ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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ナルト、影分身を覚える(7歳)

 

里を出てから一ヶ月。

ナルト達三人は、綱手の賭博への浪費で金欠が続くのと、借金取りから逃げるために、各地の安宿を転々としていた。お陰で逃げ足と、逃走スキルだけは順調に伸びていくナルト。まったく望んだ結果ではないし、異常な状況ではあるが、慣れとは恐ろしいものである。こんな逃避生活がいつしか普通に感じるようになっていた。

そして、今日も綱手は街に着くなり金を借り、その金でパチンコ店に入り、何時ものように大すりしているところである。

恐ろしい勢いで減っていくパチンコ玉、それに反して増えることは一度もない。

その見慣れた光景に溜め息を吐くシズネとナルト。

「次だ!これだけ負けたんだ!次は絶対にくるはずだ!ええい!止めるなシズネ!」

「綱手様!ナルト君も見てるんですよ!賭け事は控えてくださいと何度も!それとその言葉既に五回目です!」

二人の何時ものやり取りを聞き流しながら、ナルトは暇だったので綱手のパチンコ玉から一つをこっそり取り、試しに適当なパチンコ台に玉を入れた。

 

キュンキュインキュキュキュキュキュイーン!

 

パチンコの事など良く知らないが、玉を入れたら物凄い量の玉が出てきた。

パチンコ台の前で唖然とするナルト。

音を聞き付けて、シズネと綱手がやってくる。

そして、興奮した綱手に急かされて、追加で六回チャレンジしたら、6連勝。綱手の敗けを取り返してあまりあるほどの大勝をし、懐がほくほくとなった三人は、この日珍しく高級旅館に泊まった。

 

 

 

広い部屋。ふかふかのベッド。個室の浴室付き。

夜空の見える部屋で、三人で豪勢な山菜料理を楽しんだ後、この旅館の自慢らしい風呂に入る。

 

「それじゃ、ナルト君、私達もお風呂に入りますよ。」

「分かったってばよ!温泉なんて入ったことないから楽しみだってばよ!」

「ふふふ、この旅館は温泉や浴室に特に力を入れてるみたいなので期待しててください」

 

ナルトは、シズネの言葉に更に興味をそそられ、ウキウキしながら浴室へと突入した。

 

浴室はグレートーンのタイル仕立ての広々とした空間だった。リラクシングな音楽が流れ、鏡に、ベンチカウンター(小物を置いたり、座って休憩する場所)、ヘッドシャワー、大型テレビまでもが完備されている。主役である風呂はジャグジーなピュアホワイトの円形(ラウンド)バス。その美肌効果のある風呂には、一足先に入っていた綱手がどかりと湯船に浸かっていた。

 

「ナルト君、頭を洗いますから目を瞑ってくださいね。」

「はーい。」

「まるで本当の姉妹だね。どれ、私が洗ってやろうか?」

「綱手様は昨日洗ったじゃないですか!今日は私の番です!」

ナルトを取り合い火花を散らせる二り。

その様子に苦笑いするナルト。だが、心の中は幸福な気持ちで溢れていた。今迄嫌われこそすれ望まれることなんてなかったので、こう言うときどう反応していいのか分からないだけで、ナルトは本当に幸せそうであった。

 

 

ナルトはシズネに頭を洗ってもらい、背中の洗い合いをした後、気泡を発生させる風呂に入る。人生初めてのジェットバスに興味津々である。

「おおお!泡がくすぐったいってばよ!」

「ナルト、此方に来な。」

綱手に抱き抱えられる。

背中から伝わる暖かい感覚に、ナルトは心が暖まるのを感じる。

「そういやさ、この旅館の人がかあちゃんを三忍様って呼んでる人がいたけど、かあちゃんって有名人なのか?」

「ええ、木の葉の三忍と言えば他里に名を轟かせるほどの凄腕の忍者として有名なんです。綱手様はその一人。しかも、世界一の医療忍者でもあります。」

シズネも風呂へと入ってくる。

ナルトを引き取ろうと手を伸ばしたが、綱手はナルトを自分の胸の奥へと押し付け、渡す気はないようだ。

シズネ(うう、今日は私の番なのに………。)

綱手(それは体を洗う順番だ。ナルトは誰にも渡さん!)

シズネ(いくら綱手様でもこればっかりは譲れません!ナルト君は私の弟です!)

綱手(私の息子だ!)

二人の無言の牽制にナルトは気付くことなく、軽快な声を上げる。

「なあなあ、だったらさ、俺に修行つけてくれってばよ!」

ナルトに修行をつけることに関しては、元々二人とも考えていたことだ。

ナルトが九尾の人柱力である限り、遅かれ早かれ背中に気を付けて生きていかねばならない。

ナルトが望む望まざるに関わらず修行は付けるつもりであった。

だが、今までその修行をやってこなかったのは、初めてナルトに出会った時、ナルトの体がガリガリだったからだ。

まさに骨と皮だけと言うような酷い状態で、修行に耐えられると思えなかった。

だから、綱手とシズネはまずナルトの体を健康体にすることを決める。

ここまで当ての無い旅をしていたように思えるが、その実ナルトの体に対しては色々考えが及んでいたのだ。

そして、幸いにして、この一ヶ月で大分肉付きが出てきたので、そろそろ修行を付けても良いタイミングだと、思っていた所だ。

が、その前にまずナルトの現在の実力や状況を知っておきたい。

「修行ねぇ……。ナルト、アカデミーはもう行ってるのかい?」

「もう三年通ってるってばよ。」

「じゃあ、分身の術は習ってるね。ちょっと、こっち向いて分身の術やってみな。」

「うげえ!分身の術かよ。俺その術一番苦手なんだってばよ!そんなんより、もっと凄い術教えてくれってばよ!」

「いいから、つべこべ言わずにやるったらやるんだよ!」

綱手はまず九尾の封印式を確かめておきたかったのだが、説明が面倒なのではしょった。

シズネがフォローを入れる。

「失敗しても、私達に見せれば、何か悪い癖のようなものが分かるかもしれませんよ。」

「んー、分かったってばよ。『分身の術(未 巳 寅)』」

綱手に横暴だ!と怒っていたナルトだが、シズネの話も一理あると思い直し、分身の術を行う。

ボンッとナルトの横で煙が上がり、瀕死のナルトが現れた。瀕死のナルトはそのまま湯船の中に沈み、ほどなくして消滅した。

「「「……………」」」

綱手(これは………)

シズネ(逆に凄いですね。)

ナルト(だ、だから、苦手だって言ったんだってばよ!)

ナルトはまた笑われると思い、顔を赤くして綱手とシズネを窺ったが、二人は納得したような顔をするだけだった。

「なるほどな。お前が分身の術を苦手としている理由は分かった。」

「ほ、本当かってばよ?」

「ああ。理由は主に三つ……いや、二つだ。」

九尾のチャクラについてはまだ教えなくていいかと考え、訂正する。

「まず一つ目、単純にチャクラコントロールが下手だ。」

ナルトは20のダメージを負った。

「二つ目、人よりもかなり多いチャクラを持っているため分身の術のように必要チャクラが少ない術が常人よりも会得し難い。 まあ、チャクラ量が多いってのは忍にとっては良いことなんだけどね。」

ナルトは元気になった。ナルトは単純な子供だった。

「じゃあ、まずはチャクラコントロールの修行ですか?綱手様」

「いや、影分身の術を教える。ナルトならこっちの方が簡単に出来るだろう。」

「影分身~!また、分身の術かよ。」

「いえ、影分身の術は普通の分身の術とは違い、残像ではなく、実体を作り出す高等忍術です。」

「こ、高等忍術!」

「会得難易度はBだ。」

「ビ、ビー!やる!俺それやるってばよ!どうやるんだ!?」

「良く見ておけ。」

綱手がバシャッと立ち上る。

「多重影分身の印は特殊印といって子~亥までの12種類の中に含まれない特別なものだ。 」

「特殊印?」

「ナルト、お前、アカデミーに三年も通ってるんだよな?」

「い、いや、もちろん覚えてるってばよ!特殊印だろ!特殊印!特殊印ね!特殊印は特殊な印なんだってばよ!」

「………まあ、忍術の基礎については後でシズネに教えてもらえ。今回教える影分身の印はそう難しい物ではない。単に右手の指と左手の指で十字を作ればいいだけだ。こんな風にな。『影分身の術』。」

綱手がもう一人現れる。

二人の綱手がナルトの頭を撫でる。

「さっきシズネが言ったように影分身は実体を持った分身だ。攻撃も出来るし、更には術を使うことも出来る。ちなみに、『多重影分身の術』と言う影分身を沢山出す術も印は同じだ。この術のポイントはチャクラを均等に分けると言うところにある。それが、他の分身系の術と最も大きく違う点だ。必要となるチャクラ量が多いと言うデメリットはあるが、木遁分身を除けば最も本体の戦闘力に近い分身を作り出せる分身術だ。さらに、分身が消えたとき、残ったチャクラの還元と同時に経験も本体に還元される。」

ナルトの頭にはクエスチョンマークが何個も浮かび、プスプスと煙が出始める。考えすぎで頭がこんがらがってきた。難しい言葉が多すぎだってばよ、かあちゃんは!

「まあ、実践の方が性に合ってるだろう。チャクラを均等に分けるイメージで分身を作り出してみろ。」

「おす!影分身の術(十)!!」

シーン

綱手とシズネによるアドバイス

「影分身の術(十)!!」

シーン

綱手とシズネによるアドバイス

「影分身の術(十)!!」

シーン

綱手とシズネによるアドバイス

「影分身の術(十)!!」

シーン

綱手とシズネによるアドバイス

「ま、今すぐ覚える必要はない。ゆっくり頑張ればいいさ。」

「そうですよ。ナルト君。一応、高等忍術ですからね。」

「いやいやいや、後少しで出来そうなんだってばよ!見ててくれってばよ!ハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

初めてじいちゃん以外に出来た信頼の出来る相手。二人に認めて貰いたい。誉めて貰いたい。

そんなナルトの想いが邪魔する九尾のチャクラを振り切り、限界を突破する。

 

『影分身の術(十)!!』

 

ついに、術は成功した。

しかし、少々ナルトは力を入れすぎてしまった。

数体出せば良いのだが、ハリキリ過ぎていたため、現れたのは百人近いナルト。

「「「!!!」」」

まさか、こんなに現れると思ってなかった綱手とシズネ(とナルト)はビックリである。

浴室が広いので安心しきっていたが、流石に百人入ることを想定した広さまではなかった。

大量に現れたナルトにぎゅうぎゅうに押し潰される三人。

「むぐうう!!ナルト!今すぐ影分身を解け!」

「と、とととと解くってどうやるんだってばよ!」

「ナルト君!落ち着いてください。分身が解こうと思えば解けます!」

声が聞こえた分身が一斉に解除を願う。

何故か術が解けない、なんてことはなく、すぐに術は解け、後にはくたくたになった三人がいた。

 

 

「分身の術を使う時は開けたところでやろう。」

「そうですね。」

「ビックリしたってばよ。」

 


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