ナルトが綱手に引き取られる話 作:tanaka
Side サスケ
一つ目の忍術は多重影分身の術だった。幻影ではなく実体を作り出す分身。ナルトがよく使っているアレである。
一応禁術に指定されている術だがサスケにとっては馴染みの深い術で、その汎用性の高さからサスケも覚えようとしたものだ。しかし、チャクラを等分割するという術の性質上ナルトのようにバカすか使うと死ぬらしい。
眼前、すり切れた紙のページには図解とともに解説が書かれていた。50人くらいの人間が描かれていた。普通に死ぬ量である。
(俺がやったら一瞬で死ねるな。チャクラ量が多いとは言えない俺には向いてない術だ。次に行こう!)
二つ目の忍術を見る。
忍法・毒霧。
これもナルトの使う忍術で、サクラも綱手に教えてもらっていた。サスケにとっても馴染み深い術で、文字通り空気に触れることで毒に変化する霧を作り出す術だ。しかし、この生み出される毒は術者にとっても有効であり、練習や習得は必ず専門的な知識を持つ医療忍者の側でやるようにと言っていた。下手にこっそり一人で隠れて練習して皆を驚かせてやろうとか考えると、毒で自爆してそのまま誰にも気づかれずくたばってしまうという悲惨な事態にもなりかねない。実に危険な術である。
(サクラもナルトも使えるし俺が覚えるメリットは少ない。将来的には覚えてもいいかもしれないが現状の優先度は低そうだな。次だ)
ページをめくる。三ページ目。
(お、これは知らない術だ。なになに・・・)
忍法・白拍手。
特定の音に特定のチャクラを流して放つ術。普通に使っても相手の平衡感覚をわずかに狂わせる程度の威力しか出せないが、相手の思考を誘導し最も精神の弱い時点で使えば意識を刈り取ることもできる。なるほど。…正直相手を殺していいなら他の忍術のほうが有効ではあるだろう。しかし、チャクラのコストパフォーマンスの高さはほかの術の比ではなく高く、極めれば中々に便利な術と言える…かもしれない。何よりオサレだ。「殺しちゃいない。意識を奪っただけさ」(キリ!)とか一回くらい言ってみてぇ。非常に中二心が満たされそうである。
これなら一人で練習しても自爆しようもないし、後でこっそり練習してみよう。サスケは決心した。
その他にも、飛雷神の術、穢土転生の術、天泣、遠眼鏡の術、迷彩隠れの術など多種多様な術が手帳には記載されていた。サスケの得意な火遁や雷遁に限定して言えば、火遁・分身大爆破や、雷遁チャクラモード・扉間バージョンなどはかなり強力そうであった。まあ、その分チャクラ消費も激しそうだったが…。もし此処に書かれた術をすべて使いこなせることができたら最強の忍びと言って過言ではないだろう。無論そんなことは不可能ではあるが夢は広がる。とは言え、夢は夢として置いておき、サスケは冷静に自分の才能を分析し、考えを纏める。
(俺にはナルトのような膨大なチャクラ量はない…サクラのような頭脳も医療忍者としての才覚もない…カカシや兄さんの様な実戦経験も当然ない…そんな俺が第七班として存在意義を残していく為には…)
サスケの出した結論は体術であった。
(木の葉には体術一筋であのカカシと並ぶ実力者もいると聞く。体術にはそれほどの可能性があるのだ。それに体術は写輪眼との相性も悪くない。まだ写輪眼は発眼していないがいずれは発眼すると期待して体を鍛えておくのは悪くないだろう。無論、忍術の修業を怠るつもりはないし、あくまで体術を基本として戦闘を組み立てるだけだが…)
よし!そうと決まれば鍛錬あるのみだ!
サスケは闘志を新たにし逆立ちで家に帰るのだった。
★
夕刻。サスケと別れた二人は向かい合って座っていた。
ナルトは新忍術にすっかり思考を奪われて本の存在を忘れていたのだが、立ち上がろうとした際に懐に本を忍ばせていたことを思い出し、慌ててサクラを呼び止めたのである。
「それで私に何か用なわけ?サスケがいると言えない事みたいだけど」
「そーなんだってばよ!実はすげーヤバそうな本を見つけちゃったんだってばよ!」
「すげぇヤバそうな本?」
「これ!これこれ!」
ナルトは懐から二冊の本を出す。サクラはその題名を見てピクリと眉を上げた。
「俺じゃ読んでも理解できなそうだからサクラちゃん読んで簡単に説明してくれってばよ!」
「自分で読む努力くらいしなさいよ。まあ、気になるから読むけど」
サクラはナルトから本を受け取り、すごい勢いで読み進める。速読というものだ。噂では一日に十冊以上本を読んでるらしい。真偽のほどは定かではない。
程なくしてサクラは本を読み終える。
「なるほどね」
「どんな内容だったってばよ」
「中々濃い内容だったわね。まずはこっちは、うちは一族の体質、写輪眼の開眼条件、瞳力の強さと精神の関係、写輪眼の進化の段階、よく使われる技や特殊能力…そう言ったものが詳しく纏められている本ね。正直良く此処まで調べたって感じだわ。執念すら感じる詳しさよ」
「おー、なんだか凄そうだってばよ。もう一つの本は?」
「こっちは大したことは書かれてなかったわ」
「?」
「簡単に言うとうちは一族の性格や性癖を年代別に分析・考察したものね」
「!!」
ナルトは我が耳を疑った。思わず聞き返す。
「え?」
「うちは一族の性格や性癖を年代別に分析・考察して纏めた本ね」
…もしかして俺は火影というものに理想を抱きすぎていたのかもしれない。火影とは誰よりも強く、清廉潔白で、里の皆から愛され頼りにされるヒーロー。ナルトの幼いころからの変わらない夢の果て。しかし、冷静になって考えてみると三代目のじいちゃんはただのエロじじいだったような…お色気の術で鼻血を出して気絶するわ、火影室に巨乳物のエロ本を隠し持っているわ…。初代様も綱手母ちゃんの話を聞く限りギャンブル好きだったみたいだし、二代目様は里の仲間の性癖を分析して本に纏めるというまさかの所業を残していた。いや、本当に。何を考えていたんだ。内容が的を得ていることがさらに悲惨さを増している。
「とんでもねえってばよ」
ナルトは恐れおののいた。
「ええ、とんでもない分析力よ」
サクラは尊敬を新たにした。
ここにもとんでもない奴がいた。
最後の最後でナルトに衝撃の事実を与えてしまったもののそれはさて置き。
何はともあれサクラは写輪眼の人為的開眼のさせ方(扉間考察)を知ったのである。この状況でサクラが手を拱くわけもなく、サスケの写輪眼を開眼させようという思考に至るの至極当たり前の帰結であった。
「ねえ、ナルト。一つ提案があるんだけど…」
こうしてサスケの強制写輪眼開眼が決まったのであった。
木の葉で優秀と名高い忍び
自来也→オープンスケベ覗き魔
綱手 →ギャンブル中毒
大蛇丸→変態オカマ
カカシ→エロ本を持ち歩く
ガイ →見たまんま
イタチ→一見まともそうだが重度のブラコン
↓本編とは特に関係ない短編です。
女湯覗き計画
千寿扉間。言わずと知れた二代目火影であり、目的のために倫理観をかなぐり捨てる卑劣な側面もあるが、多くの優秀な術を開発し、ゼロから里の基礎体制を作り上げた事実は、彼が忍・政治家として隔絶した才覚を秘めていたことを物語っている。そんな天才・扉間が開発し、今なお誰にも破られることなく、影から木の葉の平和を守り続けている術があった。
里の結成当時、変化の術を使い女湯を覗こうとする事案が地味に問題になっていた。その問題を解決するために扉間が編み出した覗き防止用結界は幾つかの世代を経た今尚多くの男たちの夢を阻み続けていた。効果は単純で結界内で忍術を使った者を探知すると言うもの。だが、単純故にその精度は高い。この結界を欺くことは若かれし自来也や大蛇丸、ヒルゼンにも出来なかった。無論この結界も完璧ではなく、忍術探知に特化させた結果、アナログ的な覗きにはその優秀な探知を発揮しない。だから、女装をして女湯に入ろうなどと言うイカれた思考をする相手には意味をなさない。無論、そんな相手がいればの話だが。
ちゃぷん。
ナルトは風呂に浸かり思案する。後ろにはシズネ、前には綱手がいる。背中からは柔らかい感触が伝わる。普通の少年ならこんな状況で集中することなど出来るはずがなく、ましてや覗きの計画を練ることなど不可能である。しかし、情操観念が未熟であり、何時も綱手とシズネと一緒に風呂に入っているナルトには全忍の夢とも言えるこの状況もある意味慣れたものであり、ナルトは深く思考の海に浸かる。
(別に女湯自体に興味があるわけではない。特殊な幼少期を過ごしたナルトは恋愛感情に疎く、まだまだお子様な感性しか持ち合わせていなかったからだ。かつて自来也と一緒に覗き…もとい混浴巡りなどをしたこともあるが、その時でさえハーレムの術の参考程度にしか思っていなかったほどだ。しかし、それはそれとして、同期から聞かされた木の葉に伝わる難攻不落の女湯というのは亡き火影からの挑戦のように感じられた。初代悪戯仕掛人としてこの件を無視するのは名が廃るというもの。自来也や三代目のじいちゃんすら失敗したというのもナルトの興味を刺激する遠因になっていた。
(でも、バレたら絶対怒られるってばよ…)
問題はそこである。綱手母ちゃんはともかくシズネ姉ちゃんに変化の術で女湯に入ろうとしたなんてバレたら特大の説教は確定である。ただでさえ、最近ハーレムの術を木の葉丸に教えているのを運悪く見つかり大目玉を食らったばかりだ。ここで更に怒らせる様な事をするのは得策ではない。だが、ナルトは男として時には引いてはいけない状況があることも知っていた。今がその時かは分からないが…。
(もうすぐ中忍試験があるって話だし、中忍になってしまえばそうそうそんなことは出来ないってばよ。その前には一発かましとくのも悪くない、か-----)
期限が最後のダメ押しになりナルトは覚悟を新たにした。
ナルト、キバ、シノ、シカマル、チョウジ、木の葉丸、ウドン、そうそうたるメンツが揃ったその日、一次計画の失敗が報告された。
「アルティメット変化の術を使った自来也様はどうやら失敗したらしい」
「そうか。自来也様が新術を使っても駄目だったか」
「こうなるともう打つ手がないんじゃないの」
「いや、そうでもないわ。と言うか、この結果は予め予想できたものよ。結界の具体的な内容は結局分からず仕舞いだけど二代目様が作った忍術なんだからそう簡単に破れるわけがないわ。当然代替案も考えてあるわ!」
サクラの余りにも堂々とした現状の分析と希望の言葉にこの場に集った全ての男の想いが一致した。
(((なんでこいつ此処にいるんだ?)))
いや、酷い言い草だし今更すぎるツッコミではあるが、少し考えてみてくれ。覗きの計画を立てている場所にクラスでも1、2を争う美貌と人気の少女がいるのだ。端的に言って恥ずかしい。まだ十代になったばかりの子供であるナルト達からすれば赤面ものの事態であり、やりにくくて仕方無い。
しかし、サクラの指摘は常に的を得たものだった。
「確かに忍術で結界を突破するのは不可能そうだけど、忍術で無理ならアナログで行けばいいのよ」
「「「!?」」」
「ど、どういうこと?」
「つまり女装ということね」
「なるほど。それは盲点だったぜ……とはならねえよ!」
「その通り。それには大きな問題がある。女装をしたところで隠せないものもあるということだ。なぜなら」
「皆まで言うな。あまりにもしょうもなさすぎる」
「大丈夫!それについても一応考えはあるわ」
「ところで、なんでサクラはあんな乗り気なんだ?」
「んー、たぶん結界がどの程度のものなのか知りたい知識欲だと思うってばよ」
「それだけでここまでするのか」疲れたように言うキバ。
「サクラちゃんだからなぁ……まあ、他にも考えはあると思うけど俺にサクラちゃんの思考を読みきることは無理だってばよ」
サクラの協力もあり、計画は非常に順調に進んでいた。そして、決行当日。
ナルト、キバ、シノ、シカマル、チョウジ、木の葉丸、ウドンは女装をしてサクラと共に温泉へと赴く。
「んじゃ、行くぜ!」
先頭に立つキバが意を決して皆をこぶし、更衣室の扉を開こうとして
「ふぎゃあ!」
キバが扉に手を触れるよりも前に何故か扉が独りでに開き、中から風呂上がりらしき女が出てきて、キバを殴り飛ばしたのだった。
「「!!」」
ナルトは目の前に仁王立つ女を見る。ツンツンとした黒髪で身長はシズネくらい。朱色の浴衣を着ており、胸元は大胆に肌け、上気した肌が色香を放つ。下着は着けていないようで、動いた拍子に胸とか脇とか色々見えている。
しかし、今重要なのはそこではなく、女の顔だ。何処と無くキバに似たその顔立ちは犬塚一族特有のマークを頬に入れている。そして、キバの様子を見るに彼女はキバの母ツメであろう。ツメは鼻をピクピク鳴らすと、チョウジ、シカマル、シノにそれぞれ拳骨を落とし、次いでナルト、木の葉丸、ウドン、サクラを見る。臭いで個人を特定出来なかった四人は制裁こそしなかったものの信用もない。大方私の知らないキバの仲間だろうと辺りをつける。それは全くもって正しい推測だった。
「で、アンタらはこのバカどもとどういう関係だい?」
「えっと、彼女達とは今日の昼会って話の流れで一緒に温泉に行くことになったんです」
サクラはあっさりキバ達を見捨てた。
だが、これは予め決められていたことで何かあったら仲間の屍を越えていく、恨みっこなしだと誓っていた。サクラはそれを守っただけである。顔を青くさせていたキバは見なかったことにした。
ツメはサクラの言葉を最初疑っていたが、そう言えばこのピンク髪の少女はアカデミーにいたなと思い出し、流石に女の協力者を作ることはできないだろうと考え、四人を見逃すのだった。ツメ痛恨のミスである。
更衣室に入った四人は服を脱ぎ大きめのバスタオルで体を包み、いざ温泉へと行く。温泉の中は煙に包まれていた。特殊な煙の出る入浴剤を使ったらしい。これがサクラの策と言うことか。確かにこれならバレる可能性は格段に低くなる。しかし、ほとんど煙しか見えない。覗きとしてはどうなんだろうか?そんなことを考えていると唐突に焦ったような声が掛けられた。
「クシナ!」
はて、クシナとは一体?
首をかしげるナルトの前には一人の
「あ」
ナルトは現在洗髪剤で癖毛を整え、赤く染めているので見た目はまんまクシナである。しかし、それは顔だけであり、体は男のそれだ。そして、いかに煙で見えにくくなっていたとしても此処まで近づけばハッキリと相手の姿は見える。
ミコトはナルトの胸を見る。まっ平らだった。そのまま視線を下に下げる。あれがあった。数秒の間痛い沈黙が落ちる。
「………」
「………」
「ぎゃあああああ!!」
当然この話は保護者にも伝わり、ナルトはシズネから大目玉を食らい始めて夕飯を抜きにされ空腹にうなされる夜を過ごすのだった。そして、翌日事情を聞いたサスケからも白い目で見られり、里の少年から変態勇者扱いされたりと、踏んだり蹴ったりのナルトだった。
ちなみに自来也は綱手とヒルゼンにこってり絞られたとか。まあ、どうでもいい話である。