ナルトが綱手に引き取られる話 作:tanaka
自来也はナルトを見てすぐにナルトが四代目火影の遺児であるとほぼ確信していた。
クシナと同じ特徴的なしゃべり方、頬にある三本髭、ミナトと同じ金髪碧眼。他人の空似の可能性もあるが、ここまで揃ってるなら疑わないほうがおかしい。加えて少年の肩に乗ったカツユらしき蛞蝓。ナルトが綱手と行動を共にしていることは知っていたので、確信を持つには十分な要素だった。
そして、もしこの少年がナルトならこのまま放置することは出来ない。
「放せー!」と騒ぐナルトを脇に抱えて走りながら、自来也は油断なく辺りを観察する。
(やはり視線を感じるのお)
温泉でナルトに近づいたとき一瞬感じた違和感は間違いではなかったと改めて確信し、速度を上げる。だが、視線の主は尚も付かず離れず付いてくる。
(結構早く走っとるんじゃが中々やるのお。ま、ワシには遠く及ばんがのぉ)
自来也は公園の広場で足を止め、ナルトを下ろす。此処ならば戦闘になっても周りに被害を出さずに片付けられるだろう。しかし、自来也の予想に反して視線の主は仕掛けてくることはなかった。ただ黙って視線を向けてくるだけである。気配の消し方も上手い。尤も場所の特定は出来ているのでこっちから出向いてやってもいいんだが、綱手やシズネが来てからでも遅くないかと思い、情報収集のためナルトの肩に乗る見知った蛞蝓に声を掛ける。
「お前、もしかしてカツユか?」
「はい。お久しぶりです、自来也様」
ペコリと頭を下げるカツユ。自来也はやはりなと思いつつ「おう、久しぶりじゃのう」と軽く手を上げて答える。当然のように親しげに挨拶を交わす二人だが、隣で聞いていたナルトは寝耳に水。目を剥くほど驚いた。
「え?カツユ、このオープンスケベと知り合いなのかってばよ?」
「ええ、ナルト様。この方は自来也様と言って綱手様の御同輩に当たる方です。木の葉の三忍の一人でもあります」
「三忍?てことは、スゲー忍者なのかってば?」
「まあのォ」
(見えねーってばよ)
自来也の肯定にナルトは内心かなり失礼な感想を述べた。声に出さなかったのはナルトなりの配慮である。もっとも心情を隠す術など未だ持たないナルトの表情は大変胡散臭いものを見たぞというような半眼であり、何を考えているのかは一目瞭然であったが。
「お前今すげー失礼なこと考えとるじゃろ」
「な、何で分かったんだってば!?エスパーかってばよ?」
「あんだけ分かりやすけりゃワシじゃなくても気付くわ!たく!さっきといい、今といい、年上に対する敬意ってもんが足りんのお」
尊敬されたいなら尊敬できる行動を取ってくれと三代目がいたら切に願うだろうが、幸いにして三代目はいなかった。カツユもナルトもそれについて深く言及することは無かった。カツユは優しさから、ナルトは他のことに気をとられていたからだ。
ナルトが考えていたのはやはりというか自来也の知っている忍術である。自来也がカツユの言うほど凄い忍なのかは未だに疑っているナルトだが、自分より知識を持ってるのは確かだろう。
修行バカのナルトにとって新術を教えてくれるならエロジジイでも変態オカマでも問題ない。
「なあなあ、オープンスケベのじいちゃん!俺に何かスゲー術教えてくれってばよ!」
「その呼び方は止めろっての!」
「じゃあ、何て呼べばいいんだってば?」
「ガマ仙人様とでも呼べい」
「分かった!じゃあ、ガマ仙人!俺に何かスゲー術教えてくれってばよ!」
「断る!なーんでワシがそんな面倒なことせにゃならんのだ」
「えー、いいじゃねえか!減るもんじゃないし」
「ワシは忙しいんだっての!ガキに構ってる暇はねえの!」
朝から覗きをしていた男の台詞ではない。ナルトもカツユも全く同じことを思った。しかし、自来也が忙しいと言うのは実は嘘偽りではない。この街に来たのも覗きをするためではなく大蛇丸を追ってである。正確にはこの街から馬車で数日程の距離にある川の国と言う小国に大蛇丸がいるという情報を掴み、その旅路の途中で寝床を求めてこの宿場町に立ち寄ったのだ。
まあ、ナルトは自来也の事情など知るはずもなく、当然納得出来るわけもなく、何とか説得しようと考える。考えて、考えて、考えて、考え抜いて、普段あまり使わない脳細胞をフル稼働させた結果、ナルトはすごく余計なことを思い付いてしまった。それを思い付いたときは、「俺ってばやっぱ天才だってばよ!」と内心自分を絶賛するくらい素晴らしい案のように思えたのだが、後々振り替えると全く余計なことを思い付いたと反省するばかりである。
が、この時はナルトの間違えを止めるものはおらず、またナルトに未来視の力は無かった。ナルトは自信満々に担架を切る。
「ニシシシ!良いこと思い付いたってばよ!こうなったら奥の手を使ってやるってばよ!」
「奥の手?」
「そうだってばよ!つい今さっき考え付いた俺のオリジナル最新忍術だってばよ!」
「ほほう!オリジナル忍術とは大きく出たのお!だが、侮ってもらっては困るのう!くさっても男自来也青臭いガキなんぞに遅れはとらんぞ!」
「はっ!カンチョーで吹き飛んだ奴が何言っても怖くねえーってばよ!」
「ほ、ほほう!」
自来也の額に青筋が浮かぶ。と、同時に先程受けたカンチョーの痛みが再び戻ってきたような錯覚を受けた。
「そう言えばさっきの礼をまだしてなかったのう!丁度良い!ここらで一つお灸を据えてやるとするか!ワシがどれだけ痛かったのか身を持って味わわせてくれる!もとい、子供を叱ってやるのも大人の仕事じゃ!」
「ふん!そういう言葉はこれを見てからだってばよ!───くらえ!お色気の術」
ボンと言う音と共にナルトの姿が変わった。
現れたのは二十代半ば程の黒髪の美女だ。肩口まで伸びた短髪に黒曜石のような美しい瞳。メリハリのついた瑞瑞しい白磁の裸体は殺風景な公園にあることで、犯罪じみた魅惑を放っている。
さらに、何時も綱手やシズネの裸を間近で見ていたため、ナルトのお色気の術は正史のお色気の術を越えていた。胸の形や腰の括れ、鼠径部の線や脇のしわ、尻部の曲線など細部までリアルを限りなく模写しており、そのナルトの姿に自来也は一瞬で撃ち抜かれる。
「おっほー!お色気の術とな!何と言う発想か!お前は天才だのー!」
鼻血を流しながら頻りにナルトを称賛する自来也に、白けた目を向けるナルト。正史ではこの流れで修行を付けてもらえることになるのだが、今回はイレギュラーがあった。それは綱手とシズネが近くにいたということである。
そして、興奮し、両手をワキワキさせる自来也の前に二人の女忍が現れた。
「おう!久しぶりじゃのう綱d──「自来也!ナルトに何変な術教えてるんだい!」」
「ま、待て何か勘違──ゴホッ!」
自来也は綱手にお説教(物理)を受けた。
一方のナルトは───
「ナルト君、なんで私の姿に変化してるんですか?しかも裸で?」ゴゴゴゴゴ!!
「ひい!シズネ姉ちゃん、こ、これは違うんだってばよ!」
「今回ばかりはお仕置きが必要ですね」ゴゴゴゴゴ!!
シズネにこってり絞られるのであった。
閑話 ダンゾウ
「コテツ、雷花」
木の葉の地下にある根のアジト。
ダンゾウが二人の暗部の名前を呼ぶ。
すると、暗闇の中から猫の面をつけた茶髪の暗部と忍刀を背負った黒髪の暗部が現れ、ダンゾウの眼前で膝をつく。
「「ここに」」
「つい先程、綱手姫が九尾の人柱力を連れて旅に出た。五年は戻らんらしい。」
「「!!」」
「そこでだ、里に戻るまでの約五年間、人柱力の護衛の任務をお前達に命じる。」
「御意。しかし、相手があの三忍の綱手様となると、かなり距離を取らねば気取られると思いますが?」
しかし、距離を取れば当然護衛に支障をきたす。どうするべきか………。
ダンゾウはその不安を一蹴する。
「気取られて構わん。どんな状況でも助け出せる距離を保て。そして、もし万が一救助が困難だと判断したら、その時は抹殺を許可する。敵の手に落ちることだけは必ず阻止しろ!」
「「ハッ!」」
二人が出ていったのを確認して、ダンゾウは思案する。
九尾の人柱力については憂慮すべき案件だが、そればかりに囚われているわけにはいかない。
大国故に大小様々な問題がいくつもある。
特に最近はうちはの動きがキナ臭くなってきた。
どうするべきか?
うちはは強大な戦力ではあるが、同時に里に対する危険因子でもある。
故に、いざとなれば滅ぼすのも止むなしと考えていたが、人柱力が死ぬ可能性が出てきた以上、うちはの戦力を無くすのは惜しい。
が、簡単に首輪を受け入れるような奴等でもない。
あの一族は異常にプライドと一族愛が強い一族だからな。
それに、七年前の九尾事件。あれは、儂の勘が正しければ万華鏡を開眼したうちはの者が暗躍している。
いくら出産時九尾の封印が弱まるとはいえ、仮にも四代目火影であったミナトが側にいたのだ。簡単に九尾が外に出るのを許すわけがない。
それにも関わらず九尾が外に出たと言うことは、何かがあったと言うことの証左。それがうちはなのか、はたまた別の何かなのかは定かではないが、最も可能性が高いのがうちはであることに違いはない。
「…………一つ手を打っておくか」
ダンゾウは暗闇の中で一人呟き、ヒルゼンに会うべく足を進めた。