ナルトが綱手に引き取られる話 作:tanaka
見事予選を勝ち抜いた木の葉の忍6名(ナルト、サスケ、サクラ、シカマル、ネジ、シノ)と砂の忍3名(我愛羅、カンクロウ、テマリ)と音の忍1名(ドス)は本戦に臨むこととなる。ナルト達に準備期間として与えられたのは一ヶ月。その間に各々敵の情報を集めたり、更なる修行を積んで強くなるわけだ。
既にくじ引きをして本戦のトーナメント表は決定している。ナルトの一回戦の相手は天才と名高い日向ネジ。彼は点穴を突き相手のチャクラを封じる事が出来るらしい。このままでは勝てないかもと不安を感じたナルトは修行を付けて貰うべく知り合いの上忍に頼みに行くのだった。
「母ちゃん!修行つけてくれってばよ!」
「ん…悪いね…今回は先約があるんだ」
「ええー!」
「サクラを教えることになってるんだ」
「サ、サクラちゃん!?…なら仕方ないってばよ!」
「シズネ姉ちゃん!教えてくれってばよ!」
「すみません…しばらくは任務で忙しいんです」
「えー!」
「ごめんなさい」
「い、いや、任務なら仕方ないってばよ!俺ってばカカシ先生に頼んでくるってばよ!」
「あー!いた!カカシ先生ー!俺に修行つけてくれってばよ!」
「俺はこれからサスケにつきっきりになる…悪いが他を当たってくれ」
「ふざけるなってばよ!贔屓だってばよ!」
「そう言われてもね…木の葉で雷遁を教えられる忍は俺くらいしかいないんだよ…でも、一応俺も代理の教師をさが…て聞いてない」
「なんだい!なんだい!皆して!もう良いってばよ!こうなったら自力で凄い忍術編み出してやるってばよ!」
綱手にも振られ、シズネにも振られ、カカシ先生にも振られ、ナルトは分かりやすいほど不貞腐れていた。肩をならし、ぷんぷんと怒りながら川沿いに歩道を歩く。その姿は誰がどう見ても、今機嫌悪いですよっと言っている。
「キバもシノもサスケの兄ちゃんも見つからねえし…こう言うときに限って誰も見つからないってばよ──ん?」
文句を垂れるナルトの目に、実に暇そうな見知った上忍の姿が映るのだった。
「ひょーーー!今回もかわいい娘が沢山いるのォ!!」
その男は女湯の壁に顔を近付け白昼堂々覗きをしていた。
長い白髪に緑の和服、赤い法被。特徴的すぎるその姿は覗きをするには相応しくない。にも関わらず、男が捕まったと言う話をナルトは聞いたことがない。木の葉の里の警務部隊はこの男と裏で繋がっているのかもしれない。そうナルトは本気で思った。
「ぬははは…!いいぞ!これは良い角度だ!」
「たまらんのォ」
「ここはパラダイスかのぉ!」
この男、見る度に覗きをしている気がする。言えば否定するだろうが「も」とか言ってる時点で弁明の余地はない。そして、毎回思うが、覗きをするにしては声が大きすぎじゃないだろうか。隠れる気は全くないらしい。
さて、ここで普通に声を掛けることは出来るがナルトは一計を案じる。そして、音を立てないように物陰に隠れミニカツユをこっそりと口寄せする。
「ナルトくん、どうかしたんですか?」
「あれを見るってばよ」
「あれは…自来也様」
ナルトの指差す方向には綱手の同輩である自来也がいる。そして、何時ものように覗きをしている。見慣れた光景ではあるが、しかし、何故自分が呼び出されたのかは分からず首を傾げるカツユ。
「止めないのですか?」
取り敢えず誰もが思うだろう真っ当な事を聞く。
「もう少し泳がせるってばよ」
「はぁ」
「実は俺今師匠を探してるんだってばよ。でも、皆忙しいみたいで暇そうなのエロ仙人くらいしかいないんだってばよ。だから、師匠をしてくれるよう頼むつもりなんだけど、忙しいからって断られそうなんだってばよ。だから、これを脅しにして修行をつけて貰うってばよ。カツユには証人になってもらいたいんだってばよ───なんかこんな事で呼び出して悪いけど、俺ってばどうしても倒したい相手がいるんだってばよ!」
「なるほど。まあ、他でもないナルトくんの頼みです。任せてください」
「さすが、頼りになるってばよ!」
「お!おおお!こ、これはイカン!本当にイカンぞ!素晴らしすぎる!」
ナルトとカツユがこっそりと見ていると、自来也は唐突に鼻を抑えだした。イカンイカンと言っているが全くイカン顔じゃない。むしろこれ以上無いほどだらしのない顔である。一体その瞳には何が見えているのか。目を極限まで開き、一瞬も見逃さんとばかりに鼻息を荒くする。
(きょ、今日はなんて素晴らしい日かのぉ!!わしはこの日のために里に帰ってきたのかもしれん!!)
自来也は顔を紅潮させ、壁にめり込むほど顔を押し付ける。
眼前。手を伸ばせば届くほどの場所に、黒髪巨乳の美人がいる。彼女は一紙纏わぬ姿で腰を屈め、手から零れ落ちたタオルを取ろうとしている。目の前に迫ってくる尻。その圧迫感たるや国宝にも勝る。比例して自来也の鼻息はどんどん荒くなる。
(お!おおおお!おおおおおお!!)
最早言葉も出ない。そんな思考の余地があるなら目の前の尻に向ける。もうこの男はダメかもしれない。
(!!!)
現在自来也は幸福の真っ只中にいた。しかし、幸福の後には不幸が起こるものである。
覗きに夢中で無防備を晒す自来也…その股間に唐突に衝撃が走る。
「ぐ…ぐおお!!」
思わず飛び上がる自来也。少しでも衝撃を緩和しようと言う防衛本能の発露だった。しかし、如何せん反応が遅すぎた。少しでも長く尻を見ようとするエロスが顔をだした結果だった。完全な自業自得である。
自来也は呻き声を上げて飛び上がる。あまりの痛みに歪む視界の中、自分の股間を蹴り上げた下手人…ナルトの姿を見る。
(お前かああああ!!)
自来也の言葉にならない悲鳴が響く。
しかし、自来也の不運は此処では終わらなかった。むしろ本当の不運はここからだった。
自分の股間を蹴り上げた体勢で固まるナルトの横。そこに何故か金髪のくノ一…綱手がいたからだ。その姿を視界に納めた瞬間、自来也はただでさえ青い顔を更に青くする。
「自来也ァ!!」
「ひ、ひぃ!!」
上空へ上がる自分の躯。
ポキポキと拳を鳴らす綱手。
「ま、待て綱手話を──」
「歯ァ食い縛りな!!」
「ちょま───ごえぼば!!」
綱手の右拳が奮われる。その拳は狙い違わず鳩尾にヒットし、抉るように振り抜かれる。くるくると高速で回る視界。そして、そのまま自来也は物凄い勢いで川の中へと落ちていった。
「ところで母ちゃん何でこんなところにいるんだってばよ?」
「ん…ああ、私は自来也にお前の修行をつけるよう頼もうかと思って探してたんだよ」
それで一番に探しに来るのが温泉街と言うのはどうかと思うが、実際そこにいたので最早何も言えない。
「そうだったのかってばよ」
それはエロ仙人も災難だったってばよ…
と、ナルトは少し同情する。自分が少し脅してやろうと思ったばかりに綱手に見つかってしまったのだから。結果論ではあるが普通に声を掛けてたらこうはならなかった。まこと憐れである。
「なあなあエロ仙人俺に修行つけてくれってばよ!もう俺ってばこの際エロ仙人でも良いってばよ!」
「お前今わしに何しくさったか忘れたのか!…見てみろわしの惨状を!!…まだ股間が悲鳴をあげとるんじゃぞ!」
自来也は恨めしげにナルトを睨む。額には青筋が浮かんでおり怒り心頭と言った様子だ。この状況で修行をつけろとかふざけとるのかこの男!
憤慨やるさかないとはこの事である。
とは言え綱手にナルトの修行を見るように言われており、つい頷いてしまった…と言うより頷く以外になかった。般若を背負った綱手の頼み、聞かなかったら何をされていただろうか。想像することすら恐ろしい。仕方ないが見る他ないだろう。だが、それはそれとしてナルトの頼み方が不服なのも事実。
「つーか、ナルト、それが人に物を頼む態度かっての!「もう」とか、「この際」とか、「でも」とか、あまりに失礼すぎるぞ」
もしかしてナルトは自分の事をまだ只のエロいじじいだと思っているんじゃなかろうか?
いやーな考え頭を過る。自来也はブンブンと頭を振った。そんな訳はない。これでも色々術を教えてるのだ。尊敬してくれてるはずである。
「…ナルト…一応聞いておくが…わしのことどう思ってる」
「エロ仙人だってばよ!」
邪気なく純粋に笑うナルトに怒ればいいのか、受け止めればいいのか
しかし、自分が望んだ答えではないのは確かだ。なんだエロ仙人って!ガマ仙人だと言っとろうが!
「………三忍自来也と言えばこの世界じゃ知らない者がいないほどの名なんじゃぞ…わしに教えを請えるって聞けば世界中の忍が感涙の涙を出すんじゃぞ…もうちっと有り難がれっての」
ぶつぶつと文句を言いながらも、人の良い自来也はナルトに修行をつけてやるのだった。