「天魔王っ! どうしてテメェみてぇな大物が此処に居やがる!」
「いや、普通にギャンブルしに来て大勝ちしたから帰るところじゃが? カジノに奴隷を買いに来んじゃろうに、天竜人じゃあるまいし」
儂の姿を見るなり構える血気盛んな海兵、実力からして大佐辺りかの?
実力的にはもう少し上じゃが、若さと血気盛んさ上との折り合いが悪くて出世を積極的に目指さんなら地位は上がらんタイプと見た。
ほほう、名前は……。
「スモーカー君、歩きタバコはどうかと思うぞ? 臭いが生理的に嫌いな人も居るんじゃし、肺が弱かったり妊婦には特に悪影響じゃろうて」
儂の言葉に苛立ったスモーカー君の歯がぶつかり合って音を立てる。
咥えていた葉巻は儂の手の中、代わりに変な物でも咥えさせるのも面白いが、仕事の邪魔になるのもな。
「……俺の名前を知ってやがるのか」
「今知った。さて、儂はそろそろ行くから無駄な事をしとらんと職務に戻るんじゃな。君の給料の元となっとる天上金の支払いの為に飢餓や戦争が起きる加盟国だって存在すると知らんのか」
「それが今此処でテメェを見逃す理由になるとでも思ってやがるのかっ!」
いや、なるじゃろ。
儂を捕まえたいならガープとセンゴクのコンビか大将全員に覇王色で気絶せん海兵を大勢連れて来るべきじゃろうに、今目の前で儂に向かって戦闘の意思を見せるスモーカー君とて分かっているじゃろうに見逃せんのは誇りや使命感や正義感じゃろうな。
「若くて青いの、君。そんな君にプレゼントをしよう。旅先で知った汚職海兵のリストじゃ。信じるかどうかは君次第じゃがな」
では、さらば。
儂はセンゴクにでも送りつけて悪戯しようと思っていたリストをスモーカー君に向かって投げ、一瞬それに意識を向けた隙に目の前から消え去る。
結果、咄嗟にリストを受け取ったスモーカー君はリスト片手に震えるしかない訳で、しかも内容は重要部分が普通は読めない文字で、下に一文毎の翻訳がバラバラに書いとるから少しずつ照らし合わせる必要さえあった。
「ふざけやがって。……何だ? 最後に顔のイラストと一緒に何か書いて……!?」
尚、最後にデフォルメされた儂の顔と一緒にワンポイントアドバイス。
『古代文字じゃからリスト原本は上に知られんようにな。じゃないと賞金首かCPのターゲットにされるぞ』
見聞色で見た彼の驚愕の顔はそこそこ笑えたな、うん。
にしても、おでんに習っておいて良かった、古代文字。
どうせならワンピースの正体やイムについても書いておくべきじゃったか?
「一応リストについて調べはするが……麦わらも天魔王も絶対に俺が捕まえてやる!」
因みに流石に気にしたのか店内ではタバコの火を消してるスモーカー君じゃった。
「ほほう、スモーカー君がな。無理じゃろ、普通に考えて。実際の所はどうなんじゃ? 海賊王」
「黙れ、爺」
あれから数日、よく考えたら旧知の間柄じゃし、中途半端にモヤモヤする情報を教えるのも悪いと思った儂はクロコダイルが囚われている牢屋まで行ったんじゃが、落ちていた新聞の記事で捕縛までのあらましを知って捏造じゃと見抜く。
いやいや、彼に倒される程は鈍っておらんじゃろ。
あと、何か部下と一緒に仮装しとるのは何で?
閉じ込めてる施設の職員も仮装しとるし、儂だけ何時もの服装で浮いた気分じゃ。
「何じゃ。その様子じゃと王家の墓に設置されたポーネグリフの内容にガッカリしたか」
「黙れと言っているのが聞こえねぇか、爺」
「そりゃプルトンが隠された和の国は侍が大勢居る上に今はカイドウの縄張りじゃ。衰えたお主では……うん?」
何か苦虫噛み潰した顔じゃが、何か予想外の裏切りにでも合ったって感じじゃな。
「ニコ・ロビン。とんだ食わせものだったな」
成る程、オハラの学者に騙されたのか。
何か昔から他人を信用しないって言っている割には言葉を鵜呑みにするからの、この頭トンタッタ族。
「因みに他の古代兵器は世界政府が秘蔵しとるぞ」
「なっ!?」
さて、驚いた顔も見たし職員に気付かれる前に出ていくとしようかの。
「空島に行きたい? おいおい、行く方法を聞いて俺達に教えたのはベラミーだろ。全員生きるか死ぬかってルートか殆ど死ぬってルートしかないって無理だろ」
「空島の実在には驚いたし黄金郷は魅力的だけど、海賊が夢を見る時代は終わったんだろう? 危険を冒してまで行く所じゃないだろうに」
「それにあの人が天魔王嫌いなのは知ってるでしょ? 話題に出しただけでも怒るのに、連れて行かれた場所に夢を見たなんて知られたら殺されるわよ」
ハイエナのベラミーは他人が手に入れた宝を奪うのを好むルーキー海賊であり、天夜叉ドンキホーテ・ドフラミンゴが口にした新時代の海賊にならんとして、多くの海賊が馳せた夢を否定していた彼であったが、空島への到達はその心に火を着けるのに十分であった。
もう一度、今度は抱き抱えられての到達などではなく真っ当な方法での到達を、そして子供の頃に信じて夢を見た伝説の数々を追い求めてみたい、そんな願いを仲間に話したベラミーであったが、返って来たのは冷淡な夢を否定する反応、少し前まで彼が夢を追う海賊に共に向けていた否定の言葉であった。
それでも一度着いた火は消えはしない。
憧れた相手であるドフラミンゴからの制裁すら覚悟した彼は仲間を巻き込まない為にと一人での無謀な旅をしていた。
一切の常識が通用しないグランドラインで優れた船も航海術も突出した力も持たないベラミーが一人旅を行えるのかどうか、その問いに答えるのなら、否。
唯の自殺行為であり、ドフラミンゴの怒りを買うよりも前に嵐に巻き込まれ能力者である彼は海の藻屑へと成り果てる。
その
「おい、此奴は記事で見た……」
筈だった。
偶然近くを通り掛かって気を失っているベラミーを助けた海賊団。
それは猿を連想させる見た目で……。
「それにしても貴方達、とんでもない大物を乗せていたけれど何処で知り合ったのかしら? クロコダイルが随分と警戒していたけれど」
「大物? 誰の事だ?」
「あー、砂ワニが何か言ってたな。テンマオーがどうとか」
場面は移り変わってゴーイングメリー号、新しく船に加わったロビンの問いに一同は首を傾げるだけ。
「驚いた…知らないまま乗せていたのね。ほら、アラバスタに来る前に船に乗っていたお爺さんが居たでしょ? 彼、海賊王の船のNo.3で強さなら一番だって言われていた海賊よ。天魔王ルヴァイド。現在DEAD ONLYという異例の手配がされていて、懸賞金は六十六億六千万だった筈」
「へ~。あいつ、凄い奴とは知ってたけど、本当に凄かったんだな」
ロビンの言葉に一同が驚く中、ルフィだけは呑気に呟く。
この船の行き先を決めるログポースの示す先が空になる前日の出来事であった。
多分この先はベラミーやクリケットと一緒に空島に行ったり、ドレスローザでのvsベラミーの湿度が上がったりするのでしょう
尚、ベラミーによる破壊がなくてもメリーは壊れます
これにて麦わら編も終わり