ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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ナルトVS我愛羅!
ついに開始!
我愛羅が強化されてます。ご注意を!


木の葉崩し6 ナルトVS我愛羅

 

一方のサスケはシノの手助けもあり、程無くして我愛羅に追い付いた。直ぐにサスケに気付いたテマリが我愛羅を守るためサスケと戦おうとするも、我愛羅に突き飛ばされ、そのままサスケと我愛羅の戦いが始る。

初めは写輪眼による見切りでサスケ優位に戦闘が進むが、我愛羅が右腕を尾獣化させたことにより、均衡は反転。サスケは我愛羅の圧倒的なパワーと砂の防御力の前に追い詰められていく。

尾獣化した我愛羅の腕はサスケの体術や武器術では全くダメージが与えられないほど堅固な体になり、まさにアリとゾウの戦いのようになった。

 

「どうした…?……お前の力はその程度か…?……うちはサスケェ!?」

 

サスケは殺傷力を上げるため起爆札を付けたクナイを投擲するがもはや我愛羅は避けることすらしない。巨大な砂の右腕を前に出してガードする。クナイが腕に突き刺さり、起爆札が爆発し、パラパラと表面の砂が弾け飛ぶ。だがそれだけだ。

 

「弱い…弱い…弱い…」

 

我愛羅は嘲笑を浮かべながら語る。

 

「お前は弱い…なぜか分かるか?…他人の為に戦っているからだ…!」

 

我愛羅はギラギラとした目で持論を展開する。

 

「戦いとは誰かの為にやるものではない…戦いとは他者と自分の存在を懸け殺し合うことにこそ意味がある…そして、勝った者だけが己の存在価値を実感できるのだ…さあ、俺に生を実感させろ…うちはサスケェ!!」

「ごちゃごちゃと訳の解らんことを」

 

サスケは、我愛羅の理解不能な理論に恐怖を感じつつも、冷静な頭で思考する。

 

──このまま普通の攻撃を繰り返してもダメージを与えるのは難しい。顔や首に決まればあるいはだが、当然そこは敵も警戒している。当てるのは至難の技だろう。それに、いずれ体力が尽きれば、捕まるのが関の山。ここはデカイ一発でガードごと敵をぶっ飛ばし、勝機を探る。…それに俺の千鳥が今のアイツにきくのか確かめなきゃならない。千鳥すらガードを貫通できないならもはや此処にいてもリスクしかない。悔しいが逃げるしかないだろう。

 

やることは決まった。

 

すなわち、切り札を切る。

 

サスケは決断と同時に煙玉を使って一度距離を取り、木の影に隠れ、千鳥の準備を始める。左腕にチャクラをため、性質を雷に変化させ、さらに威力をためる。腕が紫電を発し、ほどなくして、充分な威力が貯まるのを確認し、サスケは我愛羅の様子を探る。

 

我愛羅は怒声と挑発を交えながら時に腕を振るい、キョロキョロと辺りを見渡していた。

此方に気付いた様子はまだない。

サスケは予め口寄せしておいたカラスに起爆札を投下させる。

耳をつんざく爆発音。

我愛羅が驚き、苛立たし気に後ろを向いて腕を振るった、その瞬間。

 

「い………けッ!」

 

サスケは自分を鼓舞すると同時に全力で地面を蹴り飛ばし、我愛羅のいる場所へと一直線にダッシュする。

一歩で4mの距離を無くす。さらに、我愛羅が此方に気付くまでの僅かな時間で半分の距離を詰める。

敵との距離約20m。

その時点で、サスケの居場所に気付いた我愛羅が後ろを振り返り、腕を動かす。

斜めに振るわれる砂の巨腕。

それをスピードを落とさず、身を屈めることにより避け、さらに、巨大な腕を逆手に取って死角に入る。

 

しかし、我愛羅もさるもので、砂の腕をハリネズミのようにトゲトゲにして炙り出しにかかる。

 

眼前に迫る無数の針。

それは刻一刻と長さを増していく。

後三秒もしない内に自分の体は串刺しになるだろう。

完全に自分の行動が裏目に出てしまった。

しかし、絶対的なピンチと極度の集中状態、死の恐怖がサスケの生まれ持った戦闘センスを開花させる。

 

(こんな場所で死んでたまるか!)

 

サスケの左腕、バチバチと不規則に揺れる雷が1つの形に収束される。それは剣のように見える。

サスケはそれを上へと振り上げる。

針ごと砂の腕が半ばまで割れ、傘のように一瞬の安全地帯が出来る。

 

「うおおおお!」

 

サスケは千鳥をそのまま維持したまま、腕を縦に割るように切り裂きながら我愛羅の元へと走る。

 

性質変化の相性では雷は土に有利だ。そして、土の派生系である砂にも有利。

雷の剣は見事に我愛羅の尾獣化した右腕を切り裂く。

肘から肩にかけて割れていく体。

 

「ちぃ…!」

 

我愛羅はとっさに背中から三本目の腕を生やし、後方の木を掴んで引っ張ることで強引に脱出する。

 

「ぐう……」

 

サスケから20mほど離れた枝の上で肩を押さえる我愛羅。

痛みにくぐもった悲鳴を上げる。

肘からポタポタと赤い血が流れている。

サスケは初めての有効打にニヤリと笑いそうにり、しかし、突然の我愛羅の高笑いに顔をしかめる。

 

「ク…ククククク…」

 

楽しいから笑っているのではない。

愉しいから笑っているのだ。

それは追い詰められた弱者が自分を震い立たせるためにする笑みではない。

絶対的な強者が弱者に見せる捕食者の笑みだ。

 

サスケは気付かされた。今の命をとした攻防すら我愛羅にとっては戦いを彩るためのスパイスでしかないのだと。

 

「…………」

 

さらに、悪いことにサスケが切り裂いた砂の右腕もいつの間にか繋がり、元に戻っている。いや、正確には元に戻った訳ではない。一回り以上も大きく太く変わり、より凶悪に変わったのだ。しかも、今度はおどろおどろしい尾獣の尻尾まで生えるオプション付き。

こんなオプションは嬉しくないとサスケは内心さらに顔をしかめる。

 

「…今のは中々殺意の乗った良い攻撃だったぞ…では、今度は俺が技を見せてやる」

 

──風遁・砂手裏剣の術

 

我愛羅は自らの腕を構成する砂で無数の手裏剣を作って乱れ打つ。巨大な怪腕を振り回して放たれる砂手裏剣は容易く木々を貫通する。散弾のように飛来する無数の手裏剣。正確性こそそこまでではないものの、これほど数が多ければ多少の正確性など関係ない。

いや、それより問題なのは自分の行動が制限され、誘導されていると言うことだ。手裏剣が右から右からやってくるので、避けるために自然と左に体が動く。だが、その先には恐らく罠がある。これほど解りやすい誘導なのだからほぼ間違いないだろう。しかし、かといって、右に進むのも危険だ。だったらどうするばいい?簡単だ。活路は前か後ろ……距離を取って策を練る時間を稼ぐか、危険を犯して距離を詰め本体を叩くか…。

 

結論は直ぐに出た。

 

(格上相手に距離を取ってもジリジリと追い詰められるだけだ…何より俺の遠距離攻撃じゃダメージを与えられねえ…距離を詰めて千鳥で叩く!)

 

「───っ!」

 

サスケは再び写輪眼を全開で駆動させ、全力で地面を蹴り上げる。

 

眼前に迫る十数個の砂の手裏剣。その内、自分に当たる軌道は六つ。

しかし、よくよく見てみると全てが同時に来るわけではない。少しずつだが時間差がある。

 

サスケは極限の集中により拡張される思考の中で、順番を正確に記憶し、ほぼ一瞬でイメージを固める。そして、それになぞるように体を動かし、雷の刀を振るう。ヴォン!と勇ましい音。直後、白い残像を残しながら三つの手裏剣が霧散する。さらに、間を置かずに腕を振るい一つの手裏剣を消し飛ばし、返す刀で残り二つを消す。

ほぼ同時に、当たらないはずの8つの手裏剣が真横を通りすぎる音を聞いた。それに恐怖で足がすくみそうになるのを歯を食い縛って耐え、さらに疾走する。

 

残る敵との距離は10m。

自分の腕の長さが30cm、千鳥の最長幅が60cm。残り約9m弱。

 

無数の手裏剣の間を縫うように体を動かし、避けきれないものだけを刀で斬り捨てる。

 

後7m。

 

一瞬一瞬で出来うる限りの最適な行動を導き続ける。

 

後5m。

 

頬や肩、足に深い傷が増えていく。しかし、必要経費と割り捨てて、ひりつく体を無視して、突き進む。

 

後3m

 

敵がいよいよ眼前にまで迫ってきた。

いける!という思いが混み上がり、緩み方にそうなる歓喜を無理矢理活力に変えて集中力を捻り出す。

 

これが正真正銘最後のチャンスだ。

チャクラ量的にも精神力的にも自分にはもう後はない。

絶対にここで決める。

狙うは心臓。

初めての殺しだ。

忌避感が無いわけがない。

しかし、その全てを仲間のためと飲み込み、駆ける。

 

敵との距離は2mを切った。

止めを刺すべく刀を振るうモーションに入る。

 

しかし、我愛羅まで後数歩と言うところで、不自然に柔らかい地面に足を取られ、僅かに体勢を崩した。

 

「──!」

 

それは隙と呼ぶには余りにも小さいものだ。

ガイとの修行の成果もあり、サスケの体幹は並の中忍を凌駕する。右足が踝辺りまで沈んだ程度なら充分に対処できるイレギュラーだった。

しかし、敵が格上で、この状況を呼んでいたと言うなら話は別だ。

我愛羅はサスケが足を取られるよりも前に腕を動かしていた。

 

「しまっ!「ふっ!」ぐう!」

 

生じた一瞬の隙を予定通り突き、我愛羅の砂の腕がサスケの体を捉える。そして、そのまま腕力に任せて、木の幹へとサスケを叩き付け、拘束する。

 

我愛羅は敢えて分かりやすい攻撃をすることでサスケに右か左かの二択を迫り、結果サスケが前への突撃と言う最も危険で正しく勇気の必要な判断をすることまで読んだのだ。そこで、予め柔らかくしておいた自分の前方の足場で足を取られる一瞬の隙を見逃さず、腕を伸ばし木に叩きつけたのである。

 

尾獣化が進むにつれ、我愛羅の力は飛躍的に高まっている。一方サスケはチャクラが枯渇している。しかも、体まで拘束され、もはや打つ手がない。

 

両者の格付けも、そして、勝敗も見えた。

 

我愛羅は砂を操り、一本の槍を作り出す。

 

「終わりだ…うちはサスケ」

 

「いや、終わらねえってばよ!」

 

槍が発射される寸前、金髪の少年…うずまきナルトが乱入し、サスケを拘束していた我愛羅の腕を螺旋丸で吹き飛ばす。

 

「ぐっ…ナルトか?」

 

サスケの前に仁王立ち、庇うように立つナルト。

 

「遅くなったってばよ!サスケ!もう大丈夫だ!」

 

遅れて桃色の長髪の少女…春野サクラもやって来る。

 

「ナルト、あんた速すぎるわよ」

 

サクラは乱れた息を整えながら、サスケをチラリと見て、眉を潜める。

我愛羅から切り離されたはずの砂の右手がまだサスケを拘束していたからだ。しかも、どうやら絞めつける力がどんどん強くなっているらしい。

 

「ぐぅ」

 

サスケが呻き声を上げる。

サクラはサスケが絞め殺されるよりも早く砂を壊そうと腕にチャクラを溜める。

桜花掌というサクラ得意の怪力忍術である。

その怪力の馬鹿げた威力を知っているサスケの顔が、心なしか更に青くなった気がしたが、きっと絞め付けがより強まったせいだろう。

 

「サスケ、ちょっと動かないで待ってなさい!今その砂壊すから」

「わ、分かった…慎重に頼む」

「任せなさい!」

 

サクラは砂を掴む。しかし、この砂思った以上に硬い。無理矢理壊すことも出来なくは無いだろうが、それをやるとサスケの方にまで被害が出そうである。仕方無しに、サクラは木の方をぶっ壊し、サスケを救出する。

 

「助かったサクラ」

「サクラちゃんナイスだってばよ!」

「ふふん、私もやるときはやるのよ!」

 

痛みに顔を引き吊らせ感謝を伝えるサスケに、胸を張ってどや顔するサクラ、グッドサインを向けるナルト、

仲間の救助成功に素直に喜び合う三人だが、それでも誰も我愛羅から注意を逸らすこと無く警戒して対峙する。

 

バケモノ

 

そう言っても相違ないほどに、今の我愛羅の相貌は人間からかけ離れていた。上半身は全て砂に覆われ、両腕は不自然なほど巨大化し、腕の先には鋭く強靭な爪が生えている。さらには怪物のような尻尾が背中から生え、結膜が黒く塗りつぶされた眼球は人の範疇を越え、人外へと足を踏み入れた怪物の証のようでもある。

 

「何だ? 怖くなったのか? このオレの姿を見て、怖くなったのか?」

 

我愛羅が楽しげに笑い、殺意を振り撒く。

そして、ナルト達を押し潰すべく、右手を振り切る。地面に大きな引っ掻き傷を作りながら三人に向かう衝撃波だったが、サクラが怪力で地面をひっくり返してそれを止める。

 

「土遁・卓袱台返し!」

 

土遁とか言ってるが只の力業である。

しかし、防げるなら何でもいい。

 

ナルトは、我愛羅への恐怖からやや及び腰になりそうになっていたが、サスケを庇うようにして立つサクラと、満身創痍のサスケを見て自分を奮い立たせる。

 

「サクラちゃんはサスケを連れて下がっててくれってばよ!ここは俺がオヤビンを呼んで蹴りをつけてもらうってばよ!」

「オヤビンってガマブン太様の事?」

「確かにあのカエルならコイツにも」

 

ナルトの言葉に勝機を見い出だし大人しく下がる二人。

ナルトはチャクラを捻り出し、ブン太を口寄せすべく印を組む。

 

「来てくれ!オヤビン!口寄せの術!」

 

ポンッと煙が上がった。それは小さすぎる煙だった。ナルトはイヤーな予感をヒシヒシと感じて煙の先を見る。そこにいるカエルを見てナルトは唖然と口を開ける。言葉が続かないとはこの事だ。

 

「おま!おま…………おままままま、お前ぇ!」

 

──い、いくらなんでもこの状況で失敗はねえってばよ!

 

失敗した口寄せの呼び出しに応じてやって来たのは橙色の掌サイズのカエルだった。とても可愛い。とても可愛いが…どう考えても戦えるサイズじゃない。なんなら戦場にはいない方がマシな気さえする。しかも、当のカエルはこの状況を分かっていないのか「あんじゃ、ナルトじゃねえか…用があるならお菓子くれやぁ」なんて呑気な事を言っている。ナルトの頭は色んな意味でキャパシティーをオーバーし、逆ギレ気味にプツンと切れた。

 

「だあーー!お前はお呼びじゃねえんだってばよガマ竜!」

「 俺はガマ竜じゃなくてガマ吉だ」

「んなんどっちでもいいってばよ!オヤビンは何してんだってばよ!」

「親父じゃったら今誰かに呼び出されとるけぇ妙朴山にはおらんでぇ」

「はぁああああ!うっそだろ!この人生で一番の大ピンチに!何処のバカだってばよお!勝手に呼び出しやがった野郎は!」

 

自来也である。

ナルトは頭を抱えて怒るが、そんな事をしてる間に痺れを切らした我愛羅の攻撃が飛来する。我愛羅からしてみたら期待して待っていた結果がこれでは嘲笑も浮かんでこない。時間を無駄にされたと怒り心頭な砂の攻撃を連続で行う。ナルトは慌てて避けるも上半身全てを砂で覆った我愛羅の攻撃能力とスピードは凄まじく、瞬く間に窮地に追いやられるナルト。

得意な影分身の術で応戦するナルトだが、どんどん怪物化する我愛羅には最早、どれだけ数を増やそうが焼け石に水でしかない。そして、とうとうナルトの右足が我愛羅の動く砂──砂縛柩に捕まる。

 

「ぐえ!」

 

足を捕られたナルトは地面に顔をぶつける。

しかし、痛みに顔をしかめている暇もない。砂は足から侵食するようにナルトの全身を覆っていく。

 

「や、やべえってばよ!」

 

もちろん、この間サクラやサスケも只見ていた訳ではない。何とか助け出そうと動いていたが、もう片方の腕と尻尾で牽制されて近付くこともままならない。

 

「ナルト!口寄せだ!カツユに守ってもらえ!」

 

ナルトは一瞬慌てるもサスケの声に即座に反応して事態を打開するためにチャクラを練る。

 

「頼むから今度こそ来てくれってばよ───」

 

ナルトは急いで印を組み上げる。それはナルトにして充分早い印スピードだった。しかし、半尾獣化した我愛羅の砂を操るスピードは凄まじく、完全に印が組み上がるよりも前に、ナルトの全身が完全に砂の中へと埋まる。ナルトの全身に軋みがかかる。全方位から有り得ない圧力がかかる。その圧力により印を組むことはおろか、ピクリとも動くことすら出来なくなる。口寄せの印はまだ完成しておらず、カツユを呼び出すことは出来ない。もはや自力での脱出は不可能。しかし、サクラもサスケも足止めにあい、助けに行くことが出来ない。当然我愛羅は情けも容赦もしてくれないだろう。絶体絶命。万事休す。

 

(う、嘘だろ…俺…ここで死ぬのか…)

 

絞め付けが強くなり口から血が流れる。

 

(悪いってばよ…母ちゃん…姉ちゃん…サスケ…サクラちゃん…カカシ先生…みんな…)

 

「終わりだうずまきナルト──」

 

我愛羅が掌を握り潰す。

 

「砂瀑送葬!」

 

瞬間、砂から赤い何かが噴出した。

 

「ナ…ナルト?」

 

サスケとサクラは瞳を揺らしてナルトがいた場所を見る。信じたくない。信じられない。

あのナルトがこんな簡単に死ぬなんて。

 

砂埃が激しく煙の先は見えない。しかし、弾け飛んで来た赤い血がナルトの末路を教えているようだった。

 

「ううおおおおおお!」

 

サスケが咆哮を上げる。チャクラなどほとんど枯渇していたはずなのに、体の底からチャクラが沸き上がってくる。憎しみに呼応するようにおどろおどろしい紫色のチャクラが体を包む。アイツを殺せと、仇を討てと、全身が訴えてくる。

サスケはその憎しみに身を委ね、一歩を踏み出そうとして────

 

「し、死ぬかと思った…マジで助かったってばよ」

 

有り得ない声が聞こえた。

サスケの憎しみはその声を聞き、急激に霧散していく。

そして、唖然と煙の先を見る。

中から現れたのは禍禍しい赤い妖狐のチャクラで身を包んだナルトだった。

実はナルトが殺されそうになったあの一瞬、クラマがナルトを守るようにチャクラを噴出させ、砂を弾け飛ばしたのだ。その余波を受け、ナルトが持っていた悪戯用の赤いペイント弾が誤爆し、その一部がサスケ達の方へと偶然飛んだと言う顛末である。

 

なんとも肩透かしな顛末だが、しかし、危うく、冗談ではなく死に掛けたナルトは全身から冷や汗を流しながらクラマに感謝を伝える。

 

「本当に!マジで!助かったってばよ!クラマ!」

(ふん…丁度暇だっただけだ…なにより代理とは言え一尾の守鶴ごときに負けるのは気に食わんしな…)

「守鶴?クラマってば、何か知ってんのか?」

(そこの我愛羅とか言うガキはお前と同じで尾獣を体内に封印されている…一尾の人柱力だ…守鶴って言うのは一尾の名前だ)

「あいつ人柱力だったのかってばよ!どうりで強いわけだってばよ!」

(おしゃべりはその辺にして目の前の敵に集中しろよナルト。敵は何かするつもりだぞ)

 

我愛羅はナルトを仕損じたにも関わらず、心底愉快に笑っていた。

 

「ク…ククククク…フハハハハ…」

 

我愛羅の顔に浮かぶのは狂喜。他人の弱さを嘲笑い、強い者を狩ることを至上の悦びとする獣のおぞましい哄笑だ。

 

「いいぞ!…いいぞ!うずまきナルト!」

 

我愛羅はナルトの予想以上の強さに歓喜を浮かべる。その歓喜に呼応するように小さな体から強大なチャクラが吹き出る。それは辺りに突風を引き起こし、周囲の砂を巻き上げる。

 

「それでこそ俺の獲物だ!…それでこそ殺す価値がある俺の獲物だ!」

 

我愛羅のおぞましい声。

ビリビリと空気を揺らす殺気。

さらに大きくなるチャクラと砂嵐。

そして、────

 

「俺も本当の力を見せてやる!」

 

瞬間一際大きな突風が吹き荒れ、獣が真の体を顕現した。

現れたのは、砂で形成された小山のような体躯と、それより更に巨大な多層型の一本尾を持つ本物のバケモノ。大地を覆うほどの巨大な狸のバケモノだ。

 

「オォォオオオオオォオオオ!」

 

そのバケモノは自身の力を誇示するかのように咆哮を発する。

 

(あれが砂の守鶴だ。気合い入れろよナルト!ボケッとしてると直ぐに死ぬぞ!)

「そんなん見れば分かるってばよ!」

 

ナルトは取り敢えずあのサイズに対抗するため本日三度目となる口寄せを行う。

三度目の正直。

今度こそ口寄せは完璧に成功し、守鶴にも劣らない巨大なサイズのナメクジが現れる。

 

「ようやっと口寄せの術成功だってばよ!」

 

ナルトに呼び出されたカツユは辺りを見渡す。どうやら此処は木の葉近くの森のようで、木の葉の里がある方では幾つもの煙が上がり、大量の血の臭いが此処まで飛んでくる。さらに、目の前には砂の守鶴。木の葉が襲われていることは綱手が呼び出したカツユからのフィードバックにより既に知っていたが、まさか砂の守鶴までいるとは、驚きである。

 

「カツユ!突然で悪いけどアレ倒すの手伝ってくれってばよ!」

 

「もちろん、構いませんよ」

 

ナルトの無茶苦茶な要請にも嫌な顔せず頷いたカツユは守鶴に対峙する。

完全なバケモノの体となった我愛羅はもはや自分の敵となるものなどこの世にいないとでも言うように不遜な態度でナルトに対する。

 

戦いが始まる数秒前。その僅かな間にクラマはナルトに忠告をする。

 

(いいか良く聞けナルト!あの大狸は尾獣玉っつう技を使う!黒い巨大な螺旋丸みたいな玉をぶっぱなす遠距離攻撃だ!あれに一発でも当たればお前なんて即あの世行きだから絶対当たるなよ!)

「当たるなよって言っても見ての通りカツユは早く動くのは苦手だってばよ!」

(それをどうにかすんのがお前の役目だろうが!)

「なんか今すげー無茶ぶりされたってばよ!」

(兎に角死にたくねえなら何か手を今すぐ考えろ!)

 

ナルトはうんうんと頭を捻る。

 

「そうだってばよ!合体変化だってばよ!母ちゃんがたまに使ってるやつだってばよ!」

(お前…そんな器用なこと出来るのか?)

「俺ってば変化の術と影分身の術だけは才能あるって皆にお墨付き貰ってるんだってばよ。それにカツユとなら何度か練習したこともあるから確実だってばよ」

(で、何になるんだ?)

「クラマだってばよ。実物知ってる方がやり易いんだってばよ」

(わしか…それなら多少は手を貸してやれるぞ)

 

ナルトはカツユに了承を得て合体変化を行った。

ボンッと言う音と共に巨大なナメクジは巨大な九本の尾を持つ狐に変化する。

 

「行くってばよ!カツユ!あ!でも!あっちはサクラちゃん達がいるから攻撃いかないようにしてくれってばよ!」

「分かりました」

 

カツユは四本の足で森を駆け、守鶴へ向かって舌歯粘酸(ぜっしねんきん)を放つ。狐の口から大量の強酸が吐き出され、守鶴の目と体を溶かしていく。さらに九本の尾が連続で振るわれ守鶴の横腹を往復ビンタする。

しかし、岩をも溶かす強酸の嵐も、木々を紙のように薙ぎ倒すほどの尻尾による攻撃も、瞬く間に傷が再生され、意味をなさない。唯一目だけは再生されなかったが、それでも不意打ちでの攻撃で戦果が実質片目だけではナルトもカツユも渋い顔になる。

 

「ぐうぅ…面白い…面白いぞ…うずまきナルト!」

 

我愛羅は片目を抑えながらも尚を楽しげに笑った。

 

「ここまで楽しませてくれた礼だ! 砂の化身の本当の力を見せてやる!」

 

何のためか、守鶴の頭からガアラの上半身が出てくる。

我愛羅の言葉から推察するには切り札のような物を使うようだが…

 

警戒しながら見ていると、カツユが説明してくれた。

 

守鶴の霊媒は常に守鶴と人格の奪い合いをしており、霊媒が起きている間は守鶴は本来の力を制限された状態にある。つまり、もしあの霊媒が眠りに入ったら、守鶴は百パーセントの力を出せるようになると言うことだ。そして、砂の里には代々「狸寝入りの術」と言うものがあり、これは、己に強制的に゛睡眠の術゛をかけ自ら眠りにつくことで守鶴に体を明け渡して本来の力をフルに発揮させるための術だ。

 

「───狸寝入りの術!」

 

我愛羅の両腕がダランと下がり完全な睡眠へと落ちる。同時に守鶴の人格が表に出てくる。

 

「ヒャッハーーー!やっと出てこられたぞーーーい!おおおっと!いきなりぶっ殺したい狐発見ぇぇえええーん!!」

 

(うるせえ)

「意外とファンキーな方なんですね、守鶴様って」

「クラマもこんな感じだったのかなぁ…」

(んなわけねえだろ!…わしはもっとスマートに暴れてたわ!…あのアホ狸のファンキーさは生まれつきの持病だ!)

「スマートに暴れるって初めて聞いたってばよ」

 

などと呑気に会話しているように聞こえるが、最大限の警戒を保っている。先程とは比べものにならないほどの圧力をヒシヒシと感じる。

 

「死ねえ!バカ狐!連空弾!!」

 

守鶴の口から超高密度のチャクラの玉が連続で発射される。カツユは素晴らしい反応速度で避けるが、玉が地面に当たる度に木々がはぜ、土が削れ、地形が描き変わる。

 

「これはとんでもないですね…私でもそう何発も耐えられそうにありませんよ…兎に角まずはあの霊媒を起こしてください」

「もう少し近付いてくれないと無理だってばよ」

「ええ、分かってます。私が守鶴を捕まえますので、その隙にナルトくんは霊媒を何とか起こしてください」

「分かったってばよ!」

 

何度かの攻防の後、カツユは守鶴を捕まえることに成功する。

ナルトはその隙に影分身を使い我愛羅に連続突撃をする。むろん、守鶴もバカではないので、我愛羅にナルトが近付け無いように砂を操作する。しかし、多勢に無勢。物量により砂の防御を突破したナルトは眠る我愛羅に向けて螺旋丸をぶっぱなした。

 

「おおおお!起きろってばよ!」

「ぐほーー!」

 

我愛羅が目を開ける。

 

「ちっくしょー!やっと出てきたばかりなのに!」

 

守鶴の悲鳴が響き、砂の体は音を立てて崩れ去る。

 

「ぐはっ……こいつ…ぐはっ!…俺の術を!……ぐはっ!」

 

我愛羅が血を吐きながら、足場を失い落下する。

 

「おおおお!これで止めだってばよ!」

 

ナルトはそこに更に追撃を掛けようとしたが、我愛羅もさるもので気力で砂を操り、対抗する。

 

「お前は俺に殺される!俺の存在は消えない!」

「俺は死なねえ!誰も殺させねえ!皆は俺が守る!」

「黙れ!他者に頼る弱者に俺が負けるか!負けてたまるかあ!!」

 

ナルトはクラマのチャクラを纏って攻撃する。我愛羅も砂で対抗するが、螺旋丸のダメージと尾獣化の疲労が残る体では、今のナルトを止めることは出来ない。

 

砂の攻撃を掻い潜り、ナルトの拳が我愛羅の頬を捉える。

 

「ぐう…なぜ…なぜだ…なぜコイツは…こんなに強い…」

 

我愛羅の脳裏に走馬灯のように過去が去来する。

 

公園で一人でいた

─あいつとは口聞くなって言ったろ!

─行こーぜ!

─化け物!死ね!

 

何度も父に殺され掛けた

─どうやらお前は失敗だったようだ

 

母の愛情は偽りだと知った

─貴方は愛されてなどいなかった

─自分だけを愛する修羅…それが貴方の名の由来です

 

 

自分だけを愛してやればいい!それが最も強い者の定義だ!

 

そうだ。そのはずだ。なのになぜ…他人の為に戦うこいつはこんなに強い!

 

我愛羅はナルトの存在が認められなかった。

 

もしかして自分は間違っていたのではないか?そんな後悔を突き付けられたから。

 

だが、本当に恐ろしいのはそんなことではない。本当に恐ろしいのは、また何の為に生きればいいのか分からなくなることだ。

 

ようやっと見つけた生きる理由をまた奪われる事だけは我愛羅にも耐えられなかった。

 

「俺は勝ち、殺し続ける限り、俺の存在はあり続ける…俺の存在は消えない…消えない…消えてたまるか!」

 

我愛羅は狂ったように吠えるが、ナルトが近づいてくる音を聞くと今度は怯えたように後ずさった。

 

「く、くるな!」

 

ナルトにとって我愛羅は一言で表すのが難しい相手だ。

仲間を傷付けたのは許せない。

でも、同じ人柱力として我愛羅の孤独や苦しみが理解できてしまった。

 

なんて寂しい目だってばよ…

 

我愛羅の目には孤独と苦しみと拒絶の色しかなかった。

 

昔の俺と同じだってばよ…

 

ずっと一人だった…

 

本当はどいつもこいつも憎かった…

 

俺を認めない木の葉の奴等が嫌いだった…

 

木の葉の里が嫌いだった…

 

でも、俺は母ちゃんや姉ちゃんにあった

 

だんだんと俺のことを認めてくれる奴等が増えた…

 

友達も出来て…師匠も出来た…

 

だから、俺は里の奴等にどれだけ冷たい目で見られようが平気になれた…

 

でも、我愛羅にはいなかったんだ…

俺が母ちゃんや姉ちゃんと暮らしてた時も…こいつはずっと一人だった…

 

「独りぼっちの苦しみは半端じゃねえよな お前の気持ちは なんでかなぁ 痛いほど分かるんだってばよ」

 

誰からも助けられずに…

 

誰にも愛されず…

 

ずっと孤独に苦しみ続けて…

 

ずっとあの地獄でもがき続けて…

 

それでも誰からも理解されず、こんな恐ろしい事を考えるようになっちまった

 

俺には母ちゃんと姉ちゃんがいたのに…こいつには誰もいなかった…

 

「俺は救われたのにお前は救われなかった…だから、俺はお前も救いたいんだってばよ」

 

「……………」

 

「敵の俺が言っても意味わからねえかもしれねえけど…恨み続ける人生なんて苦しいってばよ」

 

ナルトは我愛羅の元まで歩いていき、手を前に差し出した。

 

「言いたいことは沢山あるけどやっぱ上手く伝えられねえや…でも、人柱力には人柱力同士だけの話し方があるんだってばよ…ほら、こうやって手と手を付き合わせるんだってばよ」

 

我愛羅は恐る恐ると手を付き出す。

拳と拳がぶつかり合い、二人は精神の世界へと入っていく。

 

 

その特殊な空間の中には守鶴とクラマ、我愛羅とナルトだけがいた。

そこでナルトは我愛羅に自分の体験を見せて聞かせたり、

尾獣と友達になれることを伝えたり、

寝た振りを決め込む守鶴をクラマが締め上げたり、

我愛羅が守鶴に話し掛けたり、

守鶴が無視を決め込み、またクラマに締め上げられたり、

色々あった。

 

その後、精神世界を出た我愛羅はテマリとカンクロウに連れていかれた。その後すぐ、サスケとサクラがやって来た。

 

「大丈夫か、ナルト?」

「流石に疲れたってばよ…いくらクラマのチャクラ借りてたとは言えチャクラ使いすぎたってばよ」

「自分で歩けるの?」

「いや、無理だってばよ…サクラちゃんおぶってくれってばよ」

「俺が背負ってやる」

「サスケ…お前空気読めってばよ」

「さっさと乗れうすらとんかち」

「あ~、どうせならサクラちゃんにおぶってもらいたかったってばよ」

「バカな事言ってないで行くわよ」

「それじゃ帰るか木の葉に」

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