【完結】『侵胎迷宮を抜けて』二次創作   作:サーデェンス・ロー

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鬼の娘を語る

 ――今の私はあの人。

 

 ――思い出せ。戦場において、それに見合った性格を被った時のあの人の言動を。

 

「…………そこの鬼、聞こえているか」

 

 道中で“隠行”の魔術が途切れるという不測の事態に陥る事もなく、サラの尊厳を汚した元凶へと辿り着いたラフィーアはその怪物へと声を掛ける。

 

「ッ! ナンだぁ、貴様――いッタイどコカら――」

 

 話には聞いていた巨躯はラフィーアの身長の倍近くあり、筋肉と脂肪を覆い隠す緑色の皮膚はだらしなさを感じさせる所もあるが、豚頭や小鬼よりも遥かに頑強である事が一目で判る怪物。

 

 それがオーガであり――亜人らしく身嗜みとも無縁な体臭も酷く、その臭いに思わず涙が滲みそうになるのを堪えながらラフィーアは言葉を続ける。

 

「……私は吸魔鬼ゼフィリア・T・ジェフスティアが一子、ラフィーア・フィフトメル。……1人の鬼女として、貴様に決闘を挑みたい」

「――ハ? 貴様ガ鬼? タダの人間がナニをイってやがる」

「…………この世界の鬼は図体がデカいだけで目も知能も劣っているようにみえる。……まったく、こんな愚図にあの娘が良いようにされていたと思うと虫唾が走るな」

「あの娘? 迷宮内ノ中に居ル女とイうと『あの女』の事カ? ――テメぇ、ナニをしやガった?」

「……私が迷い込んだ迷宮で偶然見つけたのを捕らえ、私の物にしただけだが?」

「――――ふザケるなよ?」

 

 ラフィーアの見下した言動にあっさりと激昂したオーガを前に、演技するまでもなく冷めていた目元を鋭くした白い少女は怪物の感情を自分の方へと引き込んでいく。

 

 ちなみに、魅了の魔眼による認識の掌握はあっさりと成功しており、ラフィーアは今の時点でオーガの言動の多くを自由に出来る状態にある。

 

「……今は、私の物だ。……このまま連れ去っても良かったのだが、貴様ら下等な鬼に手荒く扱われた事を気にしているようでな――立ち去る前に礼をしておこうと態々出向いていてやった。……感謝するがよい」

「――――」

 

 その事実に気付きもせずに言葉を重ねているオーガを無様に思いながらも、ラフィーアは作戦を再確認する。

 

「(……このままここで殺しては自害させるのと大差がありません。……なんとか外まで誘導して――)」

 

 これまでの演技――高圧的な時のあの人の真似をするのは自分には荷が勝ち過ぎて震えそうになるが、全ての準備が万全であればあるほど村の掌握の効率が上がる事を理解しているラフィーアは自分の感情を殺し続ける。

 

「……この場で技と術を交えても良いが、ここは少々狭い。――余興だ、周囲の有象無象にも己が付いた馬鹿が倒れる所を見せてやるとするか」

 

 尊大な口調のまま背中を見せたラフィーアに襲い掛かる事もなく、オーガはその背を追って付いてくる。

 

「(……ここからが踏ん張り所です)」

 

 現在の所は目論見通りに進んでいるが、失敗すれば何度も見ている悪夢が現実となる事は容易に想像できる。

 

 その緊張に幾分か指を震わせながらも、ラフィーアは肩に掛けている外衣に『風を起こす』という単純すぎて名前もない術式を走らせる。

 

「……退くがよい」

 

 そのまま外へと踏み出したラフィーアは、堂々とした足取りに魅了の魔眼を加えた『場の流れ』によってオーガの家の前に控えていた豚顔を退かせ、その往来の中央でオーガが出て来るのを待つ。

 

 その余りにも自然な白い少女の立ち振る舞いと魔眼による威圧、そして後に続いたオーガが苛立ちを隠さぬまま少女と対峙した事で周囲の亜人型は動けないでいるが、一度『空気』という名の均衡が崩れれば雪崩のように殺到してくるのは想像に難くない。

 

「……では、始めるか」

 

 その差し迫った危機から脱するべく、先程術式を走らせた外衣を振り回すように脱ぎ捨てたラフィーアはそれによって生じた風によってサラから貰っていた薬(デミパラライズ)をばら撒き、口上と魅了の魔眼を振り回すだけの時間を得る。

 

「……私の名はラフィーア・フィフトメル。貴様らを纏めているこの鬼を屠り、こやつの持つ全てを得ようとしている鬼女である」

 

 その目論み通り、亜人達からの視線と認識の集中度合いは初めてこの階層に来た時に仕掛けた2体からの比ではなく、魅了の魔眼は周囲に居る亜人型への刷り込みを順当に進め始める。

 

「フん、適当ニ吠えてイルがいいサ」

「(…………人食い鬼(オーガ)の名の通り、会話など高尚な事をせずにその剛腕を振るえばいいものを)」

 

 魅了の魔眼によって認識の大半をラフィーアの演出に都合が良いものへと改変されているオーガを見遣る彼女の視線は冷めきっているものの、彼女としても余裕があるのは今だけである。

 

「(……とはいえ、いざ戦闘となれば手加減を指示している余裕はありませんし、周囲の亜人型に違和感を見破られれば掌握が不可能となります)」

 

 ラフィーアがオーガの暗殺や懐柔を選ばなかったのは彼女の思惑によるものもあるが、真っ向勝負での撃破を選んだのはその経緯を使って亜人型の全てを掌握する為であり、ここから先の戦闘で自害やあからさまな手加減を取らせる事は出来ない。

 

「…………さて。では――始めようか?」

 

 最後の口上と共にオーガの家の前に転がっていた掘削工具(てっかい)を掴んだラフィーアは、ソレに“干渉”と“風舞”の魔術を走らせる事で常人では持ち上げる事も不可能なそれを振り上げ、肩に掛ける。

 

「スグに終わらせてヤる」

 

 ソレに応じたオーガの突進によって、戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 そうして始まったラフィーアとオーガとの戦闘は、ある意味一方的な展開となった。

 

「…………っ」

「ッは!」

 

 オーガの外皮という守りを突破できず、その反動によって自分だけが傷付いていくラフィーア。

 

 速度という点において自分よりも遥かに勝るラフィーアに攻撃を当てられず、逃げる相手を捉えられないオーガ。

 

 見掛けだけを取れば拮抗しているように見える戦いが始まってからそう短くない時間が経過しており、周囲に集っている亜人型の熱気は右肩上がりで高まり続けていた。

 

「…………」

 

 その最中、魔眼を使い続けた影響か、はたまた敷居の広い瘴気の毒気が成せる業か――ラフィーアは自分が演じているあの人になったらかのような高揚感を感じていた。

 

「……遅いわね」

「早イだけの小娘ガァ!」

 

 オーガの振るう大ナタを大きく間合いを取る事で避け――動く度に集まる亜人型の視線を肌で感じつつ、ラフィーアは手に持つ鉄塊を横に構えながら突撃。

 

「……せぃ!」

 

 その最中に回転を混ぜたラフィーアは、空ぶった大ナタを引き抜くのに手間取っているオーガに向けて遠心力と“構造強化”を追加した鉄塊を振り抜く。

 

「……っ」

 

 しかし、人間はもとより豚頭程度なら身体に大穴を開けられそうなその一撃を以てしてもオーガの肌を抜く事は出来ず、衝突の余波がラフィーアの手を痛める事実だけを残す。

 

「っハ、非力だナぁ!」

 

 言葉と共に下から振り上げられたオーガの大鉈を、再びに距離を取る事で凌いだラフィーアは次の攻撃の起点となる一石を投じながら横に飛び、オーガの側面に回るべく跳び始める。

 

 経路は村全体を迂回する形を取る心算であり、途中で遭遇する亜人型にはきちんと魔眼を振って自分に視線を集中させているラフィーアは、ソレらの見たくない部分が盛大におったっているのを視界に入れてしまう。

 

「(……サラさんはあんなのと――――馬鹿ですか私は、今は場の形成と奴に集中しませんと)」

 

 場違いな煩悩が脳裏を掠める中、先ほど投じておいた火の魔石弾が爆発し、オーガの意識がそちらに向くのと回り込んだラフィーアが路地の先に居るオーガを捉えたのはほぼ同時であり――。

 

「……っ!」

 

 オーガの行き足の先に向け、ラフィーアは布鎧の内側に仕込んでいた緑色の短刀を投擲する。

 

 昨日も使ったソレには持っていた魔導鋼線の先端全てを括り付けており、短刀がオーガの眼前に突き刺さったのを確認したラフィーアはもう一方の先端全てを括り付けてある方の短刀を手にしながら間合いを詰める。

 

「チョろチョろと、面倒なぁ!」

 

 ラフィーアが回り込んでいた事に気付いて喚くオーガの背後を通り、右回りでその巨躯を半周したラフィーアは掴んでいた緑色の短刀をその巨躯の右側へと投擲する。

 

「テメっ!」

 

 オーガの眼全に自ら躍り出る事になったラフィーアに向け、今日で何度目になるかも判らぬ大ナタの一撃が振り下ろされるも――。

 

「……卑怯は、主ら亜人どもの専売特許であろうに」

 

 それを強引な離脱でやり過ごした彼女は鉄塊を振り上げ、足元に巻き付いた魔導鋼線に足を取られて前のめりに倒れたオーガの後首に各種魔術を加えた一撃を振り落とす。

 

「……っぐ!」

「ッは、非力ナ貴様なんぞノ攻撃ガ――クそ、ナンだこの糸!?」

 

 人間であれば防御のしようのない急所を狙った一撃にも効果はなく、反動に痺れる手を抑えながら周囲に魔眼を振れば、ラフィーアの劣勢を見た周囲の亜人型の見たくない場所が大きくなった気がする。

 

「(…………もっと注意を集め、意識を揺らしておかないと――)」

 

 先程にも場違いな思考が入った事からも瘴気の侵食が進んでいる事はラフィーアにも自覚があり、短期決戦を仕掛けたいと思う心はあるが――まだ場の掌握が完全には出来ていない。

 

 そんな理由と瘴気を吸い込み続けた事による熱を言い訳として、ラフィーアは不得手な格闘戦を続ける事でオーガを含めた亜人型の視線を誘う事を続けようとするものの――。

 

「(……いえ、ダメですね。……さっきのような思考の変質が続けて始まっていると考えると、もう猶予はありません)」

 

 しかし、次の流れが通じなければ乙作戦に変更しなければならない事に思い至ったラフィーアは村の掌握をここまでとし、一気に距離を取ってから使っていた鉄塊を放り捨てる。

 

「…………愚鈍な鬼にしては見事。……ならば、私の魔弾で始末してやるとしよう」

 

 そうして負い紐で背中に引っ掛けたままにしていた魔石銃を構えたラフィーアは、自分で言ってて恥ずかしい口上と共に昨夜作っておいた風の魔石弾を叩き込むが――。

 

「……」

「ッは、コんなモノかァ?」

 

 連邦が使う銃弾並みの威力がある筈のそれ等はオーガの強靭な外皮に苦も無く止められてしまう。

 

 火の魔石弾程ではないが、それでも国元での主力の一翼を担う攻撃が効果を成さない事に流石に驚いたものの、まだまだ想定内であり――オーガにも見えるように弾倉を交換したラフィーアは、主力である火の魔石弾を投射する。

 

 単純な貫通力は無くとも延焼による広域な火傷は生物にとっては致命傷である筈だが――

 

「効カねぇナァ」

「……っ!?」

 

 上半身全体に着弾し、破裂する事で発生した火炎を腕で振り払うだけで鎮火させたオーガは、そのまま“構造強化”の魔術を通しておいた魔導鋼線を強引に引き千切る事で拘束から抜け出すと静かに立ち上がる。

 

「…………なんと」

 

 これもまだ想定の範囲内ではあるものの、装甲を持たない相手に火の魔石弾が通用しなかった事には流石に驚きを隠しきれず、ラフィーアの口から思わず声が洩れる。

 

「――随分ト手間取ラせてクれたナァ」

 

 そんな彼女の声にオーガは余裕を見せ、『半分ほどは本気の』焦ったような表情を見せながら更に距離を取ったラフィーアを見据えた怪物は、種が違っても判る程にいやらしい笑みを浮かべる。

 

「コレで終わリナら、後ハ捕まエルだけだ。――瘴気ハもう十分溜まっテるだろう?」

 

 そう言ってオーガは疾走を始め、その後に訪れる自分(ラフィーア)を使った狂宴を夢想したらしい亜人型の熱気を前にした白い少女は、周囲には判らぬよう薄っすらと笑みを浮かべる。

 

「…………」

 

 そのまま自分の髪を纏める左側のリボンを片方引き抜いたラフィーアは、手に持ったそれを魔石銃から半開放させた弾倉に取り込ませる。

 

 自らの勝利を確信しているオーガは、そんなラフィーアの特異な行動にもあまり警戒を示さない。

 

 否。わざわざ効果の薄い格闘戦を仕掛け、風と火の魔石弾という通用しない可能性が高いものを挟んだのは、油断を誘う事で撃破と村の掌握をしやすくする為の準備立であり――。

 

「……我は咎人。……なれど、正しい光を知る者なり」

 

 ラフィーアが魔術的にはなんの意味もない言葉によって集中を高め、自分だけの魔術を組み始めたのに呼応するように、村の端に居るサラが魔法(まじゅつ)を編み始めたのを魔力の流れが教えてくれた。

 

「(…………サラさん、ありがとう)」

 

 あんな一方的な命令のような会話を聞き入れてくれた才女に感謝しながら、ラフィーアは逸らしてしまった意識を正面に戻す。

 

 突進してくるオーガの距離はかなり近く、既に大鉈を振り上げている。

 

 しかし、仕込みが充分に効いているのか銃口を向けられているというのに回避は元より防御する素振りも見せていない。

 

「……“御(ON)”」

 

 その慢心に静かな笑みを洩らしたラフィーアは引き金と共に言葉を紡ぎ――解き放たれた“炎息(ドラゴンブレス)”の魔術はオーガを容易く貫き、頑強な肉塊を穿ってもなお余りある光の奔流はサラのシェイドによって吸収・拡散され村への被害を目立たないレベルに留められる。

 

「…………胸を穿たれて尚、まだ動けますか」

「ガ、あァぁ!」

 

 “炎息”は幾重もの鋼鉄製の装甲で守られた連邦の戦車を容易く貫通し、竜を相手取ったとしても暫くは動けなくさせるほどの魔術である。

 

 しかし、驚嘆すべき事に胸部に小さくない穴の開いたオーガはまだ立っていた。

 

 否。そんな状態動き、でも振り下ろされた大ナタを、今までで最も簡単に躱したラフィーアはその伸びきったオーガの腕に足を掛け、弾倉を交換しながら“炎息”が撃ち抜いた胸部へと駆け登る。

 

「……ですが――その外皮の中身まで硬い筈が、ありませんよね?」

 

 そんな確信と共にオーガに開いた風穴へと魔石銃の先端を突き込んだラフィーアは銃口を捩じりながら引き金を引く。

 

「…………っ」

 

 そうして中から燃え始めたオーガであったが、それでもなお近づいた獲物(ラフィーア)に向かって手を伸ばす様は魔物の意地を感じさせる執念であり、その迫る掌は白い少女の背中を泡立たせる。

 

 しかし、捕まったら終わりである事を重々承知している彼女はソレに立ち竦む事もなく、踏んでいるオーガの腕を蹴って跳び退る。

 

「……あとは、仕上げですね」

 

 膝立ちのまま燃えているオーガに魅了の魔眼を向けたラフィーアは『そのまま動くな』という命令を発し、その巨体の首に掛けられている首輪を“構造強化”の逆回しで劣化させた後に引きちぎり、“構造強化”を掛け直す事で補強した彼女はそれを自分の首に巻く。

 

「…………っ」

 

 オーガが身に付けていた装身具という事もあり、染みついた臭いに鼻が曲がりそうになるが――経験と状況から察するにこれは亜人型の纏め役としての威を示す舞台装置であり、全ての準備を整えたラフィーアは『ついで』を果たす為に“風舞”を掛け直す。

 

「――っ? ラフィーアさん?」

 

 そうして跳んだ先に居るのは村の端に立つ女性――押し付けたに等しい役目を果たした事でハイドの魔法(まじゅつ)が効力を失い、自身の尊厳を汚された場所の只中で姿を晒しているサラの元に着地したラフィーアはすぐさま行動を起こす。

 

「……予想以上に上手く行きましたので、予定外の事をします」

 

 その手始めとして、驚いて動けないサラの膝裏を軽く蹴る事でその姿勢を崩したラフィーアは倒れそうになる才女の事を自分の身体全体を使って支え――。

 

「……跳びますよ」

 

 負荷に悲鳴をあげる自分の四肢を無視して“風舞”を掛け直したラフィーアは、サラを貶めた元凶であるオーガの元へと跳び戻る。

 

「…………っ」

 

 しかし、様々な無理が祟っていたラフィーアは跳んだ先での衝撃を逃がしきれず、着地と同時に抱えていたサラを取り落としてしまったものの――地面に足を付けた才女は、感情という色が抜け落ちた青い瞳で瀕死の巨躯を捉える。

 

「…………物事には、区切りが必要です。……相手が人間なら躊躇もしますが――怪物であるならば復讐は果たしておいた方がいいです」

「――――」

 

 自身の尊厳を汚し尽くした亜人型の只中に放り込まれた恐怖、ラフィーアの唐突な行動への憤り等がその青い瞳一瞬浮かんだものの――ラフィーアが発した言葉によってその意図を理解したサラの震える指は、まだ意識のあるオーガの顔へと向けられる。

 

 そうして、少なくない沈黙が流れた後――。

 

「――――――シェイド」

 

 その静かな言葉と共に生まれ影により、もともと虫の息だったオーガは顔を溶かされて事で息絶える。

 

「(…………こんな時でも、この人は泣かないのですね)」

 

 思う事は無数にある筈だが、そんな中でも骸の側で唯々静かに佇むサラの事を眺める事しか出来ないラフィーアが目を瞑ると――。

 

「――っ!?」

 

 小鬼の内の1体が立ち竦んでいるサラの腕を掴み、自分達の輪の中に引き込もうとする。

 

「……っ、ざけんな!」

 

 右手は動かない、両足の調子もおかしくなっているが、それでも“風舞”で自身を飛ばしたラフィーアは小鬼とサラとの間に割って入り、右足に巻いている竜膜に“干渉”を掛ける事で自身よりも小柄な怪物を蹴り飛ばし――。

 

「ナ――ギゃァ!」

 

 才女から離れたソレに向け、白い少女は魔石銃を撃ち込む。

 

 敢えて腹から下を狙った事もあり、サラを亜人型の輪の中へと引き込もうとした小鬼は火達磨になりながらジタバタと地面を転がり、やがて動かなくなる。

 

「…………そこからそこまでは連座。……その場で自害なさい」

 

 その終わりを見届ける事なく、ラフィーアはソレが居た辺りに視線を振り――彼女と目の合った亜人型はビクリと一度だけ震えると虚ろな表情のまま武器を取り出し、そのままソレを自らの喉もとから上へと突き上げ、絶命する。

 

 その尋常ならざる状況に凍り付いた空気の中、魔力を灯した緑色の瞳で周囲を見渡したラフィーアは静かに口を開く。

 

「……こうなりたくなくば、私達には手を出すな。――イレスとかいう輩には私から話を付ける故、そいつとは干渉せずに生活を続けよ」

 

 そうしてオーガとの戦いの最中から集めていた感情の揺らぎを使い、この場に居る多くの亜人型の認識を奪い尽くしたラフィーアは、自分を見下ろした状態のまま固まっているサラへと身を寄せ――。

 

「……では、失礼する」

 

 “隠行”の魔術を発現させる事で自分とサラの姿を亜人型の目からかき消したラフィーアは、固まっている才女の肩を押してこの場からの退避を計る。

 

「…………陣地はどちらに?」

「――柵に囲まれた家に……っ、熱い? ラフィーアさん、貴女、何が――」

「…………」

 

 予想以上に限界が近い――否、予定外の思い付きを実行する為に無理をし過ぎたと今更ながらに自嘲したラフィーアは瘴気と酷使した身体が発する熱に苛まれながら歩き続ける。

 

「…………ぁ、まず――」

 

 しかし、サラの言った陣地らしき家が見えてきた所で一瞬意識が飛び――魔力が残っていた為に右足は持ち直せたが、反応の遅れた左足から崩れるように倒れる。

 

「――っ!? ハイド!」

 

 倒れた衝撃と無理の祟った熱に混濁する意識の中、「……結局、助けられてしまいましたね」と自分の不甲斐なさを呪ったラフィーアは、静かにその瞼を閉じた。

 




原作主人公より夢ラフィーの方が強い気がする?
ははは、何を御冗談を。
文字では表しにくいですが――。
夢ラフィー → 魔物
  :射程と火力に勝り、機動力も高いラフィーアは単純な膂力しか持たない魔物に強い
魔物 →= ミーナさん
  :膂力と数、瘴気の悪辣さを存分に活かせる魔物はミーナさんに強いor拮抗できる
ミーナさん → 夢ラフィー
  :某障壁で攻撃を阻めるミーナさんは夢ラの間合いを崩し、一刀の下に斬り殺せる。
まぁ、夢ラフィーもアサシン張りに即死兵装を隠し持っているのでミーナさん言えども油断は出来ませんが。




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