると分かっているから、先輩としての親切心だろう。




夏希「紫道が使ったのは、彼の為に作った専用のアイテムよ、これでないとビースト・オンが出来ないのよ」

零一「ある意味、俺のゲキチャンジャ―に近いですよね」

夏希「近いと言えば近いけど、専用設計だからやっぱり違うのよね」

紫道「へへん、俺これ気に入ってるんだ。いい音するしな!!」

零一「喧しくしたら飯抜きだ」

紫道「ご勘弁を!!」
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