ナルトが綱手に引き取られる話 作:tanaka
今回はカカシ先生が活躍する貴重な回です!
6/30 中忍選抜試験前日
今日も今日とてカカシを待ちわびるナルト達。担当上忍の遅刻など本来そうあることではないが、第七班にとっては普通。時間通りに来ることが異常である。だから、今さら遅刻することにどうこう言うことはない。サクラは本を読み、サスケは筋トレをし、ナルトは朝食を食べて時間を潰す。それから30分程して、普段よりもかなり早くカカシはやって来た。
「で、今日は何があったんですか?」
本から目を上げ半眼で聞くサクラ。
いつも予想だにしない言い訳を用意してくるカカシに、半周して期待の念すら沸いてくる。今日は一体どんな頓珍漢な言い訳をするのか……
ちなみに、昨日は「…今日は道に迷ってね」だった。「忍者が自分の里で迷ってどうすんだってばよ!」とナルトに切れられてたが全面的に同意である。もし事実なら若年性痴呆の疑いがあるので病院を進めたい。まあ、100%嘘なのでスルーしたが。
果たしてカカシの答えは───「…今日は人生という名の道に迷てね」だった。
三人の深いため息が第三演習場に虚しく響く。
「流石にその反応は傷つくよ」
「どうでもいいのでさっさと今日の用件を言ってください」
「あぁ…うん…分かった…お前達三人中忍選抜試験に推薦しておいたからそこんとこ宜しく」
「中忍選抜試験?」ナルトの疑問にサクラが答える。
「中忍選抜試験とは、砂・木ノ葉及びそれに隣接する小国内の、中忍を志願している優秀な下忍が集められて行われる試験のことよ。合同で行う主な目的は、同盟国同士の友好を深め、忍のレベルを高め合うこと。しかしその実、隣国とのパワーバランスを保つ事が各国の緊張を緩和させると言う目的もあるわ。毎年人が死んだり、再起不能者が出たりするかなり危険なテストね」
「さすがサクラ…よく知ってるね…いや、ほんと…知りすぎじゃない」
サクラはナチュラルに無視して疑問を述べた。
「でも、先生。通例中忍選抜試験にルーキーは出ないと思うんですが私達にはまだ早いんじゃないですか?下忍になってまだ3ヶ月ですよ?」
「いや、お前達の実力は既に中忍クラスだ。充分受ける力はあると思うぞ。ま、危険なテストだから当然拒否権はお前達にある」
言いつつカカシは志願書を配る。
「受けたい者だけその志願書にサインして 明日の午後4時までに学校の301に来ること──今日の用件はこれで終わりだが解散の前に少しお前達に見せておきたいものがある。時間がある奴はちょっと残ってくれ」
★
処変わって、木の葉の里のとある森の中。そこには三人の少年少女が各々鍛練を積んでいた。彼等は全員が下忍であり、今年中忍選抜試験を受けることになっている。
「聞きましたか?5年ぶりにルーキーが中忍選抜試験に出場するらしいですよ」
おかっぱ頭の少年…リーが大木に回し蹴りをしながら元気よく言う。
五年ぶり、と言う言葉からも察せられるようにアカデミーを卒業したばかりの新人が選抜試験に参加するのはかなり異例なことだ。それなりの数の任務をこなさなければチャレンジするのも難しい試験、それが中忍選抜試験だ。
「どうせ上忍同士の意地の張り合いでしょ」
お団子頭の少女…テンテンは呆れながら言う。
「ですが、その内三人はあのカカシの部隊だそうです」
今までカカシの担当で下忍になれた者は0。つまり三人はカカシが初めて合格させた下忍だ。
カカシのライバルを自称する彼等の担当上忍から頼んでもないのに情報が入ってくるせいで、ガイ班の三人はカカシ班に興味を持っていた。
「それは面白い」と最後のガイ班の少年…ネジは自信に溢れる笑みを浮かべる。
「「「!!!」」」
直後、修練場の中央に緑が飛来した。煙を上げて着地した物体はよくよく見ると全身タイツを着たとんでもなく太い眉毛の、濃い男だった。
「よお!お前達!青春してるな!」
男の名はマイト・ガイ。彼等の担当上忍である。
「どうしたんですかガイ先生。何時にも増して厚苦しいんですけど」
「何か良いことでもあったのか?」
テンテンとネジが鬱陶しそうに問う。
「実は今からカカシと熱いバトルをすることになってな!暇ならお前達も見学しに来いと伝えに来たのだ!」
「おおおお!それは燃える展開ですね!ガイ先生!」
「「はぁ」」
燃え上がる二人の師弟にネジとテンテンは暑苦しいと溜め息を吐くのだった。
★
ちょっと残ってくれと言われ何があるのかと思ったが、どうやらガイとカカシが戦うところを見せてくれるらしい。上忍同士の戦いを見れると言うことでナルト達は早くも観戦モードだ。
「カカシ先生!ファイトだってばよ!」とか「ガイ先生頑張ってください!」など応援が飛ぶ中でカカシとガイは向かい合って静かに対峙している。
「お前から俺を誘うとは珍しいなカカシ。もう吹っ切れたのか?」
「いや、まだ吹っ切れてはないよ。ただ俺の部下は優秀でね。ここまで挫折もなく来ちゃったわけ。中忍試験も近いし、ここらで上の戦いってやつを見せておきたいのよ。って言うのは建前で最近どうも俺に対する尊敬の念が薄れていって危機感を感じてるからイメージアップを狙ってるわけだ。ま、最近習得した新術もあるから退屈はさせないよ」
ガイは長年の付き合いでカカシの本音を理解していたが敢えて触れることはなくニヤリと笑う。
「イメージアップか!では、俺もリーの前で格好つけなきゃいけんな!本気で行くぞカカシ!八門遁甲第六景門解!」
ガイの体から蒸気が吹き出す。
「話が早くて助かるよ───『鳴神』」
カカシの体に電気が流れる。
「む?それは雷遁チャクラモードか?雲隠れの?」
「いや、少し違う。その劣化版だ」
「なあなあ、雷遁チャクラモードって何だってばよ?」
ナルトの言葉に待ってましたと言うようにサクラが説明を開始した。
「雷遁チャクラモードは、雷の国の夜月一族が使う超高等忍術よ。雷のチャクラを全身に纏うことにより攻撃力、防御力、スピードを飛躍的に底上げする反則級の技で当然会得難易度は最上級のSオーバー。でも、夜月一族特有の強靭無比な肉体と膨大なチャクラを前提とした忍術だから、普通の忍には使えない欠陥忍術と言う人もいるわ。カカシ先生が今使ってるのはその雷遁チャクラモードを参考に二代目火影様が考案した劣化版ね。本家本元よりスピードや攻撃力・防御力は落ちるものの、肉体への負荷や消費チャクラが少ないから夜月一族じゃなくても使えるのよ」
最も扉間が飛雷神の術と言う超チート忍術を使えたうえに、木の葉に雷遁の使い手が殆どいなかったなどの理由から日の目を見ることなく埋没されていたわけだが。
(もしかしてカカシ先生扉間スケッチ見た?)
内心サクラが驚愕してるのを他所に二人の戦いの火蓋は切って落とされた。
★
「に、人間の動きじゃねえ…ガイもカカシも…これが上忍の力…」
「カカシ先生ってこんなに強かったのかってばよ!」
「は、速すぎる!鳴神…これほどの忍術だったなんて…すごいわ」
「うおおおお!今日のガイ先生は何時にも増して格好イイです!本当に輝いてるように見えます!」
八門遁甲は輝く蒸気を出す。つまり、現在ガイは物理的に輝いてるわけだが、それを指摘する無粋なものはいない。ちなみに、輝き具合で言えば雷を纏うカカシの方が上だがそれを指摘するものもいない。
「ふふふ、やるならカカシ!」
「お前こそ体術だけで雷のスピードについてくるとか相変わらずとんでもないね」
数時間後。
中々帰ってこないナルトを探しに来た綱手に、ちょっと熱が入りすぎて互いにボロボロになったカカシとガイは「お前ら何してんだよ」的な目で見られる事となる。
「全くイイ大人がなにやってんだ……凄い騒ぎになってたぞ」
「そんなひですか」
「ああ、ドゴン!ドゴン!と巨大な鉄球を打ち付けてるような音が絶え間なく聞こえてきたからね。すわ、天変地異の前触れかと思えったら…まさかガイ…お前のパンチが地面を抉る音だとは思わなかったぞ」
「いやーはは、お恥ずかしい」
「カカシもだ。一体どんな戦いしたらそんな格好になるんだ」
綱手は溜め息をついてカカシとガイを見る。
前歯折れてる
青あざだらけ
顔すげー腫れてる
脱臼してる
服ぼろっぼろ
髪の毛ぼさぼさ
悲惨の一言につきた。
「で、勝負はどっちが勝ったんだ?」
「俺だ!」
「俺です!」
「結局、どっちなんだい……」
「いや、どう考えても俺が圧してたでしょ。俺の勝ちだよ」
「いや、持久戦になったら俺が勝っていた。俺の勝ちだ」
「あー引き分けってことでいいかい?」
「「いや、俺の勝ちだ!!」」
二人ともボロボロだったが何故か元気よく言い争いながら木の葉の病院に運ばれていくのだった。
オリジナル忍術
鳴神ナルカミ
雷の国の夜月一族が使う雷遁チャクラモードと言う超高等忍術を参考に作られた扉間のオリジナル忍術。雷遁チャクラモードとは夜月一族特有の強靭無比な肉体と膨大なチャクラを前提とした忍術で、普通の忍には使えない。一方のナルカミは本家本元よりスピードや攻撃力・防御力は落ちるものの、その分肉体への負荷や消費チャクラが少ない。最も扉間は飛雷神の術と言う超チート忍術を使えたことと、木の葉に雷遁の使い手が殆どいなかったなどの理由から日の目を見ることなく埋没された忍術だった。
カカシ「こっそり練習してたんだ…」
ガイ「朝孔雀を初披露!」
リー「カッコいいです!」
サスケ「いつか俺も!」
ナルト「カカシ先生もゲキマユ先生もスゲェってばよ!」
サクラ「はぁ…はぁ…す…すごい…はぁ…はぁ…」
カカシがガイとの戦いを見せた真意
「忍ってのは常に死のリスクが伴う過酷な職業なんです。どれだけ成長しても自分より強い奴はいるし、少しの油断が仲間や自分自身の命を奪うこともある。たとえ油断してなくても理不尽な絶望を味わうことだってある……中忍選抜試験を受ける…あるいは受けないと言う選択をする前に今の自分では越えられない壁があるってことをアイツ等に知っておいて欲しかったんですよ…」