戦姫絶唱シンフォギアSpirits 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
「さて響君、昨夜時間を掛けて身体検査をして貰った結果基本的に君は実に健康だ。うむ、健康とは素晴らしいな!」
「……はぁ」
昨夜いきなり脱げと言われ軽く大人不審になりかけた私だったが、その後に会ったのは数時間もかかる健康診断だった。いや確かにあんな目にあって、あんな風に変身なんかしたのだから寧ろそういったことがないと自分の身体が不安だ。けれどそれにしたってそこまでの持って生き方がギャグ過ぎて真面目になりきれない。とりあえず昨日の夜未来を抱きしめてかなり癒されたからいくらかマシだけれど。
今日呼び出されたのは昨日と同じリディアン地下の二課の本部だ。しかし昨日のパーティーほどの人数はない。私と弦十郎さん、櫻井さん、翼さん、映司さん、小川さん、それにオペレーターの藤尭さんと友里さん。最もメインで話しているのは私弦十郎さん櫻井さんだが。
「えーっとまぁ専門的なことは置いておいて、響ちゃんの健康面に関しての心配は全くないわね。敢えて言えばこの年の女の子にしてはお胸の脂肪がご立派で……」
「わーわーわー! 何言ってるんですかセクハラ!」
「てへぺろ」
この人年幾つだ。
「こほん。まぁそのあたりのことは置いておいて、響君。君に話さなければならないことが幾つかある。どっちも重要な話なのだから心して聞いてくれ」
そう。今日はその為に来たのだ。
昨夜状況に流されるままに流され続けたが、一体昨夜の何が起きていたのか。そして私自身の変化に――仮面ライダー。
「教えてください。私の身体に、私の周りに何が起きたのかを」
その言葉に弦十郎さんは頷き、手元のタブレットを操作する。同時に弦十郎さんたちの背後に大きなホロウィンドウが浮かぶ。表示されているのは健康診断の結果らしきデータ。そっちはよく解らない専門用語や数字。
それに加え、
「私のレントゲン……?」
バストアップのレントゲン写真だ。
「えぇそう。これは貴方の胸部の写真よ。この心臓の部分に移っている影、これがなにか貴女は知っているわよね?」
「あ、はい。二年前の時の怪我の後遺症ですよね。心臓に近すぎて摘出できなかったっていう」
「……?」
「それって……」
翼さんと映司さんが眉を顰める気配。
あぁの二人には私が二年前あのイベント会場にいたことは言っていない。
「響ちゃん貴女は二年前のツヴァイウィングでのイベントに来ていたのね。その時ノイズとの戦闘に巻き込まれた余波で重傷を負い、胸には破片が残った。……検査の結果、この胸の破片が第三号聖遺物『ガングニール』の破片であることを確認しました」
「ガング、ニール……?」
「――!」
意味が解らず戸惑う私だったが、翼さんや映司さんはそうじゃなかった。少し離れた距離にいるのにハッキリと解る驚愕。
「まずシンフォギアについて説明しよう。シンフォギア――それはノイズと戦う人類の数少ない武器の一つだ。まずそれには聖遺物と呼ばれる特殊なアイテムが必要となる」
「よくお伽話とかに出てくる魔法の剣とか杖とか、そういう武器ってあるでしょ? そういうものは実在していている。翼ちゃんのペンダントもそう」
「……」
硬い表情のまま翼さんの胸から引っ張り出されたのは赤い水晶のようなペンダント。
「それが第一号聖遺物『天羽々斬』。日本神話で八岐大蛇ぶった切った奴。そういうちょっと信じられないような武器の本当に小さな破片の力を増幅させるのが、この私が櫻井理論を基にして作ったアンチノイズプロテクターシンフォギア!」
「シンフォ、ギア……」
「そ。シンフォギアを纏った人間は適合者と呼ばれ、装者から発せられる特定固有振動によってシンフォギアシステムは起動し、ノイズと戦う力が生み出されるの」
「つまりは、歌だな」
「あ、確かに私歌ってました。なんかこう、胸の中から歌詞が湧き上がって来て、それで気づいたら歌ってって……」
なんというか豪華なカラオケ装置みたいな感じだった。
「まぁ細かい理論を俺ですら理解が難しい所があるからな。歌を歌えばノイズと戦えるプロクターということを理解してくれればいい。それで君の場合だが……」
「響ちゃんの胸の破片が、昨夜の貴女の極限状態の精神に反応し起動したと思われるわ。何分前例がないことだからな私たちの方でもハッキリとしたことは言えないわ」
ただ、と櫻井さんは目を伏せ、
「……奏ちゃんの置き土産ということは、確かね」
「……!」
「つ、翼さん!?」
踵を返し翼さんが部屋から立ち去っていく。背を向けているから表情を見えなかったけれど――鬼気迫るものを確かに感じた。それの後を緒川さんが追いかけて行く。二人が消え、残った私たちに沈黙が降りる。
「あー、すまんな響君。翼と奏では幼い頃から関係が深くてな、アイツなりに思う所が多い。察してやってくれ」
「は、はい」
風鳴翼と天羽奏――ツヴァイウィング。
二年前の事件で奏さんは死に、残された翼さんは一人で歌い、戦い続けている。どんな想いかなんて、私には想像しきれない。
「さて、今話したシンフォギアに関することだけでも十分な国家機密だ。悪いがこれらの話に関しては誰にも話さないでほしい。機密云々以上に、不必要にこの話を知ってしまえば、知ってしまった人たちに危害が及ぶ可能性が高い。家族にも、友達にも、絶対に話してはならない。君が、自分の日常を大事に思うなら」
「私の、日常」
思い浮かぶのは、やっぱり未来だ。
私の陽だまり、日常の象徴。何よりも大切な温もり。
あぁうん。未来を危険に晒すことなんてできるはずがない。例えそれが未来に隠し事をすることになっても。
「解りました。言いません、絶対に」
「うむ。さて、話はもう一つ。……本当のことを言えば今からする話はもっと話しづらい。俺個人としては聞かせたくないしな。だが、君がギア装者として確認されてしまった以上黙っておくわけにはいかないだろう――仮面ライダーについてだ」
「……はい」
「君は仮面ライダーのことは?」
「私生まれるずっと前に悪の組織と戦っていたことくらいは……あとここ十年くらい前から都市伝説として聞いたことも何度か」
「結論から言えば仮面ライダーも、悪の組織も実在する。細かい話は省くが、約四十年前、仮面ライダー一号と秘密結社ショッカーから始まり、今も尚ライダーと悪の組織の戦いは続いている」
同時ホロウィンドウに新たなイメージが浮かぶ。それは世界地図だった。それも世界中の色々な所にエンブレムみたいなものが配置されている。数はざっと見て、二十ちょっと。
「これが現状世界に散らばった仮面ライダーの居場所だ。見ての通り、ライダーは世界各地で悪の組織と戦っている」
「こんな、世界中でですか?」
「あぁそうだ。敵も数が多い。奴らは何度壊滅させ、滅ぼしても、時間を掛けて集結し、復活してくる。今ライダーたちが戦っているのはこれまでの全ての悪の組織、軍団が再集結した『超絶大ショッカー』だ。奴らは世界各地に出現し、世界征服を企んでいる。その為にライダーたちは世界に散らばって戦っているのだ」
「じゃあ、映司さんは……」
仮面ライダーオーズこと火野映司。昨日確かに怪人もいたけれど、彼はノイズとも戦っていた。まさかノイズもその超絶大ショッカーに操られているということなのだろうか。
「俺はちょっと特殊な立場かな。俺が戦っていたグリードやヤミーがこのあたりに出現することが多いっていうのもあるけど、オーズの力はノイズには相性が良くてね」
「仮面ライダーならばノイズの位相差障壁など当然のように無効化するが、いかんせん数が多いからな。殲滅力とバリエーションがライダー随一のオーズには我々と協力関係にあるんだ」
「いや当たり前のように無効化とか言わないでね? 科学者に喧嘩売ってるからね仮面ライダー」
「あはは、すいません」
「謝れれてもねぇ」
「……そう言えば昨日普通に殴ってましたよね、いや私もですけど」
「俺も仮面ライダーだからねっ!」
仮面ライダーってなんだ。
「……だが、残念なことに全てのライダーが手を取り合って共に戦っているわけでもない」
次いでまた別の画像がホロウィンドウに移される。レザージャケットとスーツの二人の青年。それに禍々しいフォルムのピンクっぽいのと顔下半分が露出した青いの。
「仮面ライダーディケイドとライダーマン。かつて仮面ライダーとして人々の自由のために戦っていたが、二年前の戦いにおいて人類を裏切り、超絶大ショッカーの大幹部としてライダーたちと戦っている」
「ライダーが、裏切り……? っていうかあの、二年前の戦いってライブ会場のですか?」
「あの時戦ってたのって実は俺だけじゃなかったんだよ。世界中に超絶大ショッカーが現れてたんだ」
「最も仮面ライダーの尽力によって被害は最小限に抑えれ、政府が隠蔽したから一般に漏れてはいない情報だがな。ライブ会場のことに関しては歌手である奏の死とノイズの発生のせいで隠しきれなかったがな。……さらにはディケイドと戦い仮面ライダー一号が消息不明となっている。二年経った今でもな」
「そんな……」
仮面ライダーには憧れていない。
それはあの時から変わってないことだ。けれど、正義の味方だとは思っていたし、そんなライダーの中に裏切り者がいるなんていうのはショックを隠し切れない。さらに初代仮面ライダーが消息不明なんて。
「……あれ?」
ふと、違和感を感じる。
「……一号さんが戦い始めたのって、四十年も前のことって言ってませんでした?」
「あぁそうだ」
「え、でも、じゃあ今結構なお年寄りですよね? なのに、今でも戦ってるっておかしくないですか……?」
「……一号を初め、十四番目の仮面ライダーJまでは皆改造人間だ。彼らは年を取ることがない。今でも二十代前後の姿なんだ」
「それに仮面ライダーは――悪がある限り戦い続けるんだ」
弦十郎さんの話以上に、映司さんの言葉があまりにも衝撃だった。
悪がある限り、戦い続けるなんてことを――当たり前のように言っている。
「……っ」
フラッシュバックされるのは二年前の、あの戦い。
命を零しながら戦う戦士。
握った拳に、知らず力が籠る。
「あの! 弦十郎さん!」
「ん、ん、なんだね?」
「私にも、そのシンフォギアっていうのでノイズとか超絶大ショッカーと戦う力があるんですよねッ!?」
「あ、あぁ。実際翼はノイズや怪人たちとこの二年何度も戦っている。今日本にはオーズしか仮面ライダーがいないからな。日本中を駆け巡ってるよ」
「その力があれば、誰かの助けになるんですよねッ」
「……あぁ、そうだ」
だったら。
だったら、迷うことなんてない。
「私にも戦わせてくださいッッ」
「……それは俺から言うべきことだ。特異災害機動部二課として正式に依頼する。立花響君。君の力を、俺たちに貸してくれないだろうか」
「ハイッ!」
●
「……」
「……感じたか、映司」
「はい」
「どうかしたの? というか放っておいて大丈夫かしら。翼ちゃん追っかけってたけど響ちゃん」
「慎次が行ったから大丈夫だろう。問題は、響君自身だ」
弦十郎の言葉に首を傾げたのは藤尭だった。
「危険を承知で誰かのために戦うだなんて、良い子じゃないですか」
「果てして本当にそうだろうか。ただの少女が、いきなり力を手にし誰かの為という理由でそんな簡単に戦場にでることができるのか? 戦場を知らない? いや、彼女は二年前のあれも見ているはずだ。だったら、そんなことは言えないはずだ」
弦十郎は知っている。
二年前に起きた超絶大ショッカーと仮面ライダーの戦い。その中でもライブ会場は特に酷かったことを。
それにそういう危うさだけではなく、
「……彼女は大分君を警戒しているようだな」
「ですね、昨日から碌に目を合わせてくれませんよ」
朴念仁に見えて火野映司は意外に聡い。響の映司や仮面ライダーに対する警戒心、敵愾心のようなものを敏感に感じ取っていた。
ただ、理由が解らない。
「いずれにせよ……彼女にもまた、歪みがある」
「俺たちと、同じように」
「彼女もまた――
おのれディケイドォ!!
ディケイドとライダーマンは裏切り者。裏切り者(強調
ショッカーはこう、ちょっと響きが間抜けなほうがいいと思います(真顔
進行適当だけど、大体内容はこんなんだったはず。
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