誰かの救世主   作:スココLU

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悪夢

「ア ゛ァァ!」

 

現実世界。

トットムジカを倒したシャンクスはウタに肩を貸していると、観客席の方から男性の悲鳴が聞こえてきた。

ウタと赤髪海賊団のみんながそちらを向くと、上半身が炎に包まれている男性がのたうち回っていた。

 

「ポベウス…」

 

ウタは男性の名を呼ぶ。

シャンクスはあれが、と口ずさみ、力強い眼光でポベウスを睨みつけた。

ポベウスが何度か地面に転がると炎は徐々に消えていく。しかし、彼が着ていた上着は燃え尽きてしまっていた。

そして、彼の背中に刻まれたある刻印がシャンクスの目に入る。

 

「あれは…」

「シャンクス?」

 

ウタは神妙な顔つきになったシャンクスに疑問を持つ。ウタは以前、間違って部屋を覗き、目にしたことのある刻印を不思議そうに見ていた。

 

 

 

 

ウタワールドでもポベウスの背中の刻印を見て、ウタを除いた全員がその顔をゆがめていた。

 

「天翔ける…竜の蹄…」

 

ロビンがその刻印の名を口にする。

その刻印は世界貴族、天竜人の紋章。このマークを付けられたものは天竜人の奴隷として扱われ、一生消えることのない“人間以下”の証明でもある。

 

「なるほど。この二十年音沙汰がなかったのはそういうことだったのか…」

 

フランキーは納得した表情で腕を組む。チョッパーやナミ、ジンベエは痛ましそうにその背中を見ていた。

ポベウスを殴りつけたルフィもハンコックのことを思い出し、追撃は仕掛けなかった。

 

「…見たな」

 

痛みから立ち直ったポベウスはルフィたちへ振り向き、増悪の感情を隠すことなく、彼らを睨みつける。

 

「お前ら海賊が、海軍が、世界政府がなければ̶大海賊時代なんてなければ!」

 

 

 

 

 

二十二年前、南の海に浮かぶどこかの島。

 

「ありがとうございます!あなたのおかげで明日も生きて行けそうです!」

 

ある家のベッドの傍で一人の若い男性が感謝されていた。

男性の名はポベウス。短い黒い髪と整った顔、白いコートを着て、首にかけた金のペンダントが特徴的であった。

 

「いえ、喜んでもらえてとても良かったです。では何かありましたらまた呼んでください」

 

そう言ってポベウスはそこから立ち去ろうとした。その行動にベッドで寝込む少し置いた女性は制止の声をかける。

 

「待ってください!まだお代が̶」

「いえ、お代は結構です。ここには偶然立ち寄っただけですし。それに…」

 

ポベウスは扉の方を見る。そこには笑顔でこちらを見る小さな子供とその父親であろう男性がいた。

ポベウスは彼らに微笑むと、上機嫌に答えた。

 

「あなたたちの笑顔で私は十分ですから」

「…ありがとう、ございます」

 

女性は涙を流しながらポベウスへと感謝をする。ポベウスは子供と男性とすり違って部屋を出た。

彼の後ろでは三人が笑顔で抱き合っている。

 

(さて…また帰ったら妻にどやされるな)

 

ポベウスは諦めた表情でそう考える。太陽の日差しが彼へと降り注いだ。

ポベウスは機嫌直しのために何か買おうと街を歩いた。ここは周辺でも比較的交易が盛んな島であり、様々な物や人が道を往来している。

ポベウスは店に並ぶ商品を眺めていると様々な人から声をかけられた。

 

「おぉあんたか。この前はうちの子供が世話になった。ありがとよ」

「あらぁ夢見師さん、お久しぶり。あれからウチの夫すごく元気になったの。ありがとうね。これはほんのお礼よ」

「兄ちゃん!この前はお母さんを助けてくれてありがとう!」

 

老若男女問わず、様々な人がポベウスへと感謝の言葉をかける。

そんな彼らにポベウスは笑顔で対応した。

 

ポベウスは少し名の知れた人物であった。

彼の職業は夢見師。悪夢に苛まれている人、現実で辛いことがあった人など、様々な悲しみや苦しみ、悩みを抱えている人々に幸せな夢、望んでいる夢を見せることを生業としていた。

彼は二年ほど前に悪魔の実“ユメユメの実”を食べた。当時は使いこなせなかった彼だったが、その能力を使い、今では人に夢を与えている。

 

 

ポベウスは自分が住処としている島バテリエへと到着していた。

家の前にたどり着いたポベウスは疲れた表情で扉を開ける。

 

「ただいま~」

「おかえりパパ!」

 

扉を開けると小さな少女が全力でこちらへと走ってきた。ポベウスはよろけながらも少女を抱きしめると彼女の名前を嬉しそうに呼ぶ。

 

「ただいまオーニラ!」

 

ポベウスは自身の娘に頬ずりをしていると、奥から若い女性がこちらへと向かってくるのが視界に入った。

 

「おかえりなさいあなた」

「あぁ、ただいまブラウ」

 

ポベウスの妻であるブラウはお腹をさすりながらじゃれ合う娘と夫を見ていた。

三人は広間へと集まると最近の状況を話し始めた。

 

「ブラウどうだいお腹は。あとどれくらいで産まれてくるんだ?」

「お医者様が言うにはあと数か月そうよ。そしたらオーニラはお姉さんね」

「私お姉さんになれるの!?」

 

オーニラは嬉しそうな声を上げる。ポベウスはそんな娘に笑顔で頭を撫でた。

 

「海賊王も最近捕まったし、これで平和な時代になるといいな」

「そうね。そうすればあなたの夢にも近づけるでしょうね」

「そうだな」

 

ポベウスとブラウは神妙な顔でお互いを見続ける。そんな二人にオーニラは高らかに宣言した。

 

「私もパパみたいにみんなに夢を与えたい!みんなを幸せにする!」

 

オーニラが笑顔で元気よく将来の夢について語る。ポベウスは自分と同じような夢を持つ娘を嬉しく思い、より一層頭を強く撫でた。

 

「オーニラならできるさ。なんてった私の娘だもんな」

「オーニラは歌うことと物語を話すのが好きだから…吟遊詩人になるのがいいかしらね」

「じゃあ私それになる!」

「ならたくさんのこと知らないとな。人は苦しいことがあるから楽しいことが分かる、悲しみがあるから嬉しいことが分かるんだ」

 

その後、三人はポベウスの旅やオーニラが隣人の同い年の男と遊んだことについて話し合った。彼らはそんな他愛のない平和な話を聞き、笑い合う。

ポベウスはこの生活がいつまでも続けばいいと、そう願っていた。

 

しかし、現実はそう甘くはなかった。

 

「じゃあ行ってくるよ。それではジョセフさんお願いします」

「ママ行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

 

その日、ポベウスは娘を連れて仕事の依頼へと向かおうとしていた。娘に様々なことを経験してもらいたいという思いと身籠った妻を気遣ってのことだった。

ポベウスは信頼のおける年老いた隣人に妻を預け、娘を連れてバテリエを出た。

 

 

それから数か月後。ポベウスは娘を連れ、バテリエへ帰還した。

その間に海賊王が処刑され、彼が最後に放った言葉により、多くの海賊が海へと出たが、運よく海賊に鉢合わせることなく、島へとたどり着いた。

ポベウスは娘と手をつなぎながら家へと向かう。そして、扉を開け、娘と共に元気よく「ただいま~」と言った。

しかし、返事は帰ってこなかった。まだ寝てるのかと思い、家中を探すが、妻はおろかジョセフの姿も見つからなかった。

 

家の状況に首を傾げていると、ガタッと音が玄関から聞こえる。

そちらを向くと近くに住んでいた少し年を取った女性がバケツを倒し、驚いた表情でこちらを見ていた。

ポベウスは彼女の様子から何か嫌なことが起きた感じがした。

 

 

数十分後、ポベウスの家は荒れに荒れていた。

テーブルや椅子は倒れ、窓や食器は砕け、破片が地面へと散乱している。その部屋の中央でポベウスは泣き崩れ、彼の泣き声は外まで響いていた。

 

ポベウスは女性から自分がいない数か月バテリエで何が起こっていたのかをすべて聞いた。

この島に海賊王の子を身籠った女性がいること。その子供を狙って海軍が訪れたこと。何人もの妊婦が疑惑をかけられたこと。そして、殺された女性がいること。

その殺された女性の中にはポベウスの妻もいた。

 

ブラウはその時ポベウスがいなかったこと、産まれる時期がピッタリだったこと、ある人物の裏切りから海賊王の妻と断定され、子供ごと殺害された。

 

ポベウスは部屋で泣き続けた後、家を出ると、娘が心配そうな顔でこちらを見ていることに気づく。

 

「パパ…ママはどこいったの?」

「オーニラ…ママはね。出産のために遠い島に行ったんだ。帰るのに時間がかかるそうだから新しいお土産話を作りに行こうか」

 

娘に心配かけないために泣きそうな顔を無理やり抑え、ポベウスは笑顔でそう告げた。

オーニラはそんな父に何も言わず、手をつないで後を着いて行った。

 

 

 

数か月後、ポベウスとオーニラは偉大なる航路の辺境の島に向かっていた。

そこは一つの村しかない小さな島であった。その村は前回、海賊に襲われており、その後にポベウスは村人を癒すため、幸せな夢を見せに訪れたのだ。

ポベウスは海岸に着くと、ここで待っているようにオーニラへと告げた。オーニラは不満気な表情をしながらも黙って従った。

 

ポベウスは記憶にある道をたどって村に向かう。そして、ようやくたどり着いた彼だったが、目の前の光景に驚愕の表情を浮かべていた。

村は以前と海賊に襲われた直後の時と変わらず、いやそれより荒れた状態だった。畑は荒れ、家屋は倒壊し、白骨化した遺体がそこら中に転がっていた。

 

「一体何が!?海賊に襲われたのか!?」

 

ポベウスは慌てて走り、そこらの家屋へと入り込む。この村に起こったことの手掛かりがないか探していると、とあるノートを発見した。

ポベウスは何が起こったか記されているかもしれないと思い、そのノートの中身を覗き見た。

そして中身を読んで、ポベウスは顔を怒りと絶望に満ちた顔をし、膝から崩れ落ちた。

 

「すまない…すまない…私はそんなつもりじゃ…」

 

ポベウスは何かに謝りながら涙を流す。

 

ノートは海賊によって夫を殺され、足を奪われた子供を持つ母親の日誌だった。

ノートの最初には海賊に幸せを奪われたことに対する怒りと悲しみが記されていた。その次のページは夢で亡き夫に会えたことと、海賊に襲われて以来久しぶりに子供の笑顔を見ることができたことによるポベウスへの感謝が書かれていた。

しかし、それから数ページ後からは村に起こった悲惨な結果が記されていた。友人が一度見た幸せな夢を見たいがために寝たきりとなったこと、お世話になった老人が夢に出た亡き妻を追いに自殺したこと、夢で出会った最愛の夫が現実世界にいないことへの悲しみ、子供が二度と笑わなくなり、喋ることもなく衰弱死したこと。

ノートにはポベウスが村を滅ぼした最悪の犯罪者だと、自分たちから生きる希望を奪った張本人だと記され、ポベウスに対する憎悪が書き殴られていた。

 

ポベウスはどれくらいそうしていたか分からないが、少なくとも青かった空が赤く染まるぐらいはその場で膝をついていた。

そして、ようやく娘を一人にしていたことに気づき、体に鞭を打って急いで海岸へと向かった。

徐々に海岸に近くづくポベウスだったが、彼の耳に複数人の下品な男性の笑い声が入ってきた。

そのことに嫌な予感がしたポベウスはより一層足を働かせ、娘の下へと向かう。

 

海岸に着いたポベウスは船を止めたところに着くと、そこには自分たちよりはるかに大きな船とある場所を囲むように集まり、笑っている男性たちがいた。

その中の一人がポベウスに気づく。

 

「あぁ?お前何もんだ?」

 

その声を皮切りに他の男たちもポベウス方を向いた。そして、円の中央から他よりは大柄な男が現れる。

その男は大きな帽子に一振りの刀を腰に差し、いくつもの宝石を身に着けていた。それぞれが目を引くものであったが、それらよりあるものがポベウスの目を引いた。

 

「その髪飾りは…」

「うん?これか?さっき殺したガキが持ってたもんでよ。売れそうだから奪っておいた」

 

男が手に持ったものは過去にポベウスがオーニラに上げたものと瓜二つだった。ポベウスが髪飾りに視線をやっていると、男が気づいたように話した。

 

「あぁ、もしかしてお前があのガキの親か。おい!お前らそこどいてやれ!親子の感動の再会だ!」

 

男の指示に円を作っていた男たちはその中央が見えるようにどいた。その時の男たちはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていた。

ポベウスが恐る恐る中央を見ると、そこには娘オーニラがいた。頭と胴体、手足がバラバラになった状態で。

ポベウスは苦痛に歪んだ表情の娘を見て、むせび泣いた。

 

「ガハハハ!感動の再会なのに何泣いてんだよ、ガハハハ!」

「船長こいつどうしやす?」

「ん~そうだな~。殺してもいいが、あのガキが面白いこと言ってたな。確かユメユメの実の能力者だったか?おれぁは悪魔の実なんか興味ねぇが、ヒューマンショップで売ればいい金が入るかもしれねぇ。野郎ども!こいつを縛り上げろ!」

 

ポベウスはなすすべもなく捕らえられ、船に運び込まれた。彼は薄暗い檻の中、ずっと泣き続けている。

 

 

それから数日たったころ、ポベウスはシャボンディ諸島のヒューマンショップで奴隷として売られていた。

現在は丁度オークションが開かれており、ポベウスは今回の目玉となっている。

 

「それではお待たせしました!本日の目玉、希少な悪魔の実を食した人間。その実はユメユメの実であり、自由自在に夢を操ることができるとのこと。これで皆さんが望む夢を見ることができます!」

「「「ウォォ!」」」

 

ポベウスが登場すると、観客たちは今日一番の盛り上がりを見せた。司会者はその光景にほくそ笑みながら、オークションを開始する。

 

「それでは最低価格1000万から始めさせていただきます。それではスタート!」

「2億ベリーで買うぇ」

「…えっ?」

 

最低価格の20倍の値段を初っ端から宣言され、唖然とする司会と観客。

それもそのはず、人間の奴隷に億を付けることは珍しく、さらにそれが開始直後だからなおさらだ。

しかし、その金額を言ったものを見た者たちは納得し、あきらめた表情となった。

なぜならポベウスを買うと宣言したものは天竜人だったからだ。

 

「…えー、他にいなければ落札となりますが、よろしいでしょうか?」

 

司会の言葉に誰も反応しない。誰も天竜人と競い合おうとはしないのだ。

 

「それではこれにて決定!」

 

司会はカーンと槌を鳴らし、今回のオークションを閉廷する。こうして、ポベウスは天竜人の奴隷となった。

 

 

 

 

 

「私は二十年クソどもの奴隷として暮らした!苦痛の日々を過ごしてきた!」

 

ポベウスは二十年近く味わったありとあらゆる苦しみをルフィたちに話した。誰にも告げたことのない、自身の過去を。

最初は天竜人の奴隷になっても問題はなかった。天竜人が望む夢を見せればいいだけだからだ。

しかし、天竜人はそれに飽きると、自分の奴隷たちに悪夢を見せるようポベウスに命令した。悪夢を見たやつらがどうなるかを娯楽としていたのだ。

 

「私は人々にありとあらゆる悪夢を見せてきた!家族が無くなる夢!足を失った夢!自分が死ぬ夢!最愛の人を殺す夢!人を幸せにしようとした力をそんなことに使った!」

 

毎日そんな夢を見せられたものは例えそれが夢だと分かっていても現実世界で狂い始めた。

ある者は歩けなくなり、ある者は何も食べられなくなり、ある者は精神が崩壊した。

そんな状態になった人々を目の前でポベウスは見てきた。

 

「毎日苦痛だった…何度も死にたいと思った…だがある日、救世主が現れたっ!」

 

ポベウスは狂気に満ちた表情で空を見上げる。ウタワールドの空は未だいくつもの黒い渦が渦巻いていた。

 

 

三年前、ポベウスは天竜人に連れられ、とある島に来ていた。その島は娯楽の都であり、ありとあらゆるものがそろう場所でもあった。

その日は、たまたま天竜人とは別行動をとることになったポベウスは街を歩いていた。光なき眼で街を見渡すと、心地の良い歌が聞こえてきた。

ポベウスは気になって歌の聞こえる方へと足を進める。徐々に近づくと、とある家にたどり着いた。ポベウスはその家の窓から歌が聞こえてくるのに気づいた。

窓から中を覗くと、親子が映像電伝虫から映された映像を見ていた。その映像には一人の少女が歌を歌い、踊っている。

その映像を見た瞬間、ポベウスの心が晴れ渡った。

 

 

「彼女の歌は私を救った!それまでの苦しみを全て取り払ってくれた!」

 

その後、ポベウスは天竜人の奴隷から脱出した。そして、逃げている最中に偶然エレジアへと着き、自分を救ってくれた少女に出会う。

ポベウスはルフィたち、ウタへと視線を向ける。

 

「これは運命だ!彼女は新時代を、何もない世界を作ってくれる!ウタは私たちの救世主だ!」

 

ポベウスが叫ぶと、消えたはずだった黒い音符が集まり、ポベウスを覆いつくす。それは黒い塊となり、徐々に大きくなっていく。

やがてトットムジカと同じぐらいまで大きくなると、表面にひびが入り、中が露になった。

その姿にナミやコビーたちは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ウ、ソ。またあれを倒さないといけないの!?」

「おいおいそりゃねぇぜ」

「ヨホホホ、驚いて目が飛び出るかと思いました。あ、私̶」

「おめぇ目玉ねぇもんな」

「ヨホホホ…」

 

中から現れたのは先程と同じトットムジカだった。しかし、前回は禍々しくも美しさを感じるものだったが、今回のはただ不気味な存在であった。

手足の数は合計9本に増え、左右で揃っておらず、髑髏もいたるところにあり、顔は半分が黒い何かに置き換わっている。翼も片方捥げており、背中からは無数の黒い手が生えていた。

トットムジカを中心に光が世界を覆いつくしていく。何ものにも染まらない白い世界が広がっていく。

その異様な光景にウタは恐怖の表情を浮かべた。先程の体験がウタの脳に蘇ってくる。

 

「ウタ、心配すんな。俺がいる」

「ル、フィ…」

 

ルフィはウタに麦わら帽子をかぶせる。ウタは麦わら帽子をぎゅっと強く握り、深くかぶって小さく頷いた。

ルフィは先頭に立ち、ゾロ、サンジたちが横に並ぶ。

 

「いくぞ野郎ども!誰一人欠けることなく元の世界に帰るぞ!」

「「「おう!」」」

 

ルフィたちは怪物へと変貌したトットムジカへと向かう。世界を救うためではなく、自分の未来を守るため、か弱き少女ウタを守るために。

 

 

 

 

現実世界でもトットムジカが再度現れ、海軍やカタクリは混乱していた。

ようやく観客や大事な妹が戻ると思ったが、誰一人目覚めることはなく、さらには苦労して倒したトットムジカが現れたのだ。

たが、赤髪海賊団は動揺することなく、戦闘態勢に入っていた。

 

「野郎ども!覚悟はいいか!」

「「「おう!」」」

「…ヤソップ、息子とはどうだ?」

「へっ、俺の息子をなめんなよ?まだばっちりリンクしてるぜ」

「よし、さっさとあの化け物を倒してウタと帰るぞ!」

「「「おぉぉぉ‼」」」

 

赤髪海賊団と冷静になったカタクリ、さらに後方からは観客の非難が済んだ大将黄猿、藤虎を筆頭に海軍もトットムジカへと向かっていた。

 

「ほぉ、お前らも加勢してくれるのか」

「これ以上は世界がやばいからね~」

「あっしらは海軍。市民の平和を守るのが役目でござんす」

「そうか、なら任せたぞ…ヤソップ!」

 

シャンクスは刀を抜くと、ヤソップに声をかける。ヤソップはウソップと視界を共有すると、みんなに指示を出した。

同時にウタワールドでもウソップがルフィたちに指示を出す。

 

「「まずは右手二本だ!」」

 

二人の指示にそれぞれの世界で行動を開始した。

ウタワールドではゾロとジンベエ、フランキーが、現実世界ではベックマン、ガブ、ライムジュースが攻撃を仕掛ける。

 

「三刀流、千八十煩悩鳳!」

 

ゾロの技とベックマンの銃弾が同時に一つ目の右手に直撃し、トットムジカの手が一つ破壊される。

間髪入れず、ジンベエとフランキー、ガブとライムジュースが攻撃を仕掛ける。

 

「海流一本背負い!」

「フランキ~ラディカルビーム!」

 

ウソップの視界ではガブとライムジュースの攻撃が残った右手に命中する。その光景にウソップは次の指示を出そうとするが、言葉が出なかった。

なぜならヤソップの視界では命中しておらず、無数の怪物やモノによって阻まれていたからだ。

 

「な、なんだよこれは!?」

「一体どこから現れてきやがった」

「!おい、破壊したはずの手が戻ってるぞ!?」

「なに!?」

 

チョッパーが指さした方を見ると、さっき破壊したはずの手が元に戻っている。

それは現実世界でも同じであった。

 

「おいヤソップ!いったいこれはどういうことだ!」

「…向こうの世界で攻撃が妨害されてた。おそらくあの男の仕業だろう」

「なに…」

 

シャンクスはトットムジカを、それの中にいる人物を睨みつける。すると黒い手足を退けていた藤虎とカタクリが傍にやってくる。

 

「こいつはしょうしょう厄介なことになりやしたね」

「おいどうする赤髪。こっちからは何もできないぞ」

 

カタクリの言う通り、攻撃の妨害はウタワールドの中のみ。シャンクスたちからは干渉することはできない。

シャンクスは少し目を閉じると、再び目を開けて呟く。

 

「…ルフィを信じろ」

 

それだけを言うと、再びトットムジカへと向かっていった。

トットムジカは骸骨から無数のビームを放ち、黒い手足を伸ばして周囲へと攻撃している。




オリキャラはどんだけぞんざいに扱ってもいいから気持ちいい~
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