ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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中忍選抜試験8 第二次試験④

 

香燐

草隠れのくノ一。自分を噛んだ相手を回復させると言う特殊な能力を持っている。その能力に目を付けられ幼少期から強制的に負傷者の治療をさせられてきた。今回の中忍試験にも回復用の道具として連れてこられただけで、その扱いは奴隷同然。

 

そんな香燐が初めて自分を助けてくれた相手に恋に落ちるのはある意味当然のことだったかもしれない。

 

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第二の試験の一日目。その草隠れの忍…香燐は仲間達とはぐれ一人森の仲をさ迷っていた。正直あいつらは仲間と言っても信用も信頼もない。でも、猛獣蔓延る森の中で一人でいるのはどうしようもなく不安だった。

 

「ねえ!!皆どこ!!」

 

声を上げるが言葉は返ってこない。代わりに聞こえたのは森の木々を踏みしめるミシミシという破壊音。

眼前、生い茂る木を壊しながら現れたのは体長5mはあるかという巨熊。鋭い爪は木を易々と切り裂き、その圧倒的な偉容と存在感は戦う力の無い香燐を絶望させるには充分なものだ。

 

「い…いや…」

 

へたりこむ香燐。その赤いメガネ越しに熊が大口を開けているのが見える。

 

グルルル!!ガウ!!

 

野生を剥き出しにした咆哮と共に熊の巨腕が振るわれる。とっさに転がるようにして避ける。ゴロゴロと転がり岩にぶつかる躯。熊も逃がすまいと逆の手を振り上げる。迫り来る巨大な三本の爪。香燐は迫り来る死の瞬間に体を固くする。

 

「きゃあ!!」

 

直後、訪れたのは痛みでも衝撃でもなく、自分を包む暖かさだった。

 

「へ?」

 

訳が分からず混乱する。

うっすらと目を開けると、ツンツンとした金色の髪に空のような瞳をした、狐を思わせる髭のある少年の顔がドアップで写し出された。

 

「ふえ!?だ、だれ!?あんた!?」

 

「大丈夫だ…敵じゃねえってばよ…ちょっと大人しくしててくれってばよ」

 

少年は香燐を地面に優しく置くと香燐と熊の間に入るように立ち、十字に手を結ぶ。見たことの無い印だった。額宛は木の葉のマークだから恐らく木の葉で秘匿された術だろう。

どんな忍術なのか────それは直ぐに分かる。

実態の持った多数の分身が現れたからだ。

 

「んじゃ!いくってばよ!」

「おい!」

「お前!」

「覚悟!」

「しろよ!」

「俺の名前はうずまきナルト!」

「いずれ火影になる男だって──聞いてねえ!」

 

熊はいきなり増えたナルトに数秒警戒をしていたが痺れを切らしたのか、あるいはナルトを舐めたのか、猛烈なスピードで突進してきた。

 

「あんたバカだろ!」

 

助けてくれた恩人に言う言葉ではないが、仕方ない。だって熊来てるもん!

 

「うわああ!来てる!来てる!めっちゃ来てるううう!」

 

「一度走り出した物ってのはそう簡単には止まれないものだってばよ!」

「いくぜ!」

「うずまき!」

「ナルト!」

「連弾!」

「+起爆札トラップ!」

「だってばよ!」

 

熊の進行方向にはいつの間に仕込んだのか起爆札トラップが仕掛けられていた。

猛烈に突進してきた熊は見事にそれにかかり、一瞬怯みを見せる。

うずまきナルトと名乗った金髪の少年は、その明確な隙を逃すことなく物量によりボコボコにしだす。こいつ、見かけによらずバカじゃねえ!

 

「とりゃあ!!」

「せい!!」

「わちょー!」

「フォワァー!」

 

変な声を上げながら上下左右前後…あらゆる方向から熊をボコる。

 

「中々!」

「しぶといってばよ!」

「でも!」

「これで!」

「止めだってばよ!」

 

最後にそんな気合いの入った言葉と共に分身の一人が熊の顎にアッパーを決める。それが止めの一撃になり熊は地響きを上げて地面に沈んだ。

ナルトは影分身を解くと香燐に心配そうに駆け寄ってくる。

 

「大丈夫かってばよ!」

「あ…ありがとな」

「気にすんな!丁度飯が欲しかっただけだってばよ!」

 

闇の一切を感じない顔で朗らかに笑うナルト。その純粋過ぎる顔に思わずをぽぉーっと顔が火照っていく。

 

(こ、こいつ初めはバカっぽい面だと思ったが…改めて見るとカ、カッコいいじゃねえか…それになんか知らねえが凄い暖かいチャクラしてやがる…)

 

今迄奴隷のような扱いしか受けてこなかった香燐は心配されると言うことに慣れておらず鼓動が早まる。さらに、命を助けてくれたと言う吊橋効果と、うずまき一族特有のチョロい血筋もあり、初めて優しくしてくれたナルトにころっと恋に落ちた。

 

 

「ところで、お前…巻物持ってるかってばよ?」

「あ…持ってない…ごめんなさい」

 

中忍になる意思も無い香燐…むしろ、あの二人の草忍の夢が叶うとか憤慨やるさかない香燐は、もし巻物を持っていたら喜んで渡していただろう。しかし、残念ながら持っていない。チャクラ回復用の道具兼奴隷として連れてこられただけの香燐にあいつらが大切な巻物を渡すわけがなかった。

役に立てず眉尻を落とす香燐。

 

「本当に持ってないのかってばよ?」

 

疑わしげにジーイっと見るナルト。ナルトに見つめられ顔を真っ赤にさせながらも慌ててコクッと首肯く香燐。

 

「うーん…嘘言ってるようにも感じないけど一応確認するってばよ!」

「へ…?確認…?…!!」

 

唐突にナルトの手が自分の体に伸ばされる。

 

「ちょ…あ…ひゃん…ダメっ…」

 

少年誌では見せることを躊躇うような、ちょっとイカンやり取りが繰り広げられる。

初めはもしやこのまま押し倒されるのかと思っていた香燐だが、ナルトは本当に巻物を探していただけのようで、一通り探すとあっさり手を引いてしまった。

 

「うーん、本当に持ってなかったってばよ…残念だってばよ」

 

顔を赤くさせながらゼェゼェと熱い息を吐く香燐に「痛かったか…?すまねえってばよ」と謝るナルト。

すまねえってばよ、じゃない。此処が死の森じゃ無かったら間違いなく事案になっていた。

もっとも香燐の様子を見るに訴えが出たかどうかは分からないが…

 

「なんかお前スゲエー熱っぽいってばよ…」

 

ナルトは香燐の額に手を当てる。ますます熱くなる香燐の体。ナルトは、これは只事ではないと、顔を険しくして口寄せの印を結び、薬を口寄せする。

 

「これ…サクラちゃんから貰った膳薬…俺は沢山持ってるからお前にやるってばよ」

 

そんな気遣いが出来るならもっと違う気遣いをしろ、とサスケがいたら言っていただろうが、突っ込み不在で話は進む。

 

香燐は敵であるはずの自分の心配をしてくれるナルトにますます顔を赤らめる。

 

「あ…ありがとう」

「食べ終わったら俺が仲間のとこまで連れてってやるってばよ。このまま女の子一人此処に置いとくのも寝覚めが悪いってばよ」

 

ちなみに、ナルトが香燐を助けたのは殺されそうになっていた香燐に咄嗟に体が動いたからだ。特に深い意味はない。故に、脅威が去った今、敵である彼女をわざわざ送り届ける必要もない───のだが、彼女の特徴的な容姿が気になった。この世界では珍しい赤い髪に赤い瞳…『うずまき一族の全て 著 千手扉間』と言う本に載っていたうずまき一族の特徴と一致する。うずまき一族の里は滅ぼされたとサクラに聞いていたので、こんな場所にうずまき一族がいるとは思えないが、もしかしたら自分の遠い親戚かもしれない。そう思うと純粋に敵とは思えない。それに、相手が襲ってきた敵って言うなら見捨てることも出来たが、ただの被害者のようにしか見えない女の子──今も恐怖によってか腰を抜かし、熱まで出している香燐を見捨てることは出来なかった。

 

ちなみに、この様子は中央監視塔で試験官達に見られていたのだが、そんなことナルト達が知るよしもなかった。

 

 

 

 

偶然にして、ふらっと監視塔に来ていた自来也、無駄な死者を出さないために受験者の治療を行うためにやって来たシズネ、試験官のみたらしアンコ、森野イビキ、神月イズモ、はがねコテツ、は各々が各々の表情でその惨事を見ていた。

 

「オホホ!!流石わしの弟子!ナイスだってのお!…バッカッ!!そこまできたらブラまで取っちまえっての!」

「ナルトくん…後でお仕置きです」ゴゴゴゴッ!!

「うずまきナルトか…とんでもねえガキだな」

「………一応ルールを破ってはいないが…なんつーエロガキだ…流石、カカシの部下なだけはある」

「あの変態め…一体部下に何を教えてるんだ」

「綱手様に報告しておこう」

 

上から自来也、シズネ、コテツ、イビキ、アンコ、イズモ、の順である。

 

そして、何故か意味不明な角度からとばっちりを受けたカカシ。

その時、彼は団子屋で他の担当上忍と談笑していたのだが、正体不明の悪寒を感じたとか。

 

「─────?どうかしたのか?カカシ?」

「ん…いや、何でもないよ、ガイ…ただ、少し、いやーな予感がしてね」

「ふふ…部下が心配か…丁度今は二次試験の一日目が終わる位…夜は危険だからな」

「いや、全ー然…あいつらは合格するよ…」

あっけらかんと言うカカシ。

「もしかしたら、一番に合格するかもね」

その言葉には自信と信頼が見て取れる。一瞬唖然とする紅、アスマ、ガイだが、「一番に合格する」なんて言われて黙ってるわけにはいかない。彼等も自分達の部下を何よりも信頼しているのだから。

「ふふ、随分な自信ね…でも、今回の試験の一番は私達よ…サバイバル試験は第八班の十八番…キバもヒナタもシノも凄く強くなったんだから」

「それを言うなら俺の班も問題ないだろ…あいつらの連携は集団戦でこそ生きる…シカマルもチョウジもやる気ないのが心配だが…いのが引っ張ってくれるだろうしな」

「俺の班だってそうだ…ネジもリーもテンテンも俺の愛すべき優秀な部下だ!…必ずややり遂げてくれると確信している!」

バチバチと視線を交わす同僚達。それを見てるとさっき感じた悪寒も忘れてしまう。

まあ、忘れたところでやって来るものは変わらないのだが…

カカシはこの後何故か綱手に呼び出され説教を食らうことになる。

 

 

「お前とは一度保護者面談をするべきだと思っていたんだ…これも良い機会だ…そこになおれ」

「はい」

 

「つまり、今回のナルトの行動にお前は一切関わっていないと?」

「と、当然です…正直ビックリしています」

 

「そうか…そこまで言うならこの件(・・・)は無実だと信じてやる…だが、余罪は幾らでもあるぞ?そのポーチに入ってる物を出してみろ」

「………え…?」

「早くしろ!」

「は、はい!」ビクッ!

 

カカシは一冊の本を取り出す。それは、デフォルメされた男と女がまぐわってるような表紙の赤い本だった。

 

「それは何だ?」

「…イ…イチャイチャパラダイスです」

「つまりエロ本だな?」

「………」

 

「なぜそれを買ったのかと言うことは聞かん…お前も男だ…エロ本くらい読むだろう…だがな、任務中にまでエロ本を持ち歩くのは流石にどうかと思うぞ?ん?お前はそこんとこどう思う?」

「いえ…あの…これはエロ本と言うジャンルですが…同時に私の人生の指南書と言いますか…」

「ほう?お前にとってエロ本が人生の指南書か?やはりお前には一度説教が必要なみたいだな」

 

「お前の事情は知っている…だから、今迄大目に見てきた…だがな、それでもナルトから色々話は聞いてるんだぞ…ん?聞きたいか?

毎回数時間遅刻してくる

任務中も常にエロ本を持ち歩く

それを部下の前で読み始める

どうだ?今自分で聞いてみて?直すべき点があるとは思わないか?」

「はい…その通りです…すみません」

 

数時間後

そこには屍になったカカシがいるのだった。






香燐がナルトにセクハラを受ける話でした!

もちろん、この後、ナルトも説教を受けました!

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