【完結】『侵胎迷宮を抜けて』二次創作   作:サーデェンス・ロー

11 / 48
決意

「外でゴブリン達が話しているのを耳にしましたが、イレスからの状況報告等の要請はなく、代わりにローパー……触手型の多くを連れて地上に出るので警戒をするようにとの通達があったとの事でした」

「……確かですか?」

 

 竜膜を巻く事で下半身を動かせる状態としたラフィーアと被っていた泥や砂埃を払い落としたサラは、机を挟んで状況の共有と把握に努めていた。

 

「使い魔ちゃんで迷宮の偵察もしましたし、ハイドを使って村での調査も行いました。――そうでなければ前衛であるラフィーアさんを眠らせたりはしませんよ」

「…………」

 

 村の被害や亜人型が動かぬように配慮はしたものの、肝心のオーガが折衝の場に現れなければイレスは不信に思う筈であり――この場での決戦もやむを得なしとラフィーアは考えていた。

 

 しかし、イレスの側にも事情があるのかもしれないが自分達が最も弱っている瞬間と示し合せたように隙を晒した事は不審の一言に尽き、同じ考えに至っているサラの表情も曇っている。

 

「可能性は2つ。私達という存在を知っても尚、外に出る必要があるのか――それとも、私達を上層に引き込む為の罠か」

「……そんな事をせずとも、今この場で襲撃した方が楽ですし、上層に余計な被害が出る可能性もありません。……サラさんの言う通り、オーガが撃破された事を警戒して自分が圧倒的に優位になる工房内での迎撃を選んだという事も捨て切れませんが」

 

 しかし、今こうしてその最も危険な状態を脱してしまった2人からすると、イレス側の行動や沈黙は不気味の一言に尽き、自分達の進むべき方針を考えあぐねていた。

 

「――ラフィーアさん」

 

 そんな停滞、意を決したようにサラが口火を開く。

 

「……なんでしょうか?」

「話は少し逸れますが――ラフィーアさんの腰や右足の古傷の事を教えてください」

「………………貴女には関係の無い事です」

「――そうですね。ですが、ラフィーアさんは私の事を助けてくださいました」

「…………あの人でも治せなかったモノです。……気にしないでください」

「――――私がラフィーアさんの魔法の理論に疎いように、私はラフィーアさんでは想像しえない治療法を知っているかもしれません。――それでも、ですか?」

「……………」

 

 その気遣いはありがたいとラフィーアは思うものの、この傷は自分が侵した間違いの結果であり――その結果を治そうとするのであれば、経緯も話さなければならない。

 

「(…………予想が外れてくれると、いいのですが)」

 

 サラであれば静かに聞き流してくれるという予感はあれども、そうならない事を恐れたラフィーアは傷をはぐらかした上で嫌われる可能性が高い方へと舵を切り、自分の目に魔力を通す。

 

「“目”の事も詳しく知りたいと思っていますが……そちらは私の知識欲によるものですし、ラフィーアさんの強みでもありますから、隠しておきたいという思惑は判ります。ですが傷は――」

「……サラさん。……貴女は、私の事が好きですか?」

「ぇ? ――ぃ、いきなりなんでしょうか!?」

「…………応えて」

 

 そう言ってサラを見据えるラフィーアの“目”は既に魅了の魔眼として機能しており、自分を見る青い瞳を綺麗だなと思いながらも――白い少女は感情を揺らした才女の認識に触れられるのかを試し続ける。

 

「――――? っ、ラフィーアさん!」

 

 唐突なラフィーアの言動に驚いたサラは白い少女が続けた言葉を前に呆けたように彼女を眺め続けていたものの、はたと何かに気付いたように瞼をはためかせると窘(たしな)めるような声を上げる。

 

「…………この通り、同等以上の魔力を持った存在や同性には通すのは困難を極めますが、異性や魔力の乏しい者であればその尊厳を容易に貶められる“目”を、私は持っています」

「――現象としてよく判りました。でも、敵でない人間にそういった魔法を掛けるのはいけないことです」

「…………サラさんも私に魔術を掛けましたよね?」

「――あれは、その……」

「……はい。……サラさんのそれは私の“浄化”のように優しい魔術でした」

「――――?」

「……でも、この目はそんな暖かさとは無縁の、忌むべきものなのです」

 

 自分の言葉通り、同性や抵抗力を持った者に通し難いのは本当であり、亜人型から『姉御』と言われていた事から同性であろうと思われるイレスには通じないとラフィーアは踏んでいる。

 

 だが、今さっきのやり取りによってサラにはおそらく『通ってしまう』事が判ってしまったラフィーアは、外れて欲しかった予想が当たった事――自分が持って生まれてしまった魔眼の悍(おぞ)ましさに目を瞑る。

 

「…………魔眼の類の魔術は、国元では禁呪に指定されています。……だから、下の階層では有効と判っていても使いませんでした」

「――ラフィーアさん」

「……使用した事が発覚すれば、両眼を引き抜かれた後に打ち首か奴隷落ちという刑罰でしたが――使い続けてみて、よく判りました」

 

 あの人から命令されていた事もあり、隠密作戦等で『自分の事を覚えさせない』程度の術式強度で使用した事はあった。

 

 しかし、それでも尊厳や生命に関わる所にまで踏み込んだ事はなかったが――その段階を踏み越えてしまった事で、ラフィーアは自分が持っているモノの本質を理解してしまった。

 

「……当然のことだと思います。……だって、気持ちの悪い目でしょう?」

「――――」

 

 倒すべき敵には通じないが、自分の事を想ってくれる者や力の無い者は容赦なく従わせる事が出来る才能。

 

「……こんなもの、あってはならないのです」

「――――ラフィーアさん」

「…………」

 

 自らで閉じた瞼によって閉じられた暗い世界の中、ラフィーアは相手が怪物であろうともやはり使うべきでは無かったと強く思う。

 

 最初に使ってしまったあの状況で使わなければ、亜人どもが騒いだ事によって何の前準備もなくこの階層全体との全面戦闘に発展した上、高い確率でイレスという詳細の判らぬ難敵との連戦に追い込まれていたであろう事は理解出来る。

 

 だが、対オーガ戦で基幹とて組み込み、村の掌握を成功させ――ここから上への進出においても使い倒さなければ目的を達成できない事を理解している自分はこの“目”を使い続ける心算である。

 

 そして、その慣れは『この“目”を人に向ける』という禁忌を犯す事になるのだろうとラフィーアは確信していた。

 

「……私は、こんな存在です。ですから――」

 

 『使い潰す心算で扱ってくださって結構ですし、そんな者を気に掛ける必要はありません』と続けようとした言葉は――。

 

「私は、オーガやオーク、ゴブリンに毎日犯されて、喘いで……生き延びてきました」

 

 深い諦めを込めた自虐的な言葉によって塞がれ、閉じ籠っていたラフィーアはその目を開ける。

 

「……いきなり、なにを――?」

「――そんな私は、みっともないですよね」

 

 開いた視線の先。席を立ち、いつの間にか自分のすぐ傍に立っていた才女は真っ直ぐにラフィーアの事を見下ろしており、到底許せる筈のないその言葉に止まっていた白い少女の内に熱が灯る。

 

「…………怒りますよ」

「はい。――私も同じ気持ちです」

「…………ぇ?」

 

 不意を突かれたラフィーアはあっさりと掴み上げられ、彼女よりも遥かに高い熱量――静かな怒りを滲ませた青い瞳が目の前に迫る。

 

「その“目”を持った人は、自分を傷付けてまで私の心を守ろうとしてくれました」

 

 そうして、まだ魔力の通っているラフィーアの“目”を恐れる事なく、それを真っ直ぐに見据えたサラは静かながらも強い感情を灯した言葉を紡ぎ続ける。

 

「そして、その人は捨て鉢になっていた私に希望を見せ、その言葉通りに私を助けてくれました――そんな優しい人の“目”が、気持ち悪い訳が無いでしょう?」

「…………」

 

 ラフィーアがサラを助けた理由の出所はそんな綺麗な感情ではないのだが、それを言い返す事も、見つめられている目から逃げる事も失礼だと感じた白い少女は沈黙したまま別の言葉を考える。

 

「…………サラさんは、もっと理論的な方だと思っていました」

「その前に、言う事があるのでは?」

「…………謝りませんよ」

「はい。その必要はありませんし、謝っては駄目な事もあります。……けれど、ラフィーアさんの目は綺麗ですよ」

「………………サラさんも、みっともなくなんてありません。……私なら、そこまで諦めない事は出来ません」

「――――ありがとう」

 

 そうして発したラフィーアの応えは及第点だったらしく、彼女を地面に下ろしたサラはそのまま毛を逆立てた猫を宥めるように抱きしめてくる。

 

「(…………狡いなぁ、この人は)」

 

 自分が見た『夢』と同等かそれ以上の事があっても尚、変わらずに居られる事を羨ましいと思うラフィーアは自分を包む才女の事を浅く抱き返しながら次の事を考える。

 

 多分、サラは上層に向かおうとする自分の事を止める心算なのだろう。

 

 その判断はある意味正しい。だが、自分が晒され続けた『夢』の内の幾つかは、ソレを選べば負けるとラフィーアに訴えている。

 

「(……私が居た世界とサラさんの居るこの世界は違う所に在る。……そんな部外者である私がここに居る理由は、きっと――)」

 

 その決意を抱いているラフィーアは、自分の身を守るよりも自分がここに居る理由だと信じる人を守る事を改めて心に刻む。

 

「ラフィーアさん。…………これからは、私の仕事です」

 

 そんなラフィーアの内心を知る由もないサラは、白い少女が思っていた通りに『2人が安全に脱出できる道』を提示する。

 

「ラフィーアさんが残ったオークやゴブリンの監視とイレスへの警戒に努めて頂いている間に、私が脱出路を形成します。ですから、ラフィーアさんは――」

 

 その流れになる事を随分と前から目星を付けていたラフィーアは、その優しい提案を蹴る事を心苦しく思いながら事前に考えておいた応えを思い出す。

 

「……はい、私は私の作戦を継続します」

「――ラフィーアさん、貴女は……」

「……イレス側のそれなりの戦力であったオーガを各個撃破する事には成功しました。……ですが、私がイレスだったらそのままにはしておきません」

 

 ラフィーアが見た幾つもの『夢』の内の幾つか――戦場で倒れ、そのまま死ねなかった彼女達はサラが提示した様な道を辿ろうとして敗北した。

 

「……私達を脅威と考え、自分の工房で待ち受けている。……これの場合にはサラさんの言う通り此方も守勢に回るのが最善策です」

「でしたら――」

「……ですが、私が戦える数は限られているのです」

「――――?」

「……私はサラさんと違って強力な術具を扱うのに長けているだけの魔術師ですので、保有している魔石弾と対人用の術具が幾つか、それに“私の杖”が無くなれば――私はただ素早く動けるだけの小娘に成り下がってしまいます」

「それに何の――あぁ……」

「……魔物を手駒にしていると言う事は、攻勢を仕掛けて来た際には物量を投入してくる可能性が高い。……今の所は魔眼で支配下に置けている豚顔や小鬼も、イレスを前にしてその状態を維持できるかは未知数です」

 

 ラフィーアの知る『彼女(あくむ)』等の敗因は様々だが、その全ては敵情を知らなかった事に尽き――判らない事を判らないままにしておけば、それは必ず致命的な終わりになる。

 

「……ですから、二手に別れるのです。……聖都という場所に情報を伝えるサラさんと、攻勢を準備していた時にはその隙を突く事で防護を発する何か破壊しつつ攻勢を挫く私とで」

「それだと、貴女は――」

 

 その確信と自分の決意を伝えるラフィーアは、卑怯と思いつつも考えていた流れを言葉とする。

 

「…………寂しいですね」

「――何がですか」

「……私を、戦友とは思ってくれないのですね」

「――っ!?」

 

 主語のないラフィーアの言葉をどう捉えたのか最初こそ怒ったような表情を見せていたサラであったが、白い少女が尋ねた言葉に才女は驚いたまま固まってしまう。

 

「…………まぁ、信頼を削ぐ事を沢山してしまいましたので、当然かもしれませんが」

「そんな、事は……」

「……『あくまで情報を持ち帰るのが私の任務』。……初めて会った時のサラさんはそう仰っていましたよね」

「――っ」

 

 そして、この聡明な人が否定できないと判っている言葉によって、ラフィーアは流れを確定させる。

 

「……サラさんと一緒に居た方々はその目的の為に殉じ、貴女も大切なモノを失いました。……それを無意味とするのですか?」

「――ですが、ラフィーアさんはそんな命令を受けていない人ですよね? そんな人が命を掛ける理由はありませんよね?」

「……私も組する相手は違えど軍属ですので、与えられた任務を果たす事への誇りは判ります。……ですから――私は、私ならば出来ない事を乗り越えてまでソレを成そうとするサラさんがその役目を果たせるように協力したい」

 

 他にも幾つか思っている事はあるが、この想いに嘘はない。

 

「――死にに行く訳じゃ、無いのですね?」

「……そんな人が居るものですか。…………私は遅れますが、脱出した後なら会えますよ」

 

 これにも嘘はない。例え自分がこの人を助ける為に迷い込んだ夢なのだとしても――好き好んで死にたいなんて思う筈もない。

 

「――――判りました。どうしても行かれると言うのであれば、私が知りうる限りの情報をお伝えします」

 

 そんな本心と隠し事とが入り混じったラフィーアの言葉を崩す術を見つけられなかったサラは、長い沈黙の後に諦めたように言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 その後、体力面での復調に遅れが出ている事を自覚していたラフィーアは、思いの外長く話し込んでしまった事も重なった事で今日の出立を諦め、身体を休めていた。

 

 そんな中、サラから預かった道具の確認とオーガ戦で消耗した装備の修繕を進めていたラフィーアは、部屋の中央で調合を続けている才女へと視線を向ける。

 

「……そちら、よく触っていらっしゃいますね」

「――? あぁ、このリボンですか。……大切な思い出の品でして」

 

 つい先程までは薬の調合を行っていたサラであったが、混ぜ合わせた素材が馴染むのを待っていた彼女の手は自身の髪を飾る赤いリボンへと流れており、ラフィーアの言葉で初めてそれに気付いた才女はリボンに触れていた左手を机に戻す。

 

「……“浄化”を掛けておきましょうか?」

 

 その思い入れの強さを目にしたラフィーアは、唐突にそんな言葉を洩らす。

 

「い、いきなりなんでしょうか!?」

「…………嫌な事を思い出させてしまうかと思いますが、きっと踏みにじられた事があると考えました」

「――――」

 

 思わずこぼれた言葉だった事もあってか意図を読めずに驚くサラに対し、ラフィーアが視線を外に向けながら言葉を続けた事でその意図を察した才女は静かに目を伏せる。

 

「……ごめんなさい。……でも、想い出の品なら、綺麗にしておきたい」

「――――気遣いはありがたいと思いますが、結構です。……それも含めて私ですから」

「…………出過ぎた真似をしました」

「――ラフィーアさんは自責の念が強すぎる所がありますね。善意であるならば謝らず、受け入れるだけに留めるべきです」

「……はい」

「素直なのは大変よろしいです。――所で、ラフィーアさんは左側を留め直さないのですか?」

「……この術具を創るだけの時間も材料もありませんので」

 

 使ってしまった左側の布飾り(リボン)が留めていた髪を鬱陶しいと思うものの、同じ物を創るのには相応の時間が掛かる為、明日の出立の際には後ろの方に流して纏めてしまおうとラフィーアは考えていた。

 

「え~と……リボンの類は下の階層で拾ってますよね? それで留めないのかな、と」

「…………全部が全部何らかの術式が編み込まれているので、付けていると落ち着きません」

「――ふむ。髪飾りは女魔導師の最後の武器であると仰っていましたが、ラフィーアさんはあの大魔法の触媒として使っていましたよね? ……そうなると――」

「……何を考えついたのかは予想が付きますが、人の髪飾りの仕様を言いふらしたら怒りますよ」

 

 国元ではお姉様のように極めて短時間とはいえ触れたもの全てを無に帰す闇を発生させたり、あの人のように竜に全力で蹴られても微動だにしない防壁を発生させたりする術具を髪に纏わせるのが主流である。

 

 しかし、ラフィーアはその主流に反して魔力を貯蔵する消耗品としての術具を留めていた。

 

「では、答えを教えてくださいますか?」

「…………今の私は筋力も魔力量も少ないので、最後の武器を使うような状況に陥った時点で詰みです。……なので、そうならないようにする為の術具を選んだだけですよ」

「魔力量……そういえば、マジックウォーターを初めて見た時もポーションの時のように驚かれてましたね」

「…………」

「たしか、『……きっと麻薬の類ですから使わない方がいいですよ』でしたか――咄嗟の時に相手を思い遣れるラフィーアさんは、やはり優しい人ですよ?」

「……今なら、負けませんよ」

 

 つい先程渡された通信符――なんと無線式の通信術具――の時にも驚きを隠せずに醜態を晒してしまったが、ラフィーアも好き好んでサラを楽しませている訳ではない。

 

「言葉で言われた事に力で抗ずるのは大人のする事ではありませんよ?」

「…………」

 

 布鎧こそ完全に着込んでいないが、術式を走らせる対象(ふく)を着ている今ならば物理的に驚かせる事も可能。

 

 そんな年相応の子供じみた考えを抱いていたラフィーアであったが、その悪戯心はあっさりと看破され、指摘された事でその稚拙さを自覚した白い少女は『何もなかった』体を装って装備の点検に戻る。

 

「そもそもですね、マジックウォーターというのは由緒正しい魔法薬でして、調合の成果なのですよ? ――もちろん、興奮剤の類のような副作用がある薬品もありますが、そんな危険物を渡す訳ないじゃないですか」

「…………逆に興奮剤の類と言われる薬品が気になりました。……マジックウォーターという副作用のない薬があるのに、その劣化品のような薬品が商品として出回っているのですか?」

「それはですね――」

 

 それから続く言葉はなんの蟠(わだかま)りもなく語り合っていた頃のようなやりとりであり、2人の魔女は開いていた隙間を埋めるように会話を重ね――最後の夜は更けていった。

 




筆者が思う、ハソユア様の作品でもっとも『幸い』なのは誰かと問われれば、世界の卵のサブヒロインと卵の鍵のメインヒロインとなります。
(どうしてそうなのかは、各良作内にて自力で解決をお願い致します)
満たされ過ぎてお腹いっぱい。
容姿も直撃で幸せいっぱい。



別記:
「突き放す」「方針開示」「決意」
の3本は後半戦建造に辺り大改編を行った経緯があります。

原作の見直し4週目あたりでサラさんの計画が意外と実現可能だった事を把握した事から「突き放す」のような流れとなり、下記の流れは無くなりました。
「決意」はそんな「突き放す」あたりで使用予定だったもので構築されています。
(採用されていれば対オーガ戦で夢ラフィーの上(下は武装を収容している事から重装のまま)はこんな格好で戦う羽目に……)


「その前に、言う事があるのでは?」
「…………謝りませんよ」
「はい。その必要はありませんし、謝っては駄目な事もあります。……けれど、ラフィーアさんの目は綺麗ですよ」
「………………サラさんも、みっともなくなんてありません。……私なら、そこまで諦めない事は出来ません」
「――――ありがとう」

 そうして発したラフィーアの応えは及第点だったらしく、彼女を地面に下ろしたサラはそんな言葉と同時に抱きしめてくれる。

「(…………狡いなぁ、この人は)」

 自分が見た悪夢と同等かそれ以上の事があっても尚変わらずに居られる事を羨ましいと思うラフィーアは、自分を包む才女の事を浅く抱き返しながら次の事を考える。

「(……それと――穏便に済ませる案は無しですね)」

 その強さに羨望し、そこから抱いた感情を害意へと変えたラフィーアは、考えていた作戦の1つ――オーガを魅了する事で傀儡とし、その威を利用する事によって村を制圧しようと考えていた策を闇へと葬る。

『この暖かに傷を付けた奴は、すぐに必ず殺す』

 亜人は1匹残らず殲滅するのが世の為であり、どの案でも必ず最後には皆殺しにする心算であった白い少女は、まずその頭が最も絶望する方策を採る事を心に決めた




 そうしてサラの腕の中で伝えるべき作戦の仕上げを行っていたラフィーアだったが――今までとは異なる視線に気が付いた彼女はその青い目を見上げる。

「……えっと――何でしょうか?」
「見た事も触った事もない肌着だな、と」
「…………ふぇ?」

 急に走った種類の異なる悪寒に、ラフィーアは思わず“風舞”まで使ってサラから距離を取り、その視線から逃れるように身体を抱く。

「下着は――まぁ、それもやけに高品質なのですが……そちらは本当によく判らなくて気になりまして」
「…………」

 “浄化”を掛けた後で結界の中に居るのに瘴気に当てられた のだろうかと疑ったラフィーアであったが、白い少女が身に纏っている肌着を観察するサラの目は至極真面――。

 否、自分の事を見据えるその青い瞳は魔術師を魔術師たらしめている探求心に取り付かれているように見え、闇魔術の応用なのかぬるりと間合いを詰めてきた才女は唐突な変化に固まっているラフィーアの肩口を摘み上げる。

「ちゃんと触っている感触はあるのに、なんかとても透けてますし――? もしかして、魔力もすごく通せる?」
「…………あ、あの人――私の身柄を預かっている人から『私と同じのあげるから使いなさい』と押し付けられて……嫌でしたけど、術式が通しやすい上に着心地も良かったので……」
「出自は不明、と――遺物の類なのかもしれませんね。…………ですが」
「…………な、なんでしょうか?」
「小柄なラフィーアさんがそういった扇情的なモノを着ていると、イケナイの事をしている感がすごいな~と」
「~~~~っ! そう言うサラさんは何もしてなくても男性が寄って来そうな身体じゃないですか!」
「――――。…………そうだといいのですが」

 ラフィーアがサラに向けた言葉はふやけた雰囲気に乗せられてのものだったが、それを笑い飛ばせないようにした状況に強い憤りを覚えた白い少女は、殺す事に決めているオーガへの殺意を更に強める。

 しかし、その冷め覚めとした感情の中、『……使えるかもしれない』と自分一人では考え付かなかったであろう戦術がラフィーア中に芽生え、有用と思われるソレを作戦へと組み込み始める。







方向性の指針となりますので、評価、感想、お気に入り登録など、お待ちしております。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。