ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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幕間 大蛇丸

 

波の国。火の国の隣にある貧しく小さな国では、現在国中でお祭り騒ぎが起こっていた。

 

「わしは夢でも見とるのかのぉ。まさかこんな日が来るとは」

「夢なんかじゃないわよお父さん。誰がやったのかは分からないけどガトーはもうどこにもいないんだから」

 

タズナの言葉に娘のツナミが笑顔で答える。それでも、タズナは未だに夢を見ている気分であった。しかし、それも無理からぬ事だ。つい昨日までガトーは確かにいたのだ。しかし、今朝起きてみるとガトーが殺されているときた。しかも、事件が明るみに出て捜査が始まる頃には憎きガトーを殺してくれた下手人も、ガトーの部下も、ガトーが蓄えた金も、情報も全てが綺麗さっぱりなくなっていたのだ。まるで夢を見ているような気分になるのも無理からぬ事だった。

 

 

 

では、一体何が起こったのか?それはほんの少し前に遡る。

 

 

桃地再不斬は今迄どんな戦場でも感じたことが無いほどの猛烈な死の気配と言うものを感じていた。いや、これは気配などという不確かな物ではない。厳然な事実として自分はあと四半刻もせずに目の前の男に殺されるだろう。せめて白だけでも、と思うがそれすら出来そうにない。それほど圧倒的な実力差を見せつけられた。

 

眼前、赤黒い血の池の上に立つのは長身痩躯のやさ男だ。黒い滑らかな長髪を後で一本に纏め、鋭い切れ長の瞳が瓶詰めの実験材料を眺めるように見下ろされる。着ている服は何故か何処にでもありそうな白い着物ではあったが再不斬には死神の着る死装束にしか見えなかった。

 

唐突にやって来たその襲撃犯は刀を抜くことすらせず抜手で白を気絶させると、いきり立って目の前に立ち塞がるガトーの部下(ゴミ)共を切り刻み、応戦した再不斬をも赤子を捻るように甚振り叩きのめした。圧倒的な実力の差を見せつけられた男達は呆気なくガトーを見捨て我先にと扉へと駆け出す。

 

「うわあああああ!!」

「化け物おおおおお!!」

「ひいええええ!!」

 

普段散々粋がってる癖に情けない限りだが今回ばかりは男達の気持ちも分かる。相手が悪すぎる。仮に立ち向かっても何も出来ずに殺されるだけだ。

しかし、雇い主であるガトーからしてみたら堪ったものではない。まさかの護衛の裏切りに声を裏返して怒鳴る。

 

「こ、こら!待て!貴様らわしを守るのが仕事だろうが!しっかり戦わんか!」

「うるせえハゲ!」

「命あっての物種だ!」

「俺は旨い目みれるって言うからアンタに従ってただけなんだよ!」

「命まで賭けられっか!」

 

正論ではあるもののなんとも人望の無い男か。流石に少し同情する。

ガトーは顔を真っ赤にさせて怒ったが、直後、目の前に迫る男を見て「ひい!」と顔を真っ青に変えた。そして、それがガトーの最後の言葉だった。

 

「命乞いを聞く価値すらないわね」

 

一閃。残像を残すほどの速度で振るわれた刀は容易くガトーの首を撥ね飛ばす。すごい。場違いにもそんな感想を再不斬は抱き。

 

──コツコツ!

 

その時、血の絨毯に波紋が広がり、新たな入場者を歓迎した。このタイミングで来るということは襲撃犯の仲間か、運の悪い新たな被害者のどちらかだろう。果たして乱入者は前者だった。白髪長身の男は扉から逃げようとした男達を例外無く皆殺しにする。その一連の動きだけからも男の実力の高さが伺える。恐らく俺と同程度。更に逃走が絶望的となったわけか。

「カブト」と呼ばれたその男はメガネをクイっと上げて、今人を殺したとは思えないほど穏やかな声で言う。

 

「随分派手にやりましたね───大蛇丸様」

「な!!!?大蛇丸だと!!」

「おや、その傷でまだ意識があるとは流石は霧隠れの怪人桃地再不斬」

「俺のことを、知っているのか」

「貴方は僕と違って有名ですからね」

 

カブトは人の気を逆撫でするような笑みを浮かべる。普段なら悪態の一つでも吐くところだが、今はそんな些細事にかかずってる場合ではない。問題は何故大蛇丸程の大物がこんな場所にいるかだ。

 

「フフフフ。何故、私がガトーなんて小物を殺しに来たのかって顔してるわね。間違っているわよ。ガトーなんて正直どうでもいいのよ。煩かったから殺しただけよ」

「?」

「今私はある作戦を進めているんだけど、その為の戦力が足りないのよね」

 

つまりその戦力が欲しいと言うわけか。

なるほど。確かに言われてみれば白だけは何故か抜手だったし、俺もこれだけヤられても致命傷は一つもない。初めから俺と白は見逃すつもりだったと言われれば納得が出来る。いや、白は実力は兎も角全くの無名だ。つまり、俺の勧誘のためにやって来て、そのついでに一定以上の実力者も駒にしようと思ったのか。まあ、その結果俺と白以外は皆殺しになった訳だが。

 

「どうかしら?見ての通り貴方の依頼主は居なくなったわけだし、私に雇われてみない?」

 

お前が殺したんだろ、と言う言葉を飲み込む。

 

「計画の駒になれって話だろ。だったら、その計画を話すのが筋ってもんじゃねえのか?」

「貴方の生殺与奪権は今私が握っているわけだけど言葉を撤回する気はないかしら?」

 

大蛇丸は目を細め猛烈な殺気を叩きつける。正直逃げ出したくなった。ただの殺気でこれ程死をイメージさせられたのは初めての経験である。しかし、根性で耐える。

 

「内容も聞かずに依頼を受ける忍がいるか?そんなバカを信用出来るのか?それと俺にとって命は脅しの材料にならねえ。殺したきゃ殺せ」

 

これは半分嘘で半分本当である。

大蛇丸の悪名は知っている。もし自分一人なら殺されても断る選択をしたかもしれない。だが、今は自分の命よりも大切な白がいる。道具だなんだと言い訳してきたが、大切なものの死の恐怖は容易くそんな建前を壊してしまった。

今の再不斬は白の生存率を上げることを第一に考えていた。その為に自分の価値を上げつつ、情報を引き出す必要がある。

大蛇丸はそんな再不斬の考えを見透かすように蛇のような笑みを浮かべ、「木の葉崩し」の計画を少し話した。

 

「正気か?」

「生憎と生まれて此の方正気だったことなんて無いわよ」

 

大蛇丸のおどけたような本心とも取れる言葉に再不斬は意を決して答えるのだった。

 

「いいだろう。その話乗ってやる」

 

 

 

 

 

「まだ足りないわね」

「と言うと?」

「戦力の話よ」カブトの問いに大蛇丸は難しい顔で答える。

「正直木の葉を潰すのに砂と音だけじゃ足りないのよね」それが大蛇丸を現在悩ませている問題だった。

端的に言って木の葉の戦力が整いすぎている。自来也と綱手が何故か里に帰ってきているし、綱手に至ってはいつの間にか血液恐怖症も克服している。うちはの警務部隊も健在だ。里との不和を煽り木の葉崩し前にはうちはを潰し、研究材料にする計画など見る影もない。

 

「全く上手くいかないわね」

「砂の人柱力を里で暴れさせれば戦力差は引っくり返せると思いますが?」

「砂の人柱力はまだ幼く、随分不安定だと聞くわ。計画の合否をあんな子供に委ねるのは嫌なのよね」

「失敗すると?」

「失敗しても良いように手を売っておくものよ」

 

カブトは随分用心深いものだと思いつつ、ふと笑った。

 

「でも、解決策は既にあるのでしょう?」

 

もし何の解決策も無いなら大蛇丸様がこんな呑気にしているわけが無いのだから。もっとも大蛇丸様の様子を見るにあまりやりたくない手段のようだが

 

「相変わらず勘が良い子ね。ええ、勿論一応の案は考えてあるわ」

 

大蛇丸は右手に嵌められた空と彫られた指輪を撫でる。それは暁と呼ばれる傭兵集団の構成人員のみが持つ遠隔通信出来る特殊な指輪だった。

イタチが里抜けをせずに、暁に入らなかった結果イタチとのいざこざが起こらず、大蛇丸は今もまだ暁に所属していたのだ。

もっとも勝手にサボったり、リーダーに気持ち悪い視線を送ったりしてるので仲間内での評判はすこぶる悪いが。

 

「出来れば私の手だけで解決したかったけど、まあ、この際拘りは無しにしましょう───フフフフ、待っていてくださいねサルトビ先生」

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