「無月、お前がやらなくてもいいんだぞ」
「いえウチの同門のバカのした事です、俺にも責任があります」
そう言いながらも深々と切り裂かれている地面へと向けて土を流し込み続ける零一、本来は整備用の大型ロボがそれを行うのだが、それを修行として行うために零一は獣拳武装を行いながら行っている。時折、胸のライガーが不機嫌そうな声を漏らしている事からライガー自身もこんな事に呼び出された事にかなりの不満をもあっている事が伺える。
「無月、大分騒いでるが」
「キレてるんですよ、ライガーからすれば戦いでも無ければ修行でもない尻拭いなんて嫌だ!!って」
「そりゃ嫌だろうな―――紫道、お前反省しろ」
「……ハイ」
正座をさせられている紫道は相澤の視線を受けて素直に反省していた。
「凄い騒いでるなぁライガー……」
「気難しい上に気性も荒い、自分が嫌な事はしたくないって零一言ってたな」
ハッキリ言って零一の獣であるライガーは凄まじい気性難、七拳聖をしてあんな気性が激しい上に自分本位なゲキビーストは見た事がないと言わしめる程。本当ならば獣拳合体なんて以ての外、それ以上に他の獣拳を修得する事にそっぽを向く程。
「ライガーは零一の全てを知ってる、だからあいつのしたい事を優先してる……」
「つまり、紫道の尻拭いが今零一のしたい事って訳か」
「これが先輩のやる事か」
「ウグッ……」
次々と突き刺さっていく言葉の刃に思わず紫道は苦し気な声を上げる。確かに今回は自分のせいで零一にこんな事をさせてしまっている、修行という体裁を整えているからこそライガーもかなり嫌々で渋々、力を貸してくれているに近い状況。
「後は俺が責任を持つ、転入試験のハードルでも上げてやってくれ」
「……そうだな、其方の方がいいかもな」
「ちょっ!?」
本気なのか冗談なのか分からないが、相澤はその言葉に同意に近い意見を浮かべたままその場を去っていく。少なくとも零一に近い能力を持つ生徒という事は分かったからか、少しばかり考えたい事もあるのだろう。
「れ、零一お前……俺転入できなくなったらどうすんだ?」
「知らん、そんな事は俺の管轄外だ」
「唯でさえ勉強の遅れを取り戻すの大変なのにぃ~!!!」
「自業自得だろ」
半年以上の間、氷漬けにされていた紫道は勉強の遅れを取り戻す事にかなり必死になっている。しかも雄英は名門、筆記試験で出される問題のレベルも相応な物。転入試験までにそのレベルまで取り戻せるかは努力次第であり、零一にも勉強を見て貰っているのが紫道の実態。
「見ろ、これがさっきまでお前達を圧倒していた先輩の正体だ」
「ぐうの音も出ねぇ」
「だったらちゃんと説明しろ、その義務と責任が先輩にはあるだろう」
そう言いながらもこのままだと時間が掛かり過ぎてライガーが更に臍を曲げる事を察した零一は、ゲキモールにも手伝って貰う事にした。ゲキモールの二匹は地面関連ならば自分達の独壇場、お安い御用だと言わんばかりに手伝いを始め、ライガーはそれを見て負けてられるか!!とやる気を出し始めたので本当に自分の相棒はと溜息を漏らす。残された紫道は尾白と轟に対面しながらも気まずそうにしつつも口を開いた。
「……その、ゴメン。意地の悪い事言って……別に二人の力を馬鹿にしてたって訳じゃねえんだ、唯習いたての二人には危険すぎると思ったんだ」
「一応、本当に俺達の事を心配はしてくれてたんだ」
「信用無いのでありんすね……」
「あると思うの」
「ごめんなさい」
素直に頭を下げる紫道の姿は先程の戦いで見せた豪傑のような勇ましさは全く感じられない、なんというのだろうか……上鳴や峰田のそれに極めて近いような印象を受ける。紫道の素は寧ろ此方側なのかもしれない、頭を掻きつつも紫道は続けた。
「分かってると思うけどよ、獣拳の力っていうのは一般的な個性を超える物ばかり。故に獣拳使いはその力が何を齎すのか、その矛先を如何するのかを考えなきゃいけないんだ。零一なんて特に臨気も扱えるからその力は俺よりずっと上だから分かると思うけど」
それは百も承知している、いやしていたつもりだったのだ。だがその認識は一変した、保須市での巨大戦……獣拳という物は激気であのような巨人をも創り出す力を秘めている。余りにも巨大すぎる力、自分達もその力の一端を宿している……そう思うと興奮も覚える、が同時に戸惑いと恐怖も覚える。
「獣拳を正義の為に、自分の信じる未知の為に使ってくれるのは先達としては嬉しい限りだ。でもその先に進めるか?零一と同じ場所に、立つ覚悟はあるのか?」
紫道の瞳は此方を試す物ではなかった、純粋な心配と不安がそこにあった。将来有望な後輩が出来た事はマスターから聞いていたしそれについては非常に嬉しく思う。思う反面、どれだけの覚悟をもってこの世界に足を踏み入れたのかを確かめておきたかった。
「ハッキリ言っとくが、零一が立ってる場所は半端じゃない。俺もあいつの隣に立つ為に地獄を見た」
「地獄……」
その言葉に思わず尾白は喉を鳴らした。それが比喩表現などではない事には直ぐに気付けた、間違いなく―――本当の意味での地獄なのだ。
「マスター・シャーフーとマスター・シャッキーが言ってた、零一は激気と臨気を過去から引き出しているって。その過去が地獄って事か」
「俺も、軽くゴリーさんに聞いた。零一は地獄を拒絶する事なく、受け入れてるって」
「そうだ……そんなこと、普通は出来ねぇよ。誰だっていやな事は忘れたいし思い出したくもない、だけどあいつはそれを忘れようとしない。忘れちゃいけないって言い続ける、本当に獣拳合体まで行く気あるならそれを聞き出さないと駄目だぜ」
それは実力云々ではない、心構えと礼儀。本当の意味で零一と共に戦うというのはそれだけの覚悟がいる、地獄に足を踏み入れる……その言葉に思わず二人は身震いをさせてしまった。そんな二人を見て紫道は少しばかり脅かしすぎたかな、と僅かに反省するのであった。
「(ちょっと言い過ぎたかなぁ……でも、この位言われて踏み越えないなら難しいからな。零一は激獣拳であり、臨獣殿でもある……本当の獣拳使いだからな)」
「全ては偉大なる方の為に」
『全ては尊き御方の為』
「血を、捧げよ。魂を捧げよ―――あの男、我らが御方に仇した男の末裔を、捧げよ」
夏希「紫道の専用武器、Gソード・W。GはゲキでWはウルフ、大本はゲキセイバーだったんだけど大幅に改造して今の形になったわ」
零一「但し、専用化した事で激気を流さないと何も斬れない鈍らではある」
夏希「盗まれた時に心配はしなくていいのは利点かもね。ウルフ一刀流剣術でこの剣を振るって100人切りをするのが目標って言ってたわね」
零一「あいつ、何処の地獄の番犬目指してるんでしょうね」
紫道「ボスは永遠の憧れ!!」