獣拳のヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

6 / 50
第6話

「轟の個性でビル凍らせて終わりだと思ってたのに……無月は何だあれ!?あの時の風みたいので氷を退けたぞ!!」

「なんだよあいつも才能マンかよ!?」

「というかどういう個性なんだよ!?」

 

モニター室では戦闘訓練の様子が事細かに映し出されている、音声はオールマイトにのみにしか聞こえない仕組みだが各地に仕掛けられているカメラでそれを追えるようにはなっている。

 

「でも、本当に個性なのかしら?」

「えっどういうこと?」

「思った事を言っちゃうけど、無月ちゃんって把握テストで個性って使ってたかしら?」

 

クラスメイトの一人、蛙吹がそんな言葉を口にした。そう言われて皆が思い返しても零一は個性を使っているようには見えなかった。言うなれば個性を使う前の緑谷の完全な上位互換的な感じで己の身体能力のみだけでテストを受けているような姿ばかりが思い浮かぶ、肝心の部分だって獣拳という物を使用しているだけで個性とは言えない。

 

「じゃあ、あれも獣拳で無月にはまだ隠し玉の個性があるって事なのかよ!?」

「嘘だろ獣拳とか言うだけであんだけ強いのにまだ先があんのか!?」

「いいえ違うわ、もしかしたらなんだけど……無月ちゃんって無個性なんじゃないのかしら?」

 

蛙吹の言葉に思わず一瞬皆がハッとなるが、直ぐにいや流石にどうなんだろうか……となった。

 

「いやそれは流石にないんじゃないか?だって無個性じゃ」

「でも入試のロボだって獣拳で倒せると思わない?寧ろ、あの時の大きさの物ならば0ポイントヴィランだって倒せると思うわ」

 

そう言われると何も言えない、確かに個性把握テストで出したあのライガーならば0ポイントヴィランとだって戦える筈……ならば、彼は本当に……と言う空気が流れだす中でオールマイトには自らの名乗りを上げている零一の声が聞こえてくる。

 

「(そう、無月少年は無個性……無個性でありながらも首席で合格を果たしている、それだけの力を齎す獣拳……それは一体何なんだ)」

 

そんな何処か不安を感じているオールマイトはこの訓練を一コマだろうが見逃さないようにするべく、目を皿にようにして映像を見つめるのであった。

 

 

一方、戦闘訓練の舞台では全身を突き刺すような激気と臨気に身体を包まれてしまっている轟たちが居た。これまで体験した事がないような感覚、此方を飲み込まんばかりの圧倒的な存在感と此方に対する敵意と殺意にも似た物が同時に身体を食い破ろうとしてくる。

 

「(これが激気……!?いや違う、ゴリーさんが俺に激気を飛ばしてくれた時はこんな感じはしなかった!!)」

 

嘗て、アメリカで七拳聖の一人であるゴリー・イェンの激気を感じた事がある尾白からすればそれは違和感の塊であった。確かに激気と感じられる物はある、だがそれ以上に別のものが混在している。

 

「(っそういえばゴリーさんは獣拳には激気の他にももう一つあるって言ってたような……)」

「尾白ッぼうっとするな!!」

「っ!?」

 

一歩、たった一歩踏み込んだだけで零一は距離を詰めて来た。まるで地上を滑るかのように、そしてそのまま構え込んだ拳を打ち放とうとしてくる。

 

「尾白危ない!!」

「激技、剛勇衝波!!」

 

咄嗟に尾白を複製腕で作った手で押して庇う障子、だがそれは代わりに零一の一撃を受ける事。その気概は買う、と言わんばかりに障子へと掌底を打ち放つ。直撃の瞬間に臨気が放出されて零一の力との相乗効果で威力は増幅されてたった一撃で障子は吹き飛ばされて入り口近くの壁へと吹き飛ばされて、めり込むように叩き付けられた。

 

「障子!!」

「っ……なんて、威力なんだ……!!」

「咄嗟にガードされたか、良い反応だ」

 

尾白を庇いつつも自らの防御も固めていた障子、だがそれでもダメージは甚大で壁にめり込んだまま意識を手放してしまった。一撃、たった一撃で相手をKOする程の威力を誇る技、これが激獣なのかと尾白は息を呑んだ。

 

「チィッ!!」

 

轟は氷結を零一に向けて放ち地面から次々と氷柱が伸びていく、最初はしくじったが今度は捕らえる!!と言わんばかりに氷はすさまじい勢いで迫って来る。

 

「激技、旋頑拳!!」

 

それに対して零一は両腕を真っ直ぐ伸ばしたまま高速で回転し始めた、その勢いは零一は一つの竜巻のように見える程の超高速であり氷はその回転の勢いで振るわれる拳によって全て粉砕されていく。それに舌打ちをして氷の勢いを加速させるが、それに対して全く怯む事がない。

 

「チッ!!」

「もう終わりか、この位の氷で俺が倒せると思ってるなら拍子抜けだ」

 

回転を止めて腕を組んで此方を見て来る零一に轟は怒りを感じるが、現実問題として容易く砕く事が出来るのだとすればこのままの戦いは厳しい。

 

「今度は俺が相手だ!!」

 

先程は自分のせいで障子に庇われてしまった、それに多少なりとも獣拳に対する知識がある自分が頑張らなければという強い想いが尾白の背中を押した。尻尾で地面を殴り付けるようにして跳び掛かって蹴りを繰り出すが何の防御をする事もなく、受け止められる。

 

「おおおおっっ!!」

 

それでも尾白は屈しない、寧ろなんて自分は光栄なんだという思いすらあったのだ。憧れ続けた獣拳を修めている人間と手合わせが出来るのだから、そのまま尻尾を組み合わせた俺流の武術スタイルで零一へと攻撃していく。

 

「フッタァ!!やぁ!!」

「思った以上に、筋が良いな!!」

「そりゃどうも!!」

 

流れるように連撃を組み立てながら相手に反撃の隙を与えないように攻め続ける尾白、回し蹴りに連続で襲いかかる尻尾。それをガードしたと思ったら今度は逆回転しながら再び回し蹴りと尻尾の一撃。そして次が尻尾をばねのようにして勢いをつけての跳び蹴りと従来のそれらに自分の長所を上手く組み合わせて連撃をしていく。

 

「引け!!」

「っ!!」

 

その時、轟の言葉を聞いて咄嗟に仰向けになる様に跳びながらも尻尾で後ろへと跳ねた。そこへと飛来するのは零一が地面から出て来た時に生まれた瓦礫、それを氷でコーティングしてから蹴り飛ばした。それは頭部へと向かって行くが、あっさりと受け止められると握り潰される。

 

「駄目か……」

「零一の相手は俺がするから、そっちは核の確保をしてくれ」

「何?」

 

唐突な言葉に轟は驚いたような聞き返した、自分の力が通用しない相手に対してお前で勝てるのかと言わんばかりの聞き方だがそれは正しく尾白も理解はしている、だがそれ以上に尾白に攻撃出来ているのも尾白なのも事実。

 

「轟の氷は多分通じない、また砕かれるだけだ。だから近接攻撃が有効だと思う」

「分からなくはないがお前で勝てるのか」

「勝つ意味はない、核を確保すればいいんだから」

 

そう言われて確かにそうだと轟は思う、様々な意味で異質な零一に呑まれていた。だが零一もそれを簡単にやらせてくれるほど優しいとは思えない。そして直後にそれは事実だと思い知る事になる。

 

「悪いが、お前達の自由にやらせるほど俺は優しくはない。激技、剛勇咆弾!!」

『ゴオオオオオッ!!』

「なっ!?こんな所でも出せるのか?!」

 

零一から飛び出したライガーは大きな雄叫びを上げながらも突撃していく、それに轟は氷を放つがライガーはその爪で氷を砕くとそのまま轟と尾白をその両脚で叩き伏せた。

 

「ぐっ……!!こいつなんてパワーなんだ……!?」

「これが、ライガー……!!」

 

二人は必死に抵抗を試みようとするが、ライガーは抵抗されればされる程に力を強めていく。そして二人が次に見たのは自分達を見下ろす零一が自分達に確保を示す確保テープを巻きつけた姿だった。既に障子は気絶して戦闘不能、即ち―――

 

『ヴィランチーム、WIIIIIIN!!!!』

 

オールマイトの声が響き渡り、戦闘訓練の勝敗を告げた。数で勝るヒーローチームの敗北、ヴィランチームの勝利。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。