ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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中忍選抜試験17 本戦 うちはサスケVS我愛羅

 

「フフフ……ざわついていますね」

「無理もないじゃろゥ…完全なダークホースじゃったからのォ……」

 

火影と風影の為に特別に用意された貴賓席で、ヒルゼンは風影の言葉に同意する。

 

第三回戦の奈良シカマルVSテマリの試合は全くと言って良いほど期待されていなかった。

シカマルは期待しようがないほどの無名だし、見た目は名前以上に期待できない。対するテマリは風影の子供とはいえ女だ。もちろん、女でも優秀な忍はいるが圧倒的に数が少ない。真に有名になるものなど綱手やメイなどの一部の例外のみで、歴史に名を残す偉人の殆んどは男なのだ。故に女と言うだけで期待度が下がってしまうのが忍の世界の非情だった。

 

さらに、一つ前の試合のネジ対ナルトのカードが思いの外白熱し、しかも、一つ後にあるサスケ対我愛羅のカードは今大会の本命だ。

言わば、シカマルとテマリの試合は本命前の箸休め。いっそとっとっと終わってくれと思っていた者がいるほど期待されていなかった。

しかし、蓋を開けてみれば、予想以上のハイレベルな頭脳戦で、近年稀に見る良い試合だったと、ヒルゼンは思う。

 

「素晴らしい闘いじゃった……」

「いえ、それもあるのでしょうが……」

 

二人の忍の内、“風”と書かれた白い笠を被る男が目線を下に遣る。

 

「おそらくは次の試合。物見高い忍頭たちや依頼主である大名たちにとって、これほど楽しみな試合はないでしょうから」

「……」

 

うちはサスケと風影の息子我愛羅。

うちはの名はもはや語るまでもないほど有名だし、

対する我愛羅は風影の子供の中で最も強く、絶対防御などと言う二つ名をあの年で付けている。

期待するなと言う方が無理な話か…

 

「私を含め、ここにいるほとんどの忍頭や大名は次の試合を観たいが為にここに来たようなもの」

「……」

「他二試合が思いの外ハイレベルであったのは認めましょう。しかし、やはり次のカードの前ではそれらは前座……何せ、彼はあの“うちは”本家の末裔。それに風の国としても是非、うちの我愛羅と手合わせ願いたいものですから」

 

大蛇丸が暗躍しているかもしれない、そんな話を聞いていなかったら、この言葉も素直に受け止めることが出来たのだろう。

何かを探るように目を向けるヒルゼンに、風影は蛇のように目を細めるのだった。

 

✝️

 

うちはサスケと我愛羅の試合は予選の我愛羅VS重りを外したリーの戦いの焼き回しのような展開で始まった。

我愛羅は動かず立ったまま砂の攻撃を仕掛けるのに対して、サスケは体術で砂を避ける。そのスピードはリーやガイと変態的な修行をしているだけあって最早下忍のスピードを遥かに上回る。本気のリー程ではないにしろ、根性重りを着けたリーを大きく上回るスピードで攻撃を仕掛け、我愛羅の砂を掻い潜り、砂の鎧に着実にダメージを与えいく。

 

「──っち!」

「そんなもんじゃねえだろ?お前の力は?」

 

サスケは体術で我愛羅を追い込む。優勢なのは間違いなく自分。しかし、そこに油断はない。あの自来也がナルトより上かもしれないと言った相手…その実力がこの程度な訳がない。

 

「ぐあっ!!」

 

サスケの蹴りが我愛羅の頬を蹴り飛ばす。体を覆っていた砂の鎧が剥がれ落ち、我愛羅の素顔が僅かに見える。

その瞬間、我愛羅からとてつもない殺気が撒き散らされた。

 

「──────っ!!!」

 

サスケは咄嗟に飛びずさり、大きく距離を取る。

あるいは、もし、これが原作のサスケなら驚きつつも攻撃を続けていただろう。力のみを求め続けたサスケには強者相手に引く理由はない。しかし、この世界のサスケは仮に力を得たとしても、その未来で自分が破滅してしまうなら何の意味もない。求めるものは家族や友との平和な未来であり、力はその為の手段でしかないからだ。

故に、サスケは余りにもどす黒い我愛羅の感情に直面し、生存本能が激しく刺激された結果、大きく距離を取った。取らされた。それは戦いの中で初めて出来た明確な隙。しかし、我愛羅は追い討ちを掛けることなく、全身を大きな砂のドームで覆う。

 

「───?何だあれは?」

 

巨大な砂の繭と言うのが最も近い表現だろう。

 

初めて見る我愛羅の攻撃?にサスケは警戒を持って数秒観察するも、球体は沈黙を保ったまま。防御の術かカウンターの術と言うことか?あるいは只の時間稼ぎか?

 

「……──ちっ!中で何をやってんのか知らねえが、このまま指を咥えて待つ必要もねえ!」

 

相手が動かないと言うなら遠慮なく攻撃してやればいい。幸い自分にはカウンターを見切る写輪眼がある。

サスケは先程と同様強力な拳を見舞う。

 

「ち」

 

サスケの拳は直撃したが血を流したのは自分の拳だった。

 

「……固え!」

 

球体の表面にはヒビすら入っていない。相当なチャクラが練り込まれている。生半可な攻撃では逆にこっちがダメージを喰らうことになる。しかも、自動迎撃モードでも付いているのか、近付くと砂の表面から槍のように鋭利な突起が生えてくる。もっとも写輪眼があれば見切れる程度の速さだ。この一ヶ月見切りの修行は嫌と言うほどやった。こんなトロい攻撃じゃ何回やっても当たる気はしない。だが、何度普通に攻撃しても恐らくこの砂は破れないのも確かだろう。

 

「……絶対防御か…守りに入った…訳じゃあねーんだろうな…」

 

あんな殺意を振り撒くほど攻撃的な男が只守りに入ったとは思えない。恐らくこれは大きな攻撃を完成させるまでの時間稼ぎ。

 

「ふん…丁度良い…俺の新技も時間が掛かるんだよ!」

 

サスケは片腕に雷のチャクラを蓄える。カカシのように即座に実戦に耐える威力を出すことは出来ない。この術はまずチャクラを片手に集め、性質を雷に変化させ、形を整え、さらに術の威力を上げると言うプロセスが必要だ。こんなものを一瞬で組み立てるカカシはやはり化け物だと思いつつ、冷静に術を構築していく。

 

「はああああああ!!」

 

サスケの右手が稲梓を帯び、バチバチと紫電を発する。

我愛羅は砂の繭の中で大技の為の印を結んでいく。

果たして先に完成したのは───

 

「いくぜ!!千鳥ィ!!」

「──────っ!!」

 

サスケは写輪眼で攻撃の全体を把握し、迫り来る砂の槍を全て避け、高速の抜き手を砂に叩き付ける。

その一撃はサスケのこの一ヶ月の成果の結実であった。打った瞬間今迄で一番上手く出来たと言う確信が体を満たす。

 

それを見たヒルゼン、風影に扮した大蛇丸、息子の活躍を見に来たフガクとミコト、師であるカカシやガイ、ナルト達同期の者達…全ての観客に等しく驚きを与えた。

 

「すばらしい」

 

大蛇丸が思わずと言った風に言葉を漏らす。

 

 

「うあああああああ!!!」

 

我愛羅の絶叫が響く。それと同時に穴から巨大な怪物の手が伸びてくる。

それは゛うちは゛に傾き掛かっていた場の流れを一瞬で引き戻した。

 

(なんだ?あれ?)

 

とても只の砂で出来ているとは思えない禍禍しい腕だった。

その腕は直ぐに砂の繭の中に戻り、次に砂の繭が崩壊した後には影も形も無くなっている。

頭を抑えふらつく我愛羅に、動揺を見せるサスケ。

直後、試験会場に白い羽が降ってきた。

 

大蛇丸が遂に木の葉崩しの引き金を引いたのである。

 

 

 

 

 

✝️

 

突然、白い羽が落ちてくる。そう思った時にはナルトの意識は闇の中へと落ちていった。

 

 

「んー………むにゃ………」

 

次に目を覚ますと目の前にサクラちゃんがいた。

 

サクラちゃんは爪先片膝立ちと言う──カカシ先生が動きやすい忍の座り方って言ってた…でも、疲れるってばよ──な独特な警戒を含んだ姿勢で、丁度ナルトの頭の真横に座っている。

 

ひんやりと頬に冷たい感触を感じる。冷や汗とかではなく、実際に頬が冷たい地面と接しているのだ。つまり、ナルトは地面に寝転がっていると言うことである。

 

ん?何で俺横になってんだっけ?

 

考えてみるが寝起き故か今一思考が判然としない。

しかも、サクラちゃんは何故か虎の印を組んでナルトに向けている。

 

ど、どういうことだってばよ?

 

慌てて頬を引っ張り意識を覚醒させる。次いで、落ち着いて記憶を引っ張り出す。

………そうだった。俺ってば、サスケの試合を見てたら突然空から変な羽が大量に降ってきて、それを見たら眠気がして、そのまま寝ちまったんだってばよ!

 

それを思い出してもこの状況は意味不明だ。しかし、訳の分からない状態なりに、分かることもある。取り敢えずその分かることだけでもサクラちゃんに伝えておこうと思ってそのまま口に出す。

 

「サクラちゃんパンツ丸見えだってばよ!──ごぼえ!」

 

この体勢だとサクラちゃんのパンツがもろ見えだと教えてあげようと思ったら何故か殴られた。解せぬ。

 

 

 

「うー…痛い…ひどいってばよサクラちゃん…」

「この状況でアホなこと言ってるからよ」

「この状況って?」

「襲撃よ」

「しゅ、襲撃?木の葉にかってばよ!?」

 

木の葉が世界一の大国だってことはナルトでも知っている。そんな国に襲撃を掛けるやつがいるとは…

 

しかも、今は木の葉の忍だけではなく、砂の忍や風影までいる。一度に二大国に喧嘩を売るようなものである。

 

「その砂の忍が音の忍びと手を組んで襲ってきたのよ」

「えええ!!砂って同盟国じゃ無かったのかってばよ?!」

「今の同盟国はかつての敵国よ…忍の世界では怨恨や利益相反なんて幾らでもある…それを何とかまとめるのが里長の仕事だけど…見てのとおりね」

「辛辣だってばよ」

「私の試合結局流されたのよ…これで中忍になる目は完全に無くなったわ…あー中忍になったら給料も増えるし、閲覧制限も弱まるし、行ける場所も増えるにのに…」

「サクラちゃんは相変わらずだってばよ…でも、大丈夫!!俺は中忍合格間違いなしだってばよ!俺が代わりに調べてやるってばよ!」

「…なんであんたが合格間違いなしなのよ」

「俺は試合に勝ったってばよ!」

 

胸を張り、どうだ?と言わんばかりにどや顔を見せるナルトに、サクラは可哀想なものを見る目を向ける。

ナルトはどうやら勝敗は合否に関係ないと言うゲンマの言葉を忘れているらしい。ただただ哀れだった。

 

「お喋りもその辺にしておけ、サクラ、ナルト、シカマル」

「あ、カカシ先生!」

「悪いが詳しく説明してる時間はない。俺も今手が離せん状況だ。端的に言うぞ」

 

カカシはナルト達に襲い掛かろうとしていた音忍を蹴散らしながら、伝える。

 

「現在俺達は砂の襲撃を受けている。そんで、サスケが砂の下忍達を追って一人で門を出た、お前達はサスケを追い、それを止めろ──案内はパックンに任せる」

 

カカシが口寄せしたのは赤丸より一回り小さいブルドック…取り敢えず戦闘力は無さそうだ。

 

「これは初めてのAランク任務だ。心して掛かれ!」

 

カカシの激励を受け、ナルト達は門へと走っていった。

 

 





これにて中忍試験編終了です。
次回からは木の葉崩し編。
いつも勢いで書いてるので構想とかは無いのですが…
取り敢えず原作との相違点をまとめます。以下。

木の葉side
綱手、シズネが里にいる
ナルト、サスケ、サクラ、カカシの戦闘力UP
うちはが滅亡していないため゛うちは警務部隊゛が現役
イタチは万華鏡写輪眼を発眼していない

大蛇丸side
暁を雇うわ…デイダラ、名無しIN
桃地ザブザと白も雇うわ
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