戦姫絶唱シンフォギアSpirits   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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迫りくる激動

「――って何これぇ!?」

 

 自分の姿に思わず間抜けな声を上げてしまう。だって私の身体が良くわからないSFのスーツみたいなものに覆われていたから。白とオレンジを基調とした身体に張り付くようなボディスーツ。それに耳を覆うヘッドホンみたいなものに、手脚にはやたらごつい機械が装着されている。

 おまけに体の線がかなりはっきりでている。

 しかし今はそんな暇じゃない。

 目前にノイズがいるのは変わらないのだから。その脅威は私だけではなく、隣にいる女の子にだって迫っている。

 

「お姉ちゃん、かっこいい……!」

 

「――うん」

 

 しかし彼女は私の姿を見て、顔を綻ばせていた。

 それを見て、私は小さく頷く。やっぱりこんな私にもできることはあったのだ。 

 そして胸から歌が溢れ出し、口は勝手に動いて旋律を奏でていく

 

【――――】

 

 歌いながら悟る。この歌は立花響の心を形にしたものに他ならない。紛れもなく自分の心だからこそ、滞りなく歌は紡がれる。

 女の子に手を差し出して握り、抱きしめる。

 訳が分からないこの状況の中、確かなのは私が彼女を守らないといけないということだから。

 

「――ハッ! 響ちゃん! その子を連れて逃げて!」

 

【――――】

 

 歌いながら仮面ライダーの言葉に頷く。仮面ライダーに助けられるということは釈然としないけれど、今は女の子のことが優先だ。今にも動きだしそうなノイズから逃げようと私が膝を沈めた間にも仮面ライダーは動いていた。

 

「次はこれで!」

 

 右手に握っていたのは黄色のライオンが描かれたメダル。それを腰の三枚セットの一番右と入れかえて腰にあった読み取り機みたいなものをスライドさせる。

 それと同時私は駆けだして、

 

「う、うわぁ?!」

 

『ライオン! トラ! バッタ!』

 

「ハアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 起きたことは三つ。

 思い切り膝を伸ばしたら身体に装着されていた機械から排気音が発生し、信じられないくらいの飛距離で跳んだこと。仮面ライダーのベルトから機械音が発生し、動物の名を叫んだこと。そして仮面ライダーの姿が変わり、頭部が赤から黄色に。さらにはそのライオンを模したような装飾から昼と間違えそうになるくらいの光が発せられたことだ。

 

「う、と、わぁ!」

 

 思いもよらない跳躍と背後の光で情けない声を出していた私だったが、その光は仮面ライダーの周囲にいたノイズを灰へと変えていき、腕の爪でさらに切り裂いていく。。

 しかしそれに驚いてる暇はなかった。予想以上に飛び上がったとしても重力まで無視したわけじゃない。すぐに落ちていき、地表が迫ってくる。

 

【――――】

 

 歌う。 

 それと共に本能的に体を動かし、女の子を庇う様に――着地する。どう考えても人間なら着地なんてできずに地面の染みになるはずが何の痛みもなく両の脚でちゃんと立っている。けれどやはり驚いている時間はないのだ。

 新たなノイズが迫ってくる。

 空間から滲み出るだけでなく、身体を槍のように伸ばしながら迫って来る。

 アレに触れれば――炭だ。

 

【――!】

 

 再び跳んだ。けれど今度は跳躍なんて呼べるものじゃない。単純に地面を転がって無理矢理距離を稼いだだけ。それでも、派手に地面に激突したというのに身体に痛みがない。少女を確りと抱え直したが、その瞬間にもノイズは来る。

 もう一度、跳んだ。

 

【――、う、うわぁ!?」

 

 また、想像以上の大跳躍。中空で姿勢が崩れて、近くの建物に背中から激突する。流石に今度は痛かった。衝撃で肺から息が押し出され、歌が一瞬だけ中断し身体が重力に従い落下しそうになり、

 

【――――!】

 

 しかしそれでも無理矢理に歌を歌っていた。

 手が壁面にあったパイプを掴み、ぶら下がる。自分の身体と小さいとはいえ女の子一人の体重を抱えているのに感じる負荷は小さい。ここまでくれば私だって気付く。今の私の身体能力は常軌を逸しているのだ。

 理解し――視界に巨大な緑を見た。

 

「!」

 

 大型ノイズだ。今私が張り付いている建物並に大きい。二、三十メートルかそれ以上はあるだろう。出現に驚いた瞬間、ノイズはその巨大な腕を私たちへと振り回していた。今度は意識を以て壁面を蹴りつけ地面へ跳ぶ。

 爆音と共に建造物が破壊されるのに背筋を凍らせながら、数度のステップを踏むことで着地の衝撃を和らげ姿勢をアジャストする。

 

「ッ!」

 

 態勢を立て直した所でまた新たなノイズが来た。

 

【――――】

 

 飛びかかってきたノイズを避けることはできなかった。それどころ折角立て直したはずの体勢はノイズの接近に驚いたせいで無様に崩れる。

 眼前に極彩色が迫り――思わず手で払いのけて炭へと返した。

 

「――え?」

 

 風に流される炭素の塊を凝視する。

 人間がノイズが触れれば諸共炭素分解されて炭に変える。それがノイズに関する常識だ。それなのに今の私の手はしっかりと残っている。

 私が、やっつけたのか。

 そして。

 そんな驚くべきことがあったというのに、この期に及んでさえ状況は私に驚く暇を与えてくれなかった。

 遠くから、バイクの排気音が響いてくる。

 けれどそれは仮面ライダーではなかった。

 

「――!?」

 

 ノイズの群れの中からバイクに跨って現れたのは風鳴翼だった。

 私の憧れのアーティストとは、ノイズの群れを、そして私も通り過ぎ大型ノイズへと一直線に走り――直前で大きく飛び上がってバイクをぶつけた。

 そして、中空で綺麗に姿勢を立て直しながら、

 彼女もまた、歌っていた。

 

『――Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 羽撃きは鋭く、風切るが如く。

 

「……」

 

「呆けない、死ぬわよ」

 

 バイクに現れたこととそのバイクをぶつける時にちょっと在りえないレベル跳躍をして普通に着地しているのに驚いたわけだが私としてはようやく生まれた驚き呆ける瞬間である。出来の悪い私の脳みそはいい加減容量の限界である。

 

「貴女はここでその子を守ってなさいッ」

 

 

「っと、翼ちゃん! 御免、手古摺った!」

 

「オーズ、話は後よ。今はこいつらを片付ける!」

 

 現われた仮面ライダーや私の応えも聞かずに彼女は走りだした。

 走り出して――歌い始めた。

 

【――――】

 

 そして、彼女もまたその姿を変える。 

 今の私とカラーリングの違う、けれどデザインはよく似たスーツと装甲。そしてその手には、やはりSF染みた巨大な刀。

 

「いい、響ちゃん。ここを動かないでね!」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

 仮面ライダー――オーズもまた、私の答えを聞かずに走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――――】

 

 歌と共に翼は刀を振りかぶる。その間に刃が日本刀の形から巨大な大刀へと変形させ、その上で、振りおろした。

 

【――蒼の一閃】

 

 大刀の軌道上に巨大な蒼の斬撃が走る。それはそのままノイズを切り裂き、その背後の建物に激突して爆散させる。その上で彼女は既に次へと動いていた。足首のブレードを震わせながら大跳躍。そのまま数瞬滞空し、周囲に生んだのは光の投刃だ。一本や二本ではなく数十本。

 全てが同時にノイズへと降り注ぐ。

 

【――千の落涙】

 

 瞬く間に地上のノイズは灰に変える。

 そしてオーズもまた動いていた。ライオンメダルを使ったラトバからタトバコンボに変わっていたオーズはメダジャリバーを振るいノイズを切り裂き、手足で打撃している。

 立花響や風鳴翼のようなボディスーツや装甲を用いることはないにもかかわらず、当然のようにオーズはノイズを蹴散らしている。

 

「ハッ、フッ、セイ!」

 

 いつの間にかノイズに交じってミイラもどき――屑ヤミーも混じって襲い掛かってくる。先ほど響が襲われている間にあらかたのヤミーは撃破したがその残党だ。

 けれどオーズはノイズも屑ヤミーをものともせずに蹴散らしていく。

 翼もまた地上に降りたち脚部のブレードを振動させ、高速機動と共にノイズを切り裂き灰に変える。

 

「……凄い。それにやっぱり翼さんだ」

 

 響はそれらの戦闘を目撃しながら呆然と呟く。先ほどの彼女のまぐれ当たりとは違い明確な戦闘の動きだ。短い時間で大量のノイズを打ち倒している。

 そして、そうやって呆けていた彼女の背後に大型ノイズが迫っていた。翼が登場時にバイクをぶつけたのも全く効いていないようだった。いやノイズだけじゃない。大型ノイズの足元にライオンクラゲヤミーもまた存在していた。響の下に行くために急いでいたオーズから逃れた最後のヤミーだ。

 それらの大型ノイズとライオンクラゲヤミーが響と少女に迫り、

 

【――――!】

 

「セイヤァーーッッ!!」

 

 巨大な刀剣が大型ノイズを貫き、空間の断裂がライオンクラゲヤミーを両断した。

 

「――ッ」

 

 誰がやったなんて問うまでもない。

 響の背後でメダジャリバーを振りぬいた仮面ライダーオーズ。

 そして巨大な刀剣の柄に部分に直立する風鳴翼。

 

「……」

 

「――」

 

 目が合う。

 響と翼の目が。

 響には彼女の蒼い瞳がはっきりと見えた。

 よく斬れる硝子の刃みたいだと、立花響は思った。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だった、響ちゃん? それに腕の中の女の子」

 

「え、あ、えっと。なんとか……大丈夫?」

 

「うん! 守ってくれてありがとお姉ちゃん!」

 

「あはは……私は特に何もやってないけど……」

 

 いやまぁ結構な謙遜か。そこそこ自分は頑張ったと思う。最終的には翼さんや目の前に歩み寄り、気安く話しかけてきた仮面ライダーに助けられたのだが。

 仮面ライダーオーズ。

 翼さんもそうだけれど、二年前私を助けてくれた仮面ライダー。

 彼は笑ったように肩を震わせ、腰の斜めになっていたバックルを横向きに直した。直して、赤黄緑の光に包まれて変身者が露わになる。

 変身者は――火野映司だった。

 

「って、えええええ!? 映司さん!?」

 

 見覚えのあるイケメンに、カラフルなエスニック系の服。声に聞き覚えがあるのも当然だった。昨日会ったばっかりだし、昨日以前にも何度も出会っているのだから。

 

「……はぁ」

 

 頭上の翼さんがため息を吐いたことに私は気づかない。

 

「ははは……えっと、まぁそういうことで。うん、俺が――仮面ライダーオーズなんだよ」




仮面ライダーの裏設定的なこととか装備とか書くと響の一人称だと辛いので、戦闘時のみ三人称で。

Q,なんでオーズはシンフォギア装者じゃないのにノイズと戦えてるの?
A,仮 面 ラ イ ダ ー だ か ら 。

この答えの説得力(
仮面ライダーって何だろう(遠い目
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