戦姫絶唱シンフォギアSpirits 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
「お母さん!」
「よかった、無事だったのね……!」
「ではこの書類にサインをお願いします。今回の件は国家機密に分類されますので……」
「は、はぁ……」
「……」
黒服のお兄さんお姉さんが恐るべき機敏さで周囲の処理をしていく様を私は呆然と眺めていた。ボディスーツはいつの間にか制服に戻っていたけれど、戸惑いはなくならないまま。何をどうすればいいか全然わからなくてとりあえずぼうっとし続けていた。
「温かいものどうぞ」
「あ、温かいものどうも」
そんな風に渡された温かいものを飲みながら心を落ち着けつつ、一体何時帰れるのかなぁなんてことを考えていた。そんな私の隣で、
「いやぁすごいよねこの人たち。できる大人って感じでさ。里中さんが沢山いるみたいだ」
映司さんが呑気に笑っている。
というか誰だ里中さん。
「……」
「大丈夫? 響ちゃん」
「あんまり……大丈夫じゃないですけど」
CD買いに行ったらノイズと怪人に襲われて、仮面ライダーが現れたら自分も変な恰好になって、憧れの先輩も変な恰好になって戦ってたとか。
冷静になると大丈夫な要素が一つもない。
というか私は何で律儀にずっと残っているんだろう。
「あの、それじゃあ私そろそろ寮の門限なんで……」
こっそり呟いて抜き足差し足で振りかえって、
「そう言うわけにはいきません」
翼さんと――左右にずらっと並んだ黒服のお兄さんたち。宇宙人を捕まえたりする黒服の映画そのまんまだ。まさかリアルで見るとは。
「貴方の身柄は此方で拘束させてもらいます」
「すいませんねぇ」
「……えっ」
気づいたら
本当に一瞬目を離した隙に、手を取られたり、手錠を当てられた感覚も無しに、手錠が嵌められた結果だけにしか気づけなかった。
なにこれ怖い。
「あの、忍者か何かですか」
「ははは、忍者なんているわけないじゃないですか。ニンニン」
●
「ここって……先生たちのいる中央棟ですよね」
真っ黒な車――多分リムジンとかいう奴――それに乗せられて連れてかれたのはリディアンの、それも中央棟だった。基本的に生徒は呼び出しや確かな目的がない限りあまり近づかない場所だ。私は、まぁちょこちょこ呼び出されて怒られることが何度かあった。
「こっちですよ」
「あ、はい」
学校に入った時点で同行者は数を減らしていた。手錠を嵌めれた私に、私を先導する先ほどのにこやかな忍者(仮)好青年さん。それに困ったような半笑いの映司さんに無表情で黙したままの翼さんの四人。
どういう四人組だ。
連れてかれたのはエレベーター。好青年さんが中にある読み取り機に携帯を翳し、電子音がなる。
「ちゃんと握っててくださいね」
好青年さんに言われ手すりに摑まり、フックで体を固定する。しかしこの人やたらいい人だけれどどうせなら手錠も外して欲しい。映司さんや翼さんは手慣れた感じで既に手すりに捕まっていた。
そんなに勢いの強いエレベーターだったかなぁと首を傾げ――急降下。
「ひえぇ!?」
転びかけ、
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
好青年さんに支えられて、姿勢を直した。
それからエレベーターはしばらく降下を続けて行く。学校の地下には緊急避難用のシェルターがあったのは確かだけれどこんなに長かったのだろうか。
定期的に行われる避難訓練は階段で行けるようなもので、こんな速度で、こんな時間を掛けるようなものではない。
そして案の定、
「うわ……!」
突然開けた視界に広がるのは不可思議な遺跡のような空間だった。
色あせながらも色々な色の壁に、象形文字みたいなものが刻まれている。そんな広大な空間にを貫くようにエレベーターの塔がある。
「凄いよね。俺も最初来た時はびっくりしたよ。地球突き抜けてブラジル行ったことを思い出したよ」
「……ん、んー?」
なんかスケールの大きいことを映司さんが言うが、脳みそが処理しきれなかった。
放っておこう。
「えっと、あの、翼さん……」
「愛想は無用よ」
「……」
まだ何も言っていない。
彼女は此方を見ないまま、突き放すように呟く。
「――今から向かう先に、微笑みなど必要ないのだから」
●
「ようこそ! 特異災害対策機動部二課へ! ははははは!」
向かった先に出迎えたのは朗らかすぎる微笑みだった。あとクラッカーの破裂音に歓声。
「……はぁ」
隣にいる翼さんが心底重そうなため息を吐いていた。
しかしエレベーターの外のホールで待ち構えていた大勢の人たちは陽気な笑顔でクラッカー片手に私たちを出迎えていた。
「はーい初めましてこんにちわ! お近づきのしるしに写メ写メ! はいちーず!」
「え、ちょ、あの!?」
出迎えの中から白衣の女性が出てきてやたらハイテンションで絡みついてきて勝手に写メを取られる。さらにおまけのように身体を触られた。
「そこまでにしておけよ了子君」
「はいはーい! ごめんねー響ちゃん。あ、私櫻井了子よよろしくねー」
「はぁ……って、なんで私の名前」
「あ、それはほらコレね」
言って、櫻井さんが握っていたのはどこか見慣れた鞄だ。
「って私の鞄じゃないですか、中見たんですか!?」
「あーごめんね? 見ないと持ち主解らないから、大目に見てね。ちゃんと返すから」
「……ぬ、ぬぬ……ありがとうございます!」
プライバシーの問題とか色々あれだったけど回収してくれたのが有り難いのは確かななのでとりあえず礼を言うしかない。
「ははは、元気が良くて何よりだ。俺は風鳴弦十郎。この二課の司令をやっている。よろしくな!」
「あ、初めまして立花響です……って風鳴?」
「あぁ。俺は翼の叔父だ。アイツが赤ちゃんの頃から知ってるぞ。もしあれの昔話とか聞きたかったら――」
「司令」
「……怒ると怖いから、後でこっそり話しかけてくれ」
はははと笑って手の平から花をを出したり仕舞ったり手品する弦十郎さんだった。
随分と個性的なキャラクターの二人に圧倒されっぱなしの私だった。
そんな私に好青年さんが手錠を外しながら笑いかけてきた。
「手荒な真似をしてすいませんでした立花さん。痛い所などはありませんか?」
「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます。……えっと」
「あぁ緒川慎次と申します。二課の捜査員ですが、普段は風鳴翼のマネージャー等も兼任させてもらっています。以後よろしくお願いしますね」
「これはどうもご丁寧に、此方こそよろしくお願いします」
なんだろう、この人以外まともな人がいない気がする。弦十郎さんは気さくなおじさんという感じだけれど、櫻井さんは明らかに変人すぎる。翼さんは残念ながら拒絶オーラが凄いし。そういえば一緒に来た最後の映司さんは何をしているのだろう。
手首をさすりながらやたら賑やかなパーティー会場を見回し、
「大丈夫だった映司君。怪我してない?」
「うん、大丈夫だよ比奈ちゃん。あ、ゴメンね折角ご飯誘ってくれたのに途中で抜けちゃって」
「ううん、それより映司君が無事でよかったよ」
「はは、ありがと」
見知らぬ女の人といちゃいちゃしていた。
多分、今の私は凄く真顔だと思う。
ラブコメの波動を感じる。
しかも近づいていてきた。
「響ちゃん、紹介するね。俺の友達の泉比奈ちゃん」
「初めまして、泉比奈です。よろしくね」
「た、立花響です。えっと、友達……?」
「うん、そうだよ」
「うん。ね、映司君」
「……」
「あー、こほん。響君、一応細くしておくが、比奈君は二課所属ではなく特例の民間協力者だ。普段はデザイナーの仕事をやっている」
「まだまだ駆け出しだけどね」
「デザイナー……」
それは凄いと思う。なんとなく響きがカッコいい。
「って、そうじゃない」
今は変な大人とか無自覚バカップルとかに深く悩んでる場合じゃないのだ。
花の出し入れ手品からトランプ弄りだした弦十郎さんに向き合う。
「あの、教えてくれませんか? 私に、一体何が起きたのかを」
それが今は私が知るべきことだ。
あの歌と、ノイズを倒したボディスーツ。あれらはこれまでの私の常識を大きく変えている。ここまでごつい手錠掛けられて連行されたのだちゃんと説明してもらわないと納得できない。
「うむ」
深く弦十郎さんは頷く。
その眼差しに遊びの気配なく、真剣そのもの。数瞬前までのふざけた雰囲気はなく、まさしく大人と呼ぶべきそれだった。
「確かにそれは重要な話だ。君のこの先の一生を左右しかねないくらいに。幾らか国家機密に触れるものがあるから気軽な話ではないが、しかし何も話さないわけにはいかないだろう。了子君」
「はいはーい」
呼ばれた彼女も動きや返事はふざけているが、その瞳は真剣だった。笑顔なのに、笑っていない。
「それじゃあ響ちゃん」
「は、はい!」
「――とりあえず、脱いでくれる?」
立花響――大人不信になりそうです。
「――今から向かう先に、微笑みなど必要ないのだから(キリ」
「ようこそー!!(超笑顔」
の原作はマジ笑った。
某所にライダーの戦闘力考察があってそれをいつも読んでるんだけれど、RXがやばい。気軽に出せないくらいヤバイ。
客演しかないな(